大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学ⅠA 第4問 解説
(1)
まず $7x+13y+17z=8$① $35x+39y+34z=37$② を考える。
①$\times 5-$② により$x$を消去すると、
$35x$ | $+65y$ | $+85z$ | $=$ | $40$ | ||
$-)$ | $35x$ | $+39y$ | $+34z$ | $=$ | $37$ | |
$26y$ | $+51z$ | $=$ | $3$ | ③ |
となる。
解答ア:2, イ:6, ウ:5, エ:1
この一次不定方程式③を解く。
一次不定方程式はお約束の解き方があるので憶えておこう。
まず、解をひと組見つける。
③の$y$と$z$の係数の$26$と$51$でユークリッドの互除法を行うと、
$51\div 26=1\ldots 25$式A1
$26\div 25=1\ldots 1$式A2
これを「=余り」の形に変形して、
$51-26\cdot 1=25$式A1'
$26-25\cdot 1=1$式A2'
式A2'に式A1'を代入すると
$51\cdot(-1)+26\cdot 2=1$
ができる。
これを③の方程式に合わせよう。
項の順序を入れ替えて
$26\cdot 2+51\cdot(-1)=1$
両辺に$3$をかけると
$26\cdot 6+51\cdot(-3)=3$式B
となって、③の形になった。
よって、③の方程式の解のひとつは
$\left\{\begin{array}{l}
y=6\\
z=-3
\end{array}\right.$式C
であることが分かる。
解がひと組見つかった。
アドバイス
ここでは、地道な作業をすれば誰でも解をひとつ求められる方法をとった。
直感でぱっと解を見つけられるひとは、ここまでの作業は必要ないです。
その場合、見つけた解を③式に代入したものを式Bとして使ってください。
③から式Bを辺々引くと
$26y$ | $+51z$ | $=$ | $3$ | |
$-)$ | $26\cdot 6$ | $+51\cdot(-3)$ | $=$ | $3$ |
$26(y-6)$ | $+51(z+3)$ | $=$ | $0$ |
となるから、
$26(y-6)=-51(z+3)$式D
とかける。
ここで、$26$と$51$は互いに素なので、式Dが成り立つためには、$k$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}
y-6=-51k\\
z+3=26k
\end{array}\right.$
でなければならない。
以上より、一次不定方程式③の解は
$\left\{\begin{array}{l}
y=6-51k\\
z=-3+26k
\end{array}\right.$式E
となる。
解答ク:5, ケ:1, コ:2, サ:6
クケコサが先に解けてしまった。
式Eより、$y$は$51$ごとの整数であることが分かる。
つまり、ある解に$51$をたすとひとつ大きい解、$51$を引くとひとつ小さい解だ。
なので、式Cの$y=6$よりひとつ小さい解は負、ひとつ大きい解は$6$より大きい。
よって、$y$が正で最小の解は式Cである。
解答オ:6, カ:-, キ:3
さらに、式Eを①に代入すると
$7x+13(6-51k)+17(-3+26k)=8$
とかける。
これを$x$について解くと、
$$
\begin{align}
7x&=-13(6-51k)-17(-3+26k)+8\\
&=-78+663k+51-442k+8\\
&=221k-19
\end{align}
$$
$x=\dfrac{221k-19}{7}$式F
と表せる。
式Fの右辺をシの式の形にする。
方法は色々あるけど、ここではシの式を変形して式Fを作ろう。
シの式を変形すると
$$
\begin{align}
x &=\dfrac{31\cdot 7k-3\cdot 7+\fbox{シ}k+2}{7}\\
&=\dfrac{(217+\fbox{シ})k-19}{7}
\end{align}
$$
とかける。
式Fとこの式が等しいので、
$217+$シ$=221$
シ$=4$
である。
解答シ:4
したがって、式Fは
$x=31k-3+\textcolor{red}{\dfrac{4k+2}{7}}$
と変形できる。
この$x$が整数になるのは、赤い部分が整数になる場合。
つまり、
$4k+2=2(\textcolor{forestgreen}{2k+1})$
が$7$の倍数である場合。
$2$と$7$は互いに素なので、これが$7$の倍数であるためには、緑の部分が$7$の倍数でなければならない。
式にすると、$\ell$を整数として
$2k+1=7\ell$式G
でなければならない。
式Gの左辺は奇数なので、右辺も奇数だ。
つまり
$7\times \ell=$奇数
なので
$\ell=$奇数
だから、$\ell '$を整数として
$\ell=2\ell '+1$
とかける。
これを式Gに代入して変形すると
$2k+1=7(2\ell '+1)$
より
$2k=7\cdot 2\ell '+6$
$k=7\ell ' +3$
となるから、
$k$は$7$で割ると$3$余る数
である。
以上より、
