大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 本試 数学ⅡB 第4問 解説
(1) ア~オ
まず、$a_{3}$から。
$a_{3}$、つまり3年目の初めの預金額は、2年目の終わりの預金額に$p$を加えたもの。
問題文の参考図中を見ると、2年目の終わりの預金額は
$1.01\{1.01(10+p)+p\}$
なので、
$a_{3}=1.01\{1.01(10+p)+p\}+p$
である。
解答ア:2
さらに、
年初の預金額を$1.01$倍すると 年末の預金額
年末の預金額に$p$を加えると 翌年初の預金額
なので、年初の預金額を$a_{n}$,翌年初の預金額を$a_{n+1}$とすると、
$a_{n+1}=1.01a_{n}+p$式A
と表せる。
解答イ:0, ウ:3
ここで漸化式の復習をしておくと、
復習
漸化式の基本の形は4つあって、
$p_{n+1}=p_{n}+d$
公差$d$の等差数列
$p_{n+1}=rp_{n}$
公比$r$の等比数列
$p_{n+1}=p_{n}+f(n)$
階差数列の一般項が$f(n)$
$ p_{n+1}=\alpha p_{n}+\beta$
特性方程式を使って解く
だった。
式Aは、復習の4つめのパターンだ。
なので、特性方程式を使って変形しよう。
式Aを
$a=1.01a+p$
として$a$を求めると、
$a-1.01a=p$
$-0.01a=p$
$a=-100p$
となる。
この$a$を式Aの両辺から引いて変形すると
$a_{n+1}+100p=1.01a_{n}+p+100p$
$\phantom{ a_{n+1}+100p } =1.01(a_{n}+100p)$式B
とかける。
解答エ:4, オ:0
別解
この部分は、漸化式の基本の形を使わずに、エオの式を変形して解くこともできる。
$a_{n+1}+\fbox{ エ }=\fbox{ オ }(a_{n}+\fbox{ エ })$
を変形すると
$a_{n+1}=\fbox{ オ }(a_{n}+\fbox{ エ })-\fbox{ エ }$
$\phantom{ a_{n+1} } =\fbox{ オ }a_{n}+\fbox{ オ }\times \fbox{ エ } - \fbox{ エ }$
$\phantom{ a_{n+1} } =\fbox{ オ }a_{n}+\fbox{ エ }(\fbox{ オ }-1)$
となる。
これが式Aと同じ式なので、
$\fbox{ オ }=1.01$
$\fbox{ エ }(\fbox{ オ }-1)=p$
であるはず。
これを連立方程式として解いて、
$\fbox{ エ }(1.01-1)=p$
$0.01\fbox{ エ }=p$
$\fbox{ エ }=100p$
より、
$\fbox{ エ }=100p$,$\fbox{ オ }=1.01$
となる。
解答エ:4, オ:0
以上が、$a_{n}$を求めるための二つの方針のひとつめだ。
$a_{n}$はふたつめの方針で求めた方が楽なんだけど、せっかくだからひとつめの方針による計算も載せておく。
$b_{n}=a_{n}+100p$式C
とおくと、
$b_{n+1}=a_{n+1}+100p$
より、式Bは
$b_{n+1}=1.01b_{n}$
とかける。
これは、復習の漸化式の基本の形の2つ目で、
$\{b_{n}\}$は公比$1.01$の等比数列
だ。
また、$a_{1}=10+p$なので、式Cより、
$b_{1}=10+p+100p$
$\phantom{ b_{1} } =10+101p$
である。
よって、$\{b_{n}\}$の一般項$b_{n}$は、
$b_{n}=b_{1}\times(\text{公比})^{n-1}$
$\phantom{b_{n}}=(10+101p)\times 1.01^{n-1}$
と表せる。
これを式Cに代入すると、
$a_{n}+100p=(10+101p)\times 1.01^{n-1}$
$a_{n}=(10+101p)\times 1.01^{n-1}-100p$式D
途中式
$\phantom{ a_{n} }=10\times 1.01^{n-1}+101p\times 1.01^{n-1}-100p$
$\phantom{ a_{n} } =(101\times 1.01^{n-1}-100)p+10\times 1.01^{n-1}$
