大学入学共通テスト 2018年(平成30年) 試行調査 数学ⅠA 第5問 解説
(1)
三角形の合同を使って、$\mathrm{AB}'=\mathrm{CX}$を示したい。
そのときに使う三角形を答える問題だ。
$\mathrm{AB}'$は、図Aの赤い辺。
$\mathrm{CX}$は、紫の辺。
この2つ辺が等しいことを示したい。
だから、赤を一辺とする三角形と、紫を一辺とする三角形で、合同になりそうなのを選べばよい。
図Aの左図には選択肢のうちで赤を一辺とする三角形を、右図には紫を一辺とする三角形を示してある。
見比べてみると、青い三角形と赤い斜線の三角形が合同になりそうだ。
よって、ア,イには
△$\mathrm{ABB}'$と△$\mathrm{CBX}$
の
⓪と⑦
が入る。
解答ア:0, イ:7 (順不同)
余談
問題に関係ないけど、この先を一応書いておくと、
△$\mathrm{XBB}'$は正三角形であることを示す
問題文より、$\mathrm{BX}=\mathrm{B}'\mathrm{X}$なので、
△$\mathrm{XBB}'$は二等辺三角形
$\angle \mathrm{BXB}'=60^{\circ}$であることを示す
△$\mathrm{ABC}$は正三角形なので、
$\angle \mathrm{ACB}=60^{\circ}$
ひとつの円弧に対する円周角は等しいから、
$\angle \mathrm{ACB}=\angle \mathrm{AXB}$
なので、$\angle \mathrm{BXB}'=60^{\circ}$
よって、△$\mathrm{XBB}'$はひとつの角が$60^{\circ}$の二等辺三角形なので、
△$\mathrm{XBB}'$は正三角形
$\angle \mathrm{ABB}'=\angle \mathrm{CBX}$を示す
△$\mathrm{ABC}$、△$\mathrm{XBB}'$は正三角形なので、
$\angle \mathrm{ABC}=\angle \mathrm{B}'\mathrm{BX}$
よって、
$\angle \mathrm{ABC}-\angle \mathrm{B}'\mathrm{BC}=\angle \mathrm{B}'\mathrm{BX}-\angle \mathrm{B}'\mathrm{BC}$
より
$\angle \mathrm{ABB}'=\angle \mathrm{CBX}$①
$\mathrm{AB}'=\mathrm{CX}$を示す
△$\mathrm{ABC}$は正三角形なので、
$\mathrm{AB}=\mathrm{CB}$
ひとつの円弧に対する円周角は等しいので、
$\angle \mathrm{BAB}'=\angle \mathrm{BCX}$
①より、
$\angle \mathrm{ABB}'=\angle \mathrm{CBX}$
よって、△$\mathrm{ABB}'$≡△$\mathrm{CBX}$なので、
$\mathrm{AB}'=\mathrm{CX}$②
$\mathrm{AX}=\mathrm{BX}+\mathrm{CX}$を示す
$\mathrm{AX}=\mathrm{AB}'+\mathrm{B}'\mathrm{X}$
②より、
$\mathrm{AB}'=\mathrm{CX}$
問題文より、
$\mathrm{B}'\mathrm{X}=\mathrm{BX}$
よって、
$\mathrm{AX}=\mathrm{BX}+\mathrm{CX}$
となる。
(2) (i)~(iii)
次は、問題2についての問いだ。
以下では、△$\mathrm{PQR}$の各頂点から平面上のある点への距離の和を
$f($ある点$)$
と書く。
例えば、
各頂点から点$\mathrm{Y}$への距離の和$\mathrm{PY}+\mathrm{QY}+\mathrm{RY}$を
$f(\mathrm{Y})$
点$\mathrm{T}$への距離の和$\mathrm{PT}+\mathrm{QT}+\mathrm{RT}$を
$f(\mathrm{T})$
と書く。
図形上に点$\mathrm{T}$をとり、いろいろ動かしてみて、
$f(\mathrm{T})$
が最小になる点$\mathrm{T}$の位置を見つければ、それが点$\mathrm{Y}$だ。
ここでまず気づくのは、点$\mathrm{T}$が△$\mathrm{PQR}$の外部にあるとき、$f(\mathrm{T})$が最小になることはないこと。
点$\mathrm{T}$が△$\mathrm{PQR}$の外部にあるときは、例えば図Bのような図形ができる。
このとき、
$\mathrm{PT}' \lt \mathrm{PT}$
$\mathrm{QT}' \lt \mathrm{QT}$
$\mathrm{RT}' \lt \mathrm{RT}$
なので、
$f(\mathrm{T}') \lt f(\mathrm{T})$
である。
こんな感じで、点$\mathrm{T}$が△$\mathrm{PQR}$の外部にあるとき、△$\mathrm{PQR}$の辺または頂点上に、
$f(\mathrm{T}') \lt f(\mathrm{T})$
となる点$\mathrm{T}'$が必ず作れる。
よって、△$\mathrm{PQR}$の外部にあるときに$f(\mathrm{T})$が最小になることはないから、点$\mathrm{T}$が△$\mathrm{PQR}$の内部または周上にあるときだけ考えればよい。
点$\mathrm{T}$が弧$\mathrm{PQ}$上にあるとき
図Cのように点$\mathrm{T}$が弧$\mathrm{PQ}$(緑の弧)上にあるとき、問題1より
$\mathrm{ST}=\mathrm{PT}+\mathrm{QT}$
