大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 本試 数学ⅠA 第2問 [1] 解説

(1)

$p=4$,$q=-4$のとき、方程式は
$x^{2}+4x-4=0$式A
$x^{2}-4x+4=0$式B
となる。

まず、簡単な式Bから。

式Bは公式通りの形で
$(x-2)^{2}=0$
と因数分解できる。

なので、式Bの解は
$x=2$ の重解だ。

次に、式A。

式Aを見ると、$x^{2}$の係数と定数項が異符号。
なので、判別式は正だ。

詳しく 二次式
$ax^{2}+bx+c$
の判別式は
$\textcolor{green}{b^{2}} \textcolor{red}{-4ac}$
だけど、この式の緑の部分は必ず$0$以上である。
なので、赤い部分が正のときは、判別式は必ず正になる。
よって、$a$と$c$が異符号のとき、計算しなくても判別式は正であることが分かる。

さらに、式Bの解の
$x=2$
は、式Aの解じゃない。

よって、式Aの解は
$x=2$以外の異なる2つの実数解 である。

以上より、この場合の$n$は
$x=2$と、式Aの解の2個 の、合計$3$である。

解答ア:3

アドバイス

解の個数が分かればいいので、式Aの解を求める必要はない。


$p=1$,$q=-2$のとき、方程式は
$x^{2}+x-2=0$式C
$x^{2}-2x+1=0$式D
となる。

式Cは
$(x+2)(x-1)=0$
と因数分解できるので、解は
$x=-2$,$1$ の2つ。

式Dは
$(x-1)^{2}=0$
と因数分解できるので、解は
$x=1$ の重解だけど、これは式Cの解と共通。

以上より、この場合の$n$は
$x=-2$,$1$ で、$n=2$だ。

解答イ:2

アドバイス

今回も方程式の解自体は必要ない。けれど、どちらの方程式も簡単に因数分解できるので、解を求めて解いた方が早い。

(2)

$p=-6$のとき、方程式は
$x^{2}-6x+q=0$①'
$x^{2}+qx-6=0$②'
となる。

花子さんと太郎さんの会話通り ①'と②'の共通解を$\alpha$とおいて
$\alpha^{2}-6\alpha+q=0$①''
$\alpha^{2}+q\alpha-6=0$
とし、ふたつの式を辺々引くと

$\alpha^{2}$ $-6\alpha$ $+q$ $=$ $0$
$-)$ $\alpha^{2}$ $+q\alpha$ $-6$ $=$ $0$
$(-6-q)\alpha$ $+q+6$ $=$ $0$

より
$-(q+6)\alpha+(q+6)=0$式E
とかける。

これを因数分解すると
$(q+6)(-\alpha+1)=0$
となる。

この式が成り立つのは
$q+6=0$ または $-\alpha+1=0$
のときなので、
$q=-6$,$\alpha=1$
のときだ。

$q=-6$のとき

$q=-6$のとき、①'と②'は同じ式、つまり ひとつの二次方程式になる。
ひとつの二次方程式の解の数は 最大でも2つ。
$n=3$にはならないので、不適。

$\alpha=1$のとき

$\alpha=1$のとき、式①''は
$1^{2}-6\cdot 1+q=0$
より
$q=5$ であることが分かる。

このとき、①',②'は
$x^{2}-6x+5=0$式F
$x^{2}+5x-6=0$式G
となる。

式Fは
$(x-1)(x-5)=0$
と因数分解できるので、解は
$x=1$,$5$ である。

式Gは
$(x-1)(x+6)=0$
と因数分解できるので、解は
$x=1,-6$ である。

よって、
$q=5$ のとき $n=3$ である。


以上、花子さんと太郎さんの会話に従って

両方の方程式がそれぞれ異なる2つの実数解をもち、
共通の解が1つある

場合を考えた。

けれど、$n=3$となるパターンは他にもあって、前の問題がヒントになっている。
(1)の$p=4$,$q=-4$のような場合だ。
つまり、

①',②'の一方が重解,もう一方が異なる2つの実数解をもち、
共通の解がない

ようなパターンである。

これを考えてみよう。

①'が重解をもつとき

$x^{2}-6x+q=0$①'
が重解をもつとき、
$q=9$ で、重解は $x=3$ である。

このとき、②'は
$x^{2}+9x-6=0$
となるけど、この式は $x^{2}$の係数と定数項が異符号。
判別式は正になるから、②'は異なる2つの実数解をもつ。

また、この式は$x=3$で成り立たないので、①'と②'共通の解はない。

以上より、
$q=9$ のとき、$n=3$ である。

②'が重解をもつとき

$x^{2}+qx-6=0$②'
だけど、定数項が負なので、$\gamma$を実数として
$(x-\gamma)^{2}=0$
の形に因数分解されることはない。

なので、②'が重解を持つことはないから、この場合は不適。


以上より、$n=3$となるのは
$q=5$,$9$
のときである。

解答ウ:5, エ:9

(3)

