大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 追試 数学ⅠA 第5問 解説

(1)

(i)

問題文中の参考図に 垂心$\mathrm{H}$ と点$\mathrm{D}$,$\mathrm{E}$ を書き込むと、図Aができる。

図A
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第5問 解説図A

また、点$\mathrm{P}$,$\mathrm{Q}$,$\mathrm{R}$ を書き込むと図Bができる。

図B
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第5問 解説図B

図Bの3本の紫の線はすべて円$\mathrm{O}$の直径だ。
直径に対する円周角は直角なので、直角がたくさんできる。

この二つの図を見ると、直線$\mathrm{AC}$は、
図Aより、直線$\mathrm{BH}$ 図Bより、直線$\mathrm{AR}$,直線$\mathrm{CP}$ と垂直である。

解答ア:2

また、直線$\mathrm{BC}$は
図Aより、直線$\mathrm{AH}$ 図Bより、直線$\mathrm{BR}$,直線$\mathrm{CQ}$ と垂直である。

解答イ:6

(ii)

図C
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第5問 解説図C

さらに、図Cのように
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{B}\mathrm{D}:\mathrm{D}\mathrm{C}=4:1\\
\mathrm{A}\mathrm{E}:\mathrm{E}\mathrm{C}=2:3
\end{array}\right.$
のときを考える。

図Cの緑の三角形(△$\mathrm{ADC}$)と赤い直線($\mathrm{BE}$)にメネラウスの定理を使うと、
$\dfrac{\mathrm{A}\mathrm{H}}{\mathrm{H}\mathrm{D}}\cdot\dfrac{\mathrm{D}\mathrm{B}}{\mathrm{B}\mathrm{C}}\cdot\dfrac{\mathrm{C}\mathrm{E}}{\mathrm{E}\mathrm{A}}=1$
とかける。

これに各辺の比を代入すると、
$\dfrac{\mathrm{A}\mathrm{H}}{\mathrm{H}\mathrm{D}}\cdot\dfrac{4}{4+1}\cdot\dfrac{3}{2}=1$
より
$\dfrac{\mathrm{A}\mathrm{H}}{\mathrm{H}\mathrm{D}}\cdot\dfrac{2\cdot 3}{5}=1$
$\dfrac{\mathrm{A}\mathrm{H}}{\mathrm{H}\mathrm{D}}=\dfrac{5}{6}$
となる。

解答ウ:5, エ:6


以上より、次のことが分かる。
$\mathrm{AH}:\mathrm{HD}=5:6$ $\mathrm{AC}$⊥$\mathrm{AR}$,$\mathrm{AC}$⊥$\mathrm{BH}$ なので、
$\mathrm{AR}$ ∥ $\mathrm{BH}$
$\mathrm{BC}$⊥$\mathrm{AH}$,$\mathrm{BC}$⊥$\mathrm{BR}$ なので、
$\mathrm{AH}$ ∥ $\mathrm{BR}$

これを書き込むと、図Dができる。

図D
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第5問 解説図D

問題では、図Dの赤い三角形(△$\mathrm{ARB}$)の面積について問われている。
これを直接考えるのは難しいので、赤い三角形と面積が等しい他の三角形を探しそう。

$\mathrm{AR}$ ∥ $\mathrm{BH}$,$\mathrm{AH}$ ∥ $\mathrm{BR}$ だから、四角形$\mathrm{ARBH}$(図Dの緑の四角形)は平行四辺形だ。
平行四辺形の対角線は面積を二等分するから、
赤い三角形$=$斜線の三角形(△$\mathrm{BHA}$)
である。

ということで、赤い三角形の代わりに斜線の三角形を考える。

$$ \begin{align} \mathrm{AH}:\mathrm{AD}&=5:5+6\\ &=5:11 \end{align} $$ なので、
斜線の三角形 $:$ 黄色い三角形$=5:11$
だから
斜線の三角形$=\dfrac{5}{11}$黄色い三角形式A

$$ \begin{align} \mathrm{BD}:\mathrm{BC}&=4:4+1\\ &=4:5 \end{align} $$ なので、
黄色い三角形 $:$ △$\mathrm{ABC}=4:5$
だから
黄色い三角形$=\dfrac{4}{5}$△$\mathrm{ABC}$式B

とかける。

式A,式Bより
斜線の三角形$=\dfrac{5}{11}\cdot\dfrac{4}{5}$△$\mathrm{ABC}$
斜線の三角形$=\dfrac{4}{11}$△$\mathrm{ABC}$
となるので、
△$\mathrm{ARB}$(赤い三角形)$=\dfrac{4}{11}$△$\mathrm{ABC}$
である。

解答オ:4, カ:1, キ:1

(2)

図E
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第5問 解説図E

次は、選択肢の4つの三角形
△$\mathrm{ACP}$(図Eの赤い三角形) △$\mathrm{ADC}$(黄色い三角形) △$\mathrm{BPC}$(青い三角形) △$\mathrm{PHC}$(斜線の三角形)
のうち、△$\mathrm{ABP}$(図Eのチェックの三角形)と相似であるものを探す。