$k$を$7$で割ると$3$余るとき、$x$は整数になる
ことが分かる。
解答ス:3
したがって、
$k$を$7$で割ると$3$余るとき、①,②をともに満たす整数$x$,$y$,$z$が存在する
といえる。
(2)
次は
$2x+5y+7z=a$④
$3x+25y+21z=-1$⑤
を考える。
⑤-④ より
$3x$ | $+25y$ | $+21z$ | $=$ | $-1$ | |
$-)$ | $2x$ | $+5y$ | $+7z$ | $=$ | $a$ |
$x$ | $+20y$ | $+14z$ | $=$ | $-1-a$ |
なので
$x=-20y-14z-1-a$⑥
とかける。
また、⑤$\times 2-$④$\times 3$ を計算すると
$6x$ | $+50y$ | $+42z$ | $=$ | $-2$ | ||
$-)$ | $6x$ | $+15y$ | $+21z$ | $=$ | $3a$ | |
$35y$ | $+21z$ | $=$ | $-(2+3a)$ | ⑦ |
となる。
この一次不定方程式⑦が整数解をもつ場合を考える。
ここで、一次不定方程式の整数解が存在する条件を復習しておくと、
復習
$\alpha$,$\beta$を$0$じゃない整数としたとき、
$\Leftrightarrow$
だった。
⑦式の$y$と$z$の係数は
$\left\{\begin{array}{l}
35=7\times 5\\
21=7\times 3
\end{array}\right.$
だから、⑦式の両辺を$7$で割ることができれば、$y$と$z$の係数が$5$と$3$になり、互いに素になる。
よって、⑦式が整数解を持つ必要十分条件は 右辺が$7$で割り切れることだといえるから、
$2+3a$が$7$の倍数である
となる。
式にすると、$m$を整数として
$2+3a=7m$式H
だ。
式Hの左辺は$3$で割ると$2$余る数なので、右辺も$3$で割ると$2$余るはず。
また、$7$は$3$で割ると$1$余る数だから、右辺の$7m$は
$3$で割ると$1$余る数$\times m=$$3$で割ると$2$余る数
となるので、$m$は$3$で割ると$2$余る数でなければならない。
詳しく
$3$で割りきれる数を $3$で割ると$1$余る数を $3$で割ると$2$余る数を と表すと、このうちの2数の積について、次の表のような関係が成り立つ。
これは別に憶えるほどのことでもなくて、例えば
$\times$
を考えてみると、$i$,$j$を整数として
$=3i+1$
$=3j+2$
とかけるから、積は
$$
\begin{align}
(3i+\textcolor{red}{1})(3j+\textcolor{red}{2})&=3i\cdot 3j+3i\cdot 2+3j\cdot 1+\textcolor{red}{2}\cdot \textcolor{red}{1}\\
&=3(3ij+2i+j)+\textcolor{red}{2}
\end{align}
$$
となり、$3$で割った余りは$2$だと簡単に分かる。
つまり、2数の積を$3$で割った余りは、もとの数の余りの積だ。
もとの数の余りの積が$3$以上になる場合は、これを$3$で割った余りが求める余りになる。
問題の$7m$の場合、$m$を$3$で割った余りを$R$とすると、
$7$を$3$で割った余りは$1$だから、
$7m$を$3$で割った余りは
$1\cdot R=R$
となる。
この$R$が$2$なので、
$m$を$3$で割った余りは$2$である
ことが分かる。
よって、$m'$を整数として、
$m=3m'+2$
とかける。
これを式Hに代入して変形すると、
$2+3a=7(3m'+2)$
より
$$
\begin{align}
3a&=7\cdot 3m' +14-2\\
&=7\cdot 3m' +12
\end{align}
$$
$a=7m' +4$
となるから、
$a$は$7$で割ると$4$余る数
である。
以上より、
⑦式を満たす整数$y$,$z$が存在するための必要十分条件は、$a$を$7$で割ったときの余りが$4$
だといえる。
解答セ:7, ソ:4
(3)
今度は
$x+2y+bz=1$⑧
$5x+6y+3z=5+b$⑨
だ。
⑨-⑧$\times 5$ を計算すると
$5x$ | $+6y$ | $+3z$ | $=$ | $5+b$ | ||
$-)$ | $5x$ | $+10y$ | $+5bz$ | $=$ | $5$ | |
$-4y$ | $+(3-5b)z$ | $=$ | $b$ | ⑩ |
と表せる。
これが整数解$y$,$z$をもつ場合を考える。
復習より、⑩式が整数解を持つ必要十分条件は、$y$と$z$の係数が互いに素であること。
これには
⑩式の両辺を割り切れる整数が存在するときパターンA
→両辺を整数で割ったあとの$y$と$z$の係数が互いに素
⑩式の両辺を割り切れる整数が存在しないときパターンB
→⑩式の$y$と$z$の係数が互いに素
の2パターン考えられる。
パターンAからはじめよう。
⑩式の$y$の係数は
$-4=-2^{2}$
なので、素因数は
$2$
しかない。
なので、パターンAであるためには、⑩式の右辺も$2$で割り切れないといけない。
したがって、$b$は偶数である。
