大学入試センター試験 2020年(令和2年) 本試 数学ⅡB 第3問 解説
はじめに
いきなり面倒な漸化式が出てくるけど、驚かなくても大丈夫。
問題文が誘導してくれるので、指示される通りに解くと難易度は決して高くないです。
センター試験はこんな風に見た目でおどかしてくるから、「びっくり~(棒読み)」とでも心の中でつぶやいて、あとは平常心で解きましょう。
(1)
①に$n=1$を代入すると、
$a_{2}=\displaystyle \frac{4}{2}(3a_{1}+3^{2}-2\cdot 3)$
とかける。
問題文より、$a_{1}=0$なので、この式はさらに
$a_{2}=\displaystyle \frac{4}{2}(3^{2}-2\cdot 3)$
$=2\cdot 3$
$=6$
となる。
解答ア:6
(2)
$b_{1}$は
$b_{n}=\displaystyle \frac{a_{n}}{3^{n}(n+1)(n+2)}$式A
に$n=1$を代入したもの。
でも、ここで、
$a_{1}=0$
なので、式Aの$n$に$1$を代入すると、右辺の分子は$0$だ。
よって、計算するまでもなく
$b_{1}=0$
である。
解答イ:0
問題文の指示通り、①の両辺を
$3^{n+1}(n+2)(n+3)$
で割ると、左辺は
$\displaystyle \frac{a_{n+1}}{3^{n+1}(n+2)(n+3)}$
となる。
また、右辺は
$\displaystyle \frac{n+3}{3^{n+1}(n+1)(n+2)(n+3)}$
$\times \{3a_{n}+3^{n+1}-(n+1)(n+2)\}$
途中式
より
$\displaystyle =\frac{3a_{n}+3^{n+1}-(n+1)(n+2)}{3^{n+1}(n+1)(n+2)}$
$\displaystyle =\frac{3a_{n}}{3^{n+1}(n+1)(n+2)}+\frac{3^{n+1}}{3^{n+1}(n+1)(n+2)}$
$\displaystyle -\frac{(n+1)(n+2)}{3^{n+1}(n+1)(n+2)}$
である。
以上より、①は
$\displaystyle \textcolor{blue}{\frac{a_{n+1}}{3^{n+1}(n+2)(n+3)}} = \textcolor{red}{\frac{a_{n}}{3^{n}(n+1)(n+2)}}$
$\hspace{170px} +\displaystyle \frac{1}{(n+1)(n+2)}-\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}$
と変形できる。
この式の青い部分は$b_{n+1}$,赤い部分は$b_{n}$なので、これはさらに
$\displaystyle \textcolor{blue}{b_{n+1}} = \textcolor{red}{b_{n}}+\textcolor{green}{\frac{1}{(n+1)(n+2)}} -\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}$式B
とかける。
解答ウ:1, エ:1, オ:2, カ:3
この式の緑の部分を部分分数に分け、$b_{n}$を移項すると、
$\displaystyle \textcolor{blue}{b_{n+1}}-\textcolor{red}{b_{n}} = \textcolor{green}{\left(\frac{1}{n+1}-\frac{1}{n+2}\right)} -\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}$式B'
となる。
詳しく
復習
一般項が
$\displaystyle \frac{1}{n(n+a)}$
の数列の和を求めるときには、部分分数に分けて
$\displaystyle \frac{1}{n(n+a)}=\frac{1}{a}\left(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+a}\right)$
とする。
解答キ:1
ここまでくると、先が見えてきた。
漸化式の基本の形の復習をすると、
復習
2項間漸化式の基本の形は4つあって、
$p_{n+1}=p_{n}+d$
公差$d$の等差数列
$p_{n+1}=rp_{n}$
公比$r$の等比数列
$p_{n+1}=p_{n}+f(n)$
階差数列の一般項が$f(n)$
$ p_{n+1}=\alpha p_{n}+\beta$
特性方程式を使って解く
だった。
式Bは、復習の3番目の形。
なので、式B,式B'の
$\displaystyle \frac{1}{(n+1)(n+2)}-\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}$
つまり
$\displaystyle \left(\frac{1}{n+1}-\frac{1}{n+2}\right)-\left(\frac{1}{3}\right)^{n+1}$式C
の部分が、$\{a_{n}\}$の階差数列の一般項だ。
さらに階差数列の復習をすると、
復習
数列$\{b_{n}\}$の階差数列が$\{d_{n}\}$のとき、
$\{b_{n}\}$の一般項$b_{n}$は$\{d_{n}\}$の一般項$d_{n}$を使って、
$b_{n}=b_{1}+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}d_{k} \hspace{30px} (2\leqq n)$
と表せる。
よって、この問題の場合、$2\leqq n$のとき、式Cを使って
$b_{n}=b_{1}+\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}\left\{\left(\frac{1}{k+1}-\frac{1}{k+2}\right)-\left(\frac{1}{3}\right)^{k+1}\right\}$
より
