大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学ⅠA 第1問 [2] 解説
(1)
まず、$\cos \angle \mathrm{ABC}$から。
$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}+\cos^{2}\angle \mathrm{ABC}=1$
なので、
$\left(\dfrac{\sqrt{15}}{4}\right)^{2}+\cos^{2}\angle \mathrm{ABC}=1$
とかける。
これを変形すると
$$
\begin{align}
\cos^{2}\angle \mathrm{ABC}&=1-\left(\dfrac{\sqrt{15}}{4}\right)^{2}\\
&=\dfrac{4^{2}-\sqrt{15}^{2}}{4^{2}}\\
&=\dfrac{1}{4^{2}}
\end{align}
$$
となる。
よって、
$\cos\angle \mathrm{ABC}=\pm\dfrac{1}{4}$
である。
解答サ:1, シ:4
(2)
$\mathrm{BC}=1$,$\sin\angle \mathrm{ABC}=\dfrac{\sqrt{15}}{4}$,$\sin\angle \mathrm{ACB}=\dfrac{\sqrt{15}}{8}$であるような△$\mathrm{ABC}$は、図Aの2種類存在する。
詳しく
三角形の内角$\theta$について、$\sin \theta = 1$の場合を除き、$\sin$の値それぞれに対応する角が2つある。
例えば$\sin \theta = \dfrac{1}{2}$のとき、$\theta$は$30^{\circ}$か$150^{\circ}$の2つのうちのどちらかだ。
ついでに確認しておくと、この2つの角をたすと$180^{\circ}$になる。
この問題では、$\sin \angle \mathrm{ABC} $と$\sin \angle \mathrm{ACB}$の値が分かっている。
なので、$\angle \mathrm{ABC}$,$\angle \mathrm{ACB}$ともに角度の候補が2つ考えられる。
ここで、
$\sin \angle \mathrm{ABC} \gt \sin \angle \mathrm{ACB}$なので、
$\angle \mathrm{ABC}$は$\angle \mathrm{ACB}$よりも$90^{\circ}$に近い角
$\angle \mathrm{ACB}$は$\angle \mathrm{ABC}$よりも$0^{\circ}$または$180^{\circ}$に近い角
であることが分かる。
以上を図にすると、図Bのようになる。
図Bを説明すると、
$\angle \mathrm{ABC}$は紫の角または緑の角で、
紫の角のとき、辺$\mathrm{AB}$は紫の線
緑の角のとき、辺$\mathrm{AB}$は緑の線
$\angle \mathrm{ACB}$は青い角またはオレンジの角で、
青い角のとき、辺$\mathrm{AC}$は青い線
オレンジの角のとき、辺$\mathrm{AC}$はオレンジの線
になる。
図Bの紫または緑の線と、青またはオレンジの線の交点が 頂点$\mathrm{A}$なんだけど、オレンジの線は紫の線とも緑の線とも交わらない。
交わらないと頂点$\mathrm{A}$ができないから、オレンジの線は辺$\mathrm{AC}$にはなれない。
なので、辺$\mathrm{AC}$は図Bの青い線だ。
一方、紫の線も緑の線も青い線と交わるから、辺$\mathrm{AB}$は紫と青のどっちでもOK。
以上より、△$\mathrm{ABC}$は、三辺が、図Bの
紫と青と黒
緑と青と黒
の2通り考えられる。
これを図にすると、図Aだ。
(i)
$\mathrm{AB}$と$\mathrm{AC}$の関係を求める。
△$\mathrm{ABC}$において、正弦定理より
$\dfrac{\mathrm{AC}}{\sin\angle \mathrm{ABC}}=\dfrac{\mathrm{AB}}{\sin\angle \mathrm{ACB}}$
と表せる。
これを計算して、
$\dfrac{\mathrm{AC}}{\cfrac{\sqrt{15}}{4}}=\dfrac{\mathrm{AB}}{\cfrac{\sqrt{15}}{8}}$
より
$\dfrac{\sqrt{15}}{8}\mathrm{AC}=\dfrac{\sqrt{15}}{4}\mathrm{AB}$
$\mathrm{AC}=2\mathrm{AB}$
である。
解答ス:2
(ii)
次は$\mathrm{AB}$の値だ。
△$\mathrm{ABC}$において、余弦定理より
$\mathrm{AC}^{2}=\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{BC}^{2}-2\mathrm{AB}\cdot \mathrm{BC}\cos\angle \mathrm{ABC}$式A
とかける。
ここで、
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{BC}=1\\
\mathrm{AC}=2\mathrm{AB}
