大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 本試 数学ⅡB 第2問 解説
(1)
(i)
$1 \lt m$なので、
$$
\begin{align}
y&=f(x)\\
&=3(x-1)(x-m)
\end{align}
$$
のグラフは$x$軸と異なる2点
$(1,0)$,$(m,0)$
で交わる、下に凸の放物線だ。
したがって、$m=2$のとき、$y=f(x)$のグラフは図Aのようになる。
図Aの放物線の頂点の$x$座標は、$y=f(x)$と$x$軸との2つの交点のちょうど真ん中なので
$\dfrac{1+2}{2}=\dfrac{3}{2}$式A
となる。
いまは、$f'(x)=0$となる$x$の値を問われている。
$f'(x)$は図Aのグラフの接線の傾きだから、$f'(x)=0$になるのは放物線の傾きが$0$になる点。
つまり、頂点の$x$座標を問われている。
よって、答えは、式Aの
$\dfrac{3}{2}$
である。
解答ア:3, イ:2
別解
グラフを考えずに計算だけで解くと、つぎのようになる。
$$
\begin{align}
f(x)&=3(x-1)(x-2)\\
&=3x^{2}-9x+6
\end{align}
$$
なので、
$f'(x)=6x-9$
となる。
よって、$f'(x)=0$のときの$x$は、
$6x-9=0$
より
$$
\begin{align}
x&=\dfrac{9}{6}\\
&=\dfrac{3}{2}
\end{align}
$$
である。
解答ア:3, イ:2
(ii)
$S(x)$を計算すると、
$$
\begin{align}
\displaystyle S(x)&=\int_{0}^{x}f(t)\,dt\\
&=\int_{0}^{x}3(t-1)(t-2)\,dt\\
&=\int_{0}^{x}(3t^{2}-9t+6)\,dt\\
&=\left[t^{3}-\dfrac{9}{2}t^{2}+6t\right]_{0}^{x}\\
&=x^{3}-\dfrac{9}{2}x^{2}+6x\class{tex_formula}{式B}
\end{align}
$$
となる。
解答ウ:9, エ:6, オ:9, カ:2, キ:6
ここで、
復習
$a$を定数とすると
$\displaystyle \dfrac{d}{dx}\int_{a}^{x}f(t)\,dt=f(x)$
だから、
$S'(x)=f(x)$
だ。
図Aより
$x \lt 1$のとき、$0 \lt f(x)$
$x=1$のとき、$f(x)=0$
$1 \lt x \lt 2$のとき、$f(x) \lt 0$
$x=2$のとき、$f(x)=0$
$2 \lt x$のとき、$0 \lt f(x)$
なので、$S(x)$の増減表は表Bのようになる。
$x$ | $\ldots$ | $1$ | $\ldots$ | $2$ | $\ldots$ |
---|---|---|---|---|---|
$S'(x)$ $=f(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$S(x)$ | $\nearrow$ | 極大 $S(1)$ | $\searrow$ | 極小 $S(2)$ | $\nearrow$ |
表Bより、
$S(x)$が極大になるのは$x=1$のとき。
極大値は、式Bに$x=1$を代入して、
$$
\begin{align}
S(1)&=1^{3}-\dfrac{9}{2}\cdot 1^{2}+6\cdot 1\\
&=\dfrac{5}{2}
\end{align}
$$
解答ク:1, ケ:5, コ:2
$S(x)$が極小になるのは$x=2$のとき。
極小値は、式Bに$x=2$を代入して、
$$
\begin{align}
S(2)&=2^{3}-\dfrac{9}{2}\cdot 2^{2}+6\cdot 2\\
&=2
\end{align}
$$
解答サ:2, シ:2
であることが分かる。
(iii)
(ii)で考えたように
$S'(x)=f(x)$
なので、
$f(3)=S'(3)$
だ。
なので、$f(3)$は
$y=S(x)$の$x=3$における接線の傾き
にあたる。
よって、解答群のうち正しいのは
③
である。
解答ス:3
(2)
$S_{1}$,$S_{2}$は、図Cのような状態だ。
なので、
$\displaystyle S_{1}=\int_{0}^{1}f(x)\,dx$式C
解答セ:0
$1 \lt x \lt m$では$f(x) \lt 0$だから、
$$
\begin{align}
S_{2}&=-\int_{1}^{m}f(x)\,dx\class{tex_formula}{式D}\\
&=\int_{1}^{m}\{-f(x)\}\,dx
\end{align}
$$
解答ソ:5
となる。
また、$S_{1}=S_{2}$は、式C$=$式Dより
$\displaystyle \int_{0}^{1}f(x)\,dx=-\int_{1}^{m}f(x)\,dx$
とかける。
これを変形して、$S_{1}=S_{2}$となるのは
$\displaystyle \int_{0}^{1}f(x)\,dx+\int_{1}^{m}f(x)\,dx=0$
より
$\displaystyle \int_{0}^{m}f(x)\,dx=0$
のときである。
解答タ:1
次に、$y=S(x)$のグラフの形を考える。