なので、
$f(\mathrm{T})=\mathrm{ST}+\mathrm{RT}$
$f(\mathrm{T})$$=$オレンジの線の長さ
である。
解答ウ:5
点$\mathrm{T}$が緑の弧上を動くと、オレンジの線の長さは変化する。
点$\mathrm{T}$が図Cの赤い点のとき、つまり$\mathrm{STR}$が一直線上にあるとき、オレンジの線の長さは最小になる。
このときのオレンジの線は赤い線なので、$f(\mathrm{T})$の最小値は
$f(\mathrm{T})=\mathrm{RS}$式A
である。
余談
証明の残りの部分は、問題中では省略されている。
せっかくだから解説はしておくけれど、試験本番では考えなくていい。
点$\mathrm{T}$が弧$\mathrm{PQ}$上にないとき
図Dのように点$\mathrm{T}$が弧$\mathrm{PQ}$(緑の弧)上にないとき、定理より
$\mathrm{ST} \lt \mathrm{PT}+\mathrm{QT}$
なので、
$\mathrm{ST}+\mathrm{RT} \lt \mathrm{PT}+\mathrm{QT}+\mathrm{RT}$
より
オレンジの線$ \lt f(\mathrm{T})$
といえる。
オレンジの線の最小値は赤い線なので、
$\mathrm{RS} \lt f(\mathrm{T})$
となるから、このときの$f(\mathrm{T})$の最小値は式Aより大きい。
以上より、図Cの赤い点が、求める点$\mathrm{Y}$である。
図Cの赤い点は赤い線と緑の弧の交点なので、
点$\mathrm{R}$と点$\mathrm{S}$を通る直線と、弧$\mathrm{PQ}$の交点
である。
解答エ:2, オ:3 (順不同)
解答カ:3
(2) (iv)
$\angle \mathrm{QPR}$を大きくしてゆくと、図Eのようになる。
図形の変化は「アニメーション開始」 を押して確認。
図形の変化は、スライダーを動かして確認。
図Eより、$\mathrm{RS}$と弧$\mathrm{PQ}$が共有点をもつ限界は、図Fのように点$\mathrm{R}$,$\mathrm{P}$,$\mathrm{S}$Sが一直線になるとき。
$\angle \mathrm{QPS}=60^{\circ}$より、図Fのとき
$\angle \mathrm{QPR} = 180^{\circ}-60^{\circ}$
$\angle \mathrm{QPR}$$ = 120^{\circ}$
となる。
よって、、
$120^{\circ} \lt \angle \mathrm{QPR}$
のとき、$\mathrm{RS}$と弧$\mathrm{PQ}$は交わらないことが分かる。
解答キ:4
(3) (v)
$\angle \mathrm{QPR} \lt 120^{\circ}$のとき
(2)の(i)~(iii)で点$\mathrm{Y}$の位置を求めたときには、辺$\mathrm{PQ}$の外側に正三角形を作って考えた。
ということは、辺$\mathrm{PR}$の外側に正三角形を作っても、同じ作業ができて同じ点$\mathrm{Y}$が求められるはず。
こう考えると、図Gができる。
図Gのオレンジの三角形と赤い三角形は正三角形。
緑の四角形と青い四角形は、円に内接している。
なので、
$\left\{\begin{array}{l}
\angle \mathrm{P}\mathrm{Y}\mathrm{R}+\angle \mathrm{P}\mathrm{V}\mathrm{R}=180^{\circ}\\
\angle \mathrm{Q}\mathrm{Y}\mathrm{P}+\angle \mathrm{Q}\mathrm{S}\mathrm{P}=180^{\circ}
\end{array}\right.$
となるから、
$\angle \mathrm{PYR}=\angle \mathrm{QYP}=120^{\circ}$
である。
また、
$\angle \mathrm{RYQ}=360^{\circ}-(\angle \mathrm{PYR}+\angle \mathrm{QYP})$
$\angle \mathrm{RYQ}$$=120^{\circ}$
なので、
$\angle \mathrm{PYR}=\angle \mathrm{QYP}=\angle \mathrm{RYQ}$
であることが分かる。
解答ク:3
$120^{\circ} \lt \angle \mathrm{QPR}$のとき
$120^{\circ} \lt \angle \mathrm{QPR}$のとき、例えば図Hのような図形が考えられる。
このとき、紫の点が点$\mathrm{Y}$だと簡単なんだけど、点$\mathrm{Y}$は△$\mathrm{PQR}$の外部にはないからダメ。
なので、ウ~カを考えたときと同じようにやってみよう。
(2) (i)~(iii)と同様に、
$f(\mathrm{T})=$オレンジの線
である。
点$\mathrm{T}$が緑の弧上を動くときのオレンジの線が最短になるのは、点$\mathrm{T}$が点$\mathrm{P}$に重なるとき。
このときのオレンジの線は赤い線なので、$f(\mathrm{T})$の最小値は
$\mathrm{RP}+\mathrm{SP}$
である。
(2) (i)~(iii)と同様に、
$\mathrm{RP}+\mathrm{SP} \lt f(\mathrm{T})$
となる。
以上より、$120^{\circ} \lt \angle \mathrm{QPR}$のときの点$\mathrm{Y}$は点$\mathrm{P}$なので、選択肢の
⑥
が正しい。
解答ケ:6