大学入試センター試験 2020年(令和2年) 本試 数学ⅠA 第1問 [2] 解説
問題を解く準備
まず最初にすることは、問題の集合を目に見える形にすることだ。
というわけで、集合$P$,$Q$,$R$をベン図で表そう。
$P$は$4$の倍数の自然数の集合
$Q$は$6$の倍数の自然数の集合
なので、集合$P$,$Q$は図Aのような関係になる。
集合$P$と$Q$の共通部分、つまり図Aの青い部分は、$4$と$6$の公倍数の集合だ。
これは、$4$と$6$の最小公倍数である$12$の倍数の自然数の集合ともいえる。
$R$は$24$の倍数の自然数の集合
なので、集合$R$は図Aの青い部分に含まれる。
以上より、図Aに集合$R$を書き加えると図Bのようになる。
集合$P$,$Q$,$R$の関係が分かったところで、問題を解きはじめよう。
(1)
$32$は$4$の倍数だけど、$6$の倍数じゃない。
つまり、集合$P$のメンバーだけど、集合$Q$のメンバーじゃない。
ベン図で表すと、図Cの青い集合に含まれる。
図Cの青い集合は、
$P$ かつ $Q$の外
なので
$P\cap\overline{Q}$
とかけるから、
$32\in P\cap\overline{Q}$
である。
解答ス:2
(2)
$P\cap Q$は、図Aの青い部分。
始めに考えたように、これは$12$の倍数の自然数の集合なので、最小のメンバーは
$12$
である。
解答セ:1, ソ:2
また、$12$は$24$の倍数じゃないから、図Dのように、$R$には含まれない。
なので、
$12\not\in R$
である。
解答タ:4
アドバイス
$\subset$,$\supset$は、集合同士の場合に使う。
この問題の場合、$12$は集合ではなくメンバー(要素)なので、
$12\subset R$
は不適。
(3)
最初に、反例について復習しておこう。
復習
命題が偽であることを証明するには、反例を一つあげればよい。
このことについて、簡単な命題を例に考えてみよう。
例1:偶数は、奇数である。(偶数$\Rightarrow$奇数)
この命題を集合で表すと、
仮定:偶数
結論:奇数
なので、ベン図は図Eのようになる(図中、緑が仮定の集合,斜線部が結論の集合)。
この命題は偽で、反例は例えば2だ。
この反例の2は、図Eでは赤い点にあたる。
例2:偶数は、3の倍数である。(偶数$\Rightarrow$3の倍数)
この命題を集合で表すと、
仮定:偶数
結論:3の倍数
なので、ベン図は図Fのようになる(図中、緑が仮定の集合,斜線部が結論の集合)。
この命題は偽で、反例は例えば2だ。
この反例の2は、図Fでは赤い点にあたる。
例2:偶数は、4の倍数である。(偶数$\Rightarrow$4の倍数)
この命題を集合で表すと、
仮定:偶数
結論:4の倍数
なので、ベン図は図Gのようになる(図中、緑が仮定の集合,斜線部が結論の集合)。
この命題は偽で、反例は例えば2だ。
この反例の2は、図Gでは赤い点にあたる。
以上から、仮定の集合と結論の集合がどのような関係にあっても、反例とは
仮定の集合に含まれて結論の集合には含まれないメンバー(要素)
であることが分かる。
復習より、選択肢のうち、$12$が
仮定の集合に含まれて
結論の集合には含まれない
ものを探せばよい。
⓪
図Hで、
仮定の$p$かつ$q$は緑の部分
結論の$\overline{r}$は斜線の部分
$12$の赤い点は仮定にも結論にも含まれているから、反例ではない。
①
図Iで、
仮定の$p$または$q$は緑の部分
結論の$\overline{r}$は斜線の部分
$12$の赤い点は仮定にも結論にも含まれているから、反例ではない。
②
図Jで、
仮定の$r$は緑の部分
結論の$p$かつ$q$は斜線の部分
$12$の赤い点は仮定に含まれていないし、結論に含まれているから、反例ではない。
③
図Kで、
仮定の$p$かつ$q$は緑の部分
結論の$r$は斜線の部分
$12$の赤い点は仮定に含まれていて結論には含まれていないから、これが反例だ。
解答チ:3