\end{array}\right.$
なので、式Aは
$(2\mathrm{AB})^{2}=\mathrm{AB}^{2}+1^{2}-2\mathrm{AB}\cdot 1\cdot\cos\angle \mathrm{ABC}$
式B
と表せる。
図Aのふたつの三角形で、面積が大きいのは左側。
この三角形の場合、
$90^{\circ} \lt \angle \mathrm{ABC}$
だから、
$\cos\angle \mathrm{ABC} \lt 0$
だ。
なので、(1)で求めた
$\cos\angle \mathrm{ABC}=\pm\dfrac{1}{4}$
のうち、この三角形に当てはまるのは
$\cos\angle \mathrm{ABC}=-\dfrac{1}{4}$
である。
これを式Bに代入して、
$(2\mathrm{AB})^{2}=\mathrm{AB}^{2}+1^{2}-2\mathrm{AB}\cdot 1\cdot\left(-\dfrac{1}{4}\right)$
これを解いて
$4\mathrm{AB}^{2}=\mathrm{AB}^{2}+1+\dfrac{1}{2}\mathrm{AB}$
途中式
$6\mathrm{AB}^{2}-\mathrm{AB}-2=0$
$(3\mathrm{AB}-2)(2\mathrm{AB}+1)=0$
だけど、$\mathrm{AB}$は辺の長さなので負の値は不適。
$\mathrm{AB}=\dfrac{2}{3}$
である。
解答セ:2, ソ:3
(3)
(2)(i)と同様に考えて、正弦定理
$\dfrac{\mathrm{AC}}{\sin\angle \mathrm{ABC}}=\dfrac{\mathrm{AB}}{\sin\angle \mathrm{ACB}}$
に
$\sin\angle \mathrm{ABC}=2\sin\angle \mathrm{ACB}$
を代入すると、
$\dfrac{\mathrm{AC}}{2\sin\angle \mathrm{ACB}}=\dfrac{\mathrm{AB}}{\sin\angle \mathrm{ACB}}$
より
$\mathrm{AC}=2\mathrm{AB}$
となる。
なので、このときの三角形は
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{BC}=1\\
\mathrm{AC}=2\mathrm{AB}
\end{array}\right.$
だから、(2)(ii)の
$(2\mathrm{AB})^{2}=\mathrm{AB}^{2}+1^{2}-2\mathrm{AB}\cdot 1\cdot\cos\angle \mathrm{ABC}$式B
はそのまま使える。
式Bを変形すると
$2\mathrm{AB}\cos\angle \mathrm{ABC}=1-3\mathrm{AB}^{2}$
$\cos\angle \mathrm{ABC}=\dfrac{1-3\mathrm{AB}^{2}}{2\mathrm{AB}}$式C
となる。
解答タ:1, チ:3
アドバイス
ここで、突然 面積$S$の2乗とか、$\mathrm{AB}^{2}$を$x$とおくとか、あまり見ない話になってるけど 大丈夫。
式Cを使うことは想像がつく上に、$\mathrm{AB}^{2}=x$とおくように指示があるので、式Cの右辺の分母もきっと2乗にするのだ。
ということは、式Cの両辺を2乗して
$\cos^{2}\angle \mathrm{ABC}=\left(\dfrac{1-3\mathrm{AB}^{2}}{2\mathrm{AB}}\right)^{2}$
とするのだ。
こうなると、次に考えられることは
$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}+\cos^{2}\angle \mathrm{ABC}=1$
を使って$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}$を作るんだろうということ。
この方針でやってみよう。
アドバイスの方針で$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}$を求めると、
$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}=1-\left(\dfrac{1-3\mathrm{AB}^{2}}{2\mathrm{AB}}\right)^{2}$
$\phantom{\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}}=\dfrac{4\mathrm{AB}^{2}-(1-3\mathrm{AB}^{2})^{2}}{4\mathrm{AB}^{2}}$式D
となる。
この式を使いたい。
ということは、きっと、三角形の面積の公式のうち$\sin\angle \mathrm{ABC}$が含まれる
$S=\dfrac{1}{2}\cdot \mathrm{AB}\cdot \mathrm{BC}\sin\angle \mathrm{ABC}$
を使うんだろう。
$\mathrm{BC}=1$なので、
