大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 追試 数学ⅠA 第3問 解説
(1) (i)
最初は、3回の移動で$(3,3)$に至る移動の仕方の数から。
問題文中の図2を見ると、$(3,3)$に至るためには
点$\mathrm{P}$は、$(3,3)$の前には$(2,2)$にある
(以下「直前の点が$(2,2)$」のように表す)
パターンしかない。
図2の$(2,2)$のところに書いてある四角囲みの中の数字(長いので数字と呼ぶことにする)は$1$だから、
原点→$(2,2)$の移動の仕方は$1$通り。
$(2,2)$→$(3,3)$の移動の仕方は$1$通り。
よって、求める$(3,3)$への移動の仕方は
$1\times 1=1$通り
である。
解答ア:1
以上より、ある点に至る移動の仕方の数は、直前の点の数字(直前の点が複数あるときは数字の和)に等しいと考えられる。
以下、この方法で解いてみよう。
$(3,1)$の直前の点は$(2,2)$または$(2,0)$だけど、図2を見ると
$(2,2)$の数字は$1$
$(2,0)$の数字は$2$
だ。
なので、求める$(3,3)$への移動の仕方は
$1+2=3$通り
である。
解答イ:3
同様に、$(3,-1)$の直前の点は$(2,0)$だけど、
$(2,0)$の数字は$2$
だから、求める$(3,-1)$への移動の仕方は
$2$通り
である。
解答ウ:2
以上より、条件(*)を満たす硬貨の面の出方の総数は
$1+3+2$
となる。
硬貨は$3$回投げるから、面の出方は
$2^{3}$
通りある。
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
よって、条件(*)を満たす確率は
$\dfrac{1+3+2}{2^{3}}$
であることが分かる。
(1) (ii)
今度は硬貨を4回投げる。
いろいろ考えるより、手を動かした方が早い。
参考図に、問題文中の図2のようなものを描き込んでしまおう。
くり返しになるけど、図Aを描くポイントは
数字$=$直前の点の数字の和
だ。
以上の作業をすると、図Aができる。
アドバイス
図Aを見ると、$y_{3}\geqq 0$であれば必ず$y_{4}\geqq 0$になることが分かる。
また、$y_{3}\geqq 0$であるのは$(3,3)$,$(3,1)$の2つだけど、どちらに点$\mathrm{P}$があっても その後の動き方は$2$通り。
なので、(ii)は $y_{3}$を使って解ける。図Aの薄いグレーの部分は必要ない。
$y_{4}$を使う解法は別解を見てほしい。
「硬貨を4回投げるのに3回までの移動で答えが出るって何かしっくりこない」とか「どんなときに途中までの移動で計算していいのか判断する自信がない」とかっていう人は、別解の方法がおすすめです。
図Aより、
$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}\geqq 0$かつ$y_{4}\geqq 0$であるような移動の仕方の$y_{3}$までは、図Aの数字と数字をたして、
$1+2=3$通り
$y_{3}$までの硬貨の面の出方は
$2^{3}$通り
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
なので、この場合の確率は
$\dfrac{3}{2^{3}}=\dfrac{3}{8}$
である。
解答エ:3, オ8
図A$y_{3}=1$であるのは、図Aの赤い点。
なので、$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}=1$であるような移動の仕方は、図Aの数字の
$2$通り
$y_{3}$までの硬貨の面の出方は
$2^{3}$通り
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
だから、この場合の確率は
$\dfrac{2}{2^{3}}=\dfrac{1}{4}$
となる。
解答カ:1, キ:4
ここで条件付き確率の意味の復習をしておくと、
復習
事象$A$が起こったときにが事象$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$とは、$A$が起こった場合を全事象と考えたとき、$B$が起こる確率のことである。
だった。
この問題にあてはめると、
全事象は、$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}\geqq 0$かつ$y_{4}\geqq 0$であった場合なので、図Aの数字$+$数字の
$1+2$通り
条件付き確率を求めるのは、上の全事象の中での$y_{3}=1$の場合なので、数字の
$2$通り
だ。
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
よって、求める条件付き確率は
$\dfrac{2}{1+2} =\dfrac{2}{3}$
である。
解答ク:2, ケ:3
別解
(ii)を$y_{4}$を使って解くと、次のようになる。
多分こっちの方が一般的な解法だと思う。上の解法と比べると少しだけ時間がかかるけど、この方法で解いてもらってもゼンゼン問題ないです。
図Bより、
$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}\geqq 0$かつ$y_{4}\geqq 0$であるような移動の仕方は、図Bの数字をたして、
$1+3+2=6$通り式A
