大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 追試 数学Ⅰ 第3問 [1] 解説
(1)
$p$を$0$でない実数として、
$f(x)=px^{2}+2px+p^{2}-3p+2$
を考える。
$f(1)$は、$f(x)$の式に$x=1$を代入して、
$f(1)=p\cdot 1^{2}+2p\cdot 1+p^{2}-3p+2$
$\phantom{ f(1) } =p^{2}+2$
である。
解答ア:2
イウを求める前に、解の公式の利用法について復習しておこう。
復習
復習の青い部分を使うと、放物線$y=f(x)$の軸は
$x=\displaystyle \frac{-2p}{2\cdot p}$
$\phantom{ x } =-1$
であることが分かる。
解答イ:-, ウ:1
別解
平方完成で解くと、次のようになる。
$f(x)$の式を平方完成して、
$f(x)=p(x^{2}+2x)+p^{2}-3p+2$
途中式
$\phantom{ f(x) } =p(x^{2}+2x+1-1)+p^{2}-3p+2$
$\phantom{ f(x) } =p\{(x+1)^{2}-1\}+p^{2}-3p+2$
$\phantom{ f(x) } =p(x+1)^{2}-p+p^{2}-3p+2$
より、放物線$y=f(x)$の軸は
$x=-1$
である。
解答イ:-, ウ:1
以上より、$y=f(x)$のグラフは図Aのような状態であることが分かる。
二次関数のグラフは放物線の軸に関して対称なので、図Aのように、エオと$1$の真ん中が放物線の軸$x=-1$だ。
つまり、エオと$1$の平均は$-1$である。
なので、
エオ$+1$
$2$
$=-1$
より
エオ$+1=-2$
エオ$=-3$
である。
解答エ:-, オ:3
別解
エオについては、こんな計算方法もある。
エオと$-1$と$1$は等間隔なので、
$-1-$エオ$=1-(-1)$
とかける。
よって、
エオ$=-1-\{1-(-1)\}$
$\hspace{59px}=-3$
である。
解答エ:-, オ:3
(2)
次は、二次方程式の解の範囲の問題。
方程式$f(x)=0$の解は、$y=f(x)$のグラフと$x$軸との共有点の$x$座標と等しい。
なので、ここで問われている
$f(x)=0$が$1$より小さい異なる2つの実数解をもつ
は
$x=1$を境目として、$y=f(x)$と$x$軸が境目より左の異なる2点で交わる
と言いかえられる。
よって、この問題は、二次関数のグラフと$x$軸の共有点の位置の問題として考えられる。
このタイプの問題は 決まった解き方をするので憶えておこう。
復習:このタイプの問題の解き方
放物線と$x$軸との共有点が問題の条件に合うグラフを描いて、
$x$軸との共有点の個数を考える条件A
境目(この問題では$x=1$)のときのグラフの$y$座標が正か負かを考える条件B
放物線の軸が境目よりも右にあるか左にあるかを考える条件C
の3つの条件すべてを満たす範囲(この問題では$p$の範囲)を求める。
この問題の条件に合うグラフは、図Bのどちらか。
以下、図Bの2つのグラフを、復習の考え方で ひとつずつ検討する。
$p \lt 0$のとき
まず、$p \lt 0$のとき、つまり図Bの左のグラフになる場合から。
図Bの左のグラフであるためには、境目の$x=1$のときに$y \lt 0$でないといけない(復習の条件B)。
式にすると
$f(1) \lt 0$式A
でなければならない。
ところが、アを求めたときに気づいたかも知れないけれど、
$f(1)=p^{2}+2$
だから、
$f(1) \gt 0$式B
だ。
詳しく
$p\neq 0$
より
$p^{2} \gt 0$
なので、
$p^{2}+2 \gt 2$
とかける。
よって、
$f(1) \gt 2$
だと言えるけど、この問題では
$f(1) \gt 0$
が分かれば十分なので、式Bでは
$f(1) \gt 0$式B
とした。
なので、式Aは成り立たないから、$y=f(x)$のグラフが図Bの左のような状態になることはない。
よって、$p \lt 0$のとき、$f(x)=0$が1より小さい異なる2つの実数解をもつことはない。
$0 \lt p$のとき
次に、$0 \lt p$のとき、つまり図Bの右のグラフになるときの、復習の3つの条件を考える。
条件A
$y=f(x)$のグラフは$x$軸と異なる2点で交わるので、$f(x)$の判別式は正だから、
$(2p)^{2}-4p(p^{2}-3p+2) \gt 0$
でなければならない。
これを整理すると
途中式
$p^{2}-p(p^{2}-3p+2) \gt 0$
$-p^{2}+p(p^{2}-3p+2) \lt 0$
$p(-p+p^{2}-3p+2) \lt 0$
となる。
今は$0 \lt p$のときを考えているので、上の式が成り立つためには、赤い部分が負であればよい。
つまり
$p^{2}-4p+2 \lt 0$式C
であればよい。
式Cの左辺は因数分解出来ないので、解の公式だ。
$p^{2}-4p+2=0$
となる$p$は、解の公式より