$b_{n}=b_{1}+\displaystyle \textcolor{red}{\sum_{k=1}^{n-1}\left(\frac{1}{k+1}-\frac{1}{k+2}\right)}-\textcolor{blue}{\sum_{k=1}^{n-1}\left(\frac{1}{3}\right)^{k+1}}$式D
とかける。
ということで、式Dの赤い部分と青い部分の値を求めよう。
式Dの赤い部分を$S_{n-1}$とおくと、
$S_{n-1}=\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}\left(\frac{1}{k+1}-\frac{1}{k+2}\right)$
これをΣを使わずに表すと、
$S_{n-1}=\biggl(\displaystyle \frac{1}{2}$$-\displaystyle \frac{1}{3}$$\biggr)+\biggl($$\displaystyle \frac{1}{3}$$-\displaystyle \frac{1}{4}$$\biggr)$
$+\biggl($$\displaystyle \frac{1}{4}$$-\displaystyle \frac{1}{5}$$\biggr)+$
$\cdots+\biggl($$\displaystyle \frac{1}{n-2}$$-\displaystyle \frac{1}{n-1}$$\biggr)$
$+\biggl($$\displaystyle \frac{1}{n-1}$$-\displaystyle \frac{1}{n}$$\biggr)+\biggl($$\displaystyle \frac{1}{n}$$-\displaystyle \frac{1}{n+1}\biggr)$
となる。
例のパターンだ。
この式の色がついた部分はセットで消えて、
$S_{n-1}=\displaystyle \frac{1}{2}-\frac{1}{n+1}$
さらに、右辺を通分すると、
$S_{n-1}=\displaystyle \frac{n+1}{2(n+1)}-\frac{2}{2(n+1)}$
$S_{n-1}$$\displaystyle =\frac{n-1}{2(n+1)}$
となる。
これをクケコのマスに合う形に変形して、
$S_{n-1}=\displaystyle \frac{1}{2}\left(\frac{n-1}{n+1}\right)$式E
である。
解答ク:2, ケ:1, コ:1
式Dの青い部分を$T_{n-1}$とおくと、
$T_{n-1}=\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}\left(\frac{1}{3}\right)^{k+1}$
$T_{n-1}$$\displaystyle =\sum_{k=1}^{n-1}\frac{1}{3} \left(\frac{1}{3}\right)^{k}$
$T_{n-1}$$\displaystyle =\frac{1}{3}\sum_{k=1}^{n-1}\left(\frac{1}{3}\right)^{k}$
なので、
$T_{n-1}=\displaystyle \frac{1}{3}\cdot\frac{\frac{1}{3}\left\{1-\left(\frac{1}{3}\right)^{n-1}\right\}}{1-\frac{1}{3}}$
$T_{n-1}$$\displaystyle =\frac{1}{3}\cdot\frac{\frac{1}{3}-\left(\frac{1}{3}\right)^{n}}{\frac{2}{3}}$
$T_{n-1}$$\displaystyle =\frac{\frac{1}{3}-\left(\frac{1}{3}\right)^{n}}{2}$
$T_{n-1}$$\displaystyle =\frac{1}{6}-\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}$式F
である。
解答サ:1, シ:6, ス:1, セ:2
式E,式Fより、式Dは
$b_{n}=b_{1}+\displaystyle \frac{1}{2}\left(\frac{n-1}{n+1}\right)-\left\{\frac{1}{6}-\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}\right\}$
$b_{n}$$=b_{1}+\displaystyle \frac{n-1}{2(n+1)}-\left\{\frac{1}{6}-\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}\right\}$式G
とかける。
イより、$b_{1}=0$なので、上の式は
$b_{n}=\displaystyle \frac{n-1}{2(n+1)}-\left\{\frac{1}{6}-\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}\right\}$
途中式
より
$b_{n}=\displaystyle \frac{n-1}{2(n+1)}-\frac{1}{6}+\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}$
$b_{n}$$\displaystyle =\frac{3(n-1)}{3\cdot 2(n+1)}-\frac{n+1}{6(n+1)}+\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}$
$b_{n}$$\displaystyle =\frac{2n-4}{3\cdot 2(n+1)}+\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}$
となる。
これは$n=1$のときも成り立つ。
アドバイス
