大学入試センター試験 2019年(平成31年) 追試 数学ⅠA 第1問 [1] 解説

(1)

$f(x)=(1+\sqrt{2})x-\sqrt{3}a$式A

$f(0)\leqq 6$
なので、式Aより
$(1+\sqrt{2})\cdot 0-\sqrt{3}a\leqq 6$
$-\sqrt{3}a\leqq 6$
$\sqrt{3}a\geqq-6$式B
両辺を$\sqrt{3}$で割って、
$a\geqq-2\sqrt{3}$式C
となる。

解答:ア:-, イ:2, ウ:3

アドバイス

式Bから式Cへの変形は、
$a\displaystyle \geqq-\frac{6}{\sqrt{3}}$
としてから、右辺の分母を有理化して
$a\displaystyle \geqq-\frac{6}{\sqrt{3}}\cdot\frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}}$
$a\displaystyle \geqq-\frac{6\sqrt{3}}{3}$
$a\geqq-2\sqrt{3}$
とする人が多いと思う。

けれど、式Bの右辺の$6$は$2\times 3$で、$3$は$\sqrt{3}^{2}$なので、式Bは
$\sqrt{3}a\geqq-2\sqrt{3}^{2}$
と書けるから、両辺を$\sqrt{3}$で割ると式Cができる。

文章で説明すると面倒な感じだけど、慣れると一瞬で計算できる。
この考え方は根号を含む分数の約分にも使えるので、マスターすることをお勧めする。

$f(6)\geqq 0$
となるのは、式Aより
$(1+\sqrt{2})\cdot 6-\sqrt{3}a\geqq 0$
$\sqrt{3}a\leqq(1+\sqrt{2})\cdot 6$式D
両辺を$\sqrt{3}$で割って、
$a\leqq(1+\sqrt{2})\cdot 2\sqrt{3}$
$a\leqq 2\sqrt{3}+2\sqrt{6}$式E
となる。

解答エ:2, オ:3, カ:2, キ:6
または
エ:2, オ:6, カ:2, キ:3

アドバイス

式D以降は、分数にしてから有理化する方法だと、
$a\displaystyle \leqq\frac{(1+\sqrt{2})\cdot 6}{\sqrt{3}}$
$a\displaystyle \leqq\frac{(1+\sqrt{2})\cdot 6}{\sqrt{3}}\cdot\frac{\sqrt{3}}{\sqrt{3}}$
$a\displaystyle \leqq\frac{(1+\sqrt{2})\cdot 6\sqrt{3}}{3}$
$a\leqq(1+\sqrt{2})\cdot 2\sqrt{3}$
$a\leqq 2\sqrt{3}+2\sqrt{6}$
となる。

(2)

まず、イメージをつかむために数直線を描く。
$\mathrm{P}=-2\sqrt{3}$
$\mathrm{Q}=2\sqrt{3}+2\sqrt{6}$
で、中点を点$\mathrm{M}$とすると、次のような数直線ができる。

図A
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅠA 第1問[1] 解説図A

さらに、中点の座標の復習をしておこう。

復習

2点$\mathrm{A}$,$\mathrm{B}$の中点の座標は、
$\displaystyle \frac{(\text{点}\mathrm{A}\text{の座標})+(\text{点}\mathrm{B}\text{の座標})}{2}$

復習より、$\mathrm{PQ}$の中点$\mathrm{M}$の座標は、
$\displaystyle \frac{(\text{点}\mathrm{P}\text{の座標})+(\text{点}\mathrm{Q}\text{の座標})}{2}$
である。

これに
$\mathrm{P}=-2\sqrt{3}$
$\mathrm{Q}=2\sqrt{3}+2\sqrt{6}$
を代入して、求める座標は
$\displaystyle \frac{-2\sqrt{3}+2\sqrt{3}+2\sqrt{6}}{2}$
$=\displaystyle \frac{2\sqrt{6}}{2}$
$=\sqrt{6}$
であり、これが中点に対応する実数である。

解答ク:6

(3)

この問題は、絶対値の考え方を使う方法と、使わない方法の2通りが考えられる。
その両方を解説しておく。

解法1

アドバイス

センター試験への対策として、絶対値は必ずマスターしておきたい。
だけど、多くの受験生が絶対値を好きじゃないのも事実だと思う。
なので、まず、絶対値を使わない方法で解いてみよう。

(1)より、$f(0)\leqq 6$かつ$f(6)\geqq 0$となるような$a$の範囲は、式Cと式Eの連立不等式の解だ。
よって、求める$a$の範囲は、
$-2\sqrt{3}\leqq a\leqq 2\sqrt{3}+2\sqrt{6}$式F
である。

