大学入試センター試験 2020年(令和2年) 本試 数学ⅠA 第3問 [2] 解説
はじめに
ほとんどの確率の問題と同じように、この問題にも何通りか解法がある。
ここでは、計算だけで解く解き方,表を使った解き方,樹形図を使った解き方の3通りを解説した。
もちろん自分の好きな方法で解いてもらえばよいのだが、特に条件付き確率は解法によって大きく難易度が変わる。なので、できればそれぞれの解法をマスターして、使い分けられるようになってほしい。
解法1
1つ目の解法は、図や表を書かず、計算だけで解く方法だ。
手よりも頭を使って解く方法とも言える。
(2)はこの方法が一番早く解けると思うけど、(3)(4)は条件を見落としやすいので注意。
(1)
2回投げ終わって持ち点が$-2$になるためには、
裏が2回
出ないといけない。
なので、確率は
$\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^{2}=\frac{1}{4}$
である。
解答ウ:1, エ:4
また、2回投げ終わって持ち点が$1$になるためには、
表が1回
裏が1回
出ないといけない。
なので、確率は
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\cdot {}_{2}\mathrm{C}_{1}=\frac{1}{2}$
である。
解答オ:1, カ:2
(2)
持ち点が$0$になるためには、
表が出る回数のちょうど2倍、裏が出た
ときだ。
よって、3回投げ終わったとき。
詳しく
表が出た回数を
$n$
とすると、裏が出た回数は
$2n$
でないといけない。
よって、投げた回数は
$n+2n=3n$
となるから、持ち点が$0$になることができるのは3の倍数のとき。
このゲームでは最大5回までしか投げられないので、持ち点が$0$になることができるのは
3回
投げたときだけである。
解答キ:3
3回投げて持ち点が$0$になるのは、
表が1回
裏が2回
出たとき。
なので、確率は
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\left(\frac{1}{2}\right)^{2}\cdot {}_{3}\mathrm{C}_{1}=\frac{3}{8}$
である。
解答ク:3, ケ:8
(3)
ゲームの終了時に持ち点が$4$なので、5回投げて持ち点が$4$になる確率を考える。
つまり、5回投げて、
表が3回
裏が2回
出たときを考える。
詳しく
5回投げたうち、何回表が出れば持ち点が$4$になるかを考える。
表が出る回数を$n$とすると、その得点は$2n$
裏が出る回数を$(5-n)$とすると、その得点は$-(5-n)$
なので、合計すると
$2n-(5-n)$
これが$4$になればいいので、
$2n-(5-n)=4$
より
$3n=9$
$n=3$
となる。
よって、
表が3回
裏が2回
出ればよい。
ただし、(2)より、最初の3回で
表が1回
裏が2回
出てしまうとその時点で終了だから、これは除外しよう。
つまり、最初の3回で
表が3回パターンA
のときと、
表が2回
裏が1回
パターンB
のときだけを考えることにする。
パターンA
パターンAは、最初の3回で
表が3回
出るとき。
このとき、4回目と5回目では
裏が2回
出ないといけない。
よって、確率は
$\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^{3}\times\left(\frac{1}{2}\right)^{2}=\frac{1}{2^{5}}$式A
である。
パターンB
パターンBは、最初の3回で
表が2回
裏が1回
出るとき。
このとき、4回目と5回目では
表が1回
裏が1回
出ないといけない。
よって、確率は
$\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^{2}\cdot\left(\frac{1}{2}\right)\cdot {}_{3}\mathrm{C}_{2}\times\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\cdot {}_{2}\mathrm{C}_{1}$
$\displaystyle =\left(\frac{1}{2}\right)^{2}\cdot\left(\frac{1}{2}\right)\cdot {}_{3}\mathrm{C}_{1}\times\frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\cdot {}_{2}\mathrm{C}_{1}$