問題文のソタチの式から、式Gの$\displaystyle \frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}$の部分は変形しなくてもいいのは明らか。
なので、上の計算では通分しなかった。
解答ソ:2, タ:3, チ:1
(3)
$b_{n}$が分かれば勝ったも同然。
$a_{n}$と$b_{n}$の関係式から$a_{n}$を求めよう。
式G'を式Aに代入して、
$\displaystyle \frac{a_{n}}{3^{n}(n+1)(n+2)}=\frac{n-2}{3(n+1)}+\frac{1}{2}\left(\frac{1}{3}\right)^{n}$
両辺に$3^{n}(n+1)(n+2)$をかけて、
$a_{n}=\displaystyle \frac{3^{n}(n+1)(n+2)(n-2)}{3(n+1)}$
$\displaystyle +\frac{3^{n}(n+1)(n+2)}{2\cdot 3^{n}}$
右辺のそれぞれの項を約分して、
$a_{n} \displaystyle =3^{n-1}(n+2)(n-2)+\frac{(n+1)(n+2)}{2}$
$a_{n}$$=$$3^{n-1}(n^{2}-4)$$+$$\displaystyle \frac{(n+1)(n+2)}{2}$式H
である。
解答ツ:3, テ:1, ト:4, ナ:1, ニ:2, ヌ:2
(4)
式Hを見ると、青い部分は$n=1$の場合も含めて、常に$3$の倍数である。
なので、$3$で割って余りが出るのは、赤い部分だ。
ということで、式Hの赤い部分だけ考える。
$a_{n}=a_{3k}$のとき、つまり$n=3k$のとき
式Hの赤い部分は、
$\displaystyle \frac{(3k+1)(3k+2)}{2}$
$=\displaystyle \frac{9k^{2}+9k+2}{2}$式I
となる。
この分子は連続する2つの整数の積なので、$2$の倍数だ。
よって、
$9k^{2}+9k+2=2$の倍数
より
$9k^{2}+9k=2$の倍数$-2$
なので、$9k^{2}+9k$も$2$の倍数である。
また、当然ながら$3$の倍数でもある。
以上より、$m$を整数として、
$9k^{2}+9k=2\cdot 3m$
とかけるから、式Iは
$\displaystyle \frac{2\cdot 3m+2}{2}=3m+1$
となるので、$3$で割った余りは
$1$
である。
解答ネ:1
$a_{n}=a_{3k+1}$のとき、つまり$n=3k+1$のとき
式Hの赤い部分は、
$\displaystyle \frac{\{(3k+1)+1\}\{(3k+1)+2\}}{2}$
$=\displaystyle \frac{(3k+2)(3k+3)}{2}$
$=\displaystyle \frac{3(3k+2)(k+1)}{2}$式J
となる。
この分子は、$2$の倍数かつ$3$の倍数。
よって、式Jは$3$で割りきれて、余りは
$0$
である。
解答ノ:0
$a_{n}=a_{3k+2}$のとき、つまり$n=3k+2$のとき
式Hの赤い部分は、
$\displaystyle \frac{\{(3k+2)+1\}\{(3k+2)+2\}}{2}$
$=\displaystyle \frac{(3k+3)(3k+4)}{2}$
$=\displaystyle \frac{3(k+1)(3k+4)}{2}$式K
となる。
この分子は、$2$の倍数かつ$3$の倍数。
よって、式Kは$3$で割りきれて、余りは
$0$
である。
解答ハ:0
よって、$\{a_{n}\}$は、
$a_{1}$は$3$の倍数
$a_{2}$は$3$の倍数
$a_{3}$は$3$の倍数$+1$
$a_{4}$は$3$の倍数
$a_{5}$は$3$の倍数
$a_{6}$は$3$の倍数$+1$
$\vdots$
という数列だ。
これはさらに、$3$項セットにして、
$a_{1}+a_{2}+a_{3}$は$3$の倍数$+1$
$a_{4}+a_{5}+a_{6}$は$3$の倍数$+1$
$\vdots$
であるとも言える。
以上より、$a_{1}$から$a_{2020}$までに含まれる3項セットの数を数えれば解けそうだ。
$2020$を$3$で割ると
$6$ | $7$ | $3$ | |||
$3$ | $)$ | $2$ | $0$ | $2$ | $0$ |
$1$ | $8$ | ||||
$2$ | $2$ | ||||
$2$ | $1$ | ||||
$1$ | $0$ | ||||
$9$ | |||||
$1$ |
なので、$a_{1}+a_{2}+a_{3}+\cdots +a_{2020}$を$U$とすると、
$U$は、$(3$の倍数$+1)$を$673$個と、$a_{2020}$の和
であることが分かる。
ここで、$2020$は$3$の倍数$+1$なので、ノより、
$a_{2020}$は$3$の倍数
である。
よって、$U$は、
$U=$$3$の倍数$+$$673$式L
とかける。
これを$3$で割った余りを求めればよい。
式Lの青い部分は$3$で割り切れるので、答えは赤い部分の
$673$
を$3$で割った余りである。
復習
$3$の倍数の見分け方はについて復習すると、
$3$の倍数 $\Leftrightarrow$ 各桁の数字をたして$3$の倍数
だった。
$673$の各桁の数字をたすと、
$6+7+3=16$
なので、$3$の倍数よりも$1$多い。
ということは、$673$よりも各桁の数字の和が$1$少ない
$672$
は$3$の倍数である。
よって、$673$は
$673=3$の倍数$+1$
とかけるので、$3$で割ると
$1$
余る。
解答ヒ:1
別解
上の解では復習もかねてちょっと変わった方法を使ったけど、当然ながら普通に割り算をしても解ける。
$673$を$3$で割ると
$2$ | $2$ | $4$ | ||
$3$ | $)$ | $6$ | $7$ | $3$ |
$6$ | ||||
$7$ | ||||
$6$ | ||||
$1$ | $3$ | |||
$1$ | $2$ | |||
$1$ |
なので、求める答え、つまり余りは
$1$
である。
解答ヒ:1