大学入試センター試験 2020年(令和2年) 本試 数学ⅠA 第3問 [1] 解説
解説
選択肢をひとつずつ検討してゆこう。
⓪
問題文中に「少なくとも」と書かれているので、余事象だ。
少なくとも1回は表が出る
の余事象は
1回も表が出ない(すべて裏)
なので、余事象の確率$\overline{p}$は
$\displaystyle \overline{p}=\left(\frac{1}{2}\right)^{5}$
より
$\displaystyle \overline{p}=\frac{1}{2^{5}}$
$\overline{p}$$\displaystyle =\frac{1}{32}$式A
である。
一方、問題文の記述には
$p \gt 0.95$
となっているけど、これは
$\overline{p} \leqq 1-0.95$
より
$\overline{p} \leqq 0.05$
$\overline{p} \leqq \displaystyle \frac{1}{20}$式B
と同じ意味だ。
式Aの$\displaystyle \frac{1}{32}$は、式Bの範囲に入っている。
なので、正しい。
別解
上の解法は、余事象同士の比較だった。
こういう考え方はイメージがつかみにくい人は、ちょっと計算しないといけないけれど、次のような解き方もできる。
少なくとも1回は表が出る
の余事象は
1回も表が出ない(すべて裏)
なので、余事象の確率は
$\left(\frac{1}{2}\right)^{5}$
これを全事象の$1$から引いて、$p$は、
$p=1-\left(\frac{1}{2}\right)^{5}$
途中式
$p$$\displaystyle=\frac{2^{5}-1^{5}}{2^{5}}$
$p$$\displaystyle=\frac{31}{32}$
$p$$\displaystyle=\frac{31}{32}$
なので、正しい。
①
一見正しそうなことを言っているけど、明らかに誤り。
この理屈で行くと、コインを2回投げて、たまたま2回とも表が出た場合、表が出る確率は
$\displaystyle \frac{2}{2}=1$
になってしまい、裏は絶対に出ない魔法のコインができる。
②
これも、余事象で計算しよう。
取り出したカードが2枚ともろである確率は、
$\displaystyle \frac{{}_{2}\mathrm{C}_{2}}{{}_{5}\mathrm{C}_{2}}$
2枚ともはである確率も、
$\displaystyle \frac{{}_{2}\mathrm{C}_{2}}{{}_{5}\mathrm{C}_{2}}$
である。
よって、2枚の文字が異なる確率は、
$1-\left(\frac{{}_{2}\mathrm{C}_{2}}{{}_{5}\mathrm{C}_{2}}+\frac{{}_{2}\mathrm{C}_{2}}{{}_{5}\mathrm{C}_{2}}\right)$
途中式
$=\displaystyle \frac{{}_{5}\mathrm{C}_{2}-2\times {}_{2}\mathrm{C}_{2}}{{}_{5}\mathrm{C}_{2}}$
$=\displaystyle \frac{\frac{5\cdot 4}{2\cdot 1}-2\times 1}{\frac{5\cdot 4}{2\cdot 1}}$
$=\displaystyle \frac{5-1}{5}$
となるので、正しい。
③
条件付き確率の問題だ。
説明のために、2体のロボットをそれぞれ , とする。
また、問題のどこにも「コインの表と裏が出る確率は等しい」とは書いていないけれど、ここでは「いかさまコイン」ではないとして解説する。
いつものように表を書いて考えよう。
今回は、事象が「コインの表裏」「
の発言」「の発言」の3つの組合せなので、三次元の表になってしまう。これを紙の上に二次元で書くから、ちょっと工夫しなきゃいけない。
解法1
三次元の表は書きにくいので、1つの表にしないことにする。
つまり、コインが表のときと裏のときで表を一つずつ書く。
ちょっと手間はかかるけど、考え方が素直なのでお薦めの方法だ。
コインが表のとき
表が出る確率$=\displaystyle \frac{1}{2}$
発言 | オモテ | ウラ | ||
---|---|---|---|---|
確率 | $0.9$ | $0.1$ | ||
オモテ | $0.9$ | $\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 0.9^{2}$ | ||