グラフの平行移動の復習から。

復習

大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 復習図

関数$y=f(x)$の
$x$ を $(x-s)$ に変えると、
グラフは$x$軸方向に$s$平行移動する。
(図中の緑の移動)
$y$ を $(y-t)$ に変えると、
グラフは$y$軸方向に$t$平行移動する。
(図中の紫の移動)

復習が終わったところで、まず③のグラフだ。

③は
$\textcolor{red}{y-q}=x^{2}-6x$
と変形できる。

復習より、これは
$\textcolor{red}{y}=x^{2}-6x$
のグラフを、
$y$軸方向に$q$平行移動したもの。

なので、$q$の値が大きくなるにつれて、グラフは$y$軸の正の方向(真上)に移動してゆく。
よって、$q$が$1$より大きいときのグラフは、$q=1$のときのグラフから見て $y$軸の正の方向(真上)にある。

以上より、正しいグラフは、選択肢の

である。

解答オ:6


次は、④のグラフ。

③と同じように解いてもいいんだけど、せっかくだから違う方法をやってみよう。

復習

2次関数
$y=ax^{2}+bx+c$
の放物線の軸(頂点の$x$座標)は
$x=\displaystyle \frac{-b}{2a}$
とかける。

復習より、④の放物線の軸は
$x=\displaystyle \frac{-q}{2}$式H
とかける。

$q$が大きくなるほど、$\displaystyle \frac{-q}{2}$は小さくなる。
なので、$q$を増加させると ④の放物線の軸は$x$軸の負の方向(左方向)に移動するから、グラフ全体も左に移動する。
よって、
選択肢のうちの
①③⑤
のどれかが正解
であることが分かる。

さらに、式Hを見ると $q=1$のとき 放物線の軸の$x$座標は負。
なので、
$y$軸は点線の放物線の軸より右 に存在する。

また、④の定数項は
$-6$
なので、$q$の値を変化させても、グラフと$y$軸との交点は
$(0,-6)$
で不変である。

よって、点線と実線のふたつのグラフは必ず
$(0,-6)$
で交わる。
これは$y$軸上の点だ。
つまり、
$y$軸はふたつのグラフの交点を通る ことになる。

以上より、選択肢の①③⑤のうち
点線と実線のふたつのグラフの交点が、点線の放物線の軸よりも右 にあるグラフが正解だ。

よって、正しいグラフは

である。

解答カ:1

アドバイス

④については、上の方法だと ほとんど計算しなくても答えが分かるし、何よりも早い。
省略せずに説明したので、解説は長かったけど。
でも、なかなか思いつかないかも。
これを ③と同じように解くと 次の別解のようになる。

別解

④を平方完成すると、
$\displaystyle y=\left(x+\frac{q}{2}\right)^{2}-\left(\frac{q}{2}\right)^{2}-6$
より
$y=\displaystyle \left(x+\frac{q}{2}\right)^{2}-\frac{q^{2}}{4}-6$
$\displaystyle \textcolor{red}{y+ \frac{q^{2}}{4}}=\left(\textcolor{green}{x+\frac{q}{2}}\right)^{2}-6$
となる。

これは、
$\textcolor{red}{y}=\textcolor{green}{x}^{2}-6$
のグラフを

$x$軸方向に$-\displaystyle \frac{q}{2}$
$y$軸方向に$-\displaystyle \frac{q^{2}}{4}$

平行移動したもの。

なので、$q$の値が大きくなるにつれて、グラフは

$x$軸方向は負の向き(左方向)
$y$軸方向も負の向き(下方向)

に移動してゆく。
よって、$q$が$1$より大きいときのグラフは、$q=1$のときのグラフの左下にある。

以上より、正しいグラフは、選択肢の

である。

解答カ:1

別解

お勧めはしないけど、力ずくで解くこともできる。
$q$に値を代入して、頂点の座標を求めて解くわけだ。


まず、③から。

$q=1$のとき

$y=x^{2}-6x+1$
を平方完成すると
$y=(x-3)^{2}-3^{2}+1$
$\phantom{ y } =(x-3)^{2}-8$
となる。

$q=1$のときのグラフは、選択肢の点線の放物線。
なので、点線の放物線の頂点は
$(3,-8)$ である。

$q=9$のとき

次に$q$に代入する数は $1$より大きければ何でもいいんだけど、(2)で$q=9$のときの計算をしてあるから、それを使おう。

(2)で解いたように、
$q=9$ のとき、①'は
$x=3$
の重解をもった。
つまり、このとき、③の放物線は$x$軸と$(3,0)$で接するから、これが頂点だ。

