大学入学共通テスト 2018年(平成30年) 試行調査 数学ⅠA 第2問 [1] 解説

(1) 問題を解く準備

最初に、情報を整理しておこう。

三角形ABCは、
AC:AB:BC=1:2:3
の直角三角形。

問題文より
AB=20
なので、
AC=10 BC=103 である。

Pは、AC上を毎秒1の速さで移動するので、点Cに到着するのは、
Aを出発した10秒後 である。

PQR同時に出発して同時に到着するので、
Qが点Bから点Aに到着するのに10 Rが点Cから点Bに到着するのに10 かかる。

ここまで整理できたところで、問題を解く。

(1) (i)

2秒後の各点の位置は、図Aのようになる。
図中、そのまま書いてある数字は長さ、丸で囲んでいる数字は比率を表している。

図A
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図A

Pは、毎秒12秒ぶん移動しているから、
AP=2
Qは、10秒かかる道のりの2秒ぶん移動しているから、
BA:BQ=10:2
より
AQ:BQ=8:2
である。


まず、PQ(図Aの青い線)から。

図Aの青い三角形に余弦定理を使うと、
PQ2=AP2+AQ22APAQcosBAC式A
とかける。

いま、
AP=2 AQ=20×88+2
      =16
BAC=60 である。

よって、式Aは
PQ2=22+162221612
となる。

これを計算して、
PQ2=22(1+828)
PQ2=2257
PQ=257
である。

解答ア:2, イ:5, ウ:7


また、△APQ(図Aの青い三角形)の面積Sは、
S=12APAQsinBAC
とかける。

これにそれぞれの値を代入して、
S=1221632
より
S=83
である。

解答エ:8, オ:3

(1) (ii)

t秒後の各点の位置を考えると、図Bができる。
図中、そのまま書いてある数字は長さ、六角形で囲んでいる数字は比率を表している。

図B
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図B

Pは、毎秒1t秒ぶん移動しているから、
AP=t
Rは、10秒かかる道のりのt秒ぶん移動しているから、
CB:CR=10:t
である。


PR(図Bの紫の線)の長さは、図Bの紫の三角形が直角三角形であることを使って求める。

三平方の定理より、
PR2=CP2+CR2式B
とかける。

いま、
CP=10t CR=t10×BC
      =t3
である。

よって、式Bは
PR2=(10t)2+(t3)2
より
PR2=10020t+t2+3t2
       =4t220t+100式B'
と表せる。

式B'を平方完成すると、
PR2=4(t25t)+100

途中式        =4(t2252t+52225222)+100
       =4(t52)245222+100
       =4(t52)2+75式B''
となる。


tの定義域は
0t10
なので、横軸をt,縦軸をPR2として式B''のグラフをかくと、図Cができる。

図C
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図C

例えばPR=15PR2=152なので、図Cの青い線。
この青い線と式B''のグラフの共有点は、図Cの青い点ひとつだけなので、PR=15になるのは1回だけだ。

同様に考ると、PR2

図Cの緑の部分に入る場合
つまり 75<PR2100 の場合、
PRの長さとして二回とり得る

オレンジの部分に入る場合
つまり PR2=75100<PR2300 の場合、
PRの長さとして一回だけとり得る

色のついていない部分に入る場合
つまり PR2<75300<PR2 の場合、
PRの長さとしてとり得ない

ことが分かる。


ここまで分かったところで、選択肢をひとつずつ確認しよう。

(52)2=50
なので、図Cの色のついていない部分に入る。
よって、PR=52 になることはない。

(53)2=75
なので、図Cのオレンジの部分に入る。
よって、PR=53 になるのは一回だけ。

(45)2=80
なので、図Cの緑の部分に入る。
よって、PR=45 になるのは二回。

102=100
なので、図Cの緑の部分に入る。
よって、PR=10 になるのは二回。

(103)2=300
なので、図Cのオレンジの部分に入る。
よって、PR=103 になるのは一回だけ。

以上より、PRの値として、
とり得ない値は、⓪ 一回だけとり得る値は、①,④ 二回だけとり得る値は、②,③ である。

解答カ:0, キ:1,4, ク:2,3 (順不同)

