大学入試センター試験 2020年(令和2年) 本試 数学ⅡB 第2問 解説
(1)
直線$\ell$は放物線$C$と$x=t$で接する。
よって、傾きは、$C$の式を微分した
$y'=2x+2$
に
$x=t$
を代入して、
$2t+2$式A
である。
傾きが式Aである直線が、点
$(t,t^{2}+2t+1)$
を通るので、$\ell$の式は
$y-(t^{2}+2t+1)=(2t+2)(x-t)$
とかける。
これを整理して、
$y=(2t+2)x-t(2t+2)+(t^{2}+2t+1)$
$y$$=(2t+2)x-2t^{2}-2t+t^{2}+2t+1$
$y$$=$$(2t+2)$$x$$-t^{2}+1$①
と表せる。
解答ア:2, イ:2, ウ:1
放物線$D$についても、上と同じ作業をしよう。
直線$\ell$は$D$と$x=s$で接する。
なので、傾きは、$D$の式を微分した
$y'=2x-(4a-2)$
に
$x=s$
を代入して、
$2s-(4a-2)$式B
である。
傾きが式Bである直線が、点
$(s,f(s))$
を通るので、$\ell$の式は
$y-f(s)=\{2s-(4a-2)\}(x-s)$
より
$y=\{2s-(4a-2)\}(x-s)+f(s)$
とかける。
これに
$f(s)=s^{2}-(4a-2)s+4a^{2}+1$
を代入して、
$y=\{2s-(4a-2)\}(x-s)$
$+s^{2}-(4a-2)s+4a^{2}+1$
途中式
これを整理して、
$y=\{2s-(4a-2)\}x-s\{2s-(4a-2)\}$
$+s^{2}-(4a-2)s+4a^{2}+1$
$y$$=(2s-4a+2)x-2s^{2}+(4a-2)s$
$+s^{2}-(4a-2)s+4a^{2}+1$
と表せる。
解答エ:2, オ:4, カ:2, キ:4, ク:1
①と②は両方とも直線$\ell$の式なので、同じ式だ。
よって、2つの式の$x$の係数(赤い部分)同士,定数項(青い部分)同士は等しい。
このことから、連立方程式
$\left\{\begin{array}{l}
2t+2=2s-4a+2\\
-t^{2}+1=-s^{2}+4a^{2}+1
\end{array}\right.$
式C
式D
ができる。
方程式が2つなのに文字が3つあるけど、$a$は今は定数扱いなので大丈夫。
式Cを変形して、
$2t=2s-4a$
$t=s-2a$式C'
これを式Dに代入して、
$-(s-2a)^{2}+1=-s^{2}+4a^{2}+1$
より
途中式
$-(s-2a)^{2}=-s^{2}+4a^{2}$
$-s^{2}+4as-4a^{2}=-s^{2}+4a^{2}$
$4as-4a^{2}=4a^{2}$
ここで、$a \gt 0$より$a\neq 0$なので、両辺を$4a$で割って、
$s=2a$
である。
これを式C'に代入して、
$t=0$
となる。
解答ケ:0, コ:2
よって、図Aより$C$と$\ell$は$y$軸上で接し、$\ell$の方程式は
$y=2x+1$式E
である。
解答サ:2, シ:1
(2)
2つの放物線の交点の$x$座標は、$C$の式と$D$の式の連立方程式を解いて、
$x^{2}+2x+1=x^{2}-(4a-2)x+4a^{2}+1$
より
途中式
$2x=-(4a-2)x+4a^{2}$
$2x+(4a-2)x=4a^{2}$
$(2+4a-2)x=4a^{2}$
ここで、$a \gt 0$より$a\neq 0$なので、両辺を$4a$で割って、
$x=a$
となる。
解答ス:a
よって、放物線$C$と直線$\ell$,$x=a$で囲まれた図形は、図Bの赤い部分。
赤い部分の面積$S$は、
$S=\displaystyle \int_{0}^{a}(C$の式$-\ell$の式$)dx$式F
より
$S=\displaystyle \int_{0}^{a}\{(x^{2}+2x+1)-(2x+1)\}dx$
途中式
$S$$\displaystyle =\int_{0}^{a}x^{2}\ dx$
$S$$=\left[\frac{x^{3}}{3}\right]_{0}^{a}$
である。
解答セ:3, ソ:3
(3)
次は、$a$が動いたときの領域の面積の問題。
面積を求める領域は、図Cの斜線の部分のうち、$x=1$より左の赤い部分。
$a$が動くと、赤い部分は図Cのように変化する。
図形の変化は「アニメーション開始」 を押して確認。
$a=$
図形の変化は、スライダーを動かして確認。
図Cより、$a$が$1$より大きいときは、赤い部分は変化がないことが分かる。
よって、$a \gt 1$のとき、
$T=\displaystyle \int_{0}^{1}(C$の式$-\ell$の式$)dx$
だけど、これは、は式Fの積分の上限が$a$から$1$に変わっただけ。
なので、(2)の結果をそのまま使おう。
式Gの$a$を$1$にかえて、
$T=\displaystyle \frac{1^{3}}{3}$
$T$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
である。
解答タ:1, チ:1, ツ:3
さらに、図Cより、$\displaystyle \frac{1}{2}\leqq a\leqq 1$のとき、赤い部分は図Dのようになる。
図Dより、$T$は、
$T=$$\displaystyle \int_{0}^{a}(C$の式$-\ell$の式$)dx$
$+$$\displaystyle \int_{a}^{1}(D$の式$-\ell$の式$)dx$式H
だけど、この式の青い部分は(2)で求めた式Gだ。
なので、赤い部分だけ計算しよう。
式Hの赤い部分を計算すると、