$=\displaystyle \frac{3\times 2}{2^{5}}$
$=\displaystyle \frac{6}{2^{5}}$式B
である。
以上より、持ち点が$4$である確率は、式Aと式Bをたして
$\displaystyle \frac{1}{2^{5}}+\frac{6}{2^{5}}=\frac{7}{2^{5}}$
$=\displaystyle \frac{7}{32}$
である。
解答コ:7, サ:3, シ:2
(4)
ここで、条件付き確率の復習をすると、
復習
事象$A$が起こる確率を$P(A)$、事象$A$と事象$B$の両方が起こる確率を$P(A\cap B)$とするとき、
$A$が起こったときに$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$は、
$P_{A}(B)=\displaystyle \frac{P(A\cap B)}{P(A)}$
だった。
復習の事象$A$にあたるのは、ゲーム終了時に持ち点が$4$であること。
なので、その確率$P(A)$は、(3)より
$P(A)=\displaystyle \frac{7}{2^{5}}$式C
である。
復習の事象$B$にあたるのは、2回終了時に持ち点が$1$であること。
なので、事象$A\cap B$は、2回終了時に$1$点で、ゲーム終了時に$4$点である場合だ。
ちょっと面倒だけど、この確率$P(A\cap B)$を計算する。
2回終了時に持ち点が$1$であるためには、最初の2回で
表が1回
裏が1回
出ないといけない。
なので、その確率は、
$\displaystyle \frac{1}{2}\cdot\frac{1}{2}\cdot {}_{2}\mathrm{C}_{1}=\frac{2}{2^{2}}$式D
である。
さらに、2回終了時に持ち点が$1$なので、3回目に裏が出てしまうと、$0$点になってゲームが終了してしまう。
なので、3回目は必ず表だ。
なので、その確率は
$\displaystyle \frac{1}{2}$式E
である。
(3)で考えたように、5回終了時に持ち点が$4$になるためには、
表が3回
裏が2回
出ないといけない。
ここまでで、最初の2回は
表が1回
裏が1回
3回目は
表が1回
出ているので、4回目・5回目には
表が1回
裏が1回
出ないといけない。
なので、4回目・5回目の確率は、式Dと同じ
$\displaystyle \frac{2}{2^{2}}$式F
である。
以上より、確率$P(A\cap B)$は、式D,式E,式Fをかけて、
$P(A\displaystyle \cap B)=\frac{2}{2^{2}}\cdot\frac{1}{2}\cdot\frac{2}{2^{2}}$
$P(A\displaystyle \cap B)$$\displaystyle=\frac{4}{2^{5}}$式G
である。
よって、求める条件付き確率$P_{A}(B)$は、式Gを式Cで割って、
$P_{A}(B)=\displaystyle \frac{\frac{4}{2^{5}}}{\frac{7}{2^{5}}}$
$P_{A}(B)$$\displaystyle=\frac{4}{7}$
となる。
解答ス:4, セ:7
アドバイス
$P_{A}(B)$を求めるために$P(A\cap B)$を式Cで割るのは、最初から分かっている。
式Cの分母は$2^{5}$なので、$P(A\cap B)$の分母も$2^{5}$だと約分が簡単だ。
そのため、式Dや式F,式Gの段階では約分をしなかった。
解法2
2つ目の解法は、表を書いて解く方法だ。
私はこの解き方が好きなんだけど、(2)以降は表の書き方に工夫が必要だ。
(1)
2回投げ終わった状態なので、表を書こう。
表中の数字は持ち点だ。
1回目 | ||||
---|---|---|---|---|
表 | 裏 | |||
点 | $2$ | $-1$ | ||
2回目 | 表 | $2$ | $4$ | $1$ |
裏 | $-1$ | $1$ | $-2$ |
表Aのマスは4つで、すべて同じ確率で起こる。
また、$-2$点のマスは1つ。
なので、確率は
$\displaystyle \frac{-2\text{点のマス}}{\text{すべてのマス}}=\frac{1}{4}$
である。
