大学入試センター試験 2019年(平成31年) 追試 数学ⅠA 第1問 [3] 解説

(1)

方程式①の判別式が正であればよいので、
$D=\{2(2a-b)\}^{2}-4\cdot b\cdot(b-4a+3) \gt 0$
各辺を$4$で割って、
$\frac{D}{4}=(2a-b)^{2}-b\cdot(b-4a+3) \gt 0$
展開して、
$\frac{D}{4}=4a^{2}-4ab+b^{2}-b^{2}+4ab-3b \gt 0$
$\frac{D}{4}=4a^{2}-3b \gt 0$式A
$4a^{2} \gt 3b$
$b \lt \displaystyle \frac{4}{3}a^{2}$
となる。

解答ツ:4, テ:3


さらに、このときの実数解を解の公式を使って求める。
式Aの中辺は$\frac{D}{4}$。
だから、式Aの中辺を$4$倍すれば判別式だ。
解の公式のルートの中身は判別式なので、式Aの中辺の$4$倍を使おう。

解の公式より、
$x=\displaystyle \frac{-2(2a-b)\pm\sqrt{4\cdot(4a^{2}-3b)}}{2b}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{-(2a-b)\pm\sqrt{4a^{2}-3b}}{b}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{b-2a\pm\sqrt{4a^{2}-3b}}{b}$
となる。

解答ト:2

アドバイス

$x$の係数が$2$の倍数で、$2b$とかけるとき、
解の公式:$x=\displaystyle \frac{-b\pm\sqrt{b^{2}-ac}}{a}$
判別式:$D/4=b^{2}-ac$
っていうのもあるけど、使わないことを薦めます
この公式に頼ってしまうと、因数分解するのがおろそかになりがちだから。
これを憶える余裕があったら、英単語のひとつでも憶えた方がいいです。

(2)

ここからはグラフで考える。

$b=a^{2}$なので、方程式①は
$a^{2}x^{2}+2(2a-a^{2})x+a^{2}-4a+3=0$
となるけど、この解は、
$y=a^{2}x^{2}+2(2a-a^{2})x+a^{2}-4a+3$グラフA
のグラフと$x$軸との共有点だ。
$0 \lt a^{2}$なので、グラフは下に凸の放物線になる。

ということで、これは、グラフAと$x$軸との共有点の位置の問題だ。
このタイプの問題は、決まった解き方をするので憶えておこう。

復習

ポイントは、条件に合うグラフを描いて、
$x$軸との共有点の個数を考える条件A 境目の$y$座標の正負を考える条件B グラフの軸が境目よりも右にあるか左にあるかを考える条件C ここで言う境目とは、例えば
$x$軸の正の部分で交わるのなら、$x=0$
$2 \lt x$の部分で交わるのなら、$x=2$
だ。


方程式①の解が正の実数と負の実数のとき、グラフAは$x$軸の正の部分と負の部分のそれぞれで交わる。
よって、グラフAは図Aのようになればよい。

図A
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅠA 第1問[3] 解説図A

まず、復習の3つの条件のうち、条件Bから始めよう。
いま、グラフは$x$軸の正の部分と負の部分で交わるので、境目は$x=0$である。
図Aより、このときの$y$は負になるので、
$a^{2}\cdot 0^{2}+2(2a-a^{2})\cdot 0+a^{2}-4a+3 \lt 0$
$a^{2}-4a+3 \lt 0$
$(a-1)(a-3) \lt 0$
より、
$1 \lt a \lt 3$式B
である。

次に復習の条件Aだ。
さっきの条件Bより、下に凸の放物線が$x=0$で負になるので、$x$軸と2点で交わるのは明らか。
なので、条件Aは考えなくてもいい。

さらに、条件C。
今回の境目は$x=0$だけど、
図Aの黒い放物線のように、軸が$x=0$であっても、 オレンジのように、軸が$x=0$より右にあっても、 緑のように、軸が$x=0$より左にあっても、 目的の、$x$軸の正の部分と負の部分で交わる放物線ができる。
つまり、放物線の軸はどこにあってもいい。
なので、条件Cも考えなくてよい。

