大学入学共通テスト 2018年(平成30年) 試行調査 数学ⅡB 第3問 解説
(1)
まず、母比率と標本比率の復習をしておこう。
復習1
母比率$p$の母集団から、無作為に大きさ$n$の標本を取り出したとき、標本比率$R$の、
期待値$E(R)=p$
標準偏差$\sigma(R)=\sqrt{\frac{p(1-p)}{n}}$
である。
復習1より、標本比率の期待値は母比率と同じ
$ 50\%$
なので、標本$400$人中の人数は
$400\times 0.5=200$ [人]
である。
解答ア:2, イ:0, ウ:0
さらに、標本比率の分布についても復習をしておこう。
復習2
母比率$p$の母集団から大きさ$n$の標本を取り出す。
$n$が大きいとき、標本比率は近似的に正規分布
$\displaystyle N\left(p,\frac{p(1-p)}{n}\right)$
に従う。
復習2より、標本比率は近似的に
$\displaystyle N\left(0.5,\frac{0.5(1-0.5)}{400}\right)$
に従う。
つまり、標本比率の分布は
平均(期待値)が$0.5$
分散が$\displaystyle \frac{0.5(1-0.5)}{400}$
の正規分布で近似できる。
解答エ:5
分布の標準偏差は、分散の正の平方根をとって、
$\displaystyle \sqrt{\frac{0.5(1-0.5)}{400}}=\sqrt{\frac{0.5^{2}}{20^{2}}}$
$=\displaystyle \frac{0.5}{20}$
$=0.025$
である。
解答オ:0, カ:2, キ:5
(2)
(i)
次は、標本平均の分布だ。
これについても復習しておく。
復習3
母平均$\mu$,母標準偏差$\sigma$の母集団から大きさ$n$の標本を取り出す。
このとき、標本平均は
母集団が正規分布に従うときには $n$の値にかかわらす完全に、
母集団がその他の分布のときには $n$が大きければ近似的に、
正規分布
$\displaystyle N\left(\mu,\frac{\sigma^{2}}{n}\right)$
に従う。
復習3より、読書時間の標本平均は、近似的に
$\displaystyle N\left(24,\frac{\sigma^{2}}{400}\right)$
に従う。
つまり、標本平均の分布は
平均(期待値)が$24$
分散が$\displaystyle \frac{\sigma^{2}}{400}$
の正規分布で近似できる。
解答ク:2, ケ:4
標準偏差は、分散の正の平方根をとって、
$\displaystyle \sqrt{\frac{\sigma^{2}}{400}}=\frac{\sigma}{20}$
である。
解答コ:2, サ:0
(ii)
(i)で考えたように、標本平均は近似的に
$\displaystyle N\left(24,\frac{\sigma^{2}}{400}\right)$
に従う。
ここでは$\sigma=40$なので、
$\displaystyle N\left(24,\frac{40^{2}}{400}\right)$
つまり
平均値が$24$
標準偏差が
$\displaystyle \sqrt{\frac{40^{2}}{400}}=\frac{40}{20}$
$=2$式A
の正規分布に従う。
よって、標本平均が$30$分以上となる確率は、図Aの赤い部分の面積にあたる。
この赤い面積を 正規分布表を使って求めるんだけど、
図Aの分布は$\displaystyle N\left(24,\frac{40^{2}}{400}\right)$
正規分布表に載っているのは$N(0,1)$
なので、そのままでは比較ができない。
なので、図Aを標準化して標準正規分布に合わせよう。
復習4
確率変数$X$の平均値を$E(X)$,標準偏差を$\sigma(X)$とする。
標準化した確率変数を$Z$とすると、
$Z=\displaystyle \frac{X-E(X)}{\sigma(X)}$
である。
復習より、図Aの$30$を標準化したものを$Z_{30}$とすると、
$Z_{30}=\displaystyle \frac{30-24}{2}$
$Z_{30}=\displaystyle \frac{6}{2}$
$=3$
となるから、図Aを標準化すると図Bができる。
正規分布表より、図Bの緑の部分の面積は
$0.4987$
だと分かる。
これを$0.5$から引いて、赤い部分の面積は
$0.5-0.4987=0.0013$
である。
解答シ:0, ス:0, セ:1, ソ:3
次は、選択肢から確率が約$0.1587$であるものを探す問題。
何だかよく分からないので、それぞれの選択肢を考えてみよう。
⓪,①は、母集団の確率分布が分からないと計算できない。
母比率,母平均,母標準偏差は問題文中に載っているけど、それだけでは確率分布は分からない。
なので、不適。
P大学の全学生の読書時間の平均値は、(2)の最初に$24$分と仮定した母平均のこと。
なので、母平均が$26$分以上や$64$分以下である確率は$0.1587$にはならないから、不適。
シスセソを求めたときと同じように考えと、標本平均が$64$分以下である確率は、図Cの赤い部分の面積にあたる。
$64$分は、標本平均の期待値(平均値)の$24$分よりも大きい値だ。
なので、確率が$0.5$以下になることはないので、$0.1587$にはならない。
よって、不適。
以上より、正しい選択肢は④しかない。
解答タ;4
余談
問題を解くのには全く必要ないけれど、④の標本平均が$26$分以上である確率を求めると、次のようになる。
シスセソのときと同様に考えて、標本平均が$26$分以上である確率は、図Dの赤い部分。
これを標準化するんだけど、平均値の$24$と$26$の差は$2$で、式Aで求めた標準偏差と等しい。
なので、復習4の式を使って計算しなくても、$26$を標準化すると
$1$
になる。
以上より、求める確率は図Eの赤い部分の面積である。
正規分布表より、図Eの緑の部分の面積は
$0.3413$
であることが分かる。
よって、赤い部分の面積は、
$0.5-0.3413=0.1587$
である。
(3)
(i)
まず、母平均の推定の復習から。
復習5
母標準偏差を$\sigma$,標本平均を$\overline{X}$,標本の大きさを$n$とすると、母平均$\mu$の信頼区間を求める式は
$\displaystyle \overline{X}-z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq\mu\leqq\overline{X}+z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$式B
ただし、信頼度が$ c\%$のとき、
$z$は、右図を標準正規分布の確率分布図として、図中の$z_{0}$の値。
特に、
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$
信頼度$ 99\%$のとき、$z=2.58$
である。
復習5の式Bより、$m$の$ 95\%$の信頼区間は、
$\displaystyle \overline{X}-1.96\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{400}}\leqq\mu\leqq\overline{X}+1.96\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{400}}$
より
$\displaystyle \overline{X}-1.96\cdot\frac{\sigma}{20}\leqq\mu\leqq\overline{X}+1.96\cdot\frac{\sigma}{20}$
とかける。
解答チ:4
アドバイス
これじゃ原理がゼンゼン分からないけど、原理通り解くと時間がかかるから、共通テスト本番では機械的に公式を使おう。
原理に関してはこのページ参照。
(ii)
何やら難しそうな選択肢が並んでいるけれど、びっくりせずに考えよう。
$A\leqq m\leqq B$
は母平均$m$についての信頼区間である。
選択肢⓪,①のように、学生の人数
選択肢②,③,⑤のように、標本平均
についての式ではない。
なので、選択肢の⓪,①,②,③,⑤は不適。
正しい選択肢は
④
である。
解答ツ:4