また、問題文にあるように、$u$が実数,$r$が$0$以上の実数のとき
$|u|\leqq t\ \Leftrightarrow\ -r\leqq u\leqq r$
となるので、問題文中の
$\left|a-\sqrt{ケ}\right|\leqq\sqrt{コ}+サ\sqrt{シ}$
は、
$-(\sqrt{コ}+サ\sqrt{シ})\leqq a-\sqrt{ケ}\leqq\sqrt{コ}+サ\sqrt{シ}$
より
$\sqrt{ケ}-\sqrt{コ}-サ\sqrt{シ}\leqq a\leqq\sqrt{ケ}+\sqrt{コ}+サ\sqrt{シ}$
                        式G
と書ける。


式Gと式Fは同じ$a$の範囲を表す式なので、左辺同士・右辺同士は等しい。
なので、
$\left\{\begin{array}{l} \sqrt{ケ}-\sqrt{コ}-サ\sqrt{シ}=-2\sqrt{3}\\ \sqrt{ケ}+\sqrt{コ}+サ\sqrt{シ}=2\sqrt{3}+2\sqrt{6} \end{array}\right.$式H
でなければならない。

式Hを見ると、すぐに
$\sqrt{ケ}=\sqrt{6}$
$\sqrt{コ}=\sqrt{6}$
$サ\sqrt{シ}=2\sqrt{3}$
だと想像がつくけれど、ここでは計算で解いておく。


式Hの二つの式を辺々たして、

$\sqrt{ケ}$ $+\sqrt{コ}$ $+サ\sqrt{シ}$ $=$ $2\sqrt{3}$ $+2\sqrt{6}$
$+)$ $\sqrt{ケ}$ $-\sqrt{コ}$ $-サ\sqrt{シ}$ $=$ $-2\sqrt{3}$
$2\sqrt{ケ}$ $=$ $2\sqrt{6}$
となるので、
$\sqrt{ケ}=\sqrt{6}$
である。

解答ケ:6

また、式Hの二つの式を辺々引いて、

$\sqrt{ケ}$ $+\sqrt{コ}$ $+サ\sqrt{シ}$ $=$ $2\sqrt{3}$ $+2\sqrt{6}$
$-)$ $\sqrt{ケ}$ $-\sqrt{コ}$ $-サ\sqrt{シ}$ $=$ $-2\sqrt{3}$
$2\sqrt{コ}$ $+2サ\sqrt{シ}$ $=$ $4\sqrt{3}$ $+2\sqrt{6}$
$\sqrt{コ}+サ\sqrt{シ}=2\sqrt{3}+\sqrt{6}$
となるので、
$\sqrt{コ}=\sqrt{6}$
$サ\sqrt{シ}=2\sqrt{3}$
である。

解答コ:6, サ:2, シ:3

解法2

アドバイス

この問題については、解法1のように絶対値を使わずに解ける。
解法1で解いてもらってOKだ。
けれど、(2)で求めた結果を全く使わなかったことからも分かるように、解法1は問題の流れには乗っていない。
流れは、次のような絶対値を使う方法だ。

(1)より、$f(0)\leqq 6$かつ$f(6)\geqq 0$となるような$a$の範囲は、式Cと式Eの連立不等式の解なので、
$-2\sqrt{3}\leqq a\leqq 2\sqrt{3}+2\sqrt{6}$
である。
これは、(2)の図Aの点$\mathrm{P}$と点$\mathrm{Q}$の間の部分にあたる(点$\mathrm{P}$と点$\mathrm{Q}$を含む)。
なので、$a$の範囲を数直線で表すと、図Bができる。

図B
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅠA 第1問[1] 解説図B

図Bにおいて、点$\mathrm{M}$は線分$\mathrm{PQ}$の中点。
なので、点$\mathrm{M}$と点$\mathrm{P}$の距離と、点$\mathrm{M}$と点$\mathrm{Q}$の距離は等しくて、
$\sqrt{6}-(-2\sqrt{3})$式I
$=\sqrt{6}+2\sqrt{3}$
である。

$a$は点$\mathrm{M}$から見て点$\mathrm{M}$や点$\mathrm{P}$より遠くなることはないので、
$a$と点$\mathrm{M}$の距離$\leqq\sqrt{6}+2\sqrt{3}$式J
であることが分かる。


ここで、$a$と$\mathrm{M}$の距離を考える。
式Iで点$\mathrm{M}$と点$\mathrm{P}$の距離を求めたけど、それは
$($点$\mathrm{M}$の座標$)-($点$\mathrm{P}$の座標$)$
という計算だった。
同じように、$a$と$\mathrm{M}$の距離は
$a-($点$\mathrm{M}$の座標$)$
$=a-\sqrt{6}$
だけど、$a$が点$\mathrm{M}$の右にあるか左にあるか分からない。
左にあると、$a-\sqrt{6}$だと負の値になってしまう。
なので、
$\left|a-\sqrt{6}\right|$
と絶対値をつけておこう。


これを式Jに代入して、
$\left|a-\sqrt{6}\right|\leqq\sqrt{6}+2\sqrt{3}$
となる。

解答ケ:6, コ:6, サ:2, シ:3