$p=\displaystyle \frac{-(-4)\pm\sqrt{(-4)^{2}-4\cdot 1\cdot 2}}{2\cdot 1}$
$\phantom{ p\displaystyle } \displaystyle =\frac{4\pm\sqrt{4(4-2)}}{2}$
$\phantom{ p } =2\pm\sqrt{2}$
だから、式Cを満たす、つまり条件Aを満たす$p$の範囲は
$2-\sqrt{2} \lt p \lt 2+\sqrt{2}$式D
である。
条件B
図Bの右のグラフを見ると、境目の$x=1$のとき
$y \gt 0$
なので、条件Bを表す式は
$f(1) \gt 0$
とかけるけど、式Bより これは必ず成り立つ。
よって 条件Bは必ず成り立つ。
条件C
図Bの右のグラフを見ると、放物線の軸は 境目の$x=1$よりも左になければならない。
イウより、放物線の軸は
$x=-1$
だったけど、これが$x=1$より左にあるのは明らか。
よって 条件Cも必ず成り立つ。
以上より、復習の3つの条件と 場合分けの$0 \lt p$を数直線に表すと、図Cのようになる。
必ず成り立つ条件B,条件Cは省略してある。
図Cで、場合分けと条件Aが重なる赤い部分が求める$p$の範囲だ。
図Cより、求める$p$の範囲は、式Dと同じ $2-\sqrt{2} \lt p \lt 2+\sqrt{2}$式D である。
解答カ:2, キ:2
(3)
(3)で求めるのは、方程式$f(x)=0$が
$1$より小さい2つの異なる実数解をもち、①
ひとつの解は正、もうひとつは負②
であるような$p$の範囲だ。
このうち、①を満たす$p$の範囲は、(2)で求めたように
$2-\sqrt{2} \lt p \lt 2+\sqrt{2}$式D
だった。
なので、②を満たす$p$の範囲が分かれば、それと式Dの重なる範囲がクケである。
ということで②を考えるんだけど、(2)の作業から、$p \lt 0$の場合には①を満たさないことが分かっている。
よって、$0 \lt p$のときだけを考えよう。
②をグラフでいうと、放物線$f=f(x)$が、$y$軸の左右で$x$軸と交わる場合。
図にすると、図Dのような場合だ。
$0 \lt p$のときだけを考えるので、放物線は下に凸である。
図Dのようなグラフになるためには、放物線と$y$軸が$y \lt 0$の部分で交わればよい。
なので
$f(0) \lt 0$
であればよいから、
$p^{2}-3p+2 \lt 0$
とかける。
これを解いて、
$(p-1)(p-2) \lt 0$
より、②を満たす$p$の範囲は
$1 \lt p \lt 2$
となる。
以上より、①,②を満たす$p$の範囲を数直線に表すと、図Eができる。
図Eより、求める ①,②をともに満たす$p$の範囲は、赤線部分の
$1 \lt p \lt 2$
である。
解答ク:1, ケ:2
(4)
最後は、方程式$f(x)=0$の解の存在範囲を答える問題。
解説は長いけれど、やっていることは大したことないので 頑張ってついてきてほしい。
まず$ 1 \lt \beta$から片付けよう。
イウより、放物線の軸は$x=-1$なので、$ 1 \lt \beta$のときの$y=f(x)$のグラフは、図Fのどちらか。
だけど、式Bで、$p$の値にかかわらず
$f(1) \gt 0$式B
であることが分かっているから、図Fの右のグラフは不適だ。
また、図Fの左のグラフ($p \lt 0$)のときは、
$f(1) \gt 0$式B
なので、$y=f(x)$と$x$軸は$1 \lt x$の部分で必ず交わる。
したがって、必ず
$1 \lt \beta$
となるから、問題の条件に合う。
そのため、$p \lt 0$の場合だけを考える。
式Bより $f(1) \gt 0$
エオより $f(-3)=f(1)$
なので、
$f(-3) \gt 0$
だ。
よって、$p \lt 0$のときの$y=f(x)$のグラフを描くと 図Gのようになる。
$y=f(x)$と$x$軸との交点のうち、$x$座標が$\alpha$の方を点Aとする。
$p$の値が変われば点Aの位置は変わるけど、図Gより、$p$の値にかかわらず 点Aは$x=-3$より左にある。
つまり、$p$の値に関係なくつねに
$\alpha \lt -3$
だ。
この両辺を$2$倍すると
$2\alpha \lt -6$
だから、
$-6$は$m$である。
これをそのまま
コサ$=-6$
と早合点してはいけない。
問われているのは$m$の最小値だ。
詳しく
$m$は整数だけど、ひとつの値じゃなくて、整数の集合だと考えよう。
例えば、図Gを見ると
$\alpha \lt -1$
なので
$2\alpha \lt -2$
$\alpha \lt 0$
なので
$2\alpha \lt 0$
$\alpha \lt 1$
なので
$2\alpha \lt 2$
だから、$-2$も$0$も$2$も$m$だし、もっと他にも$m$はたくさんある。
ここで問われているのは、たくさんある$m$の中で一番小さい数だ。
というわけで、$-6$より小さい$m$を探す。
回答欄はコサで、コにはマイナスが入るから、答えの候補は
$-6$,$-7$,$-8$,$-9$
