大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 試行調査 数学ⅡB 第5問 解説
(1)
問題文より、確率変数$X$は、正規分布
$N(104,2^{2})$
に従う。
なので、$X$の確率分布図を描くと、図Aのようになる。
まず、確率変数$X$について、$100\leqq X\leqq 106$である確率を問われている。
この確率は、図Aの赤い部分の面積にあたる。
なので、赤い部分の面積を求める。
正規分布の面積なので、正規分布表を使う。
だけど、正規分布表に載っているのは、
平均値が$0$
標準偏差が$1$
の標準正規分布だから、$X$のままでは比較ができない。
なので、$X$を標準化して標準正規分布に合わせよう。
復習
確率変数$X$の平均値を$E(X)$,標準偏差を$\sigma(X)$とする。
標準化した確率変数を$Z$とすると、
$Z=\displaystyle \frac{X-E(X)}{\sigma(X)}$
である。
復習より、$X$を標準化した確率変数を$Z$とすると、
$Z=\displaystyle \frac{X-104}{2}$式A
とかける。
式Aより、面積を求める下限の$100$を標準化すると、
$Z_{100}=\displaystyle \frac{100-104}{2}$
$=-2$
上限の$106$を標準化すると
$Z_{106}=\displaystyle \frac{106-104}{2}$
$=1$
なので、標準正規分布で
$-2\leqq Z\leqq 1$
の面積を求めればよい。
この面積は、図Bの赤い部分にあたる。
で、正規分布表を見るんだけど、載っているのは$0\leqq Z$の部分だけ。
なので、
$0\leqq Z\leqq 1$の面積
と、
$-2$を$Z=0$に関して対称移動した$2$を使って、$0\leqq Z\leqq 2$の面積
を調べてたそう。
正規分布表より、$0\leqq Z\leqq 1$の面積は
$0.3413$
$0\leqq Z\leqq 2$の面積は
$0.4772$
なので、求める赤い部分の面積は
$0.3413+0.4772=0.8185$
$0.3413+0.4772$$\doteqdot 0.819$
である。
解答ア:8, イ:1, ウ:9
$X$が$98$以下の確率も、同様に求める。
$X=98$を標準化して、
$Z_{98}=\displaystyle \frac{98-104}{2}$
$=-3$
なので、
$Z\leqq-3$
の部分の面積(図Cの赤い部分の面積)を求めればよい。
けれど、正規分布表には$0\leqq Z$の部分しか載っていないので、さっきと同じ考えから、
$3\leqq Z$
の面積(図Cの紫の部分の面積)を求める。
図Cの、$0$より右の部分の面積は、
$0.5$
また、$0\leqq Z\leqq 3$の面積(青い部分の面積)は、正規分布表より
$0.4987$
なので、紫の部分の面積は、
$0.5-0.4987=0.0013$
である。
よって、求める赤い部分の面積も
$0.0013\doteqdot 0.001$
となる。
解答エ:0, オ:0, カ:1
これを分数にすると
$0.001=\displaystyle \frac{1}{1000}$
なので、
$2^{n}\doteqdot 1000$
であるような$n$を探せば、それがキだ。
$n^{10}=1024$
なので、適当な選択肢は
②
である。
解答キ:2
ここで、標本平均の期待値と標準偏差の復習をしておこう。
復習
平均$\mu$,標準偏差が$\sigma$である母集団から、ランダムに大きさ$n$の標本を取り出し、標本平均を$\overline{x}$とする。
このとき、
$\overline{x}$の平均(期待値)$ E(\overline{x})=\mu$
$\overline{x}$の標準偏差$\displaystyle \sigma(\overline{x})=\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$
となる。
テープでまとめられた$2$袋をひとつの標本とすると、標本の大きさは$2$である。
復習より、標本平均、つまりテープでまとめられた$2$袋の内容量の平均値を$\overline{x}$とすると、$\overline{x}$の
平均(期待値)$=104$
標準偏差$=\displaystyle \frac{2}{\sqrt{2}}$
$=\sqrt{2}$
である。
テープでまとめられた$2$つの袋の内容量をそれぞれ$x_{1}$,$x_{2}$とすると、$2$袋の内容量の合計は、
$x_{1}+x_{2}$
だけど、$x_{1}$と$x_{2}$の平均値が$\overline{x}$だから、
$x_{1}+x_{2} = \overline{x}\times 2$
とかける。
なので、これに袋の重さをたして、テープでまとめられた$2$袋分の重さ$Y$は、
$Y=\overline{x}\times 2+5\times 2$
$Y$$=2\overline{x}+10$式B
と表せる。
さらに、確率変数の変換の復習をする。
復習
確率変数$W$の
平均値を$E(W)$
分散を$V(W)$
標準偏差を$\sigma(W)$
とする。
$W$と定数$a$,$b$を用いて、確率変数$U$を
$U=aW+b$
と決める。
このとき、$U$の
平均値は$aE(W)+b$
分散は$a^{2}V(W)$
標準偏差は$|a|\sigma(W)$
である。
復習より、式Bの確率変数$Y$の平均$m_{Y}$は、
$m_{Y}=2\times 104+10$
$=218$
となる。
解答ク:2, ケ:1, コ:8
次は、選択肢から選ぶ問題。
さっきの$m_{Y}$と同様に考えて、$Y$の標準偏差$\sigma$は、
$\sigma=|2|\sqrt{2}$
$\sigma$$=2\sqrt{2}$
となる。
なので、選択肢の⓪,③,④,⑤は不適。