$\phantom{ a_{n} } =100(1.01\times 1.01^{n-1}-1)p+10\times 1.01^{n-1}$
となる。
これは$n=1$のときも成り立つから、
$a_{n}=100(1.01^{n}-1)p+10\times 1.01^{n-1}$式D'
であることが分かる。
アドバイス
後の説明の都合上、ここでは式Dを式D'に変形した。
通常は式Dのままで大丈夫。
(1) カ~ケ
問題文より、1年目の初めに預金口座にあった$10$万円は、$n$年目の初めには
$10\times 1.01^{n-1}$式E
万円になる。
このことから、
1年目の初めに入金した、つまり1年目の初めに預金口座にあった$p$万円は、$n$年目の初めには
$p\times 1.01^{n-1}$式F$1$
解答カ:2
2年目の初めに入金した$p$万円は、$n$年目の初めには
$p\times 1.01^{n-2}$式F$2$
解答キ:3
$\hspace{100px} \vdots$
$n$年目の初めに入金した$p$万円は、$n$年目の初めには
$p\times 1.01^{n-n}=p\times 1.01^{0}$式F$n$
万円になると考えられる。
よって、$n$年目の初めの預金額$a_{n}$は、式Eと式F$1$~式F$n$をたして
$a_{n}=10\times 1.01^{n-1}+p\times 1.01^{n-1}$
$\hspace{100px}+p\times 1.01^{n-2}+ \cdots+p\times 1.01^{0}$
と表せる。
これを変形すると
$a_{n}=10\times 1.01^{n-1}$
$\hspace{70px}+p(1.01^{n-1}+1.01^{n-2}+\cdots+1.01^{0})$
より
$a_{n}=10\times 1.01^{n-1}+p\textcolor{red}{\displaystyle\sum_{k=1}^{n}1.01^{k-1}}$式G
となる。
解答ク:2
この式の赤い部分は、公式より
$\displaystyle\sum_{k=1}^{n}1.01^{k-1}=\dfrac{1-1.01^{n}}{1-1.01}$
$\hspace{80px} =\dfrac{1.01^{n}-1}{0.01}$
$\hspace{80px} =100(1.01^{n}-1)$
と変形できる。
解答ケ:1
これを式Gに代入して、$a_{n}$は
$a_{n}=10\times 1.01^{n-1}+100(1.01^{n}-1)p$
$\phantom{ a_{n} } =100(1.01^{n}-1)p+10\times 1.01^{n-1}$式D'
であることが分かる。
(2)
10年目の初めの預金額は
$a_{10}$
なので、10年目の終わりの預金額は
$1.01a_{10}$
である。
これが30万円以上なので、不等式
$1.01a_{10}\geqq 30$
を解けばよい。
解答コ:3
$a_{n}$に式D'を代入すると
$1.01\{100(1.01^{10}-1)p+10\times 1.01^{9}\}\geqq 30$
と表せる。
これを解いて、
$101(1.01^{10}-1)p+10\times 1.01^{10}\geqq 30$
$101(1.01^{10}-1)p\geqq 30-10\times 1.01^{10}$
$p\geqq\dfrac{30-10\times 1.01^{10}}{101(1.01^{10}-1)}$
である。
解答サ:3, シ:0, ス:1, セ:0
(3)
(1)で考えたように
1年目の初めに預金口座にあった$10$万円は、$n$年目の初めには
$10\times 1.01^{n-1}$
万円になる
1年目の初めに入金した、つまり1年目の初めに預金口座にあった$p$万円は、$n$年目の初めには
$p\times 1.01^{n-1}$
万円になる
ことが分かっている。
このことから、1年目の初めに$3$万円預金額が多かった場合、その$3$万円は、$n$年目の初めには
$3\times 1.01^{n-1}$
万円になると考えられる。
以上より、$n$年目の初めの預金額は
$a_{n}$よりも$3\times 1.01^{n-1}$万円多い
ことになる。
解答ソ:8