の4つしかない。
このうち $-6$が$m$であるのは分かっているので、$m$かどうか分からないのは残りの3つだ。
わずか3つだし、考えるよりも手を動かした方が早い。
ひとつずつ確認しよう。
$-7$
$-7$が$m$に含まれるなら、$p$の値に関係なくつねに
$2\alpha \lt -7$
なので
$\displaystyle \alpha \lt -\frac{7}{2}$
だ。
このとき、$y=f(x)$は$\displaystyle x=-\frac{7}{2}$より左で$x$軸と交わるから、$p$の値に関係なくつねに
$\displaystyle 0 \lt f\left(-\frac{7}{2}\right)$式E
でないといけない。
$\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right)$は、$y=f(x)$に$x=-\displaystyle \frac{7}{2}$を代入して、
途中式
$\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right) =p\left(-\frac{7}{2}\right)^{2}+2p\left(-\frac{7}{2}\right)+p^{2}-3p+2$
$\displaystyle \phantom{ f\left(-\frac{7}{2}\right) } \displaystyle =\frac{49}{4}p-7p+p^{2}-3p+2$
$\displaystyle \phantom{ f\left(-\frac{7}{2}\right) } \displaystyle =p^{2}+\left(\frac{49}{4}-7-3\right)p+2$
より
である。
式Fを平方完成すると
途中式
$\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right) =p^{2}+\frac{9}{4}p+\left(\frac{9}{8}\right)^{2}-\left(\frac{9}{8}\right)^{2}+2$
$\displaystyle \phantom{f\left(-\frac{7}{2}\right)} =\left(p+\frac{9}{8}\right)^{2}+\frac{-9^{2}+2\cdot 8^{2}}{8^{2}}$
より
となるから、$p$の値に関係なくつねに式Eは成り立つ。
この部分の別解
式Fの判別式$D$は
途中式
$\displaystyle D=\left(\frac{9}{4}\right)^{2}-4\cdot 1\cdot 2$
$\phantom{ D\displaystyle } \displaystyle =\frac{81}{16}-8$
より
なので、$p$がどんな値をとっても$\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right) =0$にはならない。
つまり、$p$の値にかかわらず
$\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right) \gt 0$ または $\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right) \lt 0$
のどちらかだけど、式Fの$p$に何か適当な値を代入すると
$\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right) \gt 0$
だから、$p$の値にかかわらず $\displaystyle f\left(-\frac{7}{2}\right) \gt 0$ であることが分かる。
したがって、$p$の値に関係なくつねに式Eは成り立つ。
よって、
$-7$は$m$である。
$-8$
$-8$が$m$に含まれるなら、$p$の値に関係なくつねに
$2\alpha \lt -8$
なので
$\displaystyle \alpha \lt -4$
だ。
このとき、$y=f(x)$は$x=-4$より左で$x$軸と交わるから、$p$の値に関係なくつねに
$0 \lt f(-4)$式G
でないといけない。
$f(-4)$は、$y=f(x)$に$x=-4$を代入して、
途中式
$f(-4)=p(-4)^{2}+2p(-4)+p^{2}-3p+2$
$\phantom{ f(-4) } =16p-8p+p^{2}-3p+2$
より
となる。
この式の判別式$D$は
$D=5^{2}-4\cdot 1\cdot 2 \gt 0$
だから、$p$の値によっては$f(-4)=0$となることがある。
したがって、$p$の値に関係なくつねに式Gが成り立つわけではない。
よって、
$-8$は$m$ではない。
$-9$
$-8$での作業より、点Aは$x=-8$より必ず左にあるわけではない。
よって、点Aは$x=-9$より必ず左にあるわけではないから、
$-9$も$m$ではない。
以上より、$m$の最小値コサは
コサ$=-7$
である。
解答コ:-, サ:7