大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 追試 数学ⅡB 第4問 解説

はじめに

図A
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅡB 第4問 解説図A

最初にルールを確認しておこう。

$\mathrm{P}_{n}$は直線②上にあるルールA $\mathrm{Q}_{n}$は直線①上にあるルールB $\mathrm{Q}_{n}$と$\mathrm{P}_{n}$の$y$座標は等しいルールC $\mathrm{P}_{n+1}$と$\mathrm{Q}_{n}$の$x$座標は等しいルールD $\mathrm{P}_{1}$の座標は$(0,4)$ルールE

ルールが確認できたところで、問題を解く。

(1)

まず、$m=2$のときの$\mathrm{Q}_{1}$,$\mathrm{P}_{2}$の座標から。

$\mathrm{Q}_{1}$の座標

ルールC,ルールEより、
$\mathrm{Q}_{1}$の$y$座標$=\mathrm{P}_{1}$の$y$座標$=4$
ルールBより、これを①式に代入すると
$4=2\times \mathrm{Q}_{1}$の$x$座標
なので、
$\mathrm{Q}_{1}$の$x$座標$=2$

解答ア:2, イ:4

$\mathrm{P}_{2}$の座標

ルールD,より、
$\mathrm{P}_{2}$の$x$座標$=\mathrm{Q}_{1}$の$x$座標$=2$
ルールAより、これを②式に代入すると
$\mathrm{P}_{2}$の$y$座標$=2\cdot 2+4=8$

解答ウ:2, エ:8

である。


また、$\mathrm{P}_{n}$の$y$座標を$a_{n}$としてと同様の作業をすると、

$\mathrm{Q}_{n}$の$x$座標

ルールCより、
$\mathrm{Q}_{n}$の$y$座標$=\mathrm{P}_{n}$の$y$座標$=a_{n}$
ルールBより、これを①式に代入すると
$a_{n}=2\times \mathrm{Q}_{n}$の$x$座標
なので、
$\mathrm{Q}_{n}$の$x$座標$=\dfrac{1}{2}a_{n}$

解答オ:2

$\mathrm{P}_{n+1}$の$y$座標$a_{n+1}$

ルールD,より、
$\mathrm{P}_{n+1}$の$x$座標$=\mathrm{Q}_{n}$の$x$座標$=\dfrac{1}{2}a_{n}$
式A
ルールAより、式Aを②式に代入すると
$\mathrm{P}_{n+1}$の$y$座標$=2\cdot\dfrac{1}{2}a_{n}+4=a_{n}+4$

解答カ:7

となる。

別解

共通テスト本番じゃ使いにくい方法だけど、$m$を$m$のまま計算することもできる。

$\mathrm{P}_{n}$の座標を$((\mathrm{P}_{n})_{x},(\mathrm{P}_{n})_{y})$,$\mathrm{Q}_{n}$の座標を$((\mathrm{Q}_{n})_{x},(\mathrm{Q}_{n})_{y})$とすると、

ルールAより、
$(\mathrm{P}_{n})_{y}=m(\mathrm{P}_{n})_{x}+4$式B
ルールBより、
$(\mathrm{Q}_{n})_{y}=2(\mathrm{Q}_{n})_{x}$
なので
$(\mathrm{Q}_{n})_{x}=\dfrac{1}{2}(\mathrm{Q}_{n})_{y}$式C
ルールCより、
$(\mathrm{Q}_{n})_{y}=(\mathrm{P}_{n})_{y}$式D
ルールDより、
$(\mathrm{P}_{n+1})_{x}=(\mathrm{Q}_{n})_{x}$式E
ルールEより、
$(\mathrm{P}_{1})_{y}=4$式F

とかける。

式B~式Fを使うと、

$\mathrm{Q}_{1}$の座標

式Dより
$(\mathrm{Q}_{1})_{y}=(\mathrm{P}_{1})_{y}$
これに式Fを代入すると
$(\mathrm{Q}_{1})_{y}=4$式G
式Cより
$(\mathrm{Q}_{1})_{x}=\dfrac{1}{2}(\mathrm{Q}_{1})_{y}$
これに式Gを代入すると
$(\mathrm{Q}_{1})_{x}=\dfrac{1}{2}\cdot 4=2$

