大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学ⅡB 第3問 解説

(1)

図A
大学入学共通テスト2023年追試 数学ⅡB第3問 解説図A

図Aの箱A,箱Bから1枚ずつカードを取り出し、書かれている数の
小さい方をX 大きい方をY と定める。

両方のカードに書かれた数が同じときは、
X=Y=書かれた数 とする。


まず、XYの確率分布を求めよう。


Xを考えると、取り出したカードとXの関係は、表Aのとおり。

表A
箱A
1 2 3 4
箱B1 1 1 1 1
2 1 2 2 2
3 1 2 3 3
4 1 2 3 4

表Aの全てのマスは同じ確率で起こり、マスの数は16個。

1のマスは7個あるから、X=1となる確率は
716

解答ア:7

2のマスは5個あるから、X=2となる確率は
516

解答イ:5

3のマスは3個あるから、X=3となる確率は
316

解答ウ:3

4のマスは1個あるから、X=4となる確率は
116

解答エ:1

である。


同様に、取り出したカードとYの関係は、表Bのとおり。

表B
箱A
1 2 3 4
箱B1 1 2 3 4
2 2 2 3 4
3 3 3 3 4
4 4 4 4 4

表Bの全てのマスも同じ確率で起こり、マスの数は16個。

1のマスは1個あるから、Y=1となる確率は
116

2のマスは3個あるから、Y=2となる確率は
316

解答オ:3

3のマスは5個あるから、Y=3となる確率は
516

解答カ:5

4のマスは7個あるから、Y=4となる確率は
716

解答キ:7

である。


以上を、確率が大きい順に並べて書くと、表Cになる。

表C
X 1 2 3 4
Y 4 3 2 1
P 716 516 316 1161

表Cを見ると、確率が同じXYをたすと、
X+Y=5
より
Y=5X
となることが分かる。

よって、確率変数Z
Z=5X
とすると、Yと同じ確率分布になる。

解答ク:5

(2)

表Cから、確率変数Xの平均(期待値)E(X)は、
E(X)=1716+2516+3316+4116
とかける。

これを計算して、
E(X)=7+10+9+416
E(X)=158
である。

解答ケ:1, コ:5


標準偏差は問題文にあるから求める必要はないんだけれど、練習のために説明しておく。

復習

確率変数Xの標準偏差σ(X)は、Xの分散をV(X)として、
σ(X)=V(X)

復習

次の表のような確率変数Xがあり、Xの平均をE(X)X2の平均をE(X2)とする。

X x1 x2 xn
P(X) p1 p2 pn 1

このとき、確率変数Xの分散V(X)は、
V(X)=(x1E(X))2p1+(x2E(X))2p2++(xnE(X))2pn 式A
V(X)=E(X2)E(X)2式B
である。

復習より、標準偏差を求めるために、まず分散を計算する。

解法1

復習の式Aを使うと、
V(X)=(1158)2716+(2158)2516+(3158)2316+(4158)2116

途中式 =(78)2716+(18)2516+(98)2316+(178)2116=18216{(7)27+125+923+172}=8808216
=5582
となる。

解法2

復習の式Bを使うと、

E(X2)
E(X2)=12716+22516
+32316+42116

途中式 E(X2)=7+20+27+1616
E(X2)=7016
E(X2)=358
である。

なので、式Bは
V(X)=358(158)2

途中式 より
V(X)=35815282
V(X)=5(78315)82
V(X)=51182
V(X)=5582
となる。

分散の正の平方根が標準偏差なので、標準偏差σ(X)は、
σ(X)=5582
σ(X)=558
である。


ここで、確率変数の変換について復習しておく。

復習

確率変数X
平均をE(X) 分散をV(X) 標準偏差をσ(X) とする。

Xと定数abを使って、確率変数W
W=aX+b
と定める。

このとき、W
平均E(W)=aE(X)+b 分散V(W)=a2V(X) 標準偏差σ(W)=V(W) =|a|σ(X)
となる。

で考えたように、Yの確率分布はZと等しかった。
なので、Yの平均と標準偏差の代わりに、Zの平均と標準偏差を求める。

Z=X+5 なので、復習より、

平均E(Z)は、

E(Z)=E(X)+5
E(Z)=158+5
E(Z)=258
となる。

よって、E(Y)
E(Y)=258
だ。

解答サ:2, シ:5

標準偏差σ(Z)は、

σ(Z)=|1|σ(X)
σ(Z)=σ(X)
となる。

よって、σ(Y)
σ(Y)=σ(X)
である。

解答ス:3

(3)