硬貨の面の出方は
$2^{4}$通り
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
なので、この場合の確率は
$\dfrac{6}{2^{4}}=\dfrac{3}{8}$
である。
解答エ:3, オ8
$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}=1$かつ$y_{4}\geqq 0$である移動の仕方を求めると、
$y_{3}=1$であるのは、図Bの赤い点。
なので、$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}=1$であるような移動の仕方は、図Bの数字の
$2$通り
赤い点から $y_{4}\geqq 0$となるような移動の仕方は、青い矢印と緑の矢印の
$2$通り
なので、求める移動の仕方は
$2\times 2$通り式B
ある。
硬貨の面の出方は
$2^{4}$通り。
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
よって、この場合の確率は
$\dfrac{2\times 2}{2^{4}}=\dfrac{1}{4}$
となる。
解答カ:1, キ:4
ここで条件付き確率の意味の復習をしておくと、
復習
事象$A$が起こったときにが事象$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$とは、$A$が起こった場合を全事象と考えたとき、$B$が起こる確率のことである。
だった。
この問題にあてはめると、
全事象は、$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}\geqq 0$かつ$y_{4}\geqq 0$であった場合なので、式Aの
$6$通り
条件付き確率を求めるのは、上の全事象の中での$y_{3}=1$の場合なので、式Bの
$2\times 2$通り
だ。
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
よって、求める条件付き確率は
$\dfrac{2\times 2}{6}=\dfrac{2}{3}$
である。
解答ク:2, ケ:3
別解の別解
参考書なんかでよく見る
復習
事象$A$が起こる確率を$P(A)$,事象$A$と事象$B$の両方が起こる確率を$P(A\cap B)$とするとき、$A$が起こったときに$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$は
$P_{A}(B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(A)}$
である。
っていうのを使うと、次のようになる。
この問題の場合、復習の
事象$A$は、$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}\geqq 0$かつ$y_{4}\geqq 0$である場合
事象$B$は、$y_{3}=1$である場合
にあたる。
なので、
$P(A)=\dfrac{\fbox{エ}}{\fbox{オ}}=\dfrac{3}{8}$
$P(A\cap B)=\dfrac{\fbox{カ}}{\fbox{キ}}=\dfrac{1}{4}$
だ。
よって、復習より、求める条件付き確率は
$$
\begin{align}
\dfrac{\cfrac{1}{4}}{\cfrac{3}{8}}&=\dfrac{1}{4}\cdot\dfrac{8}{3}\\
&=\dfrac{2}{3}
\end{align}
$$
である。
解答ク:2, ケ:3
(1) (iii)
(i)では$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}\geqq 0$,(ii)では$y_{1}\geqq 0$かつ$y_{2}\geqq 0$かつ$y_{3}\geqq 0$かつ$y_{4}\geqq 0$っていう条件があったけど、(iii)ではそういう条件なしで考える。
図Aを見ると、点$(4,2)$に移動するためには、
右上に3回
右下に1回
移動すればよいことが分かる。
よって、このときの効果の面の出方は
表が3回
裏が1回
である。
解答コ:3
別解
こういう解き方もできる。
表が出る回数をコ
裏が出る回数を$(4-$コ$)$
とおくと、$y$軸方向の移動量は
$ 1\times$コ$+(-1)(4-$コ$)$
とかける。
これが$2$になる場合を問われているので、
$ 1\times$コ$+(-1)(4-$コ$)=2$
より
コ$+$コ$=2+4$
コ$=3$
である。
解答コ:3
(2) (i)
今度は数直線上を点$\mathrm{Q}$が動く問題だ。
$7$回移動して座標が$3$なので、
3の倍数が5回
それ以外が2回
出ればよい。
詳しく
$\left\{\begin{array}{l}
\text{3の倍数が出る回数を}n\\
\text{それ以外が出る回数を}(7-n)
\end{array}\right.$
とすると、座標の移動量は
$1\times n+(-1)(7-n)$
とかける。
この移動量が$3$であればいいので、
$1\times n+(-1)(7-n)=3$
より
$n+n=3+7$
$n=5$
だから、
$\left\{\begin{array}{l}
\text{3の倍数が5回}\\
\text{それ以外が2回}
\end{array}\right.$
