大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 追試 数学ⅡB 第1問 [2] 解説

(1)

最初に、三角比の拡張の復習から。

復習

原点から角度$\theta$で直線$\ell$を引く。
大学入学共通テスト2022年追試 数学ⅡB第1問 [2] 解説図A このとき、$\ell$と
単位円との交点の
$y$座標が$\sin\theta$ $x$座標が$\cos\theta$
直線$x=1$との交点の
$y$座標が$\tan\theta$

だった。

図A
大学入学共通テスト2022年追試 数学ⅡB第1問 [2] 解説図A

いま、$\theta$の定義域は
$-\displaystyle \frac{\pi}{2} \lt \theta \lt \frac{\pi}{2}$
なので、$\theta$の範囲は図Aの緑の部分。

問われているのは
$\tan\theta=-\sqrt{3}$
のときなので、$\theta$は図Aの赤い直線が表す角度。

よって、図Aより、
$\displaystyle \theta=-\frac{\pi}{3}$
である。

解答テ:0

したがって、 $\displaystyle \cos\theta= \cos\left(-\frac{\pi}{3}\right)$
$\displaystyle \phantom{\cos\theta}= \frac{1}{2}$
$\displaystyle \sin\theta= \sin\left(-\frac{\pi}{3}\right)$
$\displaystyle \phantom{\sin\theta}= -\frac{\sqrt{3}}{2}$
となる。

解答ト:7, ナ:4


さらに、三角比の相互関係の復習をしよう。

復習

$\displaystyle \tan\theta=\frac{\sin\theta}{\cos\theta}$式A $\sin^{2}\theta+\cos^{2}\theta=1$ $1+\displaystyle \tan^{2}\theta=\frac{1}{\cos^{2}\theta}$式B

$\tan\theta=k$のとき、式Bより、
$1+k^{2}=\displaystyle \frac{1}{\cos^{2}\theta}$
とかける。

これを$\cos\theta$について解くと、
$\displaystyle \cos^{2}\theta=\frac{1}{1+k^{2}}$
$\displaystyle \cos\theta=\pm\frac{1}{\sqrt{1+k^{2}}}$式C
となる。

いま、$\theta$の定義域は
$-\displaystyle \frac{\pi}{2} \lt \theta \lt \frac{\pi}{2}$
なので、
$ 0 \lt \cos\theta$
だ。

よって、式Cのうち
$\displaystyle \cos\theta=-\frac{1}{\sqrt{1+k^{2}}}$
は不適。

求める$\cos\theta$は
$\displaystyle \cos\theta=\frac{1}{\sqrt{1+k^{2}}}$
である。

解答ニ:8


この式と $\tan\theta=k$ を式Aに代入すると
$k=\displaystyle \frac{\sin\theta}{\frac{1}{\sqrt{1+k^{2}}}}$
とかける。

これを$\sin\theta$について解いて、
$\displaystyle \sin\theta=k\times\frac{1}{\sqrt{1+k^{2}}}$
$\phantom{ \sin\theta } \displaystyle =\frac{k}{\sqrt{1+k^{2}}}$
である。

解答ヌ:a

(2)

まず、$p$から。

2倍角の公式より

公式

$\sin 2\theta=2\sin\theta\cos\theta$

なので、$p$は
$p=\displaystyle \frac{2\sin\theta\cos\theta}{\cos\theta}$
$\phantom{ p } =2\sin\theta$式D
と表せる。

いま、$\theta$の定義域は
$-\displaystyle \frac{\pi}{2} \lt \theta \lt \frac{\pi}{2}$
なので、
$-1\leqq\sin\theta\leqq 1$
より
$-2\leqq 2\sin\theta\leqq 2$
とかける。

これに式Dを代入して、$p$の範囲は
$-2\leqq p\leqq 2$
である。

解答ネ:2


次に、$q$だ。

加法定理より
$\displaystyle \sin\left(\theta+\frac{\pi}{7}\right)=\sin\theta\cos\frac{\pi}{7}+\cos\theta\sin\frac{\pi}{7}$
なので、$q$は
$q=\displaystyle \frac{\sin\theta\cos\frac{\pi}{7}+\cos\theta\sin\frac{\pi}{7}}{\cos\theta}$
$\phantom{ q\displaystyle } \displaystyle =\frac{\sin\theta}{\cos\theta}\cdot\cos\frac{\pi}{7}+\sin\frac{\pi}{7}$
$\phantom{ q\displaystyle } \displaystyle =\tan\theta\cos\frac{\pi}{7}+\sin\frac{\pi}{7}$式E
と表せる。

ここで
$\tan\theta=x$
とおくと、式Eは
$q=\displaystyle \left(\cos\frac{\pi}{7}\right)x+\sin\frac{\pi}{7}$式E'
とかける。

$\displaystyle \cos\frac{\pi}{7}$も$\displaystyle \sin\frac{\pi}{7}$も正の定数なので、式E'は一次関数で、そのグラフは図Bのようになる。

図B
大学入学共通テスト2022年追試 数学ⅡB第1問 [2] 解説図B

いま、$\tan\theta$の範囲はすべての実数。
つまり、図Bの$x$の範囲はすべての実数だ。
このとき、$q$の範囲もすべての実数である。

解答ノ:4

(3)

(2)と同様に考えると、$r$の式は
$ r=\tan\theta\cos\alpha+\sin\alpha$式F
と表せる。

今回も
$\tan\theta=x$
とおくと、式Fは
$ r=(\cos\alpha)x+\sin\alpha$式F'
とかける。

いま、
$ 0\leqq\alpha \lt 2\pi$
より
$-1\leqq\cos\alpha\leqq 1$
なので、式F'のグラフは、
$-1\leqq\cos\alpha \lt 0$のとき、右下がりの直線 $\cos\alpha=0$のとき、$ r=\sin\alpha$ $0 \lt \cos\alpha\leqq 1$のとき、右上がりの直線 となる。

よって、$r$のとり得る値は、
$\cos\alpha=0$のとき、$\sin\alpha$ それ以外のとき、すべての実数 である。

以上より、$r$の範囲が$q$の範囲と異なるのは
$\cos\alpha=0$
のとき。

$\alpha$の定義域は
$ 0\leqq\alpha \lt 2\pi$
なので、$\cos\alpha=0$となる$\alpha$、つまり $r$の範囲が$q$の範囲と異なる$\alpha$は
$\displaystyle \alpha=\frac{\pi}{2}$,$\displaystyle \frac{3}{2}\pi$
の2個存在する。

解答ハ:2