$q \gt 1$のときのグラフは、選択肢の実線の放物線。
なので、実線の放物線の頂点は
$(3,0)$ である。

以上より、実線の放物線は 点線の放物線の真上方向にあることが分かる。

これに当てはまるグラフは、選択肢の

である。

解答オ:6


次に、④だ。

$q=1$のとき

$y=x^{2}+x-6$
を平方完成すると
$\displaystyle y=\left(x+\frac{1}{2}\right)^{2}-\left(\frac{1}{2}\right)^{2}-6$
$\phantom{ y\displaystyle } \displaystyle =\left(x+\frac{1}{2}\right)^{2}-\frac{1+6\cdot 4}{4}$
$\phantom{ y\displaystyle } \displaystyle =\left(x+\frac{1}{2}\right)^{2}-\frac{25}{4}$
となる。

$q=1$のときのグラフは、選択肢の点線の放物線。
なので、点線の放物線の頂点は
$\displaystyle \left(-\frac{1}{2},-\frac{25}{4}\right)$ である。

$q=2$のとき

次に$q$に代入する数は、$1$より大きければ何でもいい。
今回は、とりあえず
$q=2$
にしてみる

④に$q=2$を代入した
$y=x^{2}+2x-6$
を平方完成すると、
$y=(x+1)^{2}-1-6$
$\phantom{ y } =(x+1)^{2}-7$
となる。

$q \gt 1$のときのグラフは、選択肢の実線の放物線。
なので、実線の放物線の頂点は
$(-1,-7)$ である。

以上より、実線の放物線は 点線の放物線の左下方向にあることが分かる。

これに当てはまるグラフは、選択肢の

である。

解答カ:1

(4)

必要条件と十分条件の問題なので、集合$A$,集合$B$を図で表そう。
今回は$x$の範囲なので、数直線を使う。


集合$A$

(2)で解いたように、
$x^{2}-6x+q=0$①'
の解は、
$q=5$のとき
$x=1$,$5$
$q=9$のとき
$x=3$の重解
だった。

なので、
$y=x^{2}-6x+q$
のグラフは、
$q=5$のとき
図Aのオレンジの放物線
$q=9$のとき
図Aの青い放物線
になる。

図A
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 解説図A

よって、
$5 \lt q \lt 9$
のとき、③のグラフは図Aの緑の範囲にある。
ただし、オレンジの線と青い線は含まない。
例えば、図中の黒い放物線のようなグラフになる。

以上より、このときの集合
$A=\{x|x^{2}-6x+q \lt 0\}$
を数直線で表すと図Bができる。

図B
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 解説図B

集合$B$

(2)で求めたように、
$x^{2}+qx-6=0$②'
の解は、
$q=5$のとき
$x=1$,$-6$
だった。

なので、このとき、
$y=x^{2}+qx-6$
のグラフは図Cのオレンジの放物線になる。

また、(3)で考えたように、④のグラフは

$q$が大きくなるにつれて 左下に移動し、
$y$軸と 必ず$(0,-6)$で交わる

ので、$q=9$のとき、④のグラフは おおよそ 図Cの青い放物線のような感じだ。

図C
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 解説図C

よって、
$5 \lt q \lt 9$
のとき、④のグラフは図Cの緑の範囲にある。
ただし、オレンジの線と青い線は含まない。
例えば、図中の黒い放物線のようなグラフになる。

以上より、このときの集合
$B=\{x|x^{2}+qx-6 \lt 0\}$
を数直線で表すと図Dができる。

図D
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 解説図D

図Bと図Dができたら勝ったも同然。
でも、先に進む前に、必要条件・十分条件と集合の復習をしておこう。

復習

図E
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 復習図E

図Eのような集合があった場合、
$A$は$B$の必要条件 $B$は$A$の十分条件 である。

つまり、片方の集合がもう片方に含まれるとき、
大きい集合は小さい集合の必要条件 小さい集合は大きい集合の十分条件 である。

「大は小の必要条件・小は大の十分条件。」
呪文のように憶えておこう。

図F
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 復習図F

図Fのように ふたつの集合が等しい場合は、必要十分条件となる。

また、図Gのように、片方の集合がもう片方の集合を含むような関係でない場合には、必要条件でも十分条件でもない。

図G
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 復習図G

復習の考え方で解く。
図Bと図Dをひとつの数直線にして、集合$\overline{A}$を描きたして 図Hをつくった。

図H
大学入学共通テスト2022年本試 数学ⅠA第2問[1] 解説図H

図Hを見ると、集合$A$と集合$B$は、復習の図Gの右図のような関係だ。
なので、
$x\in A$は、$x\in B$であるための 必要条件でも十分条件でもない。

解答キ:3

また、集合$B$は集合$\overline{A}$に含まれている。復習の図Eのような関係だ。
なので、
$x\in B$は、$x\in\overline{A}$であるための 十分条件である。

解答ク:1

アドバイス

必要条件と十分条件の問題は、
$A \Rightarrow B$ ×
$A \Leftarrow B$ ○
なので、必要条件

みたいな解き方をすることが多いけど、○×の判定で混乱したり間違えたりすることが多い。
なので、図や表で表せるときは、集合の大小で考えることをお勧めする。