解答ア:2, イ:4

$\mathrm{P}_{2}$の座標

式Eより
$(\mathrm{P}_{2})_{x}=(\mathrm{Q}_{1})_{x}$
これにを代入すると
$(\mathrm{P}_{2})_{x}=2$式H
式Bより
$(\mathrm{P}_{2})_{y}=m(\mathrm{P}_{2})_{x}+4$
これに式Hを代入すると
$(\mathrm{P}_{2})_{y}=m\cdot 2+4$
となるけど、$m=2$なので
$(\mathrm{P}_{2})_{y}=2\cdot 2+4=8$

解答ウ:2, エ:8

$\mathrm{Q}_{n}$の$x$座標

$(\mathrm{P}_{n})_{y}=a_{n}$を式Dに代入して、
$(\mathrm{Q}_{n})_{y}=a_{n}$
これを式Cに代入して、
$(\mathrm{Q}_{n})_{x}=\dfrac{1}{2}a_{n}$

解答オ:2

$\mathrm{P}_{n+1}$の$y$座標$a_{n+1}$

を式Eに代入して、
$(\mathrm{P}_{n+1})_{x}=\dfrac{1}{2}a_{n}$式I
式Bより
$(\mathrm{P}_{n+1})_{y}=m(\mathrm{P}_{n+1})_{x}+4$
これに式Iを代入すると
$(\mathrm{P}_{n+1})_{y}=m\cdot\dfrac{1}{2}a_{n}+4$式J
となるけど、$m=2$なので、
$(\mathrm{P}_{n+1})_{y}=2\cdot\dfrac{1}{2}a_{n}+4=a_{n}+4$

解答カ:7

である。

$\mathrm{P}_{n+1}$の$y$座標は$a_{n+1}$なので、より、数列$\{a_{n}\}$の漸化式
$a_{n+1}=a_{n}+4$式K
ができる。

ここで漸化式の基本の形の復習をしておくと、

復習

漸化式の基本の形は4つあって、
$x_{n+1}=x_{n}+d$
公差$d$の等差数列
$x_{n+1}=rx_{n}$
公比$r$の等比数列
$x_{n+1}=x_{n}+f(n)$
階差数列の一般項が$f(n)$
$x_{n+1}=\alpha x_{n}+\beta$
$x_{n+1}-\gamma=\alpha(x_{n}-\gamma)$の形にして解く
だった。

復習より、式Kは 公差が$4$の等差数列の漸化式だ。

また、ルールEより
$\mathrm{P}_{1}$の$y$座標$=4$
なので、
$a_{1}=4$
である。

以上より、$\{a_{n}\}$は
初項が$4$ 公差が$4$ の等差数列だから、一般項$a_{n}$は
$a_{n}=4+(n-1)\cdot 4=4n$
であることが分かる。

解答キ:0

別解

は、図を使った次のような解法も考えられる。

$m=2$ のとき、①,②のグラフは図Bのような状態だ。

図B
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅡB 第4問 解説図B

このとき、直線①と直線②は平行なので、図Bの赤い線分はすべて長さが等しい。
さらに、$\mathrm{P}_{1}$の$y$座標は$4$なので、赤い線分はすべて長さが$4$である。

以上より、

$\{a_{n}\}$は$4$ずつ増えるから、
$a_{n+1}=a_{n}+4$

解答カ:7

$a_{n}$は赤い線分を$n$回たした値なので、
$a_{n}=4n$

解答キ:0

である。

(2)

(1)では、$m=2$のときの$\mathrm{P}_{n}$の$y$座標$a_{n}$を考えた。
(2)では、$m=-1$のときの$\mathrm{P}_{n}$の$y$座標$b_{n}$を考える。
$a_{n}$と$b_{n}$で異なるのは$m$の値だけで、その他のルールは同じだ。

なので、(1)の計算結果のうち 求めるのに$m=2$を用いなかったものは、$a_{n}$を$b_{n}$に変えて (2)でも使える。

(i)