解答ウ:1, エ:4
同様に、持ち点が$1$になる確率は
$\displaystyle \frac{1\text{点のマス}}{\text{すべてのマス}}=\frac{2}{4}$
$=\displaystyle \frac{1}{2}$
である。
解答オ:1, カ:2
(2)
持ち点が$0$になるのは、
表が出る回数のちょうど2倍、裏が出た
ときだ。
よって、3回投げ終わったとき。
詳しく
表が出た回数を
$n$
とすると、裏が出た回数は
$2n$
でないといけない。
よって、投げた回数は
$n+2n=3n$
となるから、持ち点が$0$になることができるのは3の倍数のとき。
このゲームでは最大5回までしか投げられないので、持ち点が$0$になることができるのは
3回
投げたときだけである。
解答キ:3
ここまでは、解法1と同じ。
今回は3回投げたときなので、3回の表裏の組合せだ。
三次元の表だから、紙の上に二次元で書くためにはちょっと工夫しないといけない。
1・2回目 | $4$ | $1$ | $1$ | $-2$ | ||
---|---|---|---|---|---|---|
3回目 | 表 | $2$ | $6$ | $3$ | $3$ | $0$ |
裏 | $-1$ | $3$ | $0$ | $0$ | $-3$ |
緑の文字の部分は、表Aの4つのマスを一行に並べたものだ。
表Bのマスは8つで、すべて同じ確率で起こる。
また、$0$点は青いマスで3つ。
なので、確率は
$\displaystyle \frac{0\text{点のマス}}{\text{すべてのマス}}=\frac{3}{8}$
である。
解答ク:3, ケ:8
(3)
次は5回投げたときなので、5回の表裏の組合せだ。
五次元の表ということで、樹形図とあんまり変わらなくなってきた。
でも、せっかくここまで来たし、こんな方法もあるという紹介なので、最後まで表で解いてみよう。
表Bの8つのマスを横に、表Aの4つのマスを縦に並べて、表Cをつくる。
青文字の部分が 表Bの8つのマスを並べたもの、緑の文字の部分が 表Aの4つのマスを並べたものだ。
1・2回目 | $4$ | $1$ | $1$ | $-2$ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3回目 | 表 | 裏 | 表 | 裏 | 表 | 裏 | 表 | 裏 | |
$6$ | $3$ | $3$ | $0$ | $3$ | $0$ | $0$ | $-3$ | ||
4・5 回目 | $4$ | ||||||||
$1$ | |||||||||
$1$ | |||||||||
$-2$ |
この表Cに、5回終わった時点での持ち点を書き込むと、表Dができる。
1・2回目 | $4$ | $1$ | $1$ | $-2$ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
3回目 | 表 | 裏 | 表 | 裏 | 表 | 裏 | 表 | 裏 | |
$6$ | $3$ | $3$ | $0$ | $3$ | $0$ | $0$ | $-3$ | ||
4・5 回目 | $4$ | $10$ | $7$ | $7$ | $7$ | $1$ | |||
$1$ | $7$ | $4$ | $4$ | $4$ | $-2$ | ||||
$1$ | $7$ | $4$ | $4$ | $4$ | $-2$ | ||||
$-2$ | $4$ | $1$ | $1$ | $1$ | $-5$ |
何も書いていないマスは、3回投げた時点で持ち点が$0$になって終了した部分。
この部分は表を作らないという方法もあるけど、ここでは、全てのマスが同じ確率になり,かつ全てのマスの確率の和が$1$になるようにするために、空白のマスを作った。
同じ理由で、3回目の持ち点に3つずつある$3$と$0$を1列にまとめたり、4・5回目の持ち点の2つの$1$を1行にまとめたりはしなかった。
表Dのマスは32個で、すべて同じ確率で起こる。
また、$4$点のマスは緑の$7$つ。
なので、確率は
$\displaystyle \frac{4\text{点のマス}}{\text{すべてのマス}}=\frac{7}{32}$
である。
解答コ:7, サ:3, シ:2
(4)
最初に条件付き確率の復習をすると、
復習
$A$が起こったときに$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$とは、$A$が起こった場合を全事象と考えて、その中で$B$が起こる確率のことである。