出ればよい。
3の倍数が出る確率は$\dfrac{2}{6}$
それ以外が出る確率は$\dfrac{4}{6}$
なので、求める確率は
$\left(\dfrac{2}{6}\right)^{5}\left(\dfrac{4}{6}\right)^{2}\times_{7}\mathrm{C}_{2}=\left(\dfrac{1}{3}\right)^{5}\left(\dfrac{2}{3}\right)^{2}\times_{7}\mathrm{C}_{2}$
とかける。
これを計算すると
$$
\begin{align}
\dfrac{2^{2}\times 7\cdot 6}{3^{7}\times 2\cdot 1}&=\dfrac{2^{2}\times 7}{3^{6}}\\
&=\dfrac{28}{729}
\end{align}
$$
となる。
解答サ:2, シ:8, ス:7, セ:2, ソ:9
(2) (ii)
(ii)(iii)は、点$\mathrm{Q}$の座標がつねに$0$以上$3$以下である場合。
これを計算で解こうとすると大変なので、(1)と同じように解く。
つまり、図Aのような図を描き、
$x$軸を、さいころを投げた回数
$y$軸を、数直線上の座標
だと思って解くわけだ。
気づいてみると、(1)では硬貨を3~4回しか投げないのに、問題文中の参考図の$x$は$7$まである。
つまり、(1)(ii)のときと同様に この図に書き込んで解きなさいというヒントになっている。
というわけで、図を描くと図Cができる。
ここでは 点$\mathrm{Q}$の座標がつねに$0$以上$3$以下であるときを問われているので、横軸より下と、縦軸で$3$より上は考えない。
青い点の数字は必要ないから書かなかった。
さいころを7回投げたときに点$\mathrm{Q}$の座標が$3$であるのは、$(7,3)$、つまり図Cの赤い点。
よって、移動の仕方は数字の
$8$通り。式C
(i)より、さいころを7回投げて点$\mathrm{Q}$の座標が$3$であるためには
3の倍数が5回
それ以外が2回
出ればよい。
よって、求める確率は
$\left(\dfrac{2}{6}\right)^{5}\left(\dfrac{4}{6}\right)^{2}\times 8=\left(\dfrac{1}{3}\right)^{5}\left(\dfrac{2}{3}\right)^{2}\times 8$式D
とかける。
これを計算すると
$\dfrac{2^{2}\times 8}{3^{7}}=\dfrac{32}{2187}$
となる。
解答タ:3, チ:2,
ツ:2, テ:1, ト:8, ナ:7
(2) (iii)
さいころを3回投げたときに点$\mathrm{Q}$の座標が$1$であるのは、$(3,1)$、つまり図Cの緑の点。
この緑の点を通る場合だけを図Cと同じように作図すると、図Dができる。
(1)でやった条件付き確率の復習をこの問題にあてはめると、
全事象は、さいころを7回投げる間、点$\mathrm{Q}$の座標がつねに$0$以上$3$であり、かつ7回投げて点$\mathrm{Q}$の座標が$3$である場合なので、式Cの
$8$通り
条件付き確率を求めるのは、上の全事象の中で さいころを3回投げて点$\mathrm{Q}$の座標が$1$である場合なので、図Dの数字の
$6$通り式E
だ。
さらに、どの移動の仕方も同じ確率で起こる。
よって、求める条件付き確率は
$$
\begin{align}
\dfrac{\text{式E}}{\text{式C}}&=\dfrac{6}{8}\\
&=\dfrac{3}{4}
\end{align}
$$
である。
解答ニ:3, ヌ:4
別解
参考書なんかでよく見る
$P_{A}(B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(A)}$
を使って解くと、次のようになる。
さいころを7回投げる間 点$\mathrm{Q}$の座標がつねに$0$以上$3$であり、
7回投げ終えた時点で点$\mathrm{Q}$の座標が$3$になるのを、事象$A$
3回投げて点$\mathrm{Q}$の座標が$1$になるのを、事象$B$
とする。
事象$A$の確率$P(A)$は、式Dより
$P(A)=\left(\dfrac{2}{6}\right)^{5}\left(\dfrac{4}{6}\right)^{2}\times 8$式D
事象$A$かつ事象$B$の確率$P(A\cap B)$は、原点から緑の点を通って赤い点まで移動する確率。
移動の仕方は、式Eの
$6$通り。
この間、さいころの目は
3の倍数が5回
それ以外が2回
出ればよい。
よって、$P(A\cap B)$は
$P(A\cap B)=\left(\dfrac{2}{6}\right)^{5}\left(\dfrac{4}{6}\right)^{2}\times 6$式F
とかける。
以上より、求める条件付き確率$P_{A}(B)$は、
$$
\begin{align}
P_{A}(B)&=\dfrac{\text{式F}}{\text{式D}}\\
&=\dfrac{\left(\cfrac{2}{6}\right)^{5}\left(\cfrac{4}{6}\right)^{2}\times 6}{\left(\cfrac{2}{6}\right)^{5}\left(\cfrac{4}{6}\right)^{2}\times 8}\\
&=\dfrac{3}{4}
\end{align}
$$
である。
解答ニ:3, ヌ:4