大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 本試 数学ⅡB 第4問 解説

(1)

$(a_{n}\}$の漸化式を
$a_{n+1}=a_{n}+14$式A
と変形すると、

$a_{1}=10$のとき、式Aは
$a_{2}=10+14$
とかけるから、
$a_{2}=24$

解答ア:2, イ:4

$a_{2}=24$のとき、式Aは
$a_{3}=24+14$
とかけるから、
$a_{3}=38$

解答ウ:3, エ:8

である。


ここで、漸化式の基本の形の復習をしておく。

復習

漸化式の基本の形は4つあって、
$p_{n+1}=p_{n}+d$
公差$d$の等差数列
$p_{n+1}=rp_{n}$
公比$r$の等比数列
$p_{n+1}=p_{n}+f(n)$
階差数列の一般項が$f(n)$
$p_{n+1}=\alpha p_{n}+\beta$
$p_{n+1}-\gamma=\alpha(p_{n}-\gamma)$の形にして解く
だった。

式Aは、復習の漸化式の基本の形の1つめだ。
なので、$\{a_{n}\}$は
初項が$a_{1}$ 公差が$14$ の等差数列である。

よって、$\{a_{n}\}$の一般項$a_{n}$は
$a_{n}=a_{1}+14(n-1)$
とかける。

解答オ:1, カ:4

(2)

$\{b_{n}\}$の漸化式を
$b_{n+1}=\dfrac{1}{2}b_{n}-\dfrac{3}{2}$式B
と変形すると、これは復習の漸化式の基本の形の4つめだ。
なので、パターン通りに解こう。

式Bを
$b=\dfrac{1}{2}b-\dfrac{3}{2}$
として$b$を求めると、
$b=-3$
だ。

この$b$を式Bの両辺から引いて変形すると、
$$ \begin{align} b_{n+1}+3&=\dfrac{1}{2}b_{n}-\dfrac{3}{2}+3\\ &=\dfrac{1}{2}(b_{n}+3)\class{tex_formula}{式B'} \end{align} $$ となる。

ここで
$b_{n}+3=B_{n}$式C
とおくと、式B'は
$B_{n+1}=\dfrac{1}{2}B_{n}$式B''
と表せる。
これは漸化式の基本の形の2つめだ。

復習より 数列$\{B_{n}\}$は等比数列で、
式Cより、初項$B_{1}=b_{1}+3$ 式B''より、公比が$\dfrac{1}{2}$ だから、一般項$B_{n}$は
$B_{n}=(b_{1}+3)\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$
とかける。

これに式Cを代入すると、求める$\{b_{n}\}$の一般項$b_{n}$は、
$b_{n}+3=(b_{1}+3)\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$
より
$b_{n}=(b_{1}+3)\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}-3$
であることが分かる。

解答キ:3, ク:1, ケ:2, コ:3

(3)

(i)

$c_{n}=5$のとき、問題文中の①式は
$(5+3)(2c_{n+1}-5+3)=0$
より
$2c_{n+1}-5+3=0$
$c_{n+1}=1$
だから、
$c_{n}=5$のとき$c_{n+1}=1$式D
である。

よって、
$c_{1}=5$のとき$c_{2}=1$
となる。

解答サ:1

$c_{n+1}=-3$のとき、①式は
$(c_{n}+3)\{2(-3)-c_{n}+3\}=0$
より
$(c_{n}+3)(-c_{n}-3)=0$
$(c_{n}+3)^{2}=0$
だから、
$c_{n+1}=-3$のとき$c_{n}=-3$式E
である。

よって、

$c_{3}=-3$のとき、$c_{2}=-3$

解答シ:-, ス:3

$c_{2}=-3$のとき、$c_{1}=-3$

解答セ:-, ソ:3

となる。

(ii)

