大学入試センター試験 2017年(平成29年) 本試 数学ⅠA 第3問 解説
はじめに
ここでは2通りの解法を解説する。解法1が圧倒的に楽だけど、きっと初めて見る方法だと思うし、どんな場合にも使えるわけではない。なので、自分には合わない思う人は、解法2で解いてもらっても全く問題ない。解法2は見慣れた普通の方法である。
解法1:問題を解く準備
まず最初に確認しておくことは、「くじを引く順番で、あたる確率は変わらない」ということ。
つまり、ABCの順に引いても、BCAの順に引いても、各人のあたる確率は変わらない。
それを頭に入れて、問題の情報を整理するためにベン図を描こう。
図Aの①の部分は「3人ともあたる」だけど、あたりのくじは2本しかないので、これは起こらない。
また、②の部分は「3人ともはずれる」だけど、はずれのくじも2本しかないので、これも起こらない。
なので、ベン図を描きなおすと図Bができる。
図Bの①は、Aだけがあたる場合。
④は、Aだけがはずれる場合。
この問題では、あたりくじの本数とはずれくじの本数は同じなので、①と④は同じ確率になる。
なので、①と④に限らず、図中の同じ色の区画は、同じ確率になる。
さらに、Aだけがあたる確率も、Bだけがあたる確率も、Cだけがあたる確率も等しい。
以上より、図Bの①~⑥の「区画」はすべて同じ確率になる。
「区画」は6個あって、すべての確率の和は
どの「区画」も起こる確率は
である。
と、ここまで整理できたところで、問題を解こう。
解法1:(1)
A,Bの少なくとも一方があたりくじを引く事象は、図Cの赤い部分。
これは、6つの「区画」のうちの5「区画」分である。
すべての「区画」は起こる確率が等しいので、確率は
である。
解答ア:5, イ:6
解法1:(2)
「A,B,Cの3人で2本のあたりのくじを引く事象
AとBがあたる
BとCがあたる
CとAがあたる
の3つの事象をたしたもの、つまり和事象である、
上の事象はそれぞれ、
Cだけがはずれる
Aだけがはずれる
Bだけがはずれる
と言いかえられるので、正しい選択肢は
①,③,⑤
である。
解答ウ:1, エ:3, オ:5 (順不同)
この事象
これは、6つの「区画」のうちの3「区画」分。
すべての「区画」は起こる確率が等しいので、確率は
である。
解答カ:1, キ:2
解法1:(3)
復習
条件付き確率「
とは、
「
のこと。
なので、
詳しくはこのページの解法3参照。
事象
事象
さらに、すべての「区画」は起こる確率が等しいので、求める条件付き確率は、
である。
解答ク:3, ケ:5
解法1:(4)
「B,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く事象
⓪~⑤の選択肢もそれぞれベン図にしてみる。
⓪
Aがはずれのくじを引くので、Aがあたる部分の外。なので、図Fの青い部分である。
①
Aだけがはずれのくじを引くは、BとCがあたると言いかえられるので、図Gの青い部分である。
図F,図Gができたら、あとはAをBとCに変える、機械的な作業だ。
②
③
④
⑤
ここまでくると、あとは図F~図Kをくっつけて図Eをつくればよい。
なので、正しい選択肢は
図F,図I,図Kの、⓪,③,⑤である。
解答コ:0, サ:3, シ:5 (順不同)
最初に確認したように、くじはどの順に引いてもあたる確率は変わらないので、
A,Bの少なくとも一方があたりくじを引く事象
よって、アイより、確率はすべて
である。
解答ス:5, セ:6, ソ:5, タ:6
ス~タの別解
である。
解答ス:5, セ:6
また、A,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く確率
これは、6つの「区画」のうち5「区画」分なので、確率は
である。
解答ソ:5, タ:6
解法1:(5)
事象
事象
見比べると、事象
また、(1),(2)より、事象
よって、
である。
解答チ:6
解法2:(1)
問題文中に「少なくとも」とあるので、全体から余事象を引こう。
余事象は「A,B両方ともはずれる」なので、
Aがはずれる確率は
Bがはずれる確率は、くじを戻さないので、くじの本数もはずれの本数も1本ずつ減って、
より、余事象は
余事象
余事象
余事象
よって、求める確率は
である。
解答ア:5, イ:6
アドバイス
式Aを見て「あれ?Cは?」と思った人もいるかも知れないけれど、Cは必要ないです。
Cはあたりでもはずれでもいいので、Cも入れた式をつくると
余事象
になるけど、この式の赤文字部分は
「起こり得るどの事象が起こってもいい」場合は基本的に省略して計算できる。
別解
2本の当たりくじも、2本のはずれくじも、それぞれ見分けがつくと考えた場合、余事象について、
A,Bがはずれる場合の数は、2本のはずれくじを1列に並べる場合の数と同じ
A,Bのくじの引き方の場合の数は、4本のくじから2本選んで一列に並べる場合の数と同じ。
なので、
余事象
よって、求める確率は
である。
解答ア:5, イ:6
解法2:(2)
「A,B,Cの3人で2本のあたりのくじを引く事象
AとBがあたる
BとCがあたる
CとAがあたる
事象をたしたもの、つまり和事象である、
上の事象はそれぞれ、
Cだけがはずれる
Aだけがはずれる
Bだけがはずれる
