大学入学共通テスト 2024年(令和6年) 追試 数学ⅠA 第2問 [1] 解説

(1)

(i)

$x^{2}+2x-8 \lt 0$

$(x+4)(x-2) \lt 0$
と変形できるから、解は
$-4 \lt x \lt 2$
となる。

解答ア:-, イ:4, ウ:2

したがって、

$-4 \lt x \lt 2$のとき
①式の絶対値をはずすと
$$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(-x^{2}-2x+8)+\dfrac{1}{8}(x^{2}-6x)\\ &=\dfrac{1}{8}(-8x+8)\\ &=-x+1 \end{align} $$ なので、この区間でグラフは右下がりの直線

$x\leqq-4$,$2\leqq x$のとき

①式の絶対値をはずすと
$$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(x^{2}+2x-8)+\dfrac{1}{8}(x^{2}-6x)\\ &=\dfrac{1}{8}(2x^{2}-4x-8)\\ &=\dfrac{1}{4}x^{2}-\dfrac{1}{2}x-1\class{tex_formula}{式A} \end{align} $$ なので、この区間でグラフは下に凸の放物線

であることが分かる。

(ii)

復習

二次関数
$y=ax^2+bx+c$
の頂点の$x$座標は
$\dfrac{-b}{2a}$
である。

復習より、式Aのグラフの頂点の$x$座標は
$$ \begin{align} x&=\dfrac{\dfrac{1}{2}}{2\cdot\dfrac{1}{4}}\\ &=1 \end{align} $$ である。

解答エ:1

これを式Aに代入して、頂点の$y$座標は
$$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{4}\cdot 1^{2}-\dfrac{1}{2}\cdot 1-1\\ &=-\dfrac{5}{4} \end{align} $$ となる。

解答オ:-, カ:5, キ:4

別解

平方完成して解くと、次のような計算になる。

式Aを平方完成すると

途中式 $$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{4}(x^{2}-2x)-1\\ &=\dfrac{1}{4}\left\{(x-1)^{2}-1\right\} -1\\ &=\dfrac{1}{4}(x-1)^{2}-\dfrac{1}{4} -1\\ \end{align} $$ より
$y=\dfrac{1}{4}(x-1)^{2}-\dfrac{5}{4}$
なので、式Aのグラフの頂点の座標は
$\left(1,-\dfrac{5}{4}\right)$
である。

解答エ:1, オ:-, カ:5, キ:4

(iii)

(i)で、①のグラフは
$-4 \lt x \lt 2$のとき、右下がりの直線 $x\leqq-4$,$2\leqq x$のとき、下に凸の放物線 であることが分かっている。

つまり、
下に凸の放物線のグラフが、$-4 \lt x \lt 2$の部分だけ右下がりの直線になった形 だ。

これに当てはまるグラフの概形は、選択肢の

しかない。

解答ク:1

(2)

(2)も (1)(iii)と同じようにグラフの概形を答える問題だけど、花子さんと太郎さんの会話を読むと「楽な方法を探せ」ということらしい。
なので、(1)での作業も振り返りながら、花子さんと太郎さんの会話をちょっと考えてみよう。

花子さんと太郎さんの会話から、②式は
絶対値の中$ \lt 0$ のとき、$x$の係数が正の1次関数 絶対値の中$ \gt 0$ のとき、$x^{2}$の係数が負の2次関数 になるみたいだ。

図A
大学入学共通テスト2024年追試 数学ⅠA第2問[1] 解説図A

また、そのグラフは、図Aのように
真ん中(オレンジの部分)が
$\hspace{40px}$右上がりの直線
両側(緑の部分)が
$\hspace{40px}$上に凸の放物線
になるらしい。

つまり、②式の場合、
絶対値の中$ \lt 0$ のときの式が、
$\hspace{40px}$グラフの真ん中部分の式
絶対値の中$ \gt 0$ のときの式が、
$\hspace{40px}$グラフの両側部分の式
(※)
になるようだ。

(1)での作業を振り返ってみると、①式の場合も(※)になった。
考えてみると、これは偶然じゃない。

絶対値の中の式を $f(x)$ とすると、①式,②式ともに $f(x)$ は $x^{2}$の係数が正の二次式で、$y=f(x)$ のグラフは下に凸の放物線だ。
この $y=f(x)$ と $x$軸が異なる2点$(\alpha,0)$,$(\beta,0)$で交わる場合、
$f(x) \lt 0$ の解は $\alpha \lt x \lt \beta$ だから、
$\hspace{40px}$このときの式がグラフの真ん中部分
$f(x) \gt 0$ の解は $ x \lt \alpha$,$\beta \lt x$ だから、
$\hspace{40px}$このときの式がグラフの両側部分
になる($\alpha \lt \beta$ とする)。