$S=\dfrac{1}{2}\cdot \mathrm{AB}\sin\angle \mathrm{ABC}$
この式の両辺を2乗すると
$$
\begin{align}
S^{2}&=\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2} \mathrm{AB}^{2}\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}\\
&=\dfrac{1}{4} \mathrm{AB}^{2}\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}
\end{align}
$$
となって、式Dが代入できるようになった。
これに式Dを代入して、
$S^{2}=\dfrac{1}{4} \mathrm{AB}^{2}\cdot\dfrac{4\mathrm{AB}^{2}-(1-3\mathrm{AB}^{2})^{2}}{4\mathrm{AB}^{2}}$
$\mathrm{AB}^{2}=x$とおくと、この式は
$S^{2}=\dfrac{1}{4} x\cdot\dfrac{4x-(1-3x)^{2}}{4x}$
途中式
$$
\begin{align}
\phantom{ S^{2} }&=\dfrac{1}{16}\{4x-(1-3x)^{2}\}\\
&=\dfrac{1}{16}(4x-1+6x-9x^{2})\\
&=\dfrac{1}{16}(-9x^{2}+10x-1)\\
&=-\dfrac{9}{16}x^{2}+\dfrac{10}{16}x-\dfrac{1}{16}
\end{align}
$$
とかける。
解答ツ:9, テ:1, ト:6, ナ:5, ニ:8
式Eのグラフは、上に凸の放物線だ。
なので、頂点が定義域に含まれれば、$S^{2}$が最大になるのは頂点のとき。
というわけで、頂点の$x$座標を求める。
式Eを平方完成するのは面倒なので、
復習
$y=ax^{2}+bx+c$のグラフの頂点の$x$座標は
$x=\dfrac{-b}{2a}$
を使う。
復習より、式Eのグラフの頂点の$x$座標は
$$
\begin{align}
x&=\dfrac{-\cfrac{5}{8}}{2\left(-\cfrac{9}{16}\right)}\\
&=\dfrac{5}{9}
\end{align}
$$
となる。
ここで、
$x=\mathrm{AB}^{2}$
だけど、
$\mathrm{BC} \lt \mathrm{AB} + \mathrm{AC}$
なので
$1 \lt \mathrm{AB} + 2\mathrm{AB}$
$\dfrac{1}{3} \lt \mathrm{AB}$
$\mathrm{AC} \lt \mathrm{AB} + \mathrm{BC}$
なので
$2\mathrm{AB} \lt \mathrm{AB} + 1$
$\mathrm{AB} \lt 1$
だから
$\dfrac{1}{3} \lt \mathrm{AB} \lt 1$
より
$\dfrac{1}{9} \lt x \lt 1$
となるので、$\dfrac{5}{9}$は定義域に含まれる。
よって、$S^{2}$が最大になるのは
$x=\dfrac{5}{9}$
のとき。
解答ヌ:5, ネ:9
このとき、
$\mathrm{AB}^{2}=\dfrac{5}{9}$
より
$\mathrm{AB}=\pm\dfrac{\sqrt{5}}{3}$
だけど、$\mathrm{AB}$は辺の長さなので
$\mathrm{AB}=\dfrac{\sqrt{5}}{3}$
である。
解答ノ:5, ハ:3
以上より、△$\mathrm{ABC}$の各辺が
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{AB}=\dfrac{\sqrt{5}}{3}\\
\mathrm{BC}=1\\
\mathrm{AC}=\dfrac{2\sqrt{5}}{3}
\end{array}\right.$
のとき、面積$S$は最大になる。
このとき、
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{BC}^{2}=\dfrac{5}{9}+1=\dfrac{14}{9}\\
\mathrm{AC}^{2}=\dfrac{20}{9}
\end{array}\right.$
なので
$\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{BC}^{2} \lt \mathrm{AC}^{2}$
だから、$\angle \mathrm{ABC}$は鈍角
解答ヒ:2
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{AC}^{2}+\mathrm{BC}^{2}=\dfrac{20}{9}+1=\dfrac{29}{9}\\
\mathrm{AB}^{2}=\dfrac{5}{9}
\end{array}\right.$
なので
$\mathrm{AC}^{2}+\mathrm{BC}^{2} \gt \mathrm{AB}^{2}$
だから、$\angle \mathrm{ACB}$は鋭角
解答フ:0
であることが分かる。