$m=2$のときの$S(x)$の増減表が表Bだったので、$m$のままのときの増減表は表Dのようになる。
$x$ | $\ldots$ | $1$ | $\ldots$ | $m$ | $\ldots$ |
---|---|---|---|---|---|
$S'(x)$ $=f(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$S(x)$ | $\nearrow$ | 極大 $S(1)$ | $\searrow$ | 極小 $S(m)$ | $\nearrow$ |
さらに、タより
$$
\begin{align}
S(m)&=\int_{0}^{m}f(x)\,dx\\
&=0
\end{align}
$$
だから極小値$S(m)$は$0$なので、グラフは$x=m$で$x$軸に上から接する。
以上にあてはまるグラフは、選択肢のうちの
①
である。
解答チ:1
また、$S_{1} \gt S_{2}$のときには、式C$ \gt $式Dから
$\displaystyle \int_{0}^{1}f(x)\,dx \gt -\int_{1}^{m}f(x)\,dx$
なので
$\displaystyle \int_{0}^{1}f(x)\,dx+\int_{1}^{m}f(x)\,dx \gt 0$
より
$\displaystyle \int_{0}^{m}f(x)\,dx \gt 0$
だといえる。
よって、$y=S(x)$の極小値$S(m)$は
$S(m) \gt 0$
だ。
したがって、このときの$y=S(x)$は
増減表が表D
極小値$S(m)$が正
のグラフになるので、選択肢のうちの
②
があてはまる。
解答ツ:2
(3)
$y=f(x)$のグラフは放物線で、放物線の軸は$x$軸との2つの交点の真ん中
$\dfrac{m+1}{2}$
を通る。
したがって、$y=f(x)$のグラフは、直線
$x=\dfrac{m+1}{2}$
に関して対称である。
解答テ:3
したがって、図Eの青い部分と赤い部分の面積は等しいから、
青い部分の面積$\displaystyle =\int_{1-p}^{1}f(x)\,dx$
赤い部分の面積$\displaystyle =\int_{m}^{m+p}f(x)\,dx$
より
$\displaystyle \int_{1-p}^{1}f(x)\,dx=\int_{m}^{m+p}f(x)\,dx$①
が成り立つ。
解答ト:4
また、紫の部分と黄色い部分の面積も等しいので、$\dfrac{m+1}{2}=M$とおくと、
紫の部分の面積$\displaystyle =\int_{M-q}^{M}\{-f(x)\}\,dx$
黄色い部分の面積$\displaystyle =\int_{M}^{M+q}\{-f(x)\}\,dx$
より
$\displaystyle \int_{M-q}^{M}\{-f(x)\}\,dx=\int_{M}^{M+q}\{-f(x)\}\,dx$②
が成り立つ。
解答ナ:2
さらに
$$
\begin{align}
\int_{\alpha}^{\beta}f(x)\,dx&=\int_{0}^{\beta}f(x)\,dx - \int_{0}^{\alpha}f(x)\,dx\\
&=S(\beta)-S(\alpha)
\end{align}
$$
なので、
①式は
$S(1)-S(1-p)=S(m+p)-S(m)$
より
$S(1-p)+S(m+p)=S(1)+S(m)$①'
解答ニ:0
②式は
$\displaystyle -\int_{M-q}^{M} f(x)\,dx=-\int_{M}^{M+q} f(x)\,dx$
から
$\displaystyle \int_{M-q}^{M} f(x)\,dx=\int_{M}^{M+q} f(x)\,dx$
となるので、
$S(M)-S(M-q)=S(M+q)-S(M)$
$2S(M)=S(M+q)+S(M-q)$②'
解答ヌ:4
と変形できる。
ここで、2点
$(1-p,S(1-p))$,$(m+p,S(m+p))$
の中点を考える。
中点の座標は
$\left(\dfrac{(1-p)+(m+p)}{2},\dfrac{S(1-p)+S(m+p)}{2}\right)$
$\hspace{40px} =\left(\dfrac{m+1}{2},\dfrac{S(1-p)+S(m+p)}{2}\right)$
$\hspace{40px} =\left(M,\dfrac{\textcolor{red}{S(1-p)+S(m+p)}}{2}\right)$式E
とかける。
この式の赤い部分は、①'式より
$S(1-p)+S(m+p)=S(1)+S(m)$式F
と変形できる。
さらに、図Fのように、$1$と$m$は$M$から等距離にある。
この距離を$q$とすると、②'式より
$$
\begin{align}
S(1)+S(m)&=S(M-q)+S(M+q)\\
&=2S(M)
\end{align}
$$
であることが分かる。
これを式Fに代入すると
$S(1-p)+S(m+p)=2S(M)$
なので、式Eの2点の中点は
$\left(M,\dfrac{2S(M)}{2}\right)=(M,S(M))$
と表せる。
これは$y=S(x)$上の点だ。
また
$M=\dfrac{m+1}{2}$
なので、式に含まれる文字は$m$だけだから、$M$は
$m$の値のみで決まる
$p$の値には無関係
である。
したがって、
中点は$p$の値によらず一つに定まり、
関数$y=S(x)$のグラフ上にある
ことになる。
解答ネ:2