$\displaystyle \int_{a}^{1}(D$の式$-\ell$の式$)dx$
$=\displaystyle \int_{a}^{1}[\{x^{2}-(4a-2)x+4a^{2}+1\}$
$-(2x+1)]dx$
途中式
$=\displaystyle \int_{a}^{1}(x^{2}-4ax+4a^{2})dx$
$=\left[\frac{x^{3}}{3}-\frac{4ax^{2}}{2}+4a^{2}x\right]_{a}^{1}$
$=\left[\frac{x^{3}}{3}-2ax^{2}+4a^{2}x\right]_{a}^{1}$
$=\left(\frac{1}{3}-2a+4a^{2}\right)-\left(\frac{a^{3}}{3}-2a^{3}+4a^{3}\right)$
となる。
よって、$T$は、
$T=\displaystyle \frac{a^{3}}{3}-\frac{a^{3}}{3}-2a^{3}+4a^{2}-2a+\frac{1}{3}$
$T$$\displaystyle =-2a^{3}+4a^{2}-2a+\frac{1}{3}$式H
である。
解答テ2, ト:4, ナ:2, ニ:1, ヌ:3
(4)
$U=2T-3S$
に式Gと式Hを代入して、$U$は
$U=2\displaystyle \left(-2a^{3}+4a^{2}-2a+\frac{1}{3}\right)-3\cdot\frac{a^{3}}{3}$
$U$$\displaystyle =-4a^{3}+8a^{2}-4a+\frac{2}{3}-a^{3}$
$U$$\displaystyle =-5a^{3}+8a^{2}-4a+\frac{2}{3}$式I
とかける。
これを$a$について微分すると、
$U'=-15a^{2}+16a-4$
なので、$U'=0$のとき、
$-15a^{2}+16a-4=0$
より
$15a^{2}-16a+4=0$
となる。
これをたすきがけして、
$5a$ | $-2$ | → | $-10a$ | |
$3a$ | $-2$ | → | $-6a$ | |
$15a^{2}$ | $+4$ | $-16a$ |
より
$(5a-2)(3a-2)=0$
となるから、
$a=\displaystyle \frac{2}{5}$,$\displaystyle \frac{2}{3}$式J
のときに$U$は極値をとる。
いま、問われているのは$\displaystyle \frac{1}{2}\leqq a\leqq 1$のときの$U$の最大値。
式Jのうち、$a$の定義域に入っているのは$\displaystyle \frac{2}{3}$だけだ。
なので、$\displaystyle \frac{1}{2}\leqq a\leqq 1$の範囲で増減表を書くと、
$a$ | $\displaystyle \frac{1}{2}$ | $\cdots$ | $\displaystyle \frac{2}{3}$ | $\cdots$ | $1$ |
---|---|---|---|---|---|
$U'$ | $+$ | $0$ | $-$ | ||
$U$ | $\nearrow$ | 極大値 | $\searrow$ |
となる。
増減表より、最大値をとるのは
$a=\displaystyle \frac{2}{3}$
のとき。
解答ネ:2, ノ:3
そのときの最大値は、式Iに$a=\displaystyle \frac{2}{3}$を代入して、
$U=-5\displaystyle \left(\frac{2}{3}\right)^{3}+8\left(\frac{2}{3}\right)^{2}-4\cdot\frac{2}{3}+\frac{2}{3}$
途中式
$U$$\displaystyle =-5\cdot\frac{2^{3}}{3^{3}}+8\cdot\frac{2^{2}}{3^{2}}-3\cdot\frac{2}{3}$
$U$$\displaystyle =-5\cdot\frac{2^{3}}{3^{3}}+8\cdot\frac{2^{2}\cdot 3}{3^{2}\cdot 3}-3\cdot\frac{2\cdot 3^{2}}{3\cdot 3^{2}}$
$U$$\displaystyle =\frac{1}{3^{3}}(-5\cdot 2^{3}+8\cdot 2^{2}\cdot 3-3\cdot 2\cdot 3^{2})$
$U$$\displaystyle =\frac{2}{3^{3}}(-5\cdot 2^{2}+8\cdot 2\cdot 3-3\cdot 3^{2})$
$U$$\displaystyle =\frac{2}{3^{3}}(-20+48-27)$
$U$$\displaystyle =\frac{2}{3^{3}}\cdot 1$
である。
解答ハ:2, ヒ:2, フ:7
アドバイス
増減表を書くとき、例えば$U'$に$a=1$を代入するなどして$U$の増減を調べてもいいんだけど、三次関数の形を知っていれば計算しなくても増減が分かる。
復習
三次関数のグラフは、
$x^{3}$の係数が正のとき、全体として右上がりの
のような形に、
$x^{3}$の係数が負のとき、全体として右下がりの
のような形になる。
式Iより、$U$の式は$a^{3}$の係数が負なので、グラフは全体として右下がり。
式Jより、$U'=0$となる点は2つある。
よって、$U$のグラフは図Eのようになるから、$a=\displaystyle \frac{2}{3}$は極大値となる点。
計算しなくても、その左は増加,右は減少だ。