ウラ | $0.1$ |
コインが裏のとき
裏が出る確率$=\displaystyle \frac{1}{2}$
発言 | オモテ | ウラ | ||
---|---|---|---|---|
確率 | $0.1$ | $0.9$ | ||
オモテ | $0.1$ | $\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 0.1^{2}$ | ||
ウラ | $0.9$ |
ここで、条件付き確率の復習をすると、
復習
事象$A$が起こる確率を$P(A)$、事象$A$と事象$B$の両方が起こる確率を$P(A\cap B)$とするとき、
$A$が起こったときに$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$は、
$P_{A}(B)=\displaystyle \frac{P(A\cap B)}{P(A)}$
だった。
復習の事象$A$あたるのは、2体のロボットがともに「オモテ」と発言すること。
この確率$P(A)$は、表Aと表Bの緑の部分なので、
$P(A)=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 0.9^{2}+\frac{1}{2}\cdot 0.1^{2}$
$P(A)$$\displaystyle=\frac{1}{2}\cdot(0.9^{2}+0.1^{2})$
復習の事象$B$にあたるのは表Aだから、$A\cap B$は表Aの赤文字の部分。
よって、この確率$P(A\cap B)$は
$P(A\displaystyle \cap B)=\frac{1}{2}\cdot 0.9^{2}$
以上より、求める条件付き確率$P_{A}(B)$は、
$P_{A}(B)=\displaystyle \frac{\frac{1}{2}\cdot 0.9^{2}}{\frac{1}{2}(0.9^{2}+0.1^{2})}$
$P_{A}(B)$$\displaystyle=\frac{9^{2}}{9^{2}+1^{2}}$
$P_{A}(B)$$\displaystyle=\frac{81}{82}$
で、計算するまでもなく$0.9$より大きい。
なので、誤り。
解法2
確率の問題があんまり得意じゃない人にはお勧めしないけど、次のような方法もある。
復習
$A$が起こったときに$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$とは、$A$が起こった場合を全事象と考えて、その中で$B$が起こる確率のことである。
この考え方から、事象$A$が起こった場合以外は考えない。
つまり、2体のロボットがともに「オモテ」と発言した場合だけを考える。
ここで、ロボットの発言を考えると、
正しい発言をする確率が$0.9$
誤った発言をする確率が$0.1$
なので、ロボットがオモテと言ったとき、
本当に表である確率は$0.9$
実は裏である確率は$0.1$
だ。
このことから、表Cができる。
発言 | オモテ | ||||
---|---|---|---|---|---|
コイン | 表 | 裏 | |||
確率 | $0.9$ | $0.1$ | |||
オモテ | 表 | $0.9$ | $0.9^{2}$ | × | |
裏 | $0.1$ | × | $0.1^{2}$ |
この表を見て早合点して、
求める条件付き確率$P_{A}(B)$は
$P_{A}(B)=0.9^{2}=0.81$
と考えてはいけない。
コインは1個しかないので、表と裏は同時に出ない。
つまり、表Cの×の部分は起こらない。
確率$=\displaystyle \frac{\text{確率を求める事象}}{\text{すべての事象}}$
だけど、この場合
すべての事象は表Cの×以外で、
$0.9^{2}+0.1^{2}$
確率を求める事象は表Cの赤文字の部分で、
$0.9^{2}$
なので、求める条件付き確率$P_{A}(B)$は、
$P_{A}(B)=\displaystyle \frac{0.9^{2}}{0.9^{2}+0.1^{2}}$
$P_{A}(B)$$\displaystyle=\frac{9^{2}}{9^{2}+1^{2}}$
$P_{A}(B)$$\displaystyle=\frac{81}{82}$
となり、計算するまでもなく$0.9$より大きい。
なので、誤り。
解答
以上より、正しい記述は
⓪②
である。
解答ア:0, イ:2 (順不同)