大学入学共通テスト 2021年(令和3年) 追試 数学ⅡB 第3問 解説

(1) ア~シ

問題文より、各コースの人数の和=留学生の数 なので、
20%+35%+アイ%=100%
アイ%=100%20%35%
               =45%
である。

解答ア:4, イ:5

よって、留学生を一人選んだ場合、その留学生が登録しているのが、
初級コースである確率は20100 中級コースの確率は35100 上級コースの確率は45100 となる。

このことから、確率変数Xの確率分布表をつくると、表Aができる。

表A
コース初級中級上級
X 10 8 6
確率20100 35100 45100 1

表Aより、Xの期待値E(X)
E(X)=1020100+835100+645100

途中式 E(X)=1020+835+645100
E(X)=25(20+47+39)100
E(X)=2575100
E(X)=152

解答ウ:1, エ:5

Xの分散V(X)は、
V(X)=(10E(X))220100
              +(8E(X))235100
                +(6E(X))245100

途中式 より
V(X)=(10152)220100
              +(8152)235100
                +(6152)245100
V(X)=(52)220100+(12)235100
                +(32)245100
V(X)=5(520+17+99)4100
V(X)=51884100
V(X)=4720
となる。

解答オ:4, カ:7

別解

オカについては、

公式

V(X)=E(X2){E(X)}2

を使う方法もある。
この問題では計算が面倒になるけど、あえて計算すると次のようになる。

表Aより、X2の期待値E(X2)は、
E(X2)=10220100+8235100+6245100

途中式 E(X)=10220+8235+6245100
E(X)=225(102+427+329)100
E(X)=225293100

ウエより、{E(X)}2は、
{E(X)}2=(152)2

なので、分散V(X)は、
V(X)=225293100(152)2

途中式 V(X)=2229320152×522×5
V(X)=1172112520
V(X)=4720
となる。

解答オ:4, カ:7

ここで、問題文に二項分布が出てきたから、復習だ。

復習

確率pで事象Aが起こる試行をn回繰り返し、Aが起こった回数をYとすると、Yの確率分布は二項分布B(n,p)である。
確率変数Y
平均値は、np 分散は、np(1p) 標準偏差は、np(1p) になる。

初級コースに登録している留学生は、留学生全体の20%=15だった。
なので、留学生全体の母集団からa人抽出したときに含まれる初級コースの人数Yは、
a回の反復試行をしたとき、確率15の事象が起こる回数 と同じだ。
つまり、Yは反復試行における事象の起こる回数なので、二項分布
B(a,15)
に従う。

復習より、確率変数Yの平均E(Y)
E(Y)=a15
E(Y)=a5

解答キ:a, ク:5

標準偏差σ(Y)
σ(Y)=a15(115)
σ(Y)=2a5
である。

同様に、上級者コースの人数Zは、二項分布
B(a,45100)=B(a,920)
に従うので、標準偏差σ(Z)
σ(Z)=a920(1920)
σ(Z)=311a20
となる。

以上より、
σ(Z)σ(Y)=311a202a5

途中式 σ(Z)σ(Y)=311a20×52a
σ(Z)σ(Y)=31142
σ(Z)σ(Y)=3118
である。

解答ケ:3, コ:1, サ:1, シ:8

(1) ス

さらに、Y28以上である確率pを求める。

長くなるので、解説は最小限にとどめる。
詳しい考え方はこのページを見てほしい。

復習

nが十分に大きいとき、二項分布
B(n,p)
は、正規分布
N(np,np(1p))
で近似できる。

a=100なので、Yが従う確率分布は
B(100,15)
だ。

これは、復習より、正規分布
N(10015,10015(115))
  =N(20,16)
で近似できる。

N(20,16)の確率分布図を描くと、図Aができる。

図A
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅡB 第3問 解説図A

この図が正確に描けるようになる必要はない。
イメージが頭の中に描ければ大丈夫。

で、図Aの赤い部分の面積が、求める確率pだ。


正規分布表を使って 赤い部分の面積を求めるんだけど、表に載っているのは、標準正規分布の
N(0,1)
なので、図Aのグラフの
N(20,16)
のままでは使えない。
仕方がないからN(20,16)を標準化して、N(0,1)にそろえよう。

復習

確率変数Yがあり、その
平均値がμ 標準偏差がσ とする。

このとき、Yを標準化した確率変数は
Yμσ
である。

復習より、図Aの28を標準化すると、
28204=2
となる。

また、標準化するので 平均値は0になるから、図Aの200になる。

よって、図Aのグラフを標準化すると図Bができるけど、図Aも図Bも確率分布図なので、曲線と横軸の間の面積は1で変わらない。
なので、ふたつの図の赤い部分の面積は等しい。
ということで、図Aの代わりに、図Bの赤い部分の面積を求める。

図B
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅡB 第3問 解説図B

標準化したので、図BのグラフはN(0,1)だ。
そのまま正規分布表が使えるから、正規分布表で
z0=2.00
を探すと、
0.4772
とある。
これが図Bの緑の部分の面積である。

緑の面積+赤い面積=0.5
だから、赤い部分の面積pは、
p=0.50.4772
p=0.0228
となる。

選択肢のうち、これに一番近いのは、

0.023である。

解答ス:1

(2)

