大学入学共通テスト 2022年(令和4年) 追試 数学Ⅰ 第2問 [2] 解説
(1)
まず、△$\mathrm{ABC}$が図Aの場合から。
図Aにおいて、△$\mathrm{ABC}$に余弦定理を使うと、
$\mathrm{BC}^{2}=\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{AC}^{2}-2\mathrm{AB}\cdot \mathrm{AC}\cos\angle \mathrm{BAC}$
より
$\displaystyle \mathrm{BC}^{2}=4^{2}+6^{2}-2\cdot 4\cdot\cancel{6}^{2}\cdot\frac{1}{\cancel{3}}$
とかける。
これを計算すると
$\mathrm{BC}^{2}=2^{2}(2^{2}+3^{2}-4)$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =2^{2}\cdot 3^{2}$
なので、
$\mathrm{BC}=2\cdot 3$
$\phantom{ \mathrm{BC} } =6$
である。
解答オ:6
(2)
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{1}{3}$のときの$\cos\angle \mathrm{BAC}$を求めよう。
$\sin^{2}\angle \mathrm{BAC}+\cos^{2}\angle \mathrm{BAC}=1$
より
途中式
$\displaystyle \left(\frac{1}{3}\right)^{2}+\cos^{2}\angle \mathrm{BAC}=1$
$\displaystyle \cos^{2}\angle \mathrm{BAC}=1-\left(\frac{1}{3}\right)^{2}$
$\phantom{ \cos^{2}\angle \mathrm{BAC} } \displaystyle =\frac{3^{2}-1}{3^{2}}$
$\phantom{ \cos^{2}\angle \mathrm{BAC} } \displaystyle =\frac{8}{3^{2}}$
だから、このときの$\cos\angle \mathrm{BAC}$は
$\phantom{ \cos\angle \mathrm{BAC}}=\displaystyle \pm\frac{2\sqrt{2}}{3}$
である。
よって、このとき、△$\mathrm{ABC}$は図B,図Cの2つの場合がある。
図Bのとき、△$\mathrm{ABC}$に余弦定理を使うと、
$\mathrm{BC}^{2}=\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{AC}^{2}-2\mathrm{AB}\cdot \mathrm{AC}\cos\angle \mathrm{BAC}$
より
途中式
$\displaystyle \mathrm{BC}^{2}=4^{2}+(3\sqrt{2})^{2}-2\cdot 4\cdot \cancel{3}\sqrt{2}\cdot\frac{2\sqrt{2}}{\cancel{3}}$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =8\cdot 2+9\cdot 2-2\cdot 4\cdot 2\cdot 2$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =2(8+9-16)$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =2$
なので
である。
解答カ:2
図Cのとき、△$\mathrm{ABC}$に余弦定理を使うと、
途中式
$\displaystyle \mathrm{BC}^{2}=4^{2}+(3\sqrt{2})^{2}-2\cdot 4\cdot \cancel{3}\sqrt{2}\left( -\frac{2\sqrt{2}}{\cancel{3}}\right)$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =8\cdot 2+9\cdot 2+2\cdot 4\cdot 2\cdot 2$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =2(8+9+16)$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =2\cdot 33$
$\phantom{ \mathrm{BC}^{2} } =66$
なので
となる。
解答キ:6, ク:6
どちらの三角形も、面積は