ルールEより、
$b_{1}=\mathrm{P}_{1}$の$y$座標$=4$
だ。

解答ク:4

また、(1)の式Aは、求めるのに$m$を用いてないから (2)でも使える。

よって、
$\mathrm{P}_{n+1}$の$x$座標$=\dfrac{1}{2}b_{n}$
である。

ルールAより、これを②式に代入すると
$\mathrm{P}_{n+1}$の$y$座標$=-1\cdot\dfrac{1}{2}b_{n}+4$式L
とかける。

ここで $\mathrm{P}_{n+1}$の$y$座標$=b_{n+1}$ なので、式Lは
$$ \begin{align} b_{n+1}&=-1\cdot\dfrac{1}{2}b_{n}+4\\ &=-\dfrac{1}{2}b_{n}+4\class{tex_formula}{式M} \end{align} $$ となって、$\{b_{n}\}$の漸化式ができる。

解答ケ:-, コ:1, サ:2, シ:4

別解

の別解の方法を使うと、次のようになる。

式Jは $m$に$2$を代入する前だから、(2)でも使える。
よって、
$(\mathrm{P}_{n+1})_{y}=m\cdot\dfrac{1}{2}b_{n}+4$式L
である。

ここで、
$m=-1$ $(\mathrm{P}_{n+1})_{y}=b_{n+1}$ なので、式Lは
$$ \begin{align} b_{n+1}&=-1\cdot\dfrac{1}{2}b_{n}+4\\ &=-\dfrac{1}{2}b_{n}+4\class{tex_formula}{式M} \end{align} $$ となるから、$\{b_{n}\}$の漸化式である。

解答ケ:-, コ:1, サ:2, シ:4

式Mは、(1)の復習の漸化式の4番目のパターンだ。
なので、お約束通りの解き方をしよう。

式Mを
$b=-\dfrac{1}{2}b+4$
として$b$を求めると、
$2b=-b+8$
$b=\dfrac{8}{3}$
だ。

この$b$を式Mの両辺から引いて変形すると、
$$ \begin{align} b_{n+1}-\dfrac{8}{3}&=-\dfrac{1}{2}b_{n}+4-\dfrac{8}{3}\\ &=-\dfrac{1}{2}\left(b_{n}-\dfrac{8}{3}\right)\class{tex_formula}{式M'} \end{align} $$ となる。


ここで
$b_{n}-\dfrac{8}{3}=B_{n}$式N
とおくと、式M'は
$B_{n+1}=-\dfrac{1}{2}B_{n}$式M''
と表せる。
これは漸化式の基本の形の2つめだ。

(1)の復習より、数列$\{B_{n}\}$は等比数列で、
式Nより、初項$B_{1}=b_{n}-\dfrac{8}{3}$
これにを代入して、
$B_{1}=4-\dfrac{8}{3}=\dfrac{4}{3}$
式M''より、公比は$-\dfrac{1}{2}$
なので、一般項$B_{n}$は
$B_{n}=\dfrac{4}{3}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$
とかける。

これを式Nに代入すると、求める$\{b_{n}\}$の一般項$b_{n}$は、
$b_{n}-\dfrac{8}{3}=\dfrac{4}{3}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}$
より
$b_{n}=\dfrac{4}{3}\left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}+\dfrac{8}{3}$
であることが分かる。

解答ス:4, セ:3, ソ:-, タ:1, チ:2, ツ:8, テ:3

(ii)

図C
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅡB 第4問 解説図C

$m=-1$ のとき、①,②のグラフは図Cのような状態だ。

図C中の色がついた三角形と斜線の三角形はすべて相似なので、
$$ \begin{align} d_{n}:c_{n}&=d_{1}:c_{1}\\ &=\mathrm{Q}_{1}\text{の}x\text{座標}:\mathrm{Q}_{1}\text{の}y\text{座標} \end{align} $$ だ。

$\mathrm{Q}_{1}$の座標はで求めたように
$(2,4)$
だった。
これは 計算に$m$を用いなかったから、(2)でも使える。

よって、
$$ \begin{align} d_{n}:c_{n}&=2:4\\ &=1:2 \end{align} $$ なので、
$d_{n}=\dfrac{1}{2}c_{n}$式O
と表せる。

