大学入学共通テスト 2021年(令和3年) 追試 数学ⅠA 第1問 [2] 解説
(1)
まず、△$\mathrm{ABP}$の外接円の半径$R$を、$\sin \angle \mathrm{APB}$ で表す。
△$\mathrm{ABP}$(図Aの緑の三角形)に正弦定理
公式
$\displaystyle \frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C}=2R$
を使うと、
$\displaystyle \frac{\mathrm{AB}}{\sin\angle \mathrm{APB}}=2R$
とかける。
これに$\mathrm{AB}=8$を代入すると、
$2R=\displaystyle \frac{8}{\sin\angle \mathrm{APB}}$式A
と表せる。
解答キ:8
式Aを変形して
$R=\displaystyle \frac{4}{\sin\angle \mathrm{APB}}$式A'
とする。
この右辺を考えると、
分子は正の定数
分母は三角形の一角の$\sin$なので、正
だから、分母の
$\sin\angle \mathrm{APB}$
が最大のとき、$R$は最小になる。
$\angle \mathrm{APB}$の範囲は
$0^{\circ} \lt \angle \mathrm{APB} \lt 180^{\circ}$
だけど、この範囲で$\sin\angle \mathrm{APB}$が最大になるのは、
$\angle \mathrm{APB}=90^{\circ}$
のとき。
なので、$R$が最小になるのも
$\angle \mathrm{APB}=90^{\circ}$
のときだ。
解答ク:9, ケ:0
このとき、式A'は
$R=\displaystyle \frac{4}{\sin 90^{\circ}}$
となるので、
$R=4$
である。
解答コ:4
(2)
直線$\mathrm{AB}$と平行な直線を$\ell$とし、$\mathrm{AB}$と$\ell$の距離を$h$とする。
アドバイス
直線$\ell$は直線$\mathrm{AB}$より上にあっても下にあってもいいんだけど、以下の図では簡単にするために上にある場合だけを載せた。
また、点$\mathrm{P}$は$\ell$上にあって$\mathrm{AB}$上にないので、$\ell$と$\mathrm{AB}$が重なるときは考えない。
線分$\mathrm{AB}$を直径とする円$C$(図Bの緑の円)の半径は$4$。
なので、$h=4$のとき、図Bのように直線$\ell$と円$C$は接する。
よって、
$h\leqq 4$のとき、$\ell$と$C$は共有点をもつ | |
$4 \lt h$のとき、$\ell$と$C$は共有点をもたない |
ことになる。
解答サ:4
(i) $h\leqq 4$のとき
(1)で考えたように、$R$が最小になるのは$\angle \mathrm{APB}=90^{\circ}$のとき。
なので、$\angle \mathrm{APB}=90^{\circ}$になるような点$\mathrm{P}$を考えればよい。
つまり、直径に対する円周角は$90^{\circ}$なので、点$\mathrm{P}$が円$C$上にある場合を考える。
$h\leqq 4$のとき、直線$\ell$と円$C$は共有点をもつ。
よって、$\ell$と$C$の共有点を点$\mathrm{P}$とすると、図Cのように$\angle \mathrm{APB}=90^{\circ}$になって、$R$が最小の三角形ができる。
このとき、$R$が最小の三角形$\mathrm{ABP}$は
$\angle \mathrm{APB}=90^{\circ}$の直角三角形
になる。
解答シ:1
(ii) $h \gt 4$のとき
$h \gt 4$のとき、直線$\ell$と円$C$は共有点をもたない。
つまり、$\angle \mathrm{APB}=90^{\circ}$にはならない。
もっと言えば、
$\angle \mathrm{APB} \lt 90^{\circ}$①
だ。
なので、(i)とは違う方法を考えよう。
図Dのように点$\mathrm{P}_{1}$,$\mathrm{P}_{2}$,$\mathrm{P}_{3}$をとる。
このとき、
紫と緑の角は等しいので、
$\angle \mathrm{AP}_{3}\mathrm{B}=\angle \mathrm{AP}_{2}\mathrm{B}$
である。
解答ス:1
また、
緑の角$ \lt $赤い角より、
$\angle \mathrm{AP}_{3}\mathrm{B} \lt \angle \mathrm{AP}_{1}\mathrm{B}$
①より、
$\angle \mathrm{AP}_{1}\mathrm{B} \lt 90^{\circ}$
なので、
$\sin\angle \mathrm{AP}_{3}\mathrm{B} \lt \sin\angle \mathrm{AP}_{1}\mathrm{B}$
となる。
解答セ:0
以上より、点$\mathrm{P}_{2}$が直線$\ell$上で$\mathrm{P}_{1}$以外のどこにあっても、
$\sin\angle \mathrm{AP}_{2}\mathrm{B} \lt \sin\angle \mathrm{AP}_{1}\mathrm{B}$②
