大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 本試 数学Ⅰ 第1問 [2] 解説
ア~セ
以下の解説では、
$y=x^{2}+px+r$を関数A
$y=x^{2}+qx+s$を関数B
と呼ぶことにする。
二次方程式
$x^{2}+px+r=0$式A
に解の公式を使うと、
$x=\displaystyle \frac{-p\pm\sqrt{p^{2}-4\cdot 1\cdot r}}{2\cdot 1}$
$\phantom{ x\displaystyle } \displaystyle =\frac{-p\pm\sqrt{\textcolor{red}{p^{2}-4r}}}{2}$
となる。
解答コ:2, サ:4, シ:2
この式の赤い部分を
$D_{1}=p^{2}-4r$式B
とおくと、解の公式の根号の中は判別式なので、式Bは式Aの二次方程式の判別式にあたる。
よって、
$D_{1} \lt 0$のとき、式Aは実数解をもたない
→ 関数Aは$x$軸と共有点をもたない
$D_{1}\geqq 0$のとき、式Aは実数解をもつ
→ 関数Aは$x$軸と共有点をもつ
ことが分かる。
二次方程式
$x^{2}+qx+s=0$式C
で同様の作業をすると、この方程式の判別式は
$D_{2}=q^{2}-4s$式D
となる。
よって、
$D_{2} \lt 0$のとき、式Cは実数解をもたない
→ 関数Bは$x$軸と共有点をもたない
$D_{2}\geqq 0$のとき、式Cは実数解をもつ
→ 関数Bは$x$軸と共有点をもつ
ことが分かる。
以上をまとめると、表Aができる。
関数Aが $x$軸と共有点を | ||||
---|---|---|---|---|
もたない | もつ | |||
$D_{1} \lt 0$ | $D_{1}\geqq 0$ | |||
関数Bが $x$軸と 共有点を | もたない | $D_{2} \lt 0$ | ||
もつ | $D_{2}\geqq 0$ |
「ふたつの二次関数の少なくとも一方は$x$軸と共有点をもつ」にあたるのは、表Aの緑の部分。
つまり
$D_{1}\geqq 0$ または $D_{2}\geqq 0$
解答ス:3
スが成り立たないのは、表Aの緑以外の部分。
つまり
$D_{1} \lt 0$ かつ $D_{2} \lt 0$
解答セ:0
である。
セの別解
セはスの否定なので、
$\overline{D_{1} \geqq 0\ \text{または} D_{2} \geqq 0}$
とかける。
これは、ド・モルガンの法則から
$\overline{D_{1} \geqq 0}$ かつ $\overline{D_{2} \geqq 0}$
より
$D_{1} \lt 0$ かつ $D_{2} \lt 0$
と表すことができる。
解答セ:0
ソ~チ
ここからは、背理法での命題Bの証明だ。
つまり、
$pq=2(r+s) \Rightarrow\ D_{1} \lt 0$ かつ $D_{2} \lt 0$
であると仮定すると、矛盾が起こることを示す。
$D_{1} \lt 0$ かつ $D_{2} \lt 0$
ならば、
$D_{1}+D_{2} \lt 0$
である。
解答ソ:1
また、式Bと式Dを辺々たすと、
$D_{1}$ | $=$ | $p^{2}-4r$ | |
$-)$ | $D_{2}$ | $=$ | $q^{2}-4s$ |
$D_{1}+D_{2}$ | $=$ | $p^{2}+q^{2}-4r-4s$ |
$\phantom{ D_{1}+D_{2} } =p^{2}+q^{2}-4(r+s)$
$\phantom{ D_{1}+D_{2} } =p^{2}+q^{2}-2\cdot \textcolor{red}{2(r+s)}$
とかける。
この式の赤い部分に
$pq=2(r+s)$
を代入すると、
$D_{1}+D_{2}=p^{2}+q^{2}-2pq$
と表せる。
解答タ:1
これはさらに
$D_{1}+D_{2}=p^{2}-2pq+q^{2}$
$\phantom{ D_{1}+D_{2} } =(p-q)^{2}$
と変形できるから、
$D_{1}+D_{2}\geqq 0$
であることが分かる。
解答チ:3
よって、
$pq=2(r+s)$
ならば
$D_{1}+D_{2}\geqq 0$
である。
以上より
$pq=2(r+s) \Rightarrow\ D_{1} \lt 0$ かつ $D_{2} \lt 0$
は成り立たない。
よって、
$pq=2(r+s) \Rightarrow\ \overline{D_{1} \lt 0\ \text{かつ} D_{2} \lt 0}$
つまり
$pq=2(r+s)$
$\hspace{50px}\Rightarrow\ D_{1}\geqq 0$ または $D_{2}\geqq 0$命題B
は真である。