大学入学共通テスト 2023年(令和5年) 本試 数学ⅡB 第1問 [1] 解説

(1)

$x=\dfrac{\pi}{6}$のとき、
$\sin x=\sin\dfrac{\pi}{6}$
$\phantom{ \sin x } =\dfrac{1}{2}$
$\sin 2x=\sin \Bigl( 2\times \dfrac{\pi}{6} \Bigr)$
$\phantom{ \sin 2x } =\sin\dfrac{\pi}{3}$
$\phantom{ \sin 2x } =\dfrac{\sqrt{3}}{2}$
なので、
$\sin x \lt \sin 2x$
である。

解答ア:0

$ x=\dfrac{2}{3}\pi$のとき、
$\sin x=\sin\dfrac{2}{3}\pi$
$\phantom{ \sin x } =\dfrac{\sqrt{3}}{2}$
$\sin 2x=\sin \Bigl( 2\times \dfrac{2}{3}\pi \Bigr)$
$\phantom{ \sin 2x } =\sin \dfrac{4}{3} \pi$
$\phantom{ \sin 2x } =-\dfrac{\sqrt{3}}{2}$
なので、
$\sin x \gt \sin 2x$
となる。

解答イ:2

(2)

2倍角の公式より
$\sin 2x=2\sin x\cos x$
なので、
$\sin 2x-\sin x$式A

$\sin 2x-\sin x=2\sin x\cos x-\sin x$
$\phantom{ \sin 2x-\sin x } =\sin x(2\cos x-1)$式A'
と変形できる。

解答ウ:2, エ:1

式A$ \gt 0$ は
$\sin 2x \gt \sin x$
と変形できるから、
式A$ \gt 0$ つまり 式A'$ \gt 0$
が成り立つ範囲を求めると、それが$\sin 2x \gt \sin x$である範囲だ。

ということで、式A'$ \gt 0$、つまり
$\textcolor{red}{\sin x} \textcolor{royalblue}{(2\cos x-1)} \gt 0$
となる$x$の範囲を求める。

この式が成り立つのは、赤い部分と青い部分をかけて正になるときなので、
$\left\{\begin{array}{l}
\sin x \gt 0\\
2\cos x-1 \gt 0
\end{array}\right.$
または
$\left\{\begin{array}{l}
\sin x \lt 0\\
2\cos x-1 \lt 0
\end{array}\right.$
のとき。

①②それぞれが成り立つ$x$の範囲を求める。


まず①から。

図A
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図A

$x$の範囲は$ 0\leqq x\leqq 2\pi$ だけど、これを図にすると 図Aの緑の範囲。
$\sin$が正になるのは横軸より上の部分で、図Aのオレンジの部分(横軸は含まない)。

よって、①の
$\sin x \gt 0$
が成り立つのは、図Aの赤い部分の
$ 0 \lt x \lt \pi$式B
である。

図B
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図B

また、①の
$2\cos x-1 \gt 0$式C
は、この式を変形した
$\cos x \gt \dfrac{1}{2}$式C'
で考える。

$\cos$が$\dfrac{1}{2}$より大きくなるのは、図Bの紫の線より右で、オレンジの部分(紫の線は含まない)。

$x$の範囲は緑の範囲なので、式C'が成り立つのは、図Bの赤い部分の
$0\leqq x \lt \dfrac{\pi}{3}$,$\dfrac{5}{3} \pi \lt x \leqq 2\pi$式D
だから、式Cが成り立つのもこの範囲だ。

①が成り立つのは 式Bと式Dの共通部分なので、
$0 \lt x \lt \dfrac{\pi}{3}$式E
のときである。

解答オ:3


同様に、②も解く。

図C
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図C

$\sin$が負になるのは横軸より下の部分で、図Cのオレンジの部分(横軸は含まない)。

よって、②の
$\sin x \lt 0$
が成り立つのは、図Cの赤い部分の
$\pi \lt x \lt 2\pi$式F
である。

図D
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図D

$2\cos x -1 \lt 0$
は、さっきと同様に、これを変形した
$\cos x \lt \dfrac{1}{2}$
で考える。

$\cos$が$\dfrac{1}{2}$より小さくなるのは、図Dの紫の線より左で、オレンジの部分(紫の線は含まない)。

$x$の範囲は緑の範囲なので、
$2\cos x-1 \lt 0$
が成り立つのは、図Dの赤い部分の
$\dfrac{\pi}{3} \lt x \lt \dfrac{5}{3}\pi$式G
である。

