大学入試センター試験 2019年(平成31年) 追試 数学ⅡB 第5問 解説

(1)

頭の中だけで考えると混乱するので、目で見て考えるようにしよう。
まず、平均値が$95$、標準偏差が$20$(つまり分散が$20^{2}$)の正規分布$N(95,20^{2})$のグラフを描くと、図Aができる。

確率変数$X$はこの正規分布に従っているので、$X$が$100$以上である確率は図Aの緑の部分の面積にあたる。

図A
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅡB第5問 解説図A

この面積を正規分布表から求めるんだけど、
正規分布表に載っているのは、$N(0,1)$ 面積を求めたいのは、$N(95,20^{2})$ だから、そのままでは正規分布表は使えない。
$N(95,20^{2})$を標準化して、$N(0,1)$に変換しよう。

ということで、標準化の復習だ。

復習

確率変数を
平均値$0$ 標準偏差$1$ になるように変換することを、標準化という。

もとの確率変数を$X$とし、
$X$の平均値を$E(X)$ $X$の標準偏差を$\sigma(X)$ 変換後の標準化された確率変数を$Z$ とすると、変換式は
$Z=\displaystyle \frac{X-E(X)}{\sigma(X)}$
である。

復習より、問題文中の
$Z=\displaystyle \frac{X-\text{アイ}}{\text{ウエ}}$式A
は標準化の式であることが分かる。

問題文より
アイ$=$平均値 アイ$$$=95$
ウエ$=$標準偏差 ウエ$$$=20$

なので、式Aは
$Z=\displaystyle \frac{X-95}{20}$式A'
とかける。

解答ア:9, イ:5, ウ:2, エ:0


また、$X$を標準化すると$Z$なので、
$ Z\geqq$オ.カキ

$X\geqq 100$
の両辺を標準化したものだ。

右辺の$100$を標準化すると、式A'より、
$\displaystyle \frac{100-95}{20}=\frac{5}{20}$
             $=0.25$
となる。

解答オ:0, カ:2, キ:5


図Aのグラフを標準化して、図Bをつくった。
図Aと図Bの緑の面積は等しいので、図Bの緑の面積を求めれば、それが合格率だ。

図B
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅡB第5問 解説図B

正規分布表に載っているのは、$0$より右の数と、$0$との間の面積。
なので、緑の面積を直接求めることはできない。
図Bの右半分(赤い線より右)の面積は$0.5$なので、$0.5$から青い部分の面積を引こう。

正規分布表で$0.25$をさがすと、$0.0987$とある。
これが図Bの青い部分の面積にあたる。
これを$0.5$から引いて、
緑$=0.5-0.097$
   $=0.403$
   $\doteqdot 0.40$
より、求める確率は$ 40\%$である。

解答ク:4, ケ:0


次に、受験者全体の上位$ 10\%$の最低点を求める。
この上位$ 10\%$の最低点とは、グラフ的には図Cの$x_{0}$にあたる。

図C
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅡB第5問 解説図C

さっきのクケのときと同じで、$N(95,20^{2})$では正規分布表が使えない。
なので、今回も標準化して$N(0,1)$で考える。

図Cの$x_{0}$を標準化すると、図Dの$z_{0}$になる。

図D
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅡB第5問 解説図D

緑の部分の面積が$10\%=0.1$なので、青い部分の面積は$0.4$だ。
正規分布表で$0.4$を探すと、
$z_{0}=1.28$のとき$0.3997$
$z_{0}=1.29$のとき$0.4015$
なので、求める$z_{0}$は$1.28$と$1.29$の間だ。

だけど、答えは選択肢から近い数を選べばいいので、あんまり厳密に考える必要はない。
しかも選択肢同士は結構離れた数なので、アバウトに$z_{0}=1.3$とかでいってみよう。

図Cの$x_{0}$を標準化すると$1.3$になるので、式A'より
$\displaystyle \frac{x_{0}-95}{20}=1.3$
とかける。
これを解くと、
$x_{0}-95=1.3\times 20$
$x_{0}=1.3\times 20+95$
   $=121$
となる。
なので、正解は①だ。

解答コ:1

(2)

「受験者全体の上位$ 10\%$に入る」っていうのは長くて面倒なので、以下の解説では「成績上位者」と書くことにする。

まず、二項分布について思い出そう。

復習

確率$p$で事象$\mathrm{A}$が起こる試行を$n$回繰り返し、$\mathrm{A}$が起こった回数を$M$とすると、$M$の確率分布は二項分布$B(n,p)$である。
確率変数$M$の
期待値(平均値)$E(M)=np$ 分散$V(M)=np(1-p)$ 標準偏差$\sigma(M)=\sqrt{np(1-p)}$ になる。

ここで問題になっている
受験者全体から無作為に選んだ$19$人中に含まれる、成績上位者の人数 を言いかえると
受験者全体から無作為に$1$人選び、成績上位者かどうかを確認する。
その試行を$19$回行ったときの、成績上位者の人数
とかける。
また、成績上位者は受験者全体の$\displaystyle \frac{1}{10}$なので、これはさらに
$19$回の反復試行で、確率$\displaystyle \frac{1}{10}$の事象が起こる回数 と同じだと言える。

