大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 本試 数学ⅡB 第2問 [1] 解説

(1)

$f(x)$は三次関数で、$x^{3}$の項の係数は正。
なので、全体としては右上がりのグラフになるから、選択肢の
③④⑤
は不適。
正解は、⓪①②のどれかだ。

さらに、$f(x)$を微分すると
$f'(x)=3x^{2}-6a$
となる。

なので、$f'(x)=0$となる$x$は
$3x^{2}-6a=0$
より
$x^{2}=2a$
$x=\pm\sqrt{2a}$式A
である。

式Aより、$f'(x)=0$となる点、つまり、グラフの傾きが$0$である点は、 $a \lt 0$のとき、存在しない $a=0$のとき、$x=0$の1か所 $0 \lt a$のとき、$x=\pm\sqrt{2a}$の2か所 であることが分かる。


以上より、

$a=0$のとき、
⓪①②のうち、グラフの傾きが$0$になるのが $x=0$の1か所だけである

が正解である。

解答ア:1

$a \lt 0$のとき、
⓪①②のうち、グラフの傾きが$0$にならない

が正解である。

解答イ:0

(2)

(1)で考えたように、$0 \lt a$のとき、$y=f(x)$のグラフは
全体として右上がり 傾きが$0$の点が2か所あり、その$x$座標は
$x=\pm\sqrt{2a}$
なので、図Aのような形になる。

図A
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅡB第2問[1] 解説図A

$y=f(x)$と$y=p$が3個の共有点をもつのは、
$y=p$が図Aの青い範囲にある 場合。
ただし、オレンジの線と緑の線は含まない。

よって、
は極小値(緑の点の$y$座標)
は極大値(オレンジの点の$y$座標)
である。

図Aより、

極小値は
$f(\sqrt{2a})=\sqrt{2a}^{3}-6a\sqrt{2a}+16$
$\phantom{ f(\sqrt{2a}) } =\sqrt{2}^{3}\sqrt{a}^{3}-6\sqrt{2}\sqrt{a}^{3}+16$
$\phantom{ f(\sqrt{2a}) } =-4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}+16$

解答ウ:3

極大値は
$f(-\sqrt{2a})=(-\sqrt{2a})^{3}-6a(-\sqrt{2a})+16$
$\phantom{ f(-\sqrt{2a}) } =-\sqrt{2}^{3}\sqrt{a}^{3}+6\sqrt{2}\sqrt{a}^{3}+16$
$\phantom{ f(-\sqrt{2a}) } =4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}+16$

解答エ:2

である。

エの別解

三次関数は、極大値をとる点と極小値をとる点の中点(図Aのオレンジの点と緑の点の中点)について点対称である。
オレンジの点の$x$座標は$-\sqrt{2a}$ 緑の点の$x$座標は$\sqrt{2a}$ だから、中点は$x=0$となる点で、グラフと$y$軸との交点(図Aの黒い点)だ。

黒い点に関してグラフは点対称なので、
黒い点とオレンジの直線の距離
             $=$黒い点と緑の直線の距離
といえる。

図B
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅡB第2問[1] 解説図B

黒い点の$y$座標は、
$f(0)=16$
緑の点の$y$座標、つまり緑の直線の$y$座標は、より
$-4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}+16$
なので、図Bのような関係であることが分かる。

図Bより、オレンジの直線の$y$座標は、
$4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}+16$
である。

解答エ:2

説明は長かったけれど、これに気がつけば は一瞬で求められる。

次に、$p=$のときの$y=p$、つまり 図Aの緑の直線
$y=-4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}+16$式B
と、$y=f(x)$との共有点(図Aの赤い点と緑の点)の$x$座標$q$,$r$を求める。

$q \lt r$
なので、
赤い点の$x$座標が$q$ 緑の点の$x$座標が$r$ だ。

このうち、緑の点の$x$座標はすでに
$\sqrt{2a}$
だと分かっている。
これを問題文のマスに合う形に変形すると、
$r=\sqrt{2}a^{\frac{1}{2}}$
となる。

解答ク:2


$q$についてはちょっと計算しないといけない。

$y=f(x)$と式Bの連立方程式
$\left\{\begin{array}{l} y=x^{3}-6ax+16\\ y=-4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}+16 \end{array}\right.$
から
$x^{3}-6ax+16=-4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}+16$
より
$x^{3}-6ax+4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}=0$式C
という方程式ができる。

この方程式の解が$q$と$r$なんだけど、$r=\sqrt{2a}$が分かっていて、しかも図Aの緑の点は接点なので、重解だ。
よって、式Cは
$(x-q)(x-\sqrt{2a})^{2}=0$式D
と因数分解できるはず。

この式Dを展開すると、式Cになるはず。
全部展開するのは面倒なので、定数項だけ計算しよう。

式Dの定数項を展開すると、
$-q\times(-\sqrt{2a})^{2}$
これが式Cの定数項と等しいので、
$-q\times(-\sqrt{2a})^{2}=4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}$
これを計算して、
$-q=\displaystyle \frac{4\sqrt{2}a^{\frac{3}{2}}}{(-\sqrt{2a})^{2}}$
$q=-\displaystyle \frac{ \cancel{4}^{2} \sqrt{2} \cancel{a} \cdot a^{\frac{1}{2}}}{ \cancel{2} \cancel{a}}$
$\phantom{ q } =-2\sqrt{2}a^{\frac{1}{2}}$
である。

解答オ:-, カ:2, キ:2

(3)

ここで、$y=f(x)$のグラフについて、ちょっとまとめておこう。

$f(0)=16$
なので、グラフは$y$軸と
$(0,16)$
で交わる。

これに、(1)(2)で考えたグラフの概形を合わせると、図Cのようになる。

図C
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅡB第2問[1] 解説図C

$y=f(x)$のグラフは、図中

$a \lt 0$のとき、オレンジの曲線
$a=0$のとき、茶色の曲線
$a \gt 0$のとき、赤い曲線

である。

また、$x$軸は黒い点($y$座標が$16$)よりも下にあるけど、どのくらい下かは$a$の値によって変わる。
なので、$x$軸は緑の線の位置だったり、青だったり、紫だったりする。

アドバイス

本当は$x$軸が決まっていてグラフの形が変わるんだけど、グラフの形が決まっていて$x$軸が動くと考えた方がイメージしやすいので、ここでは$x$軸を動かした。


図Cから、$y=f(x)$のグラフと$x$軸との共有点の数は、

$a\lt 0$のとき、必ず$1$個
$a=0$のとき、必ず$1$個
$a \gt 0$のとき、$1$個だったり$2$個だったり
                       $3$個だったりする

ことが分かる。

方程式$f(x)=0$の実数解は、$y=f(x)$のグラフと$x$軸との共有点の$x$座標と等しい。
なので、異なる実数解の個数$n$は、

$a\lt 0$のとき、$n=1$
$a=0$のとき、$n=1$
$a \gt 0$のとき、$n=1$にも$2$にも$3$にもなる

といえる。


以上より、

⓪は誤り。
$a=0$のときも$n=1$だし、
    $a \gt 0$でも$n=1$のことがある
①は正しい。
②は誤り。
$n=2$になるのは$a \gt 0$のときだけ
③は誤り。
$a \lt 0$のときは必ず$n=1$
④は正しい。
⑤は誤り。
$a \gt 0$のとき、$n=3$とは限らず、
    $n=1$や$n=2$にもなる

であることが分かる。

解答ケ:1, コ:4 (順不同)