(1) (iii)

次は、面積の問題だ。
t秒後のS1S2S3を図にすると、図Dのようになる。
図中、そのまま書いてある数字は長さ、丸や六角形で囲んでいる数字は比率を表している。

図D
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図D

Qは、10秒かかる道のりのt秒ぶん移動しているから、
BA:BQ=10:t
より
AQ:BQ=10t:t
同様に、
BR:CR=10t:t
である。


三角形ABCの面積をTとする。

図Dを見ると、青い三角形,緑の三角形,紫の三角形はすべて、三角形ABC
底辺は10t10 高さはt10 になっている。

なので、
S1=S1=S2=T×10t10×t10
である。

以上より、時刻tにかかわらず、常に
S1=S1=S2
となる。

以上、考え方を説明した。
(う)の正解例はここでは省略する。
公開されている正解例はリンクを参照してほしい。

→ 数学入試問題データベースサイト
       大学入試数学問題集成さんで
          正解例を見る。

別解

三角形の面積の公式
S=12bcsinA
を使う方法だと、次のようになる。


三角形ABCの面積をTとする。

三角形の面積の公式より、
S1=12APAQsinBAC
とかける。

この式のAPAQは、
AP=t10AC AQ=10t10AB である。

よって、S1
S1=12t10AC10t10ABsinBAC
S1=t1010t10× 12ACABsinBAC
となる。

この式の赤い部分は三角形ABCの面積Tなので、
S1=t1010t10T
と表せる。

同様に、
S2=t1010t10T
S3=t1010t10T
となるので、tの値にかかわらず
S1=S2=S3
である。

(2)

PQRが出発してからの時間をtとする。
また、△ABCの面積をTとする。

これまで通り、図E中のそのまま書いてある数字は長さ、丸や六角形で囲んでいる数字は比率を表している。

図E
大学入学共通テスト2018年試行調査 数学ⅠA第2問[1] 解説図E

まず、図中の色のついた3つの三角形の面積を考えよう。

(1)の(iii)と同じように考えると、△ABCと比べて、3つの三角形はすべて
底辺は12t12 高さはt12 である。

なので、3つの三角形それぞれの面積は、
T×12t12×t12=T122t(12t)式C
とかける。

なので、△PQRの面積は、△ABCの面積から式Cの3倍を引いて、
T3×T122t(12t)式D
と表せる。

いま、△ABCの面積Tは、
T=12512
T=30
なので、式Dは
303×30122t(12t)
となる。


これが12になればよいので、方程式
303×30122t(12t)=12
ができる。
これを解く。

分数部分を約分して、
1858t(12t)=0
両辺を8倍して、
1885t(12t)=0
5t2512t+188=0
と変形できる。

解の公式より、このときのt
t=512±(512)24518825

途中式 t=512±4232(52522)25
t=512±435(522)25
t=56±2355
t=30±655式E
となる。

解答ケ:3, コ:0, サ:6, シ:5, ス:5

補足

この問題では、問題文中のマスから30+65530655も答えだと分かるので、これ以上の計算をする必要はない。
けれど、記述問題のときには、以下のように、式Eがtの定義域に入っているかどうかの確認が必要になる。


いま、tの定義域は
0t12式F
である。

式Eは
t=305±655
t=6±65式E'
とかける。

ここで、
2<5<3
なので、
62>65>63
より
2<65<3
とかける。

複合がのとき、

2<65<3
より、
3<65<2
なので、式E'は
63<665<62
とかけるから、
3<665<4
である。

これは、式Fの範囲に含まれる。

複合が+のとき、

2<65<3
より、式E'は
6+2<665<6+3
なので
8<665<9
である。

これは、式Fの範囲に含まれる。

以上より、求めるt(秒後)は、
30±655秒後
である。