大学入学共通テスト 2018年(平成30年) 試行調査 数学ⅡB 第1問 [3] 解説
(1)
まず、指数と対数の関係の復習をしよう。
復習1
$0 \lt a$ かつ $a\neq 1$,$0 \lt b$のとき、
$a^{b}=c\Leftrightarrow\log_{a}c=b$
である。
復習1より、
$\log_{10}2=0.3010$式A
は
$10^{0.3010}=2$
とかける。
解答チ:1
別解
復習1の方法を使わないと、次のようになる。
$\log_{10}2=0.3010$式A
は、左辺は対数,右辺は対数じゃないので、そのまま比較ができない。
なので、右辺を対数にしよう。
復習2
対数じゃない数を対数にするには、
$1=\log_{a}a$
をかける。
復習2より、式Aの右辺に$1=\log_{10}10$をかけて、
$\log_{10}2=0.3010\times 1$
$\log_{10}2$$=0.3010\times\log_{10}10$
とかける。
右辺を整理すると
$\log_{10}2=\log_{10}10^{0.3010}$
なので
$10^{0.3010}=2$
であることが分かる。
解答チ:1
次は、$2$ツをつくりたい。
なので、底が$2$の対数をつくりたい。
というわけで、底の変換だ。
式Aの対数の底を$2$に変換すると
$\displaystyle \frac{\log_{2}2}{\log_{2}10}=0.3010$
より
$\displaystyle \frac{1}{\log_{2}10}=0.3010$
$\displaystyle \log_{2}10=\frac{1}{0.3010}$
となる。
復習1より、この式は
$2^{\frac{1}{0.3010}}=10$
と表せる。
解答ツ:5
別解
この問題にしか使えないかも知れないけど、選択肢から答えを見つけるだけなら、次のような考え方もできる。
$2^{3}=8$
$2^{4}=16$
なので、
$2^{3} \lt 10 \lt 2^{4}$
となるけど、底の$2$は$1$より大きいので、
$3 \lt $ツ$ \lt 4$
であることが分かる。
選択肢のうちで、この範囲に入るのは
⑤
の$\displaystyle \frac{1}{0.3010}$しかない。
解答ツ:5
(2) (i)~(iii)
まず、対数関数のグラフの形の復習をしておこう。
復習3
対数関数$y=\log_{a}x$のグラフは 次のような形になる。
$0 \lt a \lt 1$のとき
$1 \lt a$のとき
この問題では底が$10$で$1$より大きいので、右側のグラフのような形になる。
対数ものさしのつくりかたのルールは、図Aのようになっている。
つまり、対数ものさしA,Bともに、
目盛りに$n$と書いてある位置の実際の値は$\log_{10}n$
だ。
(i)
復習3で復習したように、$y=\log_{10}x$のグラフは、$x$が大きくなるほど傾きが小さくなる。
なので、
$1\leqq x\leqq 2$の傾き(図Aの赤い点から紫の点までの傾き)
よりも
$3\leqq x\leqq 4$の傾き(緑の点から青い点までの傾き)
の方が小さい。
言いかえると、$y$つまり$\log_{10}x$の増加量が少ない。
よって、$3$と$4$の目盛りの間隔は、$1$と$2$の間よりも小さい。
解答テ:2
(ii)
対数ものさしAで、目盛りの$2$から$a$の間隔は
$\log_{10}a-\log_{10}2$
対数ものさしBで、目盛りの$1$から$b$の間隔は
$\log_{10}b-\log_{10}1$
とかける。
この2つが等しいので、
$\log_{10}a-\log_{10}2=\log_{10}b-\log_{10}1$
より
$\log_{10}a=\log_{10}2+\log_{10}b-0$
$\log_{10}a$$=\log_{10}2b$
なので
$a=2b$
である。
解答ト:1
(iii)
さらに新しいものさしCが出てきた。
このものさしCは、
目盛りに$n$と書いてある位置の実際の値は$n\log_{10}2$
であるという。
対数ものさしAで、目盛りの$1$から$d$の間隔は
$\log_{10}d-\log_{10}1$
ものさしCで、目盛りの$0$から$c$の間隔は
$c\log_{10}2-0\log_{10}2$
とかける。
この2つが等しいので、
$\log_{10}d-\log_{10}1=c\log_{10}2-0\log_{10}2$
より
$\log_{10}d-0=c\log_{10}2-0$
$\log_{10}d=\log_{10}2^{c}$
なので
$d=2^{c}$
である。
解答ナ:2
(2) (iv)
突然見たことがない問題が出てきたけれど、大丈夫。
これまでで分かったことを使う方向で考えよう。
(ii)より、図Bのとき
$a=2b$式B
の関係が成り立った。
このときの計算から、図Bの青い数字と緑の数字をかけると赤い数字になることが分かる。
つまり、対数ものさしA,Bを使うと、かけ算ができる。
よって、選択肢の
②
の計算ができる。
また、このとき、式Bを変形した
$b=\displaystyle \frac{a}{2}$
の関係も成り立つ。
このことから、赤い数字を青い数字で割ると緑の数字になることが分かる。
つまり、対数ものさしA,Bを使うと、割り算もできる。
よって、選択肢の
③
の計算もできる。
(iii)より、図Cのとき
$d=2^{c}$式C
の関係が成り立った。
このときの計算から、図Cの青い数字を緑の数字乗すると赤い数字になることが分かる。
つまり、対数ものさしAとものさしCを使うと、指数の計算ができる。
よって、選択肢の
④
の計算ができる。
また、このとき、式Cを変形した
$\log_{2}d=c$
の関係も成り立つ。
このことから、青い数字を底,赤い数字を真数とした対数の値は緑の数字であることが分かる。
つまり、対数ものさしAとものさしCを使うと、対数の計算ができる。
よって、選択肢の
⑤
の計算もできる。
一方、等間隔の目盛りがあるものさしが2本あれば、たし算と引き算もできる。
ものさしCの目盛りは等間隔だけど、ものさしC同士を合わせるのはこの問題ではダメ。
なので、たし算や引き算はできない。
以上より、実行できる選択肢は
②,③,④,⑤
である。
解答ニ:2,3,4,5