このとき、$z$の係数の$3-5b$は
$3-5b=3-5\times$偶数
$\phantom{3-5b}=3-$偶数
$\phantom{3-5b}=$奇数
となる。
なので、⑩式の$z$の係数は$2$で割り切れない。
つまり、⑩式の両辺を割り切れる整数は存在しないから、パターンAは成り立たない。
よって、求める必要十分条件は、パターンBの
⑩式の$y$と$z$の係数が互いに素
しかない。
というわけで、パターンBを考える。
さっき考えたように、$y$の素因数は
$2$
だけ。
だから、$z$の係数の$3-5b$が$2$の倍数でなければ、$y$と$z$の係数は互いに素になる。
したがって、求める必要十分条件は
$3-5b$が奇数である
といえる。
このとき、
$3-5b=$奇数
より
$5b=3-$奇数
だから
$5b=$偶数
なので
$b$は偶数
である。
以上より、⑩式が整数解を持つ必要十分条件は
$b$が偶数である
と言いかえられる。
この$b$を$4$で割ったときの余りを問われているので、答えは$0,2$だ。
解答タ:0, チ:2
(4)
最後は
$x+3y+5z=1$⑪
$cx+3(c+5)y+10z=3$⑫
について。
問題文に「これまでと同様」とあるので、同じような作業をしよう。
問題文の指示に従って$x$を消す。
⑫-⑪$\times c$ を計算すると
$cx$ | $+3(c+5)y$ | $+10z$ | $=$ | $3$ | |
$-)$ | $cx$ | $+3cy$ | $+5cz$ | $=$ | $c$ |
$3\cdot 5y$ | $+(10-5c)z$ | $=$ | $3-c$ |
より
$3\cdot 5y+5(2-c)z=3-c$式I
ができる。
この式Iが整数解をもつ場合を考える。
復習より、式Iが整数解を持つ必要十分条件は、$y$と$z$の係数が互いに素であること。
(3)と同様に、これには
式Iの両辺を割り切れる整数が存在するときパターンC
→両辺を整数で割ったあとの$y$と$z$の係数が互いに素
式Iの両辺を割り切れる整数が存在しないときパターンD
→式Iの$y$と$z$の係数が互いに素
の2パターン思いつくけど、式Iを見ると $y$と$z$の係数は両方とも$5$の倍数だから、パターンDは不適。
パターンCだけ考えよう。
式Iの$y$の係数を割り切れる整数は
$3$と$5$
の2つある。
なので、パターンCであるためには、式Iの$z$の係数と右辺が$3$または$5$で割り切れないといけない。
$3$で割り切れる場合
この場合、
$z$の係数が$3$で割り切れるので、
$2-c$は$3$の倍数
右辺が$3$で割り切れるので、
$3-c$は$3$の倍数
でなければならない。
ここで、$2-c$と$3-c$は連続する整数なので、両方が$3$の倍数になることはない。
なので、式Iの両辺が$3$で割り切れることはない。
$5$で割り切れる場合
$z$の係数は$5$で割り切れるのは明らかなので、右辺の$3-c$だけ考える。
$3-c$が$5$で割り切れるとき、$n$を整数として
$3-c=5n$
より
$c=-5n+3$
とかけるから、$c$は$5$で割ると$3$余る数だ。
なので、$c$が$5$で割ると$3$余る数のとき、式Iの両辺は$5$で割り切れる。
以上より、パターンCが成り立つのは
$c$が$5$で割ると$3$余る数
であるとき。
このとき、式Iは、両辺を$5$で割って
$3y+(2-c)z=n$式I'
と変形できる。
さらに、パターンCであるためには、式I'の$y$と$z$の係数が互いに素にならないといけない。
つまり、$2-c$が$3$の倍数であってはいけない。
これは、$p$を整数として
$2-c\neq 3p$
より
$c\neq-3p+2$
と表せる。
つまり、
$c$を$3$で割った余りは$2$じゃない
ことになる。
以上より、
式Iを満たす整数$y$,$z$が存在するための必要十分条件は
$c$を$\left\{\begin{array}{l}
5\text{で割ると}3\text{余る}\\
3\text{で割った余りは}2\text{じゃない}
\end{array}\right.$条件A
といえる。
条件Aの$3$で割った余りと$5$で割った余りを使ってツテで割った余りを求めるので、ツテは
$3\times 5=15$
だと考えられる。
解答ツ:1, テ:5
というわけで、条件Aを使って$c$を$15$で割った余りを求めよう。
$c$を$5$で割った余りが$3$なので、
$c$を$15$で割った余りは
$3$
$3+5=8$
$8+5=13$
$c$を$3$で割った余りは$2$じゃないので、
$c$を$15$で割った余りは
$2$
$2+3=5$
$5+3=8$
$8+3=11$
$11+3=14$
じゃない
このふたつを合わせて、条件Aは
$c$を$15$で割った余りが$3$,$13$である
と言いかえられるから、
式Iを満たす整数$y$,$z$が存在するための必要十分条件は、$c$を$15$で割った余りが$3$,$13$
であることが分かる。
アドバイス
本当は、このときに整数$x$が存在することも示さないといけない。
けれど、問題文では(2)(3)ともに整数$x$が存在することを示す作業を省略しているので、(4)でも同様に省略する。
解答ト:3, ナ:1, ニ:3