(1)(i)で考えたように、図Eの直角マークをつけた角は$90^{\circ}$だ。
また、同じ弧に対する円周角は等しいので、図Eの黄緑の角は等しい。

したがって
$\angle \mathrm{ABP}=\angle \mathrm{ADC}$ $\angle \mathrm{APB}=\angle \mathrm{ACD}$ であるから、黄色い三角形は チェックの三角形と相似であることが分かる。

解答ク:1, ケ:0


このとき、図形は図Fのようになっている。

相似な図形の対応する角は等しいから、図Fのオレンジの角は等しい。
($\angle \mathrm{BAO}=\angle \mathrm{CAH}$)

また、点$\mathrm{I}$ は△$\mathrm{ABC}$の内心なので、$\mathrm{AI}$ は $\angle \mathrm{BAC}$ の二等分線である。
よって、図Fの赤丸の角は等しい。
($\angle \mathrm{IAB}=\angle \mathrm{IAC}$)

図F
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第5問 解説図F

図Fを見ながら、命題(a),(b)を考えよう。

命題(a)

図Fより、
$\angle \mathrm{OAI}=\angle \mathrm{IAB} - \angle \mathrm{BAO}$(赤丸の角$-$オレンジの角)
$\angle \mathrm{HAI}=\angle \mathrm{IAC} - \angle \mathrm{CAH}$(赤丸の角$-$オレンジの角)
なので、
$\angle \mathrm{OAI}=\angle \mathrm{HAI}$
である。

よって、直線$\mathrm{AO}$(図Fの紫の線)と直線$\mathrm{AH}$(緑の線)は、直線$\mathrm{AI}$(青い線)に関して対称である。
命題(a)は真だ。

命題(b)

図Fの外心$\mathrm{O}$と垂心$\mathrm{H}$は、直線$\mathrm{AI}$(青い線)に関して 明らかに対称ではないように見える。
なので、命題(b)は偽っぽい。

けれど、これは図が不正確なためかも知れないし。
ここでは、念のためにちゃんと考えておく。


外心$\mathrm{O}$から直線$\mathrm{AB}$に下ろした垂線の足を点$\mathrm{S}$とする。

外心$\mathrm{O}$と垂心$\mathrm{H}$が 直線$\mathrm{AI}$に関して対称だと仮定すると、
$\mathrm{AO}=\mathrm{AH}$
になる。

図Fのオレンジの角は等しいから、このとき、図Fの青い三角形と緑の三角形は合同だ。
なので、
$\mathrm{AS}=\mathrm{AE}$
である。

また、三角形の外心の性質から、
$\mathrm{AB}=2\mathrm{AS}$
と表せる。

よって
$\mathrm{AB}=2\mathrm{AE}$
となり、図Fの赤い三角形は、辺の比が
$1:2:\sqrt{3}$
の直角三角形になる。

よって、
命題(b)が成り立つ$\Rightarrow\angle \mathrm{BAC}=60^{\circ}$
であることが分かる。

したがって、
$\angle \mathrm{BAC}\neq 60^{\circ}$
のときには命題(b)は成り立たないので、命題(b)は偽である。

以上より、解答群のうち正しいものは

だ。

解答コ:1

(3)

(3)は、三角形$\mathrm{ABC}$が$\angle \mathrm{BAC} \gt 90^{\circ}$の場合だ。
このときの図を描くと、例えば図Gのようになる。

図G
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第5問 解説図G

ここで を思い出すと、
$\angle \mathrm{ABP}=\angle \mathrm{ADC}$ $\angle \mathrm{APB}=\angle \mathrm{ACD}$ なので、図Eのチェックの三角形と黄色い三角形は相似だった。

同じことが図Gの場合もいえて、チェックの三角形と黄色い三角形は相似である。
したがって、図Gのオレンジの角は等しいから、
$\angle \mathrm{BAP}=\angle \mathrm{CAD}$
となる。

解答サ:2

最後に、$\angle \mathrm{OAI}$(図Gの紫の角)とたして$180^{\circ}$になる角を問われている。

直線$\mathrm{AI}$は$\angle \mathrm{BAC}$の二等分線なので、図Gの赤丸の角は等しい。

よって、
$\angle \mathrm{OAI}$(図Gの紫の角)
$\hspace{20px} =\angle \mathrm{IAB}-\angle \mathrm{BAO}$(赤丸の角$-$オレンジの角)
$\angle \mathrm{DAI}$(図Gの青い角)
$\hspace{20px} =\angle \mathrm{IAC}-\angle \mathrm{CAD}$(赤丸の角$-$オレンジの角)
とかけるから、
$\angle \mathrm{OAI}=\angle \mathrm{DAI}$(図Gの紫の角$=$青い角)
だ。

したがって、
青い角$+\angle \mathrm{HAI}=$紫の角$+\angle \mathrm{HAI}$
なので、
$\angle \mathrm{OAI}+\angle \mathrm{HAI}=180^{\circ}$
である。

解答シ:2