である。
(1)で考えたように、△$\mathrm{ABP}$の外接円の半径$R$が最小になるのは、$\sin\angle \mathrm{APB}$が最大になるときだった。
なので、②は
$\biggl($ | △$\mathrm{ABP}_{1}$の 外接円の半径 | $\biggr)$ | $ \lt $ | $\biggl($ | △$\mathrm{ABP}_{2}$の 外接円の半径 | $\biggr)$ |
であることを意味する。
解答ソ:0
以上をまとめると、
$h \gt 4$のとき、$R$が最小になるのは
点$\mathrm{P}$が$\mathrm{AB}$の垂直二等分線上にあるとき
である。
このとき、△$\mathrm{ABP}$は
$\mathrm{AP}=\mathrm{BP}$
の二等辺三角形になる。
解答タ:3
(3)
$h=8$のとき、(2)より、△$\mathrm{ABP}$の外接円の半径$R$が最小になるのは、点$\mathrm{P}$が図Eの位置にあるとき。
まず、このときの$\sin\angle \mathrm{APB}$(赤い角の$\sin$)を求める。
$\mathrm{AB}$の中点を$\mathrm{H}$とする。
△$\mathrm{APH}$(図Eの緑の三角形)は直角三角形なので、三平方の定理より、
$\mathrm{AP}^{2}=\mathrm{AH}^{2}+\mathrm{PH}^{2}$
途中式
$\phantom{ \mathrm{AP}^{2} } =4^{2}+8^{2}$
$\phantom{ \mathrm{AP}^{2} } =4^{2}(1+2^{2})$
とかける。
いま、$\mathrm{AP}=\mathrm{BP}$なので、
$\mathrm{AP}=\mathrm{BP}=4\sqrt{5}$式B
だ。
この先はいくつかの解法があるが、ここでは
解法1
正弦定理を使う方法
解法2
面積を使う方法おすすめ
解法3
2倍角の公式を使う方法
を解説する。
解法2をお勧めにしたけれど、思いつきやすいのは解法1かも知れない。
解法3は数学Ⅱの範囲になるけど、せっかくだから載せておいた。
加えて、最後に別解をもうひとつ載せてある。
自分に合った方法をとってもらえればよいと思う。
解法1:正弦定理を使う方法
図Fに△$\mathrm{APH}$だけを取り出してみた。
△$\mathrm{APH}$は$\angle \mathrm{H}=90^{\circ}$の直角三角形なので、$\sin\angle \mathrm{PAH}$(赤い角の$\sin$)は
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{PAH}=\frac{\mathrm{PH}}{\mathrm{AP}}$
だ。
これに式B,$\mathrm{PH}=8$を代入すると、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{PAH}=\frac{8}{4\sqrt{5}}$
$\phantom{ \displaystyle \sin\angle \mathrm{PAH}} \displaystyle =\frac{2}{\sqrt{5}}$
なので、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{PAB} =\frac{2}{\sqrt{5}}$式C
であることが分かる。
さらに、△$\mathrm{ABP}$(図Gの緑の三角形)に正弦定理を使うと、
$\displaystyle \frac{\mathrm{AB}}{\sin\angle \mathrm{APB}}=\frac{\mathrm{BP}}{\sin\angle \mathrm{P}\mathrm{AB}}$
とかける。
これに式B,式Cと$\mathrm{AB}=8$を代入すると、
$\displaystyle \frac{8}{\sin\angle \mathrm{APB}}=\frac{4\sqrt{5}}{\frac{2}{\sqrt{5}}}$
$\displaystyle 4\sqrt{5} \sin \angle \mathrm{APB} = 8\cdot \frac{2}{\sqrt{5}}$
$\displaystyle \sin \angle \mathrm{APB} = \frac{8\cdot 2}{\sqrt{5}\times 4\sqrt{5}}$
$\displaystyle \phantom{\sin \angle \mathrm{APB}} \displaystyle =\frac{4}{5}$
となる。
解答チ:4, ツ:5
解法2:面積を使う方法
△$\mathrm{ABP}$(図Gの緑の三角形)の面積$S$は、
$ S=\displaystyle \frac{1}{2}\times$底辺$\times$高さ
$\phantom{S} \displaystyle =\frac{1}{2}\cdot 8\cdot 8$式D
である。
同じ面積$S$は、
公式
$ S=\displaystyle \frac{1}{2}ab\sin C$
より、$\sin\angle \mathrm{APB}$を使って
$S=\displaystyle \frac{1}{2}\mathrm{AP}\cdot \mathrm{AB}\sin\angle \mathrm{APB}$
