大学入試センター試験 2019年(平成31年) 追試 数学ⅠA 第3問 解説
はじめに
説明文に「すべての机の上に白のカードが置かれている状態」とか書いていると長くなってしかたがない。
なので、以下の解説では、
机の上に白のカードが置かれている状態を
机の上に青のカードが置かれている状態を
と表すことにする。
下段に3つ並んでいる小さい四角は箱の中のカードだ。
よって、
すべての机の上に白のカードが置かれている状態は
すべての机の上に青のカードが置かれている状態は
と表せる。
それから、箱の中のカードだけを表す場合も図にしよう。
箱の中に白のカードが2枚と青のカードが1枚ある状態を
白のカードが1枚と青のカードが2枚ある状態を
と表すことにする。
それでは問題の解説に入ろう。
(1)
まず、1回目の終了時にになる確率から。
ひとつの机について考えると、操作$S$の終了時にであるためには、箱からが出ればよい。
1回目の操作を始める前、全ての箱の中身は
だから、箱から取り出したカードがである確率は、
$\displaystyle \frac{1}{3}$
である。
机全部について考えると、3つの箱すべてからが出るので、求める確率は
$\displaystyle \left(\frac{1}{3}\right)^{3}=\frac{1}{27}$
となる。
解答ア:1, イ:2, ウ:7
1回目の終了時にになる確率も、さっきのと同じように解く。
操作$S$の終了時にであるためには、箱からが出ればよい。
1回目の操作を始める前、全ての箱の中身は
だから、箱から取り出たカードがである確率は、
$\displaystyle \frac{2}{3}$
である。
3つの箱すべてからが出るので、求める確率は
$\displaystyle \left(\frac{2}{3}\right)^{3}=\frac{8}{27}$
となる。
解答エ:8, オ:2, カ:7
(2)
状態$A$は、との2種類しかない。
(1)より、1回目の終了時に
である確率は、$\displaystyle \frac{1}{27}$
である確率は、$\displaystyle \frac{8}{27}$
なので、
1回目の終了時に状態$A$である確率は
$\displaystyle \frac{1}{27}+\frac{8}{27}=\frac{9}{27}$
$\displaystyle \frac{1}{27}+\frac{8}{27}$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
である。
解答キ:1, ク:3
次に、状態$B$。
状態$B$になる確率をそのまま求めるより、余事象を考えた方が楽だ。
カードはとの2種類しかないので、3つの机の上のカードがすべて違う色にはならない。
つまり、
3枚とも同じ色(状態$A$)
2枚が同じ色(状態$B$)
のどちらかしか起こらない。
なので、状態$B$の余事象は状態$A$である。
よって、
状態$B$である確率$=1-$状態$A$である確率
より、
状態$B$である確率$=1-\displaystyle \frac{1}{3}$
状態$B$である確率$\displaystyle $$\displaystyle =\frac{2}{3}$
である。
解答ケ:2, コ:3
別解
全くお勧めはしないが、状態$B$の確率を余事象を使わずに解くと次のようになる。
状態$B$は、机の上のカードが
2枚と1枚パターンA
1枚と2枚パターンB
の2種類だ。
それぞれの確率を求めて足し算をする。
パターンAから始めよう。
1回目の終了時にになるのは、
$\displaystyle \frac{2}{3}\cdot\left(\frac{1}{3}\right)^{2}$式A
だけど、でも
でもいいので、パターンBである確率は、式Aに${}_{3}\mathrm{C}_{1}$をかけて
$\displaystyle \frac{2}{3}\cdot\left(\frac{1}{3}\right)^{2}\cdot {}_{3}\mathrm{C}_{1}$式B
となる。
次に、パターンBだ。
1回目の終了時にになるのは、
$\displaystyle \frac{1}{3}\cdot\left(\frac{2}{3}\right)^{2}$式C
だけど、でも
でもいいので、パターンBである確率は、式Cに${}_{3}\mathrm{C}_{1}$をかけて
$\displaystyle \frac{1}{3}\cdot\left(\frac{2}{3}\right)^{2}\cdot {}_{3}\mathrm{C}_{1}$式D
となる。
以上より、1回目の終了時に状態$B$である確率は、式Bと式Dをたして
$\displaystyle \frac{2}{3}\cdot\left(\frac{1}{3}\right)^{2}\cdot {}_{3}\mathrm{C}_{1}+\frac{1}{3}\cdot\left(\frac{2}{3}\right)^{2}\cdot {}_{3}\mathrm{C}_{1}$