答えは①,②のどちらかだ。
どちらが答えかを調べるために、選択肢に出てくる
$102\leqq X\leqq 106$式C
と
$m_{Y}-2\sqrt{2}\leqq Y\leqq m_{Y}+2\sqrt{2}$式D
について考えてみよう。
アイウエオカのときと同じように、標準化して考える。
$X$の平均値は$104$,標準偏差は$2$だった。
なので、式Cの各辺を標準化すると、$X$を標準化した$Z_{X}$の範囲は
$\displaystyle \frac{102-104}{2}\leqq Z_{X}\leqq\frac{106-104}{2}$
$-1\leqq Z_{X}\leqq 1$
とかける。
よって、式Cの確率は、図Dの赤い部分の面積だ。
また、$Y$は平均値が$m_{Y}$,標準偏差が$2\sqrt{2}$だった。
なので、式Dの各辺を標準化すると、$Y$を標準化した$Z_{Y}$の範囲は
$\displaystyle \frac{(m_{Y}-2\sqrt{2})-m_{Y}}{2\sqrt{2}}\leqq Z_{Y}\leqq\frac{(m_{Y}+2\sqrt{2})-m_{Y}}{2\sqrt{2}}$
$-1\leqq Z_{Y}\leqq 1$
となって、やはり図Dの赤い部分の面積だ。
以上より、式Cの確率と式Dの確率は等しい。
よって、正しい選択肢は
①
である。
解答サ:1
(2)
まず、母平均の信頼区間を求める式の復習をしよう。
復習
母標準偏差を$\sigma$,標本平均を$\overline{X}$,標本の大きさを$n$とすると、
母平均$\mu$の信頼区間を求める式は、
$\displaystyle \overline{X}-z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq\mu\leqq\overline{X}+z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$式E
ただし、信頼度が$ c\%$のとき、
$z$は、右図を標準正規分布の確率分布図として、図中の$z_{0}$の値。
特に
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$
信頼度$ 99\%$のとき、$z=2.58$
である。
復習の式Eより、$m$の$ 95\%$の信頼区間は、
$104-1.96\displaystyle \cdot\frac{2}{\sqrt{100}}\leqq m\leqq 104+1.96\cdot\frac{2}{\sqrt{100}}$
$104-1.96\cdot 0.2\leqq m\leqq 104+1.96\cdot 0.2$
$103.608\leqq m\leqq 104.392$
なので、選択肢のうちで適当なものは
③
である。
解答シ:3
アドバイス
これじゃ原理がゼンゼン分からないけど、原理通り解くと時間がかかるから、共通テスト本番では機械的に公式を使おう。
原理に関してはこのページ参照。
式Eを数直線で表してみると、図Eができる。
つまり、信頼区間は、
標本平均$\overline{X}$を中心にして、
左右に$z\displaystyle \cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$ずつの幅
といえる。
復習より、
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$
信頼度$ 99\%$のとき、$z=2.58$
なので、$ 95\%$のときよりも$ 99\%$のときの方が$z$の値が大きい。
よって、信頼区間の幅も広がる。
解答ス:2
上の考え方から、信頼区間の幅を半分にするには、
$z\displaystyle \cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$式F
の値を半分にすればよい。
式Fの3つの文字のうち、$\sigma$の値は$2$で変えられない。
なので、その他の$z$と$n$の値を変えよう。
$n$の値を変える場合
シでは$n=100$だったので、
$z\displaystyle \cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}=\frac{1}{2}\times z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{100}}$
となる$n$を求める。
この式を解くと、
$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{n}}=\frac{1}{2\sqrt{100}}$
より
$\sqrt{n}=\sqrt{400}$
$n=400$
なので、標本数が$400$になればよい。
よって、標本数を$4$倍にすればよい。
解答セ:4
$z$の値を変える場合
シでは$z=1.96$だったので、
$z\displaystyle \cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}=\frac{1}{2}\times 1.96\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$
となる$z$を求める。
この式を解くと、
$z=\displaystyle \frac{1.96}{2}$
$z$$=0.98$
となる。
よって、復習より、標準正規分布図において、図Fのときの緑の面積を求めれば、それがソタ$.$チ$\%$だ。
正規分布表で$0.98$を探すと、$0.3365$であることが分かる。
これが、図Fの斜線部の面積だ。
緑の面積は、これを$2$倍して
$0.3365\times 2=0.673$
$ 0.3365\times 2$$=67.3\%$
である。
解答ソ:6, タ:7, チ:3