大学入学共通テスト 2018年(平成30年) 試行調査 数学ⅠA 第3問 解説

はじめに

文章を短くするために、解説では、
「1番目の人」を「A君 「2番目の人」を「B君 「当たりくじを引く」を「当たる」

「箱A(B)から当たりくじを引く」を「箱A(B)で当たる」 A君と同じ(異なる)箱から当たりくじを引く」を「同(異)箱で当たる」 と書く。

また、「A君が当たった場合(事象$W$のとき)の条件付き確率」を、単に「条件付き確率」と書く。

(1) ア~ク

まず、A君が箱Aで当たる確率だ。

A君が箱Aを選ぶ確率は、
$P(A)=\displaystyle \frac{1}{2}$
箱Aから当たりくじを引く確率は
$P_{A}(W)=\displaystyle \frac{10}{100}$
である。

なので、求める確率は
$P(A\displaystyle \cap W)=P(A)\cdot P_{A}(W)=\frac{1}{2}\cdot\frac{10}{100}$
$P(A\displaystyle \cap W)=P(A)\cdot P_{A}(W)$$\displaystyle =\frac{1}{20}$式A
となる。

解答ア:1, イ:2, ウ:0


同様に、A君が箱Bで当たる確率は、
$P(B\displaystyle \cap W)=P(B)\cdot P_{B}(W)=\frac{1}{2}\cdot\frac{5}{100}$
$P(B\displaystyle \cap W)=P(B)\cdot P_{B}(W)$$\displaystyle =\frac{1}{40}$式B
である。

よって、A君が当たる確率は、式Aと式Bをたして
$P(W)=\displaystyle \frac{1}{20}+\frac{1}{40}$
$P(W)$$\displaystyle =\frac{2}{40}+\frac{1}{40}$
$P(W)$$\displaystyle =\frac{3}{40}$式C
となる。

解答エ:3, オ:4, カ:0


問題文より、求める条件付き確率$P_{W}(A)$は
$P_{w}(A)=\displaystyle \frac{P(A\cap W)}{P(W)}$式D
とかける。

いま、
式Aより、$P(A\displaystyle \cap W)=\frac{1}{20}$ 式Cより、$P(W)=\displaystyle \frac{3}{40}$ であることが分かっている。

よって、式Dは
$P_{w}(A)=\displaystyle \frac{\frac{1}{20}}{\frac{3}{40}}$
$P_{w}(A)$$\displaystyle =\frac{1}{20}\cdot\frac{40}{3}$
$P_{w}(A)$$\displaystyle =\frac{2}{3}$
となる。

解答キ:2, ク:3


ついでに、A君が当たったとき、それが箱Bである条件付き確率$P_{W}(B)$も求めておこう。

式Dと同様に
$P_{W}(B)=\displaystyle \frac{P(B\cap W)}{P(W)}$
となるので、これに式B,式Cを代入して、
$P_{W}(B)=\displaystyle \frac{\frac{1}{40}}{\frac{3}{40}}$
$P_{w}(B)$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
である。

Pw(B) の別解

A君が当たったとき、くじを引いた箱はAとBの2通りしかない。
なので、
$P_{W}(A)+P_{W}(B)=1$式E
の関係が成り立つ。

ここで、$P_{W}(A)=\displaystyle \frac{2}{3}$なので、
$P_{W}(B)=1-\displaystyle \frac{2}{3}$
$P_{W}(B)$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
である。

オカの別解

箱A,箱Bを選ぶ確率が同じで、それぞれに入っているくじの数も同じ。
なので、くじは全部で$200$本あるけど、どのくじも引かれる確率は$\displaystyle \frac{1}{200}$で等しい。

両方の箱に入っている当たりくじの数は、
$10+5=15$
なので、A君が当る確率$P(W)$は
$P(W)=\displaystyle \frac{15}{200}$
$P(W)$$\displaystyle =\frac{3}{40}$
である。

解答エ:3, オ:4, カ:0

また、どのくじも引かれる確率は等しいので、引いた当たりくじが箱Aから出た条件付き確率$P_{W}(A)$は
$P_{W}(A)=\displaystyle \frac{10}{15}$
$P_{W}(A)$$\displaystyle =\frac{2}{3}$
である。

解答キ:2, ク:3

同様に、引いた当たりくじが箱Bから出た条件付き確率$P_{W}(B)$は
$P_{W}(B)=\displaystyle \frac{5}{15}$
$P_{W}(B)$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
となる。