ここで、標本平均の確率分布について復習だ。

復習

母平均m,母分散σ2の母集団から大きさnの標本を取り出す。
このとき、標本平均は
母集団が正規分布に従うときには nの値にかかわらず完全に 母集団がその他の確率分布のときには nが大きければ近似的に 正規分布
N(m,σ2n)
に従う。

この問題では母集団はどのような確率分布に従うか分からないけれど、問題文に「近似的に正規分布に従う」とあるので、復習の②のパターンだ。
なので、標本平均は、近似的に 正規分布
N(m,σ2n)=N(m,64040)
  =N(m,16)
に従う。

この正規分布の分散は
16
なので、標準偏差は
16=4
である。

解答セ:4


さらに、母平均の信頼区間を求める式について復習しよう。

公式

母標準偏差をσ,標本平均をX,標本の大きさをnとすると、母平均mの信頼区間を求める式は
XzσnmX+zσn式A

大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅡB 第3問 復習図

信頼度がc%のとき、
右図を標準正規分布の確率分布図として、zは図中のz0の値。
特に
信頼度95%のとき、z=1.96 信頼度99%のとき、z=2.58 である。

よって、求める信頼区間
C1mC2

XzσnmX+zσn式B
とかける。

いまは、
母分散が
σ2=640
なので、母標準偏差は
σ=640
標本平均は
X=120
標本の大きさは
n=40
信頼度が95%なので、
z=1.96
だ。

以上から、式Bは
1201.9664040m120+1.9664040
より
1207.84m120+7.84
112.16m127.84
となる。

解答ソ:1, タ:1, チ:2, ツ:1, テ:6, ト:1, ナ:2, ニ:7, ヌ:8, ネ:4

以上、計算だけ解説した。
母平均の信頼区間の推定についての原理など、詳しくはこのページ参照。

(3)

(2)と(3)の調査を比べると、
標本の大きさが、(2)は40人、(3)は50 母分散と標本平均は等しい ことになっている。
よって、標本の大きさだけを考える。

式Aを数直線にすると、母平均mの信頼区間は図Cのように表せる。

図C
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅡB 第3問 解説図C

つまり、母平均mの信頼区間は、
Xを中心として、±zσnの範囲 だといえる。
±zσnは誤差の範囲を表していると思ってもらっていい。

直感的に分かると思うけど、標本の大きさが大きいほど(この問題では多くの人数を調査するほど)正確な推定ができる。
つまり、誤差の範囲が小さくなる。
なので、標本の大きさが40人の(2)の調査より、50人の(3)の調査の方が、誤差の範囲が小さいはずだ。
数直線でいえば、図Dのようになっているはずだ。

図D
大学入学共通テスト2021年追試 数学ⅡB 第3問 解説図D

図Dより
C1<D1<D2<C2
なので、選択肢のうちで正しいのは

である。

解答ノ:2

別解

上の解の考え方が思いつかなければ、次のように計算で解くしかない。

式Aにnだけ代入して(2)と(3)の式をつくると、
(2)C1mC2

Xzσ40mX+zσ40
(3)D1mD2

Xzσ50mX+zσ50
となる。

なので、
{C1=Xzσ40C2=X+zσ40D1=Xzσ50D2=X+zσ50式C
とかける。

ここで、
50>40
より
150<140
なので
zσ50<zσ40
だ。

よって、式Cの4つの値は
C1<D1<D2<C2
であることが分かる。

選択肢のうち、これに当てはまるのは

である。

解答ノ:2

最後は、(3)の調査で母分散を640としたときと960としたときの比較だ。

2つの調査でD2D1E2E1、つまり信頼区間の幅が等しくなればよい。
数直線でいえば 図Cの赤い範囲の幅が等しくなればよいので、式Aの
zσn
の部分が等しくなればよい。

母分散を640としたとき 標本の大きさは50 母標準偏差はσ=640 母分散を960としたとき
母標準偏差はσ=960
なので、母分散が960のときの標本の大きさをnとすると、
z64050=z960n
とかける。

これを解くと、

途中式 640n=960×50
640n=960×50
n=960640×50
n=32×50
より
n=1.5×50
となる。

以上より、標本の大きさを501.5倍にすればよい。

解答ハ:1, ヒ:5

別解

今回も、上の考え方が思いつかないときは 式Aを使って解くしかない。
値が変わるのは母分散と標本の大きさなので、この2つだけを式Aに代入する。

母分散を640としたとき
標本の大きさは50 母標準偏差はσ=640 なので、式Aより
D1mD2

Xz64050mX+z64050
とかける。

母分散を960としたとき
母標準偏差はσ=960 なので、標本の大きさをnとすると、式Aより
E1mE2

Xz960nmX+z960n
となる。

なので、
D2D1=(X+z64050)(Xz64050)
D2D1=2z64050
E2E1=(X+z960n)(Xz960n)
E2E1=2z960n
である。


この2つの値を等しくしたいから、
2z64050=2z960n
という式がつくれる。

これを解くと、

途中式 640n=960×50
640n=960×50
n=960640×50
n=32×50
より
n=1.5×50
となる。

以上より、標本の大きさを501.5倍にすればよい。

解答ハ:1, ヒ:5