②が成り立つのは 式Fと式Gの共通部分だから、
$\pi \lt x \lt \dfrac{5}{3}\pi$式H
のときだ。

解答カ:5, キ:3


以上より、①または②が成り立つ、つまり
$\sin 2x \gt \sin x$
であるのは、式Eと式Hをあわせた

$0 \lt x \lt \dfrac{\pi}{3}$,$\pi \lt x \lt \dfrac{5}{3}\pi$
のときであることが分かる。

(3)

ここで、いきなり$\alpha$とか$\beta$とか出てきてびっくりするけど、悩まずに問題文の通りに流されてゆけば大丈夫。

③式を自分で作る必要はないけれど、一応説明しておく。

加法定理より
$\sin(\alpha+\beta)=\sin\alpha\cos\beta+\cos\alpha\sin\beta$
$\sin(\alpha-\beta)=\sin\alpha\cos\beta-\cos\alpha\sin\beta$
だけど、これを辺々引くと

$\sin(\alpha+\beta)$ $=$ $\cancel{\sin\alpha\cos\beta}$ $+\cos\alpha\sin\beta$
$-)$ $\sin(\alpha-\beta)$ $=$ $\cancel{\sin\alpha\cos\beta}$ $-\cos\alpha\sin\beta$
$\sin(\alpha+\beta)-\sin(\alpha-\beta)$ $=$ $ 2\cos\alpha\sin\beta$

となって、③式ができる。

問題文の通りに
$\left\{\begin{array}{l}
\alpha+\beta=4x\\
\alpha-\beta=3x
\end{array}\right.$式I
とおくと、$\sin 4x-\sin 3x$は
$\sin 4x-\sin 3x=\sin(\alpha+\beta)-\sin(\alpha-\beta)$
とかける。

この式の右辺は、③式の左辺と等しいから、
$\sin 4x-\sin 3x=2\cos\alpha\sin\beta$
と表せる。

よって、
$\sin 4x-\sin 3x \gt 0$式J

$2\cos\alpha\sin\beta \gt 0$
と書きかえられ、さらに
$\cos\alpha\sin\beta \gt 0$
と変形できることが分かる。

この式が成り立つのは、$\cos\alpha$と$\sin\beta$をかけて正になるときなので、
$\left\{\begin{array}{l}
\cos\alpha \gt 0\\
\sin\beta \gt 0
\end{array}\right.$式K1
または
$\left\{\begin{array}{l}
\cos\alpha \lt 0\\
\sin\beta \lt 0
\end{array}\right.$式K2
のときだ。


さらに、式Iを連立方程式として解くと

$\alpha$ $+\beta$ $=$ $4x$
$+)$ $\alpha$ $-\beta$ $=$ $3x$
$ 2\alpha$ $=$ $7x$

より
$\alpha=\dfrac{7}{2}x$

$\alpha$ $+\beta$ $=$ $4x$
$-)$ $\alpha$ $-\beta$ $=$ $3x$
$ 2\beta$ $=$ $x$

より
$\beta=\dfrac{x}{2}$

であるから、式K1,式K2は
$\left\{\begin{array}{l}
\cos\dfrac{7}{2}x \gt 0\\
\sin\dfrac{x}{2} \gt 0
\end{array}\right.$
または
$\left\{\begin{array}{l}
\cos\dfrac{7}{2}x \lt 0\\
\sin\dfrac{x}{2} \lt 0
\end{array}\right.$
と書きかえられる。

解答ク:a, ケ:7

いま、
$ 0\leqq x\leqq\pi$
なので、$\dfrac{x}{2}$の範囲は
$0\leqq\dfrac{x}{2}\leqq\dfrac{\pi}{2}$
だから、$\sin\dfrac{x}{2}$は負にはならないので、⑤は成り立たないことが分かる。
よって、④の場合だけ考えよう。
考え方は、(2)と同じだ。


④の上側の式
$\cos\dfrac{7}{2}x \gt 0$④1
から。

$ 0\leqq x\leqq\pi$
のとき、$\dfrac{7}{2}x$の範囲は
$ 0\leqq\dfrac{7}{2}x\leqq\dfrac{7}{2}\pi$
である。

図E
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図E

この$\dfrac{7}{2}x$の範囲を図にすると、図Eの緑の範囲。
また、$\cos$が正なのは、図Eの縦軸より右の部分で、オレンジ色の部分(縦軸は含まない)。

よって、④1の
$\cos\dfrac{7}{2}x \gt 0$
が成り立つのは、図Eの赤い部分の
$0\leqq\dfrac{7}{2}x \lt \dfrac{\pi}{2}$,$\dfrac{3}{2}\pi \lt \dfrac{7}{2}x \lt \dfrac{5}{2}\pi$
のとき。