また、問題文より$a\neq 0$。

以上より、求める$a$の範囲は、式Bのままで、
$1 \lt a \lt 3$
である。

解答ナ:1, ニ:3


方程式①の解が異なる二つの正の実数のとき、グラフAは$x$軸の正の部分2か所で交わる。
よって、グラフAは図Bのようになればよい。

図B
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅠA 第1問[3] 解説図B

まず、復習の3つの条件のうち、条件Aから。
グラフが$x$軸と異なる2点で交わる条件は、(1)より、
$b \lt \displaystyle \frac{4}{3}a^{2}$
だけど、$b=a^{2}$なので、
$a^{2} \lt \displaystyle \frac{4}{3}a^{2}$
となる。
これを整理すると、
$3a^{2} \lt 4a^{2}$
$0 \lt a^{2}$
より
$a\neq 0$式C
となる。
問題文に$a$は$0$でない実数とあるけど、同じ式が出来た。

次に、条件Bだ。
今、グラフは$x$軸の正の部分と2か所で交わるので、境目は$x=0$である。
図Bより、このときの$y$は正になるので、
$a^{2}\cdot 0^{2}+2(2a-a^{2})\cdot 0+a^{2}-4a+3 \gt 0$
$a^{2}-4a+3 \gt 0$
$(a-1)(a-3) \gt 0$
より、
$a \lt 1$,$3 \lt a$式D

最後に、条件C。
今回の境目は$x=0$だけど、図Bより放物線の軸は$y$軸より右にないといけない。
ここで、放物線の軸についてちょっと復習する。

復習

$y=ax^{2}+bx+c$の放物線の軸(頂点の$x$座標)は
$\displaystyle \frac{-b}{2a}$
だった。

グラフAの式を平方完成するのは面倒なので、復習の方法を使おう。

復習より、グラフAの軸は、
$x=\displaystyle \frac{-2(2a-a^{2})}{2a^{2}}$式E
これが$y$軸より右にあるので、
$0 \lt \displaystyle \frac{-2(2a-a^{2})}{2a^{2}}$
$0 \lt \displaystyle \frac{-(2a-a^{2})}{a^{2}}$
$0 \lt a^{2}$なので、両辺に$a^{2}$をかけても不等号の向きは変わらない。
$0 \lt -(2a-a^{2})$
$0 \lt a^{2}-2a$
$a(a-2) \gt 0$
より
$a \lt 0$,$2 \lt a$式F

以上の式C,式D,式Fの重なる部分が答だ。
数直線を描くと、

図C
大学入試センター試験2019年追試 数学ⅠA 第1問[3] 解説図C

となるので、求める範囲は
$a \lt 0$,$3 \lt a$
である。

解答ヌ:0, ネ:3

別解

式Eからの変形で、先に約分すると次のような計算になる。
$x=\displaystyle \frac{-2(2a-a^{2})}{2a^{2}}$式E
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{-(2a-a^{2})}{a^{2}}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =\frac{-2a+a^{2}}{a^{2}}$
$x\displaystyle $$\displaystyle =-\frac{2}{a}+1$
これが$y$軸より右にあるので、
$0 \lt -\displaystyle \frac{2}{a}+1$
$\displaystyle \frac{2}{a} \lt 1$式G
だけど、ここからがちょっと面倒だ。
両辺に$a$をかけて分母を払うんだけど、$a$が正か負か分からないので場合分けをしないといけない。

$a \lt 0$のとき、
式Gの分母を払うと
$2 \gt a$
これと場合分けの
       $a \lt 0$を合わせて、
$a \lt 0$
$0 \lt a$のとき、
式Gの分母を払うと
$2 \lt a$
これと場合分けの
       $0 \lt a$を合わせて、
$2 \lt a$

なので、
$a \lt 0$,$2 \lt a$
となって、式Fができる。