$=\displaystyle \frac{2}{3}\cdot\left(\frac{1}{3}\right)^{2}\cdot 3+\frac{1}{3}\cdot\left(\frac{2}{3}\right)^{2}\cdot 3$
$=\displaystyle \frac{2}{3^{2}}+\frac{2^{2}}{3^{2}}$
$=\displaystyle \frac{6}{3^{2}}$
$=\displaystyle \frac{2}{3}$
となる。
解答ケ:2, コ:3
(3)
アドバイス
問題を解く前に、条件付き確率についてちょっと考えておこう。
復習
事象$A$が起こる確率を$P(A)$,事象$A$と事象$B$の両方が起こる確率を$P(A\cap B)$とするとき、
$A$が起こったときに$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$は、
$P_{A}(B)=\displaystyle \frac{P(A\cap B)}{P(A)}$
というのが、多くの問題集や参考書に載っている説明だ。
けれど、今回の問題を含めて、次のように考えた方が分かりやすいことも多い。
復習
事象$A$が起こったときに事象$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$とは、$A$が起こった場合を全事象と考えて、その中で$B$が起こる確率のことである。
この二つの復習の両方を理解しておいてほしい。
今回は、2つ目の復習の考え方で解いてみよう。
復習の事象$A$は、この問題では
1回目の終了時に机の上にあるカードが2枚と1枚
復習の事象$B$は、この問題では
2回目の終了時に状態$A$
にあたる。
事象$A$が起こった場合を全事象と考えるので、求める条件付き確率は、言いかえると
机の上にあるカードが2枚と1枚
の状態から操作$S$を1回行い、操作後に
または
になる確率のことである。
操作後にになる確率から始めよう。
操作$S$で、3つの机すべてで箱からが出る確率を求める。
の机は2つあって、が出る確率はそれぞれ$\displaystyle \frac{1}{3}$
の机は1つで、が出る確率は$\displaystyle \frac{2}{3}$
なので、すべての机で箱からが出る確率は、
$\displaystyle \left(\frac{1}{3}\right)^{2}\cdot\frac{2}{3}=\frac{2}{3^{3}}$式E
である。
操作後にになる確率も、のときと同様に考える。
の机は2つあって、が出る確率はそれぞれ$\displaystyle \frac{2}{3}$
の机は1つで、が出る確率は$\displaystyle \frac{1}{3}$
なので、すべての机で箱からが出る確率は、
$\displaystyle \left(\frac{2}{3}\right)^{2}\cdot\frac{1}{3}=\frac{4}{3^{3}}$式F
である。
状態$A$になるためには、操作後にでもでもいいので、式Eと式Fを足し算して、求める条件付き確率は、
$\displaystyle \frac{2}{3^{3}}+\frac{4}{3^{3}}=\frac{6}{3^{3}}$
$\displaystyle \frac{2}{3^{3}}+\frac{4}{3^{3}}$$\displaystyle =\frac{2}{9}$式G
となる。
解答サ:2, シ:9
次は、1回目の終了時に机の上にあるカードが1枚と2枚のとき。
問題文から、求める条件付き確率は
$\displaystyle \frac{\text{サ}}{\text{シ}}=\frac{2}{9}$
なのは分かるけど、念のため解説しておこう。
すべての机でとの数は等しいので、とを入れ替えても確率は変わらない。
なので、
2枚と1枚から始めて、操作後に状態$A$になる確率
と
1枚と2枚から始めて、操作後に状態$A$になる確率
は等しい。
なので、求める条件付き確率は、式Gと同じ
$\displaystyle \frac{2}{9}$
である。
(4)
(2)より、操作前にのとき、
操作後に
状態$A$である確率は$\displaystyle \frac{1}{3}$
状態$B$である確率は$\displaystyle \frac{2}{3}$
だった。
(3)でも考えたけど、すべての机でとの数は等しいので、とを入れ替えても確率は変わらない。
なので、
操作前にのとき、
操作後に
状態$A$である確率は$\displaystyle \frac{1}{3}$
状態$B$である確率は$\displaystyle \frac{2}{3}$
である。
これをまとめると、
操作前に状態$A$のとき、操作後に
