大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学Ⅰ 第4問 [1] 解説
(1)
花子さんが集めたデータの値は$0$と$1$しかないので、値の総和は$1$の数だ。
さらに
$1$は賛成者
$0$は反対者
を意味するから、値の総和は賛成者の人数と等しい。
解答ア:0
また、平均値$\overline{x}$は
$\overline{x}=\dfrac{\text{賛成者の人数}}{n\text{人}}$
だから、$n$人中の賛成者の割合に等しい。
解答イ:3
(2)
(i)
まず分散の復習をしておこう。
復習
データ$\{x_{1},x_{2}.\cdots,x_{n}\}$の分散$s^{2}$は、
データの平均値を$\overline{x}$
データの各値の2乗の平均値を$\overline{x^{2}}$
として、
$s^{2}=\dfrac{(x_{1}-\overline{x})^{2}+(x_{2}-\overline{x})^{2}+\cdots+(x_{n}-\overline{x})^{2}}{n}$
式A
$\phantom{ s^{2} } =\overline{x^{2}}-\left(\overline{x}\right)^{2}$式B
とかける。
このふたつの式は問題によって使い分けるので、両方憶えておこう。
式Aより、求める$s^{2}$は
$s^{2}=\dfrac{\left(x_{1}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+\left(x_{2}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+\cdots+\left(x_{n}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}}{n}$
$\phantom{ s^{2}} =\dfrac{1}{n}\biggl\{\left(x_{1}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+\left(x_{2}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+$
$\hspace{120px} \cdots+\left(x_{n}-\dfrac{m}{n}\right)^{2}\biggr\}$式C
とかける。
$x_{1}$~$x_{n}$は$0$または$1$なので、式Cは
$s^{2}=\dfrac{1}{n}\left\{1\text{の数}\times\left(1-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+0\text{の数}\times\left(0-\dfrac{m}{n}\right)^{2}\right\}$
式C'
となる。
ここで、
$1$の数は賛成者の人数で、$m$
調査した人数は$n$
なので、$0$の数、つまり反対者の人数は
$n-m$
と表せる。
よって、式C'はさらに
$s^{2}=\dfrac{1}{n}\left\{m\left(1-\dfrac{m}{n}\right)^{2}+(n-m)\left(0-\dfrac{m}{n}\right)^{2}\right\}$
式D
とかける。
解答ウ:1, エ:2
次はオ、つまり$s^{2}$の値だ。
この問題の場合は、式Dを計算するよりも復習の式Bを使って$s^[2]$を求めた方が早い(説明は長いけど、理解すれば計算は10秒だ)。
式Bより
$s^{2}=\overline{x^{2}}-\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}$式E
である。
ところで、データに含まれる値は$0$と$1$しかない。
このとき
$x_{n}=0$のとき、$x_{n}^{2}=0$
$x_{n}=1$のとき、$x_{n}^{2}=1$
だから、
$x_{n}=x_{n}^{2}$
だ。
つまり、花子さんの作ったデータについては、
データの各値は2乗しても変わらない
ことになる。
なので、
$$
\begin{align}
\overline{x^{2}}&=\overline{x}\\
&=\dfrac{m}{n}
\end{align}
$$
だから、式Eは
$s^{2}=\dfrac{m}{n}-\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}$
と表せる。
これを変形して、$s^{2}$は
$$
\begin{align}
s^{2}&=\dfrac{m}{n}\left(1-\dfrac{m}{n}\right)\\
&=\dfrac{m}{n}\left(\dfrac{n}{n}-\dfrac{m}{n}\right)\\
&=\dfrac{m(n-m)}{n^{2}}
\end{align}
$$
であることが分かる。
解答オ:2
別解
式Dを計算してオを求めると、次のようになる。
$s^{2}=\dfrac{1}{n}\left\{m\left(1-\dfrac{m}{n}\right)^{2}-m\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}+n\left(\dfrac{m}{n}\right)^{2}\right\}$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{s^{2}}&=\dfrac{1}{n}\left\{m\left(1-2\cdot \dfrac{m}{n} \cancel{+\dfrac{m^{2}}{n^{2}}} \cancel{- \dfrac{m^{2}}{n^{2}}}+\dfrac{m}{n}\right)\right\}\\
&=\dfrac{m}{n}\left(1-\dfrac{m}{n}\right)\\
&=\dfrac{m}{n}\cdot \dfrac{n-m}{n}
\end{align}
$$
である。
解答オ:2
(ii)
最後に、オで求めた
$s^{2}=\dfrac{m(n-m)}{n^{2}}$
が最小になるときと最大になるときの$m$を考える。
$n=25$とすると、$s^{2}$は
$s^{2}=\dfrac{m(25-m)}{25^{2}}$
$\phantom{ s^{2}} =-\dfrac{1}{25}m(m-25)$
とかける。
この式は、
$m^{2}$の係数が負
$m=0,\ 25$ のとき $s^{2}=0$
なので、グラフは図Aのような放物線になる。
$m$は人数なので整数である。
また、調べた人数$n$が$25$なので、$m$の範囲(定義域)は
$0\leqq m\leqq 25$
だから、図Aの緑の範囲だ(両端を含む)。
図Aより、
$s^{2}$が最小になるのは、紫の丸の2か所で、
$m=0$,$25$
解答カ:5
$s^{2}$が最大になるのは頂点の
$m=\dfrac{25}{2}$
$\phantom{ m } =12.5$
だけど、$m$は整数なので、図中の赤丸の
$m=12$,$13$
解答キ:6
であることが分かる。