$\phantom{S}=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 4\sqrt{5}\cdot 4\sqrt{5}\sin\angle \mathrm{APB}$
$\phantom{S}=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 4\cdot 4\cdot 5\sin\angle \mathrm{APB}$式E
だ。
式E$=$式Dなので、
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 4\cdot 4\cdot 5\sin\angle \mathrm{APB}=\frac{1}{2}\cdot 8\cdot 8$
より
$5\sin\angle \mathrm{APB}=2\cdot 2$
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APB}=\frac{4}{5}$
となる。
解答チ:4, ツ:5
解法3:2倍角の公式を使う方法
数学Ⅱの範囲になってしまうけど、$\sin \angle \mathrm{APB}$は2倍角の公式を使っても求められる。
△$\mathrm{ABP}$は二等辺三角形なので、直線$m$は$\angle \mathrm{APB}$の二等分線だ。
なので、図中の○の角は等しいから、
$\angle \mathrm{APB} =2\angle \mathrm{APH}$
より
$\sin \angle \mathrm{APB} =\sin 2\angle \mathrm{APH}$
である。
この式は、2倍角の公式
公式
$\sin 2\theta = 2 \sin \theta \cos \theta$
より、さらに
$\sin \angle \mathrm{APB} =2\sin \angle \mathrm{APH} \cdot \cos \angle \mathrm{APH}$式F
と変形できる。
いま、△$\mathrm{APH}$(図Hの緑の三角形)は$\angle \mathrm{H}=90^{\circ}$の直角三角形なので、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APH}=\frac{\mathrm{AH}}{\mathrm{AP}}$ | |
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{APH}=\frac{\mathrm{PH}}{\mathrm{AP}}$ |
より
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APH}=\frac{4}{4\sqrt{5}}$ | |
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{APH}=\frac{8}{4\sqrt{5}}$ |
となる。
これを式Fに代入して、
$\displaystyle \sin \angle \mathrm{APB} =2\cdot \frac{4}{4\sqrt{5}} \cdot \frac{8}{4\sqrt{5}}$
$\displaystyle \phantom{\sin \angle \mathrm{APB}} =2\cdot \frac{1 \cdot 2}{\sqrt{5} ^{2}}$
$\displaystyle \phantom{\sin \angle \mathrm{APB}} =\frac{4}{5}$
である。
解答チ:4, ツ:5
最後は、このときの△$\mathrm{ABP}$の外接円の半径$R$だ。
チツを(1)の式A'に代入して、$R$は
$R=\displaystyle \frac{4}{\frac{4}{5}} =\frac{4\cdot 5}{4} =5$
である。
解答テ:5
さらに別解
テを先に求めるなら、次のような方法もある。
△$\mathrm{ABP}$の面積$S$は、面積の公式
公式
$S=\displaystyle \frac{abc}{4R}$
を使って、
$S=\displaystyle \frac{\mathrm{AB}\cdot \mathrm{AP}\cdot \mathrm{BP}}{4R}$
とかける。
これに式B,式Dと$\mathrm{AB}=8$を代入して、
$\displaystyle \frac{8\cdot 4\sqrt{5}\cdot 4\sqrt{5}}{4R}=\frac{1}{2}\cdot 8\cdot 8$
より
$\displaystyle \frac{\sqrt{5}\cdot\sqrt{5}}{R}=1$
$R=5$
となる。
解答テ:5
これを(1)の式A'に代入すると、
$\displaystyle \frac{4}{\sin\angle \mathrm{APB}}=5$
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{APB}=\frac{4}{5}$
となって$\sin\angle \mathrm{APB}$が求められる。
解答チ:4, ツ:5
この方法が一番計算が簡単だけど、問題の流れに逆らっているし、上の解法1,2の方が自然かも知れない。