大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 追試 数学ⅠA 第1問 [3] 解説
(1)
まず、△$\mathrm{ABC}$が図Aの場合から。
図Aにおいて、△$\mathrm{ABC}$に余弦定理を使うと、
$\mathrm{BC}^{2}=\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{AC}^{2}-2\mathrm{AB}\cdot \mathrm{AC}\cos\angle \mathrm{BAC}$
より
$\displaystyle \mathrm{BC}^{2}=4^{2}+6^{2}-2\cdot 4\cdot\cancel{6}^{2}\cdot\frac{1}{\cancel{3}}$
とかける。
これを計算すると
$\mathrm{BC}^{2}=2^{2}(2^{2}+3^{2}-4)$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =2^{2}\cdot 3^{2}$
なので、
$\mathrm{BC}=2\cdot 3$
$\phantom{ \mathrm{BC} } =6$
である。
解答ソ:6
(2) タ~テ
(2)は、$\mathrm{AB}=4$,$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{1}{3}$のとき、$\mathrm{BC}$を変化させて できる△$\mathrm{ABC}$の個数と形を考える問題だ。
まず、イメージをつかむために図を描こう。
直線$\mathrm{AB}$と直線$\mathrm{AC}$は
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{1}{3}$
となる角度で交わる。
なので、
$\sin$青い角$=\sin$赤い角$=\displaystyle \frac{1}{3}$
直線$\mathrm{AC}$を緑の直線
とすると、点$\mathrm{A}$,点$\mathrm{B}$と直線$\mathrm{AC}$は 図Bのような関係にある。
詳しく
$\sin(180^{\circ}-\theta)=\sin\theta$なので、図Bの赤い角の$\sin$が$\displaystyle \frac{1}{3}$なら、青い角の$\sin$も$\displaystyle \frac{1}{3}$である。
緑の直線は$\mathrm{AC}$だから、点$\mathrm{C}$は緑の直線上のどこかにある(点$\mathrm{A}$を除く)。
よって、$\angle \mathrm{BAC}$は青い角と赤い角のどちらかで、
点$\mathrm{C}$が点$\mathrm{A}$より左にあれば$\angle \mathrm{BAC}=$青い角
右にあれば$\angle \mathrm{BAC}=$赤い角
だ。
さらに、点$\mathrm{B}$と点$\mathrm{C}$の距離は$\mathrm{BC}$なので、
点$\mathrm{C}$は、点$\mathrm{B}$が中心で、半径が$\mathrm{BC}$の円の円周上のどこかにある。
この円を、以下「青い円」とする。
以上より、点$\mathrm{C}$は、
緑の直線上にあり
青い円周上にある
から、緑の直線と青い円周の共有点だ。
これを図にすると、図Cができる。
共有点が2つあるとき、つまり点$\mathrm{C}$が2つあるときは、左にある方を$\mathrm{C}_{1}$,右を$\mathrm{C}_{2}$と呼ぶことにする。
$\mathrm{BC}$の長さが変わると、点$\mathrm{C}$の個数や位置は変わる。
図中、
赤い三角形は△$\mathrm{ABC}_{1}$
黄色い三角形は△$\mathrm{ABC}_{2}$
だけど、この形も$\mathrm{BC}$の値によって変わる。
図Cの下にあるスライダーを動かすと、$\mathrm{BC}$の値が変えられる。
△$\mathrm{ABC}$がどう変化するか、イメージをつかんでほしい。
図形がイメージできたところで、問題を解こう。
図Cを動かしてみると分かるけど、$\mathrm{BC}$、つまり青い円の半径が最小になるのは、図Dのように緑の直線と青い円が接するとき。
このとき、$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{1}{3}$なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{B}\mathrm{C}}{\mathrm{A}\mathrm{B}}=\frac{1}{3}$
とかける。
これに$\mathrm{AB}=4$を代入して、
$\displaystyle \frac{\mathrm{B}\mathrm{C}}{4}=\frac{1}{3}$
より
$\displaystyle \mathrm{BC}=\frac{4}{3}$
となるから、$\mathrm{BC}$の最小値は$\displaystyle \frac{4}{3}$だ。
よって、$\mathrm{BC}$の範囲は
$\displaystyle \frac{4}{3}\leqq \mathrm{BC}$
であることが分かる。