$c_{3}=-3$,$c_{4}=5$のとき、

セソシスより、
$c_{1}=-3$,$c_{2}=-3$

式Dより、
$c_{5}=1$

解答タ:1

である。

$c_{3}=-3$,$c_{4}=83$のとき、

セソシスより、
$c_{1}=-3$,$c_{2}=-3$

$c_{4}=83$のとき、①式は
$(83+3)(2c_{5}-83+3)=0$
とかける。

これを解いて、
$c_{5}=40$

解答チ:4, ツ:0

である。

(iii)

次は、命題Aの証明だ。

選択肢を一つずつ考えると、
すべての自然数$n$について$c_{n}\neq-3$であることを証明するから、一部の項しか考えてない
⓪,①,②
は不適。

④が示せても、$c_{1}\neq-3$のとき$c_{n}=-3$にはならないことの証明にはならない。
なので、不適。
てか、$c_{n}=-3$のときは$c_{n+1}$はどんな値でもいいから、④は成り立たない。

ことが分かる。

なので、正解は、残った

である。

解答テ:3

余談

問題を解くのに命題Aの証明は必要ないけれど、せっかくだから載せておく。


仮定より
$c_{1}\neq-3$ である。

①式より
$(\textcolor{red}{c_{k}+3})(\textcolor{green}{2c_{k+1}-c_{k}+3})=0$
だけど、$n=k$のとき$c_{n}\neq-3$だと仮定すると、この式の赤い部分は$0$じゃない。
したがって、この式が成り立つためには、緑の部分が$0$、つまり
$2c_{k+1}-c_{k}+3=0$
でないといけない。

これを変形すると
$c_{k+1}=\dfrac{c_{k}-3}{2}$式F
とかける。

いま
$c_{k}\neq-3$
なので、

途中式 $c_{k}-3\neq-3-3$
$\dfrac{c_{k}-3}{2}\neq\dfrac{-3-3}{2}$
より
$\dfrac{c_{k}-3}{2}\neq-3$
である。

これは式Fの右辺なので、式Fは
$c_{k+1}\neq-3$
となるから、
$n=k$のとき$c_{n}\neq-3$ならば、$n=k+1$のときも$c_{n}=-3$である ことが分かる。

以上より、すべての自然数$n$について$c_{n}\neq-3$である。

(iv)

ここで、数列$\{c_{n}\}$の性質をまとめておく。

式Eで
$c_{n+1}=-3$であれば、$c_{n}=-3$
であることが分かっているから、
$\left\{\begin{array}{l} c_{n+1}=-3\text{であれば、}c_{n}=-3\\ c_{n}=-3\text{であれば、}c_{n-1}=-3\\ c_{n-1}=-3\text{であれば、}c_{n-2}=-3\\ \hspace{100px} \vdots \end{array}\right.$
より
$c_{n}=-3$であれば、$c_{1}=-3$式G であるといえる。

$c_{n}=-3$のとき、①式の左辺は
$$ \begin{align} (-3+3)&(2c_{n+1}+3+3)\\ &=0\times(2c_{n+1}+3+3)\\ &=0 \end{align} $$ なので、$c_{n+1}$がどんな値でも①式は成り立つ。

つまり、
$c_{n}=-3$のとき、$c_{n+1}$はどんな値でもいい
式H
ことになる。

この二つの性質を使って、(I),(II),(III)の命題を考えよう。


(I)(II)

式Gより
$c_{100}=-3$であれば、$c_{1}=-3$ だ。

よって、
(I)を満たす数列は存在しないから、(I)は偽 (II)を満たす数列は存在するので、(II)は真 である。

(III)

例えば$c_{99}=-3$である場合を考えると
式Hより、$c_{99}=-3$のとき$c_{100}$はどんな値でもいいから、$c_{100}=3$でもいい 式Gより、$c_{99}=-3$ならば$c_{1}=-3$である となるので、(III)を満たす数列$\{c_{n}\}$ができる。

よって、(III)は真である。

以上より、解答群のうち正しいものは

であることが分かる。

解答ト:4