大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 追試 数学ⅡB 第3問 解説

(1)

確率$p$ではいと答える質問に、三人のうち一人だけが「はい」と答える確率
確率$p$で起こる事象が、3回のうち1回だけ起こる確率 と同じだ。

なので、反復試行の確率と考えて求めよう。
この確率を$q$とすると、反復試行の確率なので
$q={}_{3}\mathrm{C}_{1}p(1-p)^{3-1}$式A
とかける。

解答ア:1

$q$を$p$の関数として
$q=f(p)$
とおくと、
$$ \begin{align} f(p)&={}_{3}\mathrm{C}_{1}p(1-p)^{3-1}\\ &=3p(1-p)^{2}\class{tex_formula}{式B} \end{align} $$ と表せる。

式Bより、$p=\dfrac{1}{3}$ のときの確率 $f\left(\dfrac{1}{3}\right)$ は
$$ \begin{align} f\left(\dfrac{1}{3}\right)&=3\cdot\dfrac{1}{3}\cdot\left(\dfrac{2}{3}\right)^{2}\\ &=\dfrac{4}{9} \end{align} $$ である。

解答イ:4, ウ:9

(2)

(2)の問題文の大半は、問題を解くのに必要ないので読み飛ばす。
最後の一文だけ読めば大丈夫。

(1)より、
$q=\dfrac{2}{9}$
のとき
$f(p)=\dfrac{2}{9}$
なので
$f(p)-\dfrac{2}{9}=0$
だ。

これに式Bを代入すると、
$\textcolor{red}{3p(}1\textcolor{red}{-p)^{2}}\textcolor{green}{-\dfrac{2}{9}}=0$式C
とかける。

ここで求められているのは、式Cを、問題文中にある式の
$\left(\textcolor{red}{p}\textcolor{green}{-\dfrac{\fbox{ エ }}{\fbox{ オ }}}\right)(\textcolor{red}{9p^{2}}-12p\textcolor{green}{+1})=0$式C'
の形に変形することだ。

式Cを計算して式C'にするのは面倒なので、式C'のだけ求めることにしよう。
時間節約のため、必要な部分だけ計算する。

式Cを展開すると、 $p^{3}$の項は、式Cの赤い部分の積
$\hspace{60px}3p(-p)^{2}=3p^{3}$
定数項は、式Cの緑の部分から
$\hspace{60px}-\dfrac{2}{9}$

式C'を展開すると、 $p^{3}$の項は、式C'の赤い部分の積
$\hspace{60px}p\cdot 9p^{2}=9p^{3}$
定数項は、式C'の緑の部分の積
$\hspace{60px}-\dfrac{\fbox{エ}}{\fbox{オ}}\cdot 1=-\dfrac{\fbox{エ}}{\fbox{オ}}$

だ。

$p^{3}$の項を比較すると、式C'は式Cの$3$倍だ。
よって、式Cの両辺を$3$倍すると式C'になる。
このことから、式Cと式C'の定数項の関係は
$-\dfrac{2}{9}\times 3=-\dfrac{\fbox{エ}}{\fbox{オ}}$
であることが分かる。

これを計算して、
$\dfrac{\fbox{エ}}{\fbox{オ}}=\dfrac{2}{3}$
である。

解答エ:2, オ:3

(3)

(i)

復習

試行を$n$回くり返したとき、確率$a$で起こる事象が起こった回数を$A$とすると、確率変数$A$は二項分布 $B(n,a)$ に従う。

(3)では、太郎さんと花子さんは「質問Ⅱ」を使って、
$100$組のグループのうち、三人のうち一人だけが「はい」と回答したグループ数$X$ を調べた。

三人のうち一人だけが「はい」と回答する確率は$q$なので、この調査は
試行を$100$回くり返したとき、確率$q$で起こる事象が起こった回数$X$ を調べたのと同じことだ。

よって、復習より、確率変数$X$は、二項分布
$B(100,q)$
に従う。

解答カ:3

これと、この調査での標本比率の$\dfrac{25}{100}$を使って $q$の$ 95\%$の信頼区間を求めると、問題文にあるように
$0.17\leqq q\leqq 0.33$
になるらしい。
この辺は解答を求めるのには必要ないのでスルーする。

(ii)

一人の回答者が「はい」と答える確率は$p$だった。
なので、問題文の
三人からなる1組のグループに質問するとき,「はい」と回答する人数を確率変数$Y$で表す は、
試行を$3$回くり返したとき、確率$p$で起こる事象が起こった回数を$Y$とする と同じことだ。

よって、(i)の復習より、確率変数$Y$は、二項分布
$B(3,p)$
に従う。

解答キ:0

この $B(3,p)$ に従う母集団から$100$個の値
$Y_{1},Y_{2},\cdots,Y_{100}$
を取り出し、大きさ$100$の標本とする。

$100$個の値それぞれの期待値は、母平均、つまり$Y$の平均だ。

復習

確率変数$Y$が二項分布$B(n,a)$に従うとき、
$Y$の平均$E(Y)=na$ である。

復習より、$100$個の値それぞれの期待値は
$3p$
である。

解答ク:0


先にも書いたように、この $3p$ は母平均にあたる。
したがって、母平均の信頼区間がそのまま$3p$の信頼区間だ。
これを利用すると、$p$の信頼区間が求められる。

ということで、母平均の推定だ。
これには公式があった。

公式

母標準偏差を$\sigma$,標本平均を$\overline{Y}$,標本の大きさを$n$とすると、母平均$m$の信頼区間を求める式は
$\overline{Y}-z\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}\leqq m\leqq \overline{Y}+z\cdot\dfrac{\sigma}{\sqrt{n}}$式D

図A
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅡB 第3問 復習図

ただし、信頼区間が$ c\%$のとき、$z$は 図Aを標準正規分布の確率分布図として、図中の$z_{0}$の値。

特に
信頼度$ 95\%$のとき、$z=1.96$ 信頼度$ 99\%$のとき、$z=2.56$ である。

復習の式Dを使って母平均の信頼区間を求める。

問題文より、
標本平均$\overline{Y}=1.96$ 標本の大きさ$n=100$ 信頼度は$ 95\%$なので、$z=1.96$ であることが分かっている。

また、問題文の指示に従い、母標準偏差$\sigma$の代わりに 標本標準偏差の
$0.90$ を使う。

さらに、
母平均$m=3p$ だ。

以上を式Dに代入すると
$1.96-1.96\cdot\dfrac{0.90}{\sqrt{100}}\leqq 3p\leqq 1.96+1.96\cdot\dfrac{0.90}{\sqrt{100}}$
とかける。

これを計算すると、求める信頼区間は

途中式

$$ \begin{align} 1.96\left(1-\dfrac{0.90}{10}\right)\leqq &3p\leqq 1.96\left(1+\dfrac{0.90}{10}\right)\\ 1.96(1-0.09)\leqq &3p\leqq 1.96(1+0.09)\\ \dfrac{1.96\cdot 0.91}{3}\leqq &\;\; p\leqq\dfrac{1.96\cdot 1.09}{3} \end{align} $$ より

$ 0.594\ldots\leqq p\leqq 0.712\ldots$
となる。

よって、解答群のうち適当なものは

である。

解答ケ:1

アドバイス

これじゃ原理がゼンゼン分からないけど、原理通り解くと時間がかかるから、共通テスト本番では機械的に公式を使おう。
原理に関してはこのページを参照してほしい。