と言いかえられるので、正しい選択肢は
①,③,⑤
である。
解答ウ:1, エ:3, オ:5 (順不同)
AとBがあたるとき、Cははずれるので、その確率は
である。
アドバイス
Cがひくときははずれのくじしか残ってないので、上の式の
くじを引く順番で、あたる確率は変わらない。つまり、ABCの順に引いても、BCAの順に引いても、各人のあたる確率は変わらない。
なので、
AとBがあたる確率
BとCがあたる確率
CとAがあたる確率
は全部等しい。
よって、求める確率は
である。
解答カ:1, キ:2
別解
確率をしっかり理解していない人にはおすすめしないけど、次のような考え方もできる。
A,B,C3人のくじの引き方は、
2人があたって1人がはずれる
1人があたって2人がはずれる
のどちらかしかない。
当たりくじの本数とはずれくじの本数は等しいので、どちらの確率も同じである。
よって、事象
である。
解答カ:1, キ:2
解法2:(3)
まず、条件付き確率の復習をすると、
復習
事象
である。
復習より、
そのために、
こういった場合は、図や表で考えた方が早い。本当はベン図の方が分かりやすいんだけど、解法1でやっちゃったので、せっかくだから違う方法をする。
表を書いてみよう。
ベン図を使う方法は、解法2を見てほしい。
あたりのくじもはずれのくじも2本ずつしかないので、全員あたりや全員はずれは起こらない。つまり、表のグレーの部分は起こらない。
Aがあたる場合 | Aがはずれる場合 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
B | B | |||||||
当 | 外 | 当 | 外 | |||||
C | 当 | ○ | C | 当 | ○ | |||
外 | ○ | 外 |
事象
事象
表Aを見ると、○全部は赤い部分に入っている。
つまり、
よって、求める条件付き確率は、復習の式より、
である。
解答ク:3, ケ:5
解法2:(4)
この問題でも、図や表を書いて見ながら考えた方が早いし、ミスも少ない。
ここでも表を書いてみる。いろんな表の書き方を紹介したいので、表Aとは違う表をつくる。
ベン図で解く方法は、解法1を見てほしい。
「B,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く事象
A | 当 | 外 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
B | 当 | 外 | 当 | 外 | ||||
C | 当 | 外 | 当 | 外 | 当 | 外 | 当 | 外 |
この表に、⓪~⑤の選択肢の事象の集合を書き込むと、表Cができる。
A | 当 | 外 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
B | 当 | 外 | 当 | 外 | ||||
C | 当 | 外 | 当 | 外 | 当 | 外 | 当 | 外 |
⓪ | ○ | ○ | ○ | |||||
① | ○ | |||||||
② | ○ | ○ | ○ | |||||
③ | ○ | |||||||
④ | ○ | ○ | ○ | |||||
⑤ | ○ |
問題文より、
なので、はみ出している②,④は不適。
また、コ,サ,シは排反なので、重なっていないはずである。
なので、⓪,①のどちらかが不適。
でも、⓪を不適にしちゃうと、赤い範囲をカバーできない。
なので、正しい選択肢は⓪,③,⑤である。
解答コ:0, サ:3, シ:5 (順不同)
先に確認したように、くじはどの順に引いてもあたる確率は変わらないので、
A,Bの少なくとも一方があたりのくじを引く事象
よって、アイより、確率はすべて
である。
解答ス:5, セ:6, ソ:5, タ:6
ス~タの別解
B,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く確率を求めるのだけれど、「少なくとも」なので、全体から余事象を引く。
余事象は、B,Cともにはずれのくじを引くなので、Aはあたりのくじを引くことになる。
よって、確率は、Aあたり,Bはずれ,Cはずれの順にかけて
余事象
余事象
余事象
なので、求める確率は、
である。
解答ス:5, セ:6
同様に、A,Cの少なくとも一方があたりのくじを引く確率も、全体から余事象を引く。
余事象は、Aはずれ,Bあたり,Cはずれなので、その確率は
余事象
余事象
余事象
なので、求める確率は、
である。
解答ソ:5, タ:6
解法2:(5)
事象
この問題も、本当はベン図の方が分かりやすいんだけど、解法1でやっちゃったから、ここでは表を書く。ベン図を使う方法は解法1を見てほしい。
A | 当 | 外 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
B | 当 | 外 | 当 | 外 | ||||
C | 当 | 外 | 当 | 外 | 当 | 外 | 当 | 外 |
○ | ○ | ○ | ||||||
○ | ○ | ○ | ||||||
○ | ○ | ○ |
事象
事象
見比べると、事象
また、(1),(2)より、事象
よって、
である。
解答チ:6