よって、絶対値の中が二次式で $x^{2}$ の係数が正のときは(※)になる。

アドバイス

$f(x)$が二次式で $x^{2}$ の係数が正であっても、$y=f(x)$ と$x$軸が接したり共有点がなかったりする場合、(※)は成り立たない。

この場合、絶対値の中はつねに$0$以上なので、絶対値をはずすのに場合分けは必要ない。
したがって、絶対値をはずした式はひとつしかできないから、グラフはただの直線や放物線になる。

ところが、の選択肢の中に ただの直線や放物線はない。
つまり、出題されている関数に(※)が成り立たないものは含まれていない。

そのため、ここでは (※)が成り立たない場合は考えない。

また、概形が分かればいいので、グラフの式は
最高次の項だけ求めればよい(※※) ことが分かる。

以下、(※),(※※) を基本方針として解いてゆこう。

花子さんと太郎さんの会話から、②式のグラフは図Aのような形だと考えられる。
なので、の答えは ③ だと分かっているけれど、せっかくだから上の方針で解いておく。

②式を変形すると
$y=\dfrac{1}{8}\left(-\left|x^{2}-9\right|-x^{2}+8x\right)$
とかける。

この式の絶対値をはずすと、

絶対値の中が負のとき、 $$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(\textcolor{tomato}{\cancel{\textcolor{black}{x^{2}}}}-9-\textcolor{tomato}{\cancel{\textcolor{black}{x^{2}}}}+8x)\\ &=\dfrac{1}{8}(8x\cdots \text{以下略})\class{tex_formula}{式B} \end{align} $$

絶対値の中が正のとき、 $$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(-x^{2}+9-x^{2}+8x)\\ &=\dfrac{1}{8}(-2x^{2}\cdots \text{以下略})\class{tex_formula}{式C} \end{align} $$

となる。

②式の絶対値の中は二次式で $x^{2}$の係数が正なので、(※)より、グラフは
真ん中部分は式Bで、右上がりの直線
両側部分は式Cで、上に凸の放物線
だ。

これに当てはまるグラフの概形は、選択肢の

である。

解答ケ:3

$y=\dfrac{1}{8}\left|x^{2}-9\right|-\dfrac{1}{8}x^{2}+x$式D
を変形すると
$y=\dfrac{1}{8}\left(\left|x^{2}-9\right|-x^{2}+8x\right)$
とかける。

この式の絶対値をはずすと、

絶対値の中が負のとき、 $$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(-x^{2}+9-x^{2}+8x)\\ &=\dfrac{1}{8}(-2x^{2}\cdots \text{以下略})\class{tex_formula}{式E} \end{align} $$

絶対値の中が正のとき、 $$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(\textcolor{tomato}{\cancel{\textcolor{black}{x^{2}}}}-9-\textcolor{tomato}{\cancel{\textcolor{black}{x^{2}}}}+8x)\\ &=\dfrac{1}{8}(8x\cdots \text{以下略})\class{tex_formula}{式F} \end{align} $$

となる。

式Dの絶対値の中は二次式で $x^{2}$の係数が正なので、(※)より、グラフは
真ん中部分は式Eで、上に凸の放物線
両側部分は式Fで、右上がりの直線
だ。

これに当てはまるグラフの概形は、選択肢の

である。

解答コ:8

$y=\dfrac{1}{8}\left|x^{2}+2\sqrt{5}x-4\right|+\dfrac{1}{8}(x^{2}+2\sqrt{5}x)$
式G
を変形すると
$y=\dfrac{1}{8}\left(\left|x^{2}+2\sqrt{5}x-4\right|+x^{2}+2\sqrt{5}x\right)$
とかける。

この式の絶対値をはずすと、

絶対値の中が負のとき、 $$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(-\textcolor{tomato}{\cancel{\textcolor{black}{x^{2}}}}-\textcolor{green}{\cancel{\textcolor{black}{2\sqrt{5}x}}}+4+\textcolor{tomato}{\cancel{\textcolor{black}{x^{2}}}}+\textcolor{green}{\cancel{\textcolor{black}{2\sqrt{5}x}}})\\ &=\dfrac{1}{8}\cdot 4\class{tex_formula}{式H} \end{align} $$

絶対値の中が正のとき、 $$ \begin{align} y&=\dfrac{1}{8}(x^{2}+2\sqrt{5}x-4+x^{2}+2\sqrt{5}x)\\ &=\dfrac{1}{8}(2x^{2}\cdots \text{以下略})\class{tex_formula}{式I} \end{align} $$

となる。

式Gの絶対値の中は二次式で $x^{2}$の係数が正なので、(※)より、グラフは
真ん中部分は式Hで、$x$軸に平行な直線
両側部分は式Iで、下に凸の放物線
だ。

これに当てはまるグラフの概形は、選択肢の

である。

解答サ:2