状態$A$になる確率は$\displaystyle \frac{1}{3}$
状態$B$になる確率は$\displaystyle \frac{2}{3}$
であると言える。
(3)で求めた結果、
操作前に机の上のカードが2枚と1枚のとき、操作後に状態$A$になる確率は$\displaystyle \frac{2}{9}$
操作前に机の上のカードが1枚と2枚のとき、操作後に状態$A$になる確率は$\displaystyle \frac{2}{9}$
だった。
状態$B$は
机の上にあるカードが2枚と1枚
机の上にあるカードが1枚と2枚
の2種類しかなくて、どちらも操作後に状態$A$になる確率は$\displaystyle \frac{2}{9}$なので、
操作前に状態$B$のとき、操作後に状態$A$になる確率は$\displaystyle \frac{2}{9}$
であると言える。
また、状態$B$の余事象は状態$A$だったので、$1-\displaystyle \frac{2}{9}=\frac{7}{9}$より、
操作前に状態$B$のとき、操作後に状態$B$になる確率は$\displaystyle \frac{7}{9}$
である。
以上より、の状態から始めて、
1回目の試行後に状態$A$になる確率は$\displaystyle \frac{1}{3}$
このとき、
2回目の試行後も状態$A$になる確率は、
$\displaystyle \frac{1}{3}\times\frac{1}{3}=\frac{1}{9}$
2回目の試行後には状態$B$になる確率は、
$\displaystyle \frac{1}{3}\times\frac{2}{3}=\frac{2}{9}$
1回目の試行後に状態$B$になる確率は$\displaystyle \frac{2}{3}$
このとき、
2回目の試行後には状態$A$になる確率は、
$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{2}{9}=\frac{4}{27}$
2回目の試行後も状態$B$になる確率は、
$\displaystyle \frac{2}{3}\times\frac{7}{9}=\frac{14}{27}$
である。
これを表にまとめると表Aができる。
1回目の終了時 | |||
---|---|---|---|
状態$A$ | 状態$B$ | ||
2回目の 終了時 |
状態$A$ | $\displaystyle \frac{1}{9}$ | $\displaystyle \frac{4}{27}$ |
状態$B$ | $\displaystyle \frac{2}{9}$ | $\displaystyle \frac{14}{27}$ |
2回目の終了時に状態$A$なのは、表Aの緑の部分。
よって、求める確率は
$\displaystyle \frac{1}{9}+\frac{4}{27}=\frac{1\cdot 3+4}{27}$
$\displaystyle \frac{1}{9}+\frac{4}{27}$$\displaystyle =\frac{7}{27}$
である、
解答ス:7, セ:2, ソ:7
(5)
(4)で表Aが出来ているので、あとは簡単だ。
表Aに(5)の問題に合わせて色をつけなおして、表Bをつくってみた。
1回目の終了時 | |||
---|---|---|---|
状態$A$ | 状態$B$ | ||
2回目の 終了時 |
状態$A$ | $\displaystyle \frac{1}{9}$ | $\displaystyle \frac{4}{27}$ |
状態$B$ | $\displaystyle \frac{2}{9}$ | $\displaystyle \frac{14}{27}$ |
(3)の2つめの復習の考え方から、図Bのグレーの部分は存在しないものとし、緑の部分を全事象と考える。
緑の部分のうち、1回目の終了時も状態$B$であるのは、赤文字の部分。
なので、求める条件付き確率は、
$\displaystyle \frac{\frac{14}{27}}{\frac{2}{9}+\frac{14}{27}}$式H
とかける。
繁分数は面倒なので、分母分子に$27$をかけて、答えは
$\displaystyle \frac{14}{2\cdot 3+14}$
$=\displaystyle \frac{14}{20}$
$=\displaystyle \frac{7}{10}$
である。
解答タ:7, チ:1, ツ:0
別解
式Hの分母の部分は、次のように求めることもできる。
(4)より、2回目の終了時に状態$A$になる確率は、$\displaystyle \frac{7}{27}$
状態$B$の余事象は状態$A$
なので、2回目の終了時に状態$B$になる確率は
$1-\displaystyle \frac{7}{27}=\frac{20}{27}$
である。