大学入学共通テスト 2017年(平成29年) 試行調査 数学ⅠA 第1問 [1] 解説
はじめに
問題中のグラフ表示ソフトを再現してみた。
スライダーやテンキーで $a$,$b$,$c$ の値を変えてみて、イメージをつかんでみよう。
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- | + |
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- | + |
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- | + |
7 | 8 | 9 |
4 | 5 | 6 |
1 | 2 | 3 |
0 | + |
(1)
問題文は長いけど、質問自体は定期テストなんかでよく見るやつだ。
このタイプの問題は決まった解き方があった。
問題文中の図1より、このときの二次関数のグラフは、
下に凸条件A
放物線の軸が負条件B
$y$切片($y$軸との交点の$y$座標)が正条件C
$x$軸と2点で交わる条件D
である。
この3つを、ひとつずつ考えてゆこう。
条件A
まず、グラフは下に凸なので、
$0 \lt a$式A
である。
条件B
放物線の軸について復習すると、
復習
$y=ax^{2}+bx+c$のグラフの軸(頂点の$x$座標)は
$\displaystyle \frac{-b}{2a}$
だった。
復習より、軸が負であることを式で表すと、
$\displaystyle \frac{-b}{2a} \lt 0$式B
とかける。
式Aより$0 \lt a$なので、両辺に$2a$をかけても符号の向きは変わらない。
よって、式Bは
$-b \lt 0$
より
$0 \lt b$
と変形できる。
条件C
$y=ax^{2}+bx+c$
に
$x=0$
を代入すると、
$y=c$
となる。
よって、$c$は、$x=0$のときの$y$座標、つまり$y$切片だ。
これが正なので、
$0 \lt c$
である。
以上より、$a$,$b$,$c$ともに正なので、答えは
⓪,③
のどちらかだ。
図1のグラフの特徴のうち、条件Dの
$x$軸と2点で交わる
はまだ使ってないので、これを使って⓪と③のうちから答えを選ぼう。
条件D
グラフは$x$軸と2点で交わるので、
$D \gt 0$
だ。
⓪のときは
$D=1^{2}-4\cdot 2\cdot 3 \lt 0$
なので、不適。
③のときは
$D=3^{2}-4\displaystyle \cdot\frac{1}{2}\cdot 3 \gt 0$
なので、これが答えだ。
解答ア:3
(2)
InternetExplorer以外で見ている人は、「はじめに」に載せたグラフ表示ソフトで$c$の値を変えてみて、イメージをつかんでほしい。
イメージをつかんだところで、グラフの平行移動について復習しよう。
復習
$y=f(x)$の
$x$に$x-p$を代入すると、グラフは$x$軸方向に$p$平行移動する
$y$に$y-q$を代入すると、グラフは$y$軸方向に$q$平行移動する
$a$,$b$の値は(1)のまま変えないので、グラフの式は
$y=\displaystyle \frac{1}{2}x^{2}+3x+c$
だ。
これは
$\displaystyle y-c=\frac{1}{2}x^{2}+3x$式C
と変形できる。
復習より、式Cは
$\displaystyle y=\frac{1}{2}x^{2}+3x$
のグラフを、$y$軸方向に$c$平行移動したものだ。
よって、$a$,$b$はそのままで、$c$の値だけ変化させると、グラフは$y$軸方向に移動する。
解答イ:2
(3)
$a=\displaystyle \frac{b^{2}}{4c}$のときは、簡単簡単。
判別式は
$D=b^{2}-4\displaystyle \cdot\frac{b^{2}}{4c}\cdot c$
$D$$=0$
なので、グラフの頂点は$x$軸上にある。
解答ウ:1
それ以外のときは、ちょっと考えないといけない。
$b$,$c$の値は(1)のまま変えないので、グラフの式は
$y=ax^{2}+3x+3$
だ。
$a$を、グラフが下に凸になる範囲で変化させるので、
$0 \lt a$
である。
このとき、グラフの軸(頂点の$x$座標)は、(1)の復習より
$\displaystyle \frac{-3}{2a}$
なので、必ず負である。
また、判別式は
$D=3^{2}-4\cdot a\cdot 3$
$D$$=3(3-4a)$
なので、
$3-4a \lt 0$
のとき、つまり
$\displaystyle \frac{3}{4} \lt a$のとき、
$D \lt 0$
$3-4a \gt 0$
のとき、つまり
$a \lt \displaystyle \frac{3}{4}$のとき、
$0 \lt D$
である。
$3-4a=0$のときは$a=\displaystyle \frac{b^{2}}{4c}$のときなので、考えなくてよい。
これを数直線で表すと、図Aのようになる。
いまは$0 \lt a$だけど、図Aより、この範囲で$D$は正にも負にもなる。
よって、頂点は$x$軸の上にも下にもなる。
以上より、頂点の$x$座標は必ず負で、$y$座標は正にも負にもなるから、頂点は第2象限と第3象限を移動する。
解答エ:5
(4)
判別式や$a$と$c$の符号で説明する方が計算は楽なんだけど、頂点の$y$座標を使うようにとの指示なので、しかたがない。
面倒だけど、頂点の$y$座標を計算しよう。
頂点の$x$座標の
$\displaystyle \frac{-b}{2a}$
を、二次関数の式に代入して、
$y=a\displaystyle \left(\frac{-b}{2a}\right)^{2}+b\cdot\frac{-b}{2a}+c$
これを計算すると
$y=a\displaystyle \cdot\frac{b^{2}}{4a^{2}}-\frac{b^{2}}{2a}+c$
$y$$\displaystyle =\frac{b^{2}}{4a}-\frac{2b^{2}}{4a}+c$
$y$$\displaystyle =-\frac{b^{2}}{4a}+c$
となるので、頂点の$y$座標は
$-\displaystyle \frac{b^{2}}{4a}$ $+$ $c$式D
である。
ここで、
実数の2乗は$0$以上なので、$0\leqq b^{2}$
また、図2より、
グラフは下に凸なので、$0 \lt a$
$y$切片は負なので、$c \lt 0$
である。
よって、式Dの赤い部分は、
$-\displaystyle \frac{0\text{以上}}{\text{正}}$
となるから、
$-\displaystyle \frac{b^{2}}{4a}\leqq 0$
であることが分かる。
また、青い部分は、
$c \lt 0$
である。
よって、式Dは
$-\displaystyle \frac{b^{2}}{4a}+c \leqq 0$
といえる。
以上より、頂点の$y$座標が常に$0$以下なので、頂点は第1象限および第2象限には移動しない。
以上、考え方をかなり詳しく書いた。
共通テスト本番では時間も限られているし、こんなに丁寧に書く必要はない。
正解例が公表されているので、それを参考にしてほしい。
→ 数学入試問題データベースサイト
大学入試数学問題集成さんで
正解例を見る。