大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学ⅠA 第2問 [2] 解説

(1)

花子さんが集めたデータの値は$0$と$1$しかないので、値の総和は$1$の数だ。
さらに
$1$は賛成者 $0$は反対者 を意味するから、値の総和は賛成者の人数と等しい。

解答チ:0

また、平均値$\overline{x}$は
$\overline{x}=\dfrac{\text{賛成者の人数}}{n\text{人}}$
だから、$n$人中の賛成者の割合に等しい。

解答ツ:3

(2)

まず分散の復習をしておこう。

復習

データ$\{x_{1},x_{2}.\cdots,x_{n}\}$の分散$s^{2}$は、
データの平均値を$\overline{x}$ データの各値の2乗の平均値を$\overline{x^{2}}$ として、
$s^{2}=\dfrac{(x_{1}-\overline{x})^{2}+(x_{2}-\overline{x})^{2}+\cdots+(x_{n}-\overline{x})^{2}}{n}$
式A
$\phantom{ s^{2} } =\overline{x^{2}}-\left(\overline{x}\right)^{2}$式B
とかける。

このふたつの式は問題によって使い分けるので、両方憶えておこう。

式Aより、求める$s^{2}$は
$s^{2}=\dfrac{\left(x_{1}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+\left(x_{2}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+\cdots+\left(x_{n}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}}{n}$
$\phantom{ s^{2}} =\dfrac{1}{n}\biggl\{\left(x_{1}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+\left(x_{2}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+$
$\hspace{120px} \cdots+\left(x_{n}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}\biggr\}$式C
とかける。

$x_{1}$~$x_{n}$は$0$または$1$なので、式Cは
$s^{2}=\dfrac{1}{n}\left\{1\text{の数}\times\left(1-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+0\text{の数}\times\left(0-\dfrac{m}{n}\right)^{2}\right\}$
式C'
となる。

ここで、
$1$の数は賛成者の人数で、$m$ 調査した人数は$n$ なので、$0$の数、つまり反対者の人数は
$n-m$
と表せる。

よって、式C'はさらに
$s^{2}=\dfrac{1}{n}\left\{m\left(1-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+(n-m)\left(0-\dfrac{m}{n}\right)^{2}\right\}$
式D
とかける。

解答テ:1, ト:2


次は、つまり$s^{2}$の値だ。
この問題の場合は、式Dを計算するよりも復習の式Bを使って$s^{2}$を求めた方が早い(説明は長いけど、理解すれば計算は10秒だ)。

式Bより
$s^{2}=\overline{x^{2}}-\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}$式E
である。

ところで、データに含まれる値は$0$と$1$しかない。
このとき
$x_{n}=0$のとき、$x_{n}^{2}=0$ $x_{n}=1$のとき、$x_{n}^{2}=1$ だから、
$x_{n}=x_{n}^{2}$
だ。

つまり、花子さんの作ったデータについては、
データの各値は2乗しても変わらない ことになる。

なので、
$$ \begin{align} \overline{x^{2}}&=\overline{x}\\ &=\dfrac{m}{n} \end{align} $$ だから、式Eは
$s^{2}=\dfrac{m}{n}-\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}$
と表せる。

これを変形して、$s^{2}$は
$$ \begin{align} s^{2}&=\dfrac{m}{n}\left(1-\dfrac{m}{n}\right)\\ &=\dfrac{m}{n}\left(\dfrac{n}{n}-\dfrac{m}{n}\right)\\ &=\dfrac{m(n-m)}{n^{2}} \end{align} $$ であることが分かる。

解答ナ:2

別解

式Dを計算してを求めると、次のようになる。

$s^{2}=\dfrac{1}{n}\left\{m\left(1-\dfrac{m}{n}\right)^{2}-m\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}+n\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}\right\}$

途中式 $$ \begin{align} $\phantom{s^{2}}&=\dfrac{1}{n}\left\{m\left(1-2\cdot \dfrac{m}{n} \cancel{+\dfrac{m^{2}}{n^{2}}} \cancel{- \dfrac{m^{2}}{n^{2}}}\right)+\dfrac{m^{2}}{n}\right\}\\ &=\dfrac{1}{n}\left\{m \left(1-\dfrac{2m}{n} +\dfrac{m}{n}\right)\right\}\\ &=\dfrac{m}{n}\left(1-\dfrac{m}{n}\right)\\ &=\dfrac{m}{n}\cdot \dfrac{n-m}{n} \end{align} $$
$\phantom{s^{2}} =\dfrac{m(n-m)}{n^{2}}$
である。

解答ナ:2