だった。
復習より、表Dで$4$点のマスを全事象と考える。
つまり、表Dには緑のマスしかなくて、他のマスは存在しないものとして考える。
この場合、全事象は
7マス式H
ある。
また、2回終わった時点での持ち点が$1$であるのは、表Dの赤で囲んだ部分。
だけど、緑のマス以外は存在しないので、これにあてはまるのは赤文字の
4マス式I
だ。
確率$=\displaystyle \frac{\text{確率を求める事象}}{\text{すべての事象}}$
なので、式Iを式Hで割って、求める条件付き確率は
$\displaystyle \frac{4}{7}$
である。
解答ス:4, セ:7
解法3
3つめの解法は、樹形図だ。
頭よりも手を使って解く方法とも言える。
この問題に関しては、意外に一番早く解けるやり方かも知れない。
最初に、図Eのような樹形図を全部描いてしまおう。
図中、○は表が出た場合、□は裏が出た場合を表している。
また、数字はその時点の持ち点である。
図Eで、同じ縦の列の○や□は、同じ確率で起こる。
例えば図Eの右上端のになるためには、5回続けて表が出ないといけない。
なので、になる確率は
$\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^{5}=\frac{1}{2^{5}}$
である。
その下のになるためには、表表表表裏の順に出ないといけないから、確率は
$\displaystyle \left(\frac{1}{2}\right)^{4}\cdot\frac{1}{2}=\frac{1}{2^{5}}$
である。
同様に考えると、左から5列目(一番右の縦の列)の○や□は、すべて$\displaystyle \frac{1}{2^{5}}$の確率で起こる。
同じように、左から2列目の○や□はすべて$\displaystyle \frac{1}{2^{2}}$の確率で起こるし、左から3列目の○や□はすべて$\displaystyle \frac{1}{2^{3}}$の確率で起こる。
このことを頭に入れて、問題にかかろう。
(1)
2回投げ終わって持ち点が$-2$であるのは、図Eのグレーの部分で、1通り。
左から2列目は確率が$\displaystyle \frac{1}{2^{2}}$なので、求める確率は
$\displaystyle \frac{1}{2^{2}}=\frac{1}{4}$
である。
解答ウ:1, エ:4
また、2回投げ終わって持ち点が$1$であるのは、図Eのオレンジの部分で、2通り。
左から2列目は確率が$\displaystyle \frac{1}{2^{2}}$なので、求める確率は
$\displaystyle \frac{1}{2^{2}}\cdot 2=\frac{1}{2}$
である。
解答オ:1, カ:2
(2)
図E中で持ち点が$0$なのは、左から3列目の青い部分だけ。
なので、持ち点が$0$になることができるのは
3回
投げたときだけである。
解答キ:3
また、青い部分は3通りあって、3列目は確率が$\displaystyle \frac{1}{2^{3}}$なので、求める確率は
$\displaystyle \frac{1}{2^{3}}\cdot 3=\frac{3}{8}$
である。
解答ク:3, ケ:8
(3)
ゲームの終了時、つまり5回投げた状態は、左から5列目。
この列で持ち点が$4$なのは、緑の部分で7通りだ。
5列目は確率が$\displaystyle \frac{1}{2^{5}}$なので、求める確率は
$\displaystyle \frac{1}{2^{5}}\cdot 7=\frac{7}{32}$
である。
解答コ:7, サ:3, シ:2
(4)
ここで、条件付き確率の復習をすると、
$A$が起こったときに$B$が起こる条件付き確率$P_{A}(B)$とは、$A$が起こった場合を全事象と考えて、その中で$B$が起こる確率のことである。
復習
復習より、図Eの緑の部分を全事象と考える。
この場合、全事象は
7通り式J
ある。
また、2回終わった時点での持ち点が$1$であるのは、図Eのオレンジの部分。
緑の○や□のうち、オレンジの部分を通るのは赤文字の
4通り式K
だ。
確率$=\displaystyle \frac{\text{確率を求める事象}}{\text{すべての事象}}$
なので、式Kを式Jで割って、求める条件付き確率は
$\displaystyle \frac{4}{7}$
である。
解答ス:4, セ:7