(i)

X1+X2を計算すると、表Dのようになる。

表D
X1
1 2 3 4
716 516 316 116
X2 1 716 2 3 45
2 516 3 45 6
3 316 45 6 7
4 1165 6 7 8

X1+X25になるのは、表Dの赤い部分。

なので、その確率P(X=2.50)
P(X=2.50)=116716+316516+516316+716116
式C

途中式 P(X=2.50)=2(116716+316516)=27+151616=2221616=1188
P(X=2.50)=1164
である。

解答セ:1, ソ:1


Y1+Y2で同様の作業をすると、

表E
Y1
1 2 3 4
116 316 516 716
Y2 1 116 2 3 45
2 316 3 45 6
3 516 45 6 7
4 7165 6 7 8

Y1+Y25になるのは表Eの赤い部分なので、その確率P(Y=2.50)
P(Y=2.50)=116716+316516+516316+716116
とかけるけど、この式の右辺は式Cと同じだ。

なので、
P(Y=2.50)=P(X=2.50)
であることが分かる。

解答タ:1

(ii)

(i)は数学Aっぽかったけど、ここから数学Bだ。
まず最初に思い出さなきゃいけないことは、標本平均と標本標準偏差の次の性質について。

復習

母平均μ,母標準偏差σの母集団から大きさnの標本を取り出すとき、標本平均X
平均E(X)=m 標準偏差σ(X)=σn である。

復習より、標本平均Xの標準偏差σ(X)
σ(X)=σ(X)n
である。

解答チ:2


さらに、母平均の推定について復習しておく。

復習

母標準偏差をσ,標本平均をX,標本の大きさをnとすると、母平均μの信頼区間を求める式は
XzσnμX+zσn式D

大学入学共通テスト2023年追試 数学ⅡB第3問  復習図

ただし、信頼度がc%のとき、zは、右図を標準正規分布の確率分布図として、図中のz0の値。
特に、
信頼度95%のとき、z=1.96 信頼度99%のとき、z=2.58


いま
母標準偏差σ=σ(X)=558 標本平均X=2.95 標本の大きさn=100 信頼度95%なので、z=1.96 なので、復習の式Dより、求める母平均mXの信頼区間は
2.951.96558100mX2.95+1.96558100
式E
とかける。

これを計算する。

問題文より
55=7.4
なので、式Eは
2.951.967.4810mX2.95+1.967.4810
2.950.1813mX2.95+0.1813
2.7687mX3.1313
これを四捨五入して、
2.769mX3.131
となる。

解答ツ:4, テ:7

アドバイス

これじゃ原理がゼンゼン分からないけど、原理通り解くと時間がかかるから、共通テスト本番では機械的に公式を使おう。
原理に関してはこのページを参照してほしい。


同様にYの母平均mYの信頼区間を考えると、
母標準偏差σ=σ(Y)
だけど、より
σ(Y)=σ(X)
標本平均Y=2.95 標本の大きさn=100 信頼度95%なので、z=1.96 なので、式Eと全く同じ式になる。

よって、
2.769mY3.131
である。

解答ト:4, ナ:7


最後に、問題文中の基準を考える。

ケコより、
E(X)=158
だけど、
158<2
なので
E(X)<2
だから、E(X)は①の信頼区間に含まれていない

解答ニ:1

サシより、
E(Y)=258
E(Y)=3.125
だから、E(Y)は②の信頼区間に含まれている

解答ヌ:0

ことが分かる。

よって、基準にしたがうと
太郎さんの記憶は正しくない と判断される。

解答ネ:1