この各辺に$\dfrac{2}{7}$をかけて$x$の範囲にすると、④1が成り立つのは
$0\leqq\pi \lt \dfrac{\pi}{7}$,$\dfrac{3}{7}\pi \lt x \lt \dfrac{5}{7}\pi$式L
のときである。


次は、④の下側の式
$\sin\dfrac{x}{2} \gt 0$④2
だ。

$ 0\leqq x\leqq\pi$
のとき、$\dfrac{x}{2}$の範囲は
$0\leqq\dfrac{x}{2}\leqq\dfrac{\pi}{2}$
である。

図F
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図F

この$\dfrac{x}{2}$の範囲を図にすると、図Fの緑の範囲。
また、$\sin$が正なのは、図Fの横軸より上の部分で、オレンジ色の部分(横軸は含まない)。

よって、④2の
$\sin\dfrac{x}{2} \gt 0$
が成り立つのは、図Fの赤い部分の
$0 \lt \dfrac{x}{2}\leqq\dfrac{\pi}{2}$
のとき。

この各辺に$2$をかけて$x$の範囲にすると、④2が成り立つのは
$ 0 \lt x\leqq\pi$式M
のときである。


以上より、④が成り立つ、つまり
$\sin 4x \gt \sin 3x$
が成り立つような$x$の範囲は、式Lと式Mの共通部分の
$0 \lt \pi \lt \dfrac{\pi}{7}$,$\dfrac{3}{7}\pi \lt x \lt \dfrac{5}{7}\pi$
であることが分かる。

解答コ:7, サ:3, シ:7,
ス:5, セ:7

(4)

$\sin 3x \gt \sin 4x \gt \sin 2x$
は、2つの式に分けて、連立不等式
$\sin 3x \gt \sin 4x$ $\sin 4x \gt \sin 2x$ として考えよう。


まず、
$\sin 3x \gt \sin 4x$
から。

(3)より、
$ 0\leqq x\leqq\pi$のとき、$\sin 4x \gt \sin 3x$であるのは
$0 \lt \pi \lt \dfrac{\pi}{7}$,$\dfrac{3}{7}\pi \lt x \lt \dfrac{5}{7}\pi$
のとき
であることが分かっている。
数直線で表すと、図Gの赤い部分だ。

図G
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図G

このとき、$\sin 3x \gt \sin 4x$であるのは、図Gの青い部分の
$\dfrac{\pi}{7} \lt x \lt \dfrac{3}{7}\pi$,$\dfrac{5}{7}\pi \lt x \lt \pi$式N だと考えられる。


次は、
$\sin 4x \gt \sin 2x$
だ。

(2)より、
$ 0\leqq x\leqq 2\pi$のとき、$\sin 2x \gt \sin x$であるのは
$0 \lt x \lt \dfrac{\pi}{3}$,$\pi \lt x \lt \dfrac{5}{3}\pi$
のとき
であることが分かっている。

$x$を$X$とすると、これは
$ 0\leqq X\leqq 2\pi$のとき、$\sin 2X \gt \sin X$であるのは
$0 \lt X \lt \dfrac{\pi}{3}$,$\pi \lt X \lt \dfrac{5}{3}\pi$
のとき式O
と書きかえられる。

いま考えているのは、
$ 0\leqq x\leqq\pi$のとき、
$\sin 4x \gt \sin 2x$である範囲
だけど、
$X=2x$
とおくと、これは
$ 0\leqq X\leqq 2\pi$のとき、
$\sin 2X \gt \sin X$がである範囲
となるので、式Oと同じだ。

よって、式Oより、求める範囲は
$0 \lt X \lt \dfrac{\pi}{3}$,$\pi \lt X \lt \dfrac{5}{3}\pi$式P
であることが分かる。

これは$X$の範囲なので、$x$の範囲に変えよう。
式Pに$X=2x$を代入すると、
$0 \lt 2x \lt \dfrac{\pi}{3}$,$\pi \lt 2x \lt \dfrac{5}{3}\pi$
より
$0 \lt x \lt \dfrac{\pi}{6}$,$\dfrac{\pi}{2} \lt x \lt \dfrac{5}{6}\pi$式Q となる。
これが$\sin 4x \gt \sin 2x$である$x$の範囲だ。


以上より、式Nと式Qの重なる範囲が、求める答えになる。
式N、つまり図Gの青い部分と、式Qを数直線にすると、図Hができる。
式Qの範囲は紫で示した。

図H
大学入学共通テスト2023年本試 数学ⅡB第1問[1] 解説図H

図Hより、求める答えは、赤い部分の
$\dfrac{\pi}{7} \lt x \lt \dfrac{\pi}{6}$,$\dfrac{5}{7}\pi \lt x \lt \dfrac{5}{6}\pi$
であることが分かる。

解答ソ:6, タ:5, チ:6