解答タ:4, チ:3
また、図Dのときは △$\mathrm{ABC}$は一通りしかできないので、
$\displaystyle \mathrm{BC}=\frac{4}{3}$のとき、△$\mathrm{ABC}$はただ一通りに決まる。
$\displaystyle \frac{4}{3} \lt \mathrm{BC}$のとき、緑の直線と青い円は2点$\mathrm{C}_{1}$,$\mathrm{C}_{2}$で交わる。
したがって、△$\mathrm{ABC}$も△$\mathrm{ABC}_{1}$,△$\mathrm{ABC}_{2}$の二通りできる.....と言いたいところだけど、点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{C}_{1}$が重なる場合は反則で、図形$\mathrm{ABC}_{1}$は三角形にならない。
点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{C}_{1}$が重なるのは、図Eのように
$\mathrm{BC}_{1}=\mathrm{AB}=4$
のとき。
このとき、できる三角形は△$\mathrm{ABC}_{2}$のひとつだけ。
よって、
$\mathrm{BC}=4$のとき、△$\mathrm{ABC}$はただ一通りに決まる。
解答ツ:4
さらに、$\angle \mathrm{ABC}=90^{\circ}$のときは、図Fのような状態になる。
このときの$\mathrm{BC}$の値を求める。
△$\mathrm{ABC}_{2}$は直角三角形なので、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{\mathrm{B}\mathrm{C}_{2}}{\mathrm{A}\mathrm{C}_{2}}=\frac{1}{3}$
より
$\mathrm{AC}_{2}=3\mathrm{BC}_{2}$
である。
なので、
$\mathrm{BC}_{2}=x$
とおくと、
$\mathrm{AC}_{2}=3x$
とかける。
よって、△$\mathrm{ABC}_{2}$に三平方の定理を使うと
$4^{2}+x^{2}=(3x)^{2}$
と表せる。
これを解くと
途中式
$9x^{2}-x^{2}=4^{2}$
$8x^{2}=4^{2}$
$x^{2}=2$
だから、$\angle \mathrm{ABC}=90^{\circ}$のとき、
$\mathrm{BC}=\sqrt{2}$
である。
解答テ:2
(2) トナニ
最後に、$\mathrm{BC}$の値によって△$\mathrm{ABC}$の形がどうなるかを考える。
再び図Cに戻ってスライダーを動かしてみると、
△$\mathrm{ABC}_{1}$は常に鈍角三角形
であることが分かる。
一方の△$\mathrm{ABC}_{2}$は、ちょっと考えなきゃいけない。
テより、$\angle \mathrm{ABC}_{2}$が直角のとき、$\mathrm{BC}=\sqrt{2}$だった。
また、点$\mathrm{C}$は緑の直線上にあるけど、$\mathrm{BC}$が大きくなるにつれて点$\mathrm{B}$から遠ざかってゆく。
よって、図Gのように、点$\mathrm{C}_{2}$は
$\displaystyle \frac{4}{3} \lt \mathrm{BC} \lt \sqrt{2}$のとき、紫の線上
$\sqrt{2} \lt \mathrm{BC}$のとき、オレンジの線上
にある。
$\displaystyle \frac{4}{3} \lt \mathrm{BC} \lt \sqrt{2}$のとき、つまり点$\mathrm{C}_{2}$が図Gの紫の線上にあるとき、△$\mathrm{ABC}_{2}$は例えば図Hのような形になる。
このとき
$\angle \mathrm{ABC}_{2} \lt 90^{\circ}$
$\angle \mathrm{AC}_{2}\mathrm{B} \lt 90^{\circ}$
なので、△$\mathrm{ABC}_{2}$は鋭角三角形である。
$\sqrt{2} \lt \mathrm{BC}$のとき、つまり点$\mathrm{C}_{2}$が図Gのオレンジの線上にあるとき、△$\mathrm{ABC}_{2}$は例えば図Iのような形になる。
このとき
$90^{\circ} \lt \angle \mathrm{ABC}_{2}$
なので、△$\mathrm{ABC}_{2}$は鈍角三角形である。
以上をまとめると、$\mathrm{BC}$の長さと△$\mathrm{ABC}$の関係は
$\mathrm{BC}$ | $\displaystyle \frac{4}{3}$ | $\cdots$ | $\sqrt{2}$ | $\cdots$ | $4$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|---|
$\mathrm{ABC}_{1}$ | 一つの 直角 三角形 | 鈍角 三角形 | 三角形に ならない | 鈍角 三角形 | ||
$\mathrm{ABC}_{2}$ | 鋭角 三角形 | 直角 三角形 | 鈍角 三角形 |
であることが分かる。
解答ト:5, ナ:7, ニ:8