(1) コ~ソ

A君が当たりくじを引いたあと、箱に残っているくじの数は表Aのようになっている。

表A
A君が当たったのが
箱Aのとき
$P_{W}(A)=\displaystyle \frac{2}{3}$
箱Bのとき
$P_{W}(B)=\displaystyle \frac{1}{3}$
A君
引いた
あと
箱A
には
当たり$9$本
全部で$99$本
当たり$10$本
全部で$100$本
箱B
には
当たり$5$本
全部で$100$本
当たり$4$本
全部で$99$本

B君が同箱で当たる場合は、表Aの青い部分。
なので、条件付き確率は
$P_{W}(A)\displaystyle \times\frac{9}{99}+P_{W}(B)\times\frac{4}{99}$
である。

解答ケ:4

これはさらに
$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{9}{99}+\frac{1}{3}\times\frac{4}{99}$
とかける。

これを計算すると、
$\displaystyle \frac{2\cdot 9+1\cdot 4}{3\cdot 99}$
$=\displaystyle \frac{22}{3\cdot 99}$
$=\displaystyle \frac{2}{3\cdot 9}$
$=\displaystyle \frac{2}{27}$
となる。

解答コ:2, サ:2, シ:7


B君が異箱で当たる場合は、表Aの緑の部分。
なので、条件付き確率は
$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{5}{100}+\frac{1}{3}\times\frac{10}{100}$
とかける。

これを計算すると、
$\displaystyle \frac{2\cdot 5+1\cdot 10}{3\cdot 100}=\frac{20}{3\cdot 100}$
$\displaystyle \frac{2\cdot 5+1\cdot 10}{3\cdot 100}$$\displaystyle =\frac{1}{3\cdot 5}$
$\displaystyle \frac{2\cdot 5+1\cdot 10}{3\cdot 100}$$\displaystyle =\frac{1}{15}$
である。

解答ス:1, セ:1, ソ:5

(2)

箱Bの当たりくじを$b$本とすると、表Aがどうなるか考えてみよう。

A君が箱Aで当たる確率は
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\frac{10}{100}=\frac{10}{200}$
箱Bで当たる確率は
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\frac{b}{100}=\frac{b}{200}$
なので、A君が当たる確率は
$\displaystyle \frac{10}{200}+\frac{b}{200}=\frac{b+10}{200}$
である。

よって、A君が箱Aで当たる条件付き確率$P_{W}(A)$は、
$$ \begin{align} P_{W}(A)&=\frac{\cfrac{10}{200}}{\cfrac{b+10}{200}}\\ &=\frac{10}{b+10} \end{align} $$

箱Bで当たる条件付き確率$P_{W}(B)$は、
$$ \begin{align} P_{W}(B)&=\frac{\cfrac{b}{200}}{\cfrac{b+10}{200}}\\ &=\frac{b}{b+10} \end{align} $$ となる。

Pw(B) の別解

式Eより
$P_{W}(A)+P_{W}(B)=1$
なので、これに
$P_{W}(A)=\displaystyle \frac{10}{b+10}$
を代入すると、

$P_{W}(B) \displaystyle =\frac{b+10}{b+10}-\frac{10}{b+10}$
$P_{W}(B)$$\displaystyle =\frac{b}{b+10}$
となる。

ここまでの別解

全部で$200$本のどのくじも、引かれる確率は等しい。
なので、$b+10$本あるどの当たりくじも、引かれる確率は等しい。

よって、引いた当たりくじが箱Aから出た条件付き確率$P_{W}(A)$は
$P_{W}(A)=\displaystyle \frac{10}{b+10}$
箱Bから出た条件付き確率$P_{W}(B)$は
$P_{W}(B)=\displaystyle \frac{b}{b+10}$
となる。

このとき、表Aは表Bのように書きなおせる。

表B
A君が当たったのが
箱Aのとき
$P_{W}(A)=\displaystyle \frac{10}{b+10}$
箱Bのとき
$P_{W}(B)=\displaystyle \frac{b}{b+10}$
A君
引いた
あと
箱A
には
当たり$9$本
全部で$99$本
当たり$10$本
全部で$100$本
箱B
には
当たり$b$本
全部で$100$本
当たり$b-1$本
全部で$99$本

B君が同箱で当たる場合は、表Bの青い部分。
なので、条件付き確率は
$\displaystyle \frac{10}{b+10}\times\frac{9}{99}+\frac{b}{b+10}\times\frac{b-1}{99}$
$=\displaystyle \frac{b(b-1)+90}{99(b+10)}$式F
とかける。

いま、箱Bの当たりくじの数は$7$本なので、
$b=7$
だから、式Fは
$\displaystyle \frac{7\cdot 6+90}{99(7+10)}$
となる。