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot \mathrm{AB}\cdot \mathrm{AC}\sin \mathrm{BAC}=\frac{1}{\cancel{2}}\cdot \cancelto{2}{4}\cdot \cancel{3}\sqrt{2}\cdot\frac{1}{\cancel{3}}$
$\hspace{163px} =2\sqrt{2}$
で、変わらない。
解答ケ:2, コ:2
(3) サ~タ
(3)は、$\mathrm{AB}=4$,$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{1}{3}$のとき、$\mathrm{BC}$を変化させて できる△$\mathrm{ABC}$の個数と形を考える問題だ。
まず、イメージをつかむために図を描こう。
直線$\mathrm{AB}$と直線$\mathrm{AC}$は
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{1}{3}$
となる角度で交わる。
なので、
$\sin$青い角$=\sin$赤い角$=\displaystyle \frac{1}{3}$
直線$\mathrm{AC}$を緑の直線
とすると、点$\mathrm{A}$,点$\mathrm{B}$と直線$\mathrm{AC}$は 図Dのような関係にある。
詳しく
$\sin(180^{\circ}-\theta)=\sin\theta$なので、図Dの赤い角の$\sin$が$\displaystyle \frac{1}{3}$なら、青い角の$\sin$も$\displaystyle \frac{1}{3}$である。
緑の直線は$\mathrm{AC}$だから、点$\mathrm{C}$は緑の直線上のどこかにある(点$\mathrm{A}$を除く)。
よって、$\angle \mathrm{BAC}$は青い角と赤い角のどちらかで、
点$\mathrm{C}$が点$\mathrm{A}$より左にあれば$\angle \mathrm{BAC}=$青い角
右にあれば$\angle \mathrm{BAC}=$赤い角
だ。
さらに、点$\mathrm{B}$と点$\mathrm{C}$の距離は$\mathrm{BC}$なので、
点$\mathrm{C}$は、点$\mathrm{B}$が中心で、半径が$\mathrm{BC}$の円の円周上のどこかにある。
この円を、以下「青い円」とする。
以上より、点$\mathrm{C}$は、
緑の直線上にあり
青い円周上にある
から、緑の直線と青い円周の共有点だ。
これを図にすると、図Eができる。
共有点が2つあるとき、つまり点$\mathrm{C}$が2つあるときは、左にある方を$\mathrm{C}_{1}$,右を$\mathrm{C}_{2}$と呼ぶことにする。
$\mathrm{BC}$の長さが変わると、点$\mathrm{C}$の個数や位置は変わる。
図中、
赤い三角形は△$\mathrm{ABC}_{1}$
黄色い三角形は△$\mathrm{ABC}_{2}$
だけど、この形も$\mathrm{BC}$の値によって変わる。
図Eの下にあるスライダーを動かすと、$\mathrm{BC}$の値が変えられる。
△$\mathrm{ABC}$がどう変化するか、イメージをつかんでほしい。
図形がイメージできたところで、問題を解こう。
図Eを動かしてみると分かるけど、$\mathrm{BC}$、つまり青い円の半径が最小になるのは、図Fのように緑の直線と青い円が接するとき。
このとき、$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{1}{3}$なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{B}\mathrm{C}}{\mathrm{A}\mathrm{B}}=\frac{1}{3}$
とかける。
これに$\mathrm{AB}=4$を代入して、
$\displaystyle \frac{\mathrm{B}\mathrm{C}}{4}=\frac{1}{3}$
より
$\displaystyle \mathrm{BC}=\frac{4}{3}$
となるから、$\mathrm{BC}$の最小値は$\displaystyle \frac{4}{3}$だ。
よって、$\mathrm{BC}$の範囲は
$\displaystyle \frac{4}{3}\leqq \mathrm{BC}$
であることが分かる。
解答サ:4, シ:3
また、図Fのときは △$\mathrm{ABC}$は一通りしかできないので、
$\displaystyle \mathrm{BC}=\frac{4}{3}$のとき、△$\mathrm{ABC}$はただ一通りに決まる。
このとき、△$\mathrm{ABC}$は$\angle \mathrm{ACB}=90^{\circ}$の直角三角形になる。
解答セ:0
$\displaystyle \frac{4}{3} \lt \mathrm{BC}$のとき、緑の直線と青い円は2点$\mathrm{C}_{1}$,$\mathrm{C}_{2}$で交わる。