よって、復習より、
成績上位者の人数$Y$の
期待値は
$19\displaystyle \times\frac{1}{10}=1.9$
分散は
$19\displaystyle \times\frac{1}{10}\left(1-\frac{1}{10}\right)=\frac{19\times 9}{10\times 10}$
                         $=1.71$
である。

解答サ:1, シ:9, ス:1, セ:7, ソ:1


センター試験で二項分布が出ると 次は正規分布で近似することが多い。
けれど、今回は標本の大きさが$19$しかない。$19$を十分大きい数じゃないし、正規分布で近似するのは無理がある。
なので、反復試行の確率として$p_{1}$,$p_{2}$を求める。

$p_{1}$は、$19$回の反復試行のうち、確率$\displaystyle \frac{1}{10}$の事象が$1$回起こる確率なので、
$\displaystyle p_{1}={}_{19}\mathrm{C}_{1}\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{1}\cdot\left(1-\frac{1}{10}\right)^{19-1}$
$p_{1}$$\displaystyle =19\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{1}\cdot\left(\frac{9}{10}\right)^{18}$

$p_{2}$は、$19$回の反復試行のうち、確率$\displaystyle \frac{1}{10}$の事象が$2$回起こる確率なので、
$\displaystyle p_{2}={}_{19}\mathrm{C}_{2}\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{2}\cdot\left(1-\frac{1}{10}\right)^{19-2}$
$p_{2}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{19\cdot 18}{2\cdot 1}\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{2}\cdot\left(\frac{9}{10}\right)^{17}$
$p_{2}$$\displaystyle =19\cdot 9\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{2}\cdot\left(\frac{9}{10}\right)^{17}$

よって、
$\displaystyle \frac{p_{1}}{p_{2}}=\frac{19\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{1}\cdot\left(\frac{9}{10}\right)^{18}}{19\cdot 9\cdot\left(\frac{1}{10}\right)^{2}\cdot\left(\frac{9}{10}\right)^{17}}$
とかける。

これを約分して、
$\displaystyle \frac{p_{1}}{p_{2}}=\frac{\left(\frac{9}{10}\right)}{9\cdot\left(\frac{1}{10}\right)}$
     $=1$
である。

解答タ:2

(3)

母平均の推定は、公式を使うのがお勧め。

復習

母平均$m$の信頼区間は、標本の大きさを$n$,標本平均を$\overline{Y}$,母標準偏差を$\sigma$とすると、
$\displaystyle \overline{Y}-z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq m\leqq\overline{Y}+z\cdot\frac{\sigma}{\sqrt{n}}$式B
となる。ただし$z$は
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$ 信頼度$ 99\%$のとき、$z=2.58$ である。

いま、
標本の大きさ$n=96$ 標本平均$\overline{Y}=99$ 母標準偏差$\sigma=20$ 信頼度は$ 95\%$ なので、$m$の信頼区間は、式Bより、
$99-$$1.96\displaystyle \cdot\frac{20}{\sqrt{96}}$$\leqq m\leqq 99+$$1.96\displaystyle \cdot\frac{20}{\sqrt{96}}$式C
となる。

$\sqrt{96}=4\sqrt{6}$
で、問題文より$\sqrt{6}=2.45$だから、
$\sqrt{96}=4\cdot 2.45$
だけど、わざわざ$2.45$なんて半端な数を出してきたのは、きっと$1.96$と約分できるからだ。
$\displaystyle \frac{1.96}{2.45}=\frac{196}{245}$
は、分母分子を$7^{2}$で割って、
$\displaystyle \frac{1.96}{2.45}=\frac{4}{5}$
となる。

なので、式Cの緑の部分は、
$1.96\displaystyle \cdot\frac{20}{\sqrt{96}}=1.96\cdot \frac{20}{4\cdot 2.45}$

途中式                $=\displaystyle \frac{20\cdot 1.96}{4\cdot 2.45}$
               $=\displaystyle \frac{20\cdot 4}{4\cdot 5}$
               $=\displaystyle \frac{20}{5}$式D
               $=4$
となる。

よって、式Cの信頼区間は、
$99-4\leqq m\leqq 99+4$
より
$95\leqq m\leqq 103$
である。

解答チ:9, ツ:5, テ:1, ト:0, ナ:3

また、信頼区間の幅は、
$103-95=8$
となる。

解答ニ:8


この信頼区間の幅を式Cで考えると
$\displaystyle \left(99+1.96\cdot\frac{20}{\sqrt{96}}\right)-\left(99-1.96\cdot\frac{20}{\sqrt{96}}\right)$
なので
$1.96\displaystyle \cdot\frac{20}{\sqrt{96}}\times 2$式E
とかける。

式Dより、
$1.96\displaystyle \cdot\frac{20}{\sqrt{96}}=\frac{20}{5}$
なので、式Eは
$\displaystyle \frac{20}{5}\times 2$式E'
とかける。

いま問われているのは、母標準偏差が$20$ではなく$15$のときの信頼区間の幅だ。
なので、式E'の$20$を$15$に変えて、
$\displaystyle \frac{15}{5}\times 2=6$
となる。

解答ヌ:6

アドバイス

以上、母平均の推定は復習の式だけを使って解いた。
センター試験は時間との戦いなので、この方法がお薦めなんだけど、これだと原理が全然分からない。
その辺の解説は、このページを見てほしい。