解答ト:0

別解

図C中の色がついた三角形と斜線の三角形はすべて相似だ。
なので、
$\dfrac{c_{n}}{d_{n}}=$直線①の傾き
である。

よって、
$\dfrac{c_{n}}{d_{n}}=2$
より
$d_{n}=\dfrac{1}{2}c_{n}$式O
と表せる。

解答ト:0

図D
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅡB 第4問 解説図D

また、図D中の色がついた三角形と斜線の三角形もすべて相似なので、
$$ \begin{align} d_{n}:c_{n+1}&=d_{1}:c_{2}\\ &=\mathrm{Q}_{1}\text{の}x\text{座標}\\ &\qquad\qquad:(\mathrm{Q}_{1}\text{の}y\text{座標})-(\mathrm{P}_{2}\text{の}y\text{座標}) \end{align} $$ 式P
とかける。

いま、
$\mathrm{Q}_{1}$の座標は$(2,4)$ $\mathrm{P}_{2}$の座標はで求めたけど、の$y$座標は$m=2$を使ったから、計算しなおさないといけない。
ルールAより、②式に$x=$を代入して、
$\mathrm{P}_{2}$の$y$座標$=-2+4=2$
だ。

なので、式Pは
$$ \begin{align} d_{n}:c_{n+1}&=2:4-2\\ &=1:1 \end{align} $$ となるから、
$c_{n+1}=d_{n}$式Q
と表せる。

別解

図D中の色がついた三角形と斜線の三角形はすべて相似だ。
また、$\{c_{n}\}$も$\{d_{n}\}$も線分の長さなので正の値である。

よって、
$\dfrac{c_{n+1}}{d_{n}}=|$直線②の傾き$|$
とかける。

したがって、
$\dfrac{c_{n+1}}{d_{n}}=|-1|$
より
$c_{n+1}=d_{n}$式Q
と表せる。

式Oを式Qに代入すると、$\{c_{n}\}$の漸化式
$c_{n+1}=\dfrac{1}{2}c_{n}$式R
ができる。

解答ナ:0


式Rは、漸化式の基本の形の2つめだ。

(1)の復習より、数列$\{c_{n}\}$は等比数列で、
初項$c_{1}$は$\mathrm{P}_{1}$の$y$座標なので、
$\hspace{40px}c_{1}=4$
式Rより、公比は$\dfrac{1}{2}$
である。

よって、$\{c_{n}\}$の初項から第$n$項までの和は
$$ \begin{align} \sum_{k=1}^{n}c_{k}&=\dfrac{4\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n}\right\}}{1-\dfrac{1}{2}}\\ &=8\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n}\right\}\class{tex_formula}{式S} \end{align} $$ とかける。


また、上で考えたように
$d_{n}=\dfrac{1}{2}c_{n}$式O
なので、
$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}d_{k}=\dfrac{1}{2}\sum_{k=1}^{n}c_{n}$式T
だ。

ここで、
$S_{n}=\textcolor{red}{c_{1}}+\textcolor{red}{c_{2}}+\cdots+\textcolor{red}{c_{n}}+\textcolor{green}{d_{1}}+\textcolor{green}{d_{2}}+\cdots+\textcolor{green}{d_{n}}$
だから、
$\displaystyle S_{n}=\textcolor{red}{\sum_{k=1}^{n}c_{k}}+\textcolor{green}{\sum_{k=1}^{n}d_{k}}$
と表せる。

これに式Tを代入して、
$$ \begin{align} S_{n}&=\sum_{k=1}^{n}c_{k}+\dfrac{1}{2}\sum_{k=1}^{n}c_{k}\\ &=\dfrac{3}{2}\sum_{k=1}^{n}c_{k} \end{align} $$

これに式Sを代入すると、求める$S_{n}$は
$$ \begin{align} S_{n}&=\dfrac{3}{2}\cdot 8\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n}\right\}\\ &=12\left\{1-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n}\right\} \end{align} $$ であることが分かる。

解答ニ:7