これを計算して、求める条件付き確率は、
$\displaystyle \frac{7\cdot 2+30}{33\cdot 17}$
$=\displaystyle \frac{44}{33\cdot 17}$
$=\displaystyle \frac{4}{3\cdot 17}$
$=\displaystyle \frac{4}{51}$
である。

解答タ:4, チ:5, ツ:1

さらに、問題文中に答えがあるけど、せっかくなのでB君が異箱で当たる条件付き確率も求めてみよう。

表Bの緑の部分より
$\displaystyle \frac{10}{b+10}\times\frac{b}{100}+\frac{b}{b+10}\times\frac{10}{100}$
$=\displaystyle \frac{20b}{100(b+10)}$
$=\displaystyle \frac{b}{5(b+10)}$式G
とかける。

ここでは
$b=7$
なので、式Gは
$\displaystyle \frac{7}{5(7+10)}$
より
$\displaystyle \frac{7}{5\cdot 17}=\frac{7}{85}$
となる。

(3)

これまでの結果を振り返ってみよう。

(1)より、箱Bの当たりくじが$5$本のとき、B君が当たる条件付き確率は
同箱では $\displaystyle \frac{2}{27}$ 異箱では $\displaystyle \frac{1}{15}=\frac{2}{30}$ だった。
なので、このとき、B君が当たる確率は
同箱$ \gt $異箱
である。

(2)より、箱Bの当たりくじが$7$本のとき、B君が当たる条件付き確率は
同箱では $\displaystyle \frac{4}{51}=\frac{28}{357}$ 異箱では $\displaystyle \frac{7}{85}=\frac{28}{340}$ だった。
なので、このとき、B君が当たる確率は
同箱$ \lt $異箱
である。

つまり、B君は、箱Bの当たりくじの数が
$5$本のときは、同箱 $7$本のときは、異箱 を選んだ方が有利だ。

よって、答えは選択肢の
①または②
であることが分かる。


①と②のどちらが答えかを見つけるために、箱Bの当たりくじの数$b$が$6$本のときを考えよう。

$b=6$のとき、

B君が同箱で当たる条件付き確率は、式Fより
$\displaystyle \frac{6(6-1)+90}{99(6+10)}$

途中式 $=\displaystyle \frac{2\cdot 5+30}{33\cdot 16}$
$=\displaystyle \frac{5+15}{33\cdot 8}$
$=\displaystyle \frac{20}{33\cdot 8}$
$=\displaystyle \frac{5}{33\cdot 2}$
$=\displaystyle \frac{5}{66}$

B君が異箱で当たる条件付き確率は、式Gより
$\displaystyle \frac{6}{5(6+10)}$

途中式 $=\displaystyle \frac{6}{5\cdot 16}$
$=\displaystyle \frac{3}{5\cdot 8}$
$=\displaystyle \frac{3}{40}$

となる。

ここで、
$\displaystyle \frac{5}{66}=\frac{15}{198}$ $\displaystyle \frac{3}{40}=\frac{15}{200}$ なので、
$\displaystyle \frac{5}{66} \gt \frac{3}{40}$
だから、$b=6$のときは同箱が有利だ。

以上より、正しい選択肢は

である。

解答テ:1

別解

上の解とやっていることは同じだけど、途中式が違う方法も紹介しておく。

式F,式Gより、A君が当たりくじを引いたとき、B君
同箱で当たる条件付き確率は
$\displaystyle \frac{b(b-1)+90}{99(b+10)}$
異箱で当たる条件付き確率は
$\displaystyle \frac{b}{5(b+10)}$
だった。

なので、B君が同箱から引いた方が有利な$b$の範囲は
$\displaystyle \frac{b(b-1)+90}{99(b+10)} \gt \frac{b}{5(b+10)}$
とかける。

$0 \lt b+10$なので、この式は
$\displaystyle \frac{b(b-1)+90}{99} \gt \frac{b}{5}$式H
と変形できる。

式Hに$b=6$を代入すると
$\displaystyle \frac{6(6-1)+90}{99} \gt \frac{6}{5}$
より

途中式 $\displaystyle \frac{2(6-1)+30}{33} \gt \frac{6}{5}$
$\displaystyle \frac{6-1+15}{33} \gt \frac{3}{5}$
$\displaystyle \frac{20}{33} \gt \frac{3}{5}$
$20\cdot 5 \gt 3\cdot 33$
$100 \gt 99$
となって、式Hは成り立つ。

式Hが成り立つということは、$b=6$は、B君が同箱から引いた方が有利な範囲に入っているということ。

以上より、正しい選択肢は

である。

解答テ:1