したがって、△$\mathrm{ABC}$も△$\mathrm{ABC}_{1}$,△$\mathrm{ABC}_{2}$の二通りできる.....と言いたいところだけど、点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{C}_{1}$が重なる場合は反則で、図形$\mathrm{ABC}_{1}$は三角形にならない。
点$\mathrm{A}$と点$\mathrm{C}_{1}$が重なるのは、図Gのように
$\mathrm{BC}_{1}=\mathrm{AB}=4$
のとき。
このとき、図形$\mathrm{ABC}_{1}$は三角形にならないので、できる三角形は△$\mathrm{ABC}_{2}$のひとつだけ。
よって、
$\mathrm{BC}=4$のとき、△$\mathrm{ABC}$はただ一通りに決まる。
解答ス:4
図Gより、このときの△$\mathrm{ABC}_{2}$は$\mathrm{AB}=\mathrm{BC}_{2}$の二等辺三角形である。
解答ソ:1
さらに、$\angle \mathrm{ABC}=90^{\circ}$のときは、図Hのような状態になる。
このときの$\mathrm{BC}$の値を求める。
△$\mathrm{ABC}_{2}$は直角三角形なので、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{BAC}=\frac{\mathrm{B}\mathrm{C}_{2}}{\mathrm{A}\mathrm{C}_{2}}=\frac{1}{3}$
より
$\mathrm{AC}_{2}=3\mathrm{BC}_{2}$
である。
なので、
$\mathrm{BC}_{2}=x$
とおくと、
$\mathrm{AC}_{2}=3x$
とかける。
よって、△$\mathrm{ABC}_{2}$に三平方の定理を使うと
$4^{2}+x^{2}=(3x)^{2}$
と表せる。
これを解くと
途中式
$9x^{2}-x^{2}=4^{2}$
$8x^{2}=4^{2}$
$x^{2}=2$
だから、$\angle \mathrm{ABC}=90^{\circ}$のとき、
$\mathrm{BC}=\sqrt{2}$
である。
解答タ:2
(3) チツテ
最後に、$\mathrm{BC}$の値によって△$\mathrm{ABC}$の形がどうなるかを考える。
再び図Eに戻ってスライダーを動かしてみると、
△$\mathrm{ABC}_{1}$は常に鈍角三角形
であることが分かる。
一方の△$\mathrm{ABC}_{2}$は、ちょっと考えなきゃいけない。
タより、$\angle \mathrm{ABC}_{2}$が直角のとき、$\mathrm{BC}=\sqrt{2}$だった。
また、点$\mathrm{C}$は緑の直線上にあるけど、$\mathrm{BC}$が大きくなるにつれて点$\mathrm{B}$から遠ざかってゆく。
よって、図Iのように、点$\mathrm{C}_{2}$は
$\displaystyle \frac{4}{3} \lt \mathrm{BC} \lt \sqrt{2}$のとき、紫の線上
$\sqrt{2} \lt \mathrm{BC}$のとき、オレンジの線上
にある。
$\displaystyle \frac{4}{3} \lt \mathrm{BC} \lt \sqrt{2}$のとき、つまり点$\mathrm{C}_{2}$が図Iの紫の線上にあるとき、△$\mathrm{ABC}_{2}$は例えば図Jのような形になる。
このとき
$\angle \mathrm{ABC}_{2} \lt 90^{\circ}$
$\angle \mathrm{AC}_{2}\mathrm{B} \lt 90^{\circ}$
なので、△$\mathrm{ABC}_{2}$は鋭角三角形である。
$\sqrt{2} \lt \mathrm{BC}$のとき、つまり点$\mathrm{C}_{2}$が図Iのオレンジの線上にあるとき、△$\mathrm{ABC}_{2}$は例えば図Kのような形になる。
このとき
$90^{\circ} \lt \angle \mathrm{ABC}_{2}$
なので、△$\mathrm{ABC}_{2}$は鈍角三角形である。
以上をまとめると、$\mathrm{BC}$の長さと△$\mathrm{ABC}$の関係は
$\mathrm{BC}$ | $\displaystyle \frac{4}{3}$ | $\cdots$ | $\sqrt{2}$ | $\cdots$ | $4$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|---|
$\mathrm{ABC}_{1}$ | 一つの 直角 三角形 | 鈍角 三角形 | 三角形に ならない | 鈍角 三角形 | ||
$\mathrm{ABC}_{2}$ | 鋭角 三角形 | 直角 三角形 | 鈍角 三角形 |
であることが分かる。
解答チ:5, ツ:7, テ:8