大学入試センター試験 2020年(令和2年) 追試 数学ⅡB 第3問 解説
(1)
(1)は、漸化式のルールを理解するための前振りの問題だ。
漸化式がちょっと分かりにくいので、確認から。
$a_{2n}=a_{n}$①
$a_{2n+1}=a_{n}+a_{n+1}$②
だけど、これでは全然イメージがわかない。
こういう場合は、目に見える形にすることが重要だ。
つまり、何項目かまでを図にする。
図をつくるとき、ひとつ気をつけてほしいことがある。
先にそれぞれの項の値を求めてはいけない。
何のことやら分からないと思うので、実際に$a_{1}$~$a_{17}$の図を描きながら説明する。
漸化式①より、
$ a_{1}=a_{2}=a_{4}=a_{8}=a_{16}=\cdots$
なので、図Aの緑の線でつながった丸の項は同じ値である。
漸化式②より、
$a_{3}=a_{1}+a_{2}$
だけど、これを図Aの下に描きたすと、図Bができる。
図Bの青い点の項の和が、$a_{3}$の値だ。
さらに、漸化式①より、
$ a_{3}=a_{6}=a_{12}=\cdots$
なので、図Cの2段目の緑の線でつながった丸の項も同じ値である。
これを繰りかえして$a_{17}$まで描くと、図Dのようになる。
項同士の関係をイメージすることが目的なので、ここまで項の値は求めなかった。
これに項の値を書き込むと、図Eになる。
アドバイス
こうして考えながら図を描くと、①②の漸化式の意味がよく分かる。
図や表をかくことは、考えを整理したり実感したりする方法でもあるのだ。
センター試験本番は時間との戦いだけど、このくらいの図ならあまり手間取らないと思う。
図Eより、
$a_{4}=1$
$a_{5}=3$
$a_{6}=2$
$a_{7}=3$
である。
解答ア:1, イ:3, ウ:2, エ:3
$a_{18}$,$a_{38}$は図Eにないので、ちょっと考える。
漸化式①より、
$a_{18}=a_{9}$
なので、図Eより
$a_{18}=4$
解答オ:4
漸化式①より、
$a_{38}=a_{19}$
漸化式②より、
$a_{19}=a_{9}+a_{10}$
なので、図Eより
$a_{38}=4+3$
$=7$
である。
解答カ:7
別解
図Eを使わずに解くと、次のような計算になる。
漸化式①より、
$a_{4}=a_{2}$
なので、
$a_{4}=1$
である。
解答ア:1
漸化式②より、
$a_{5}=a_{2}+a_{3}$
なので、
$a_{5}=1+2$
$=3$
である。
解答イ:3
漸化式①より、
$a_{6}=a_{3}$
なので、
$a_{6}=2$
である。
解答ウ:2
漸化式②より、
$a_{7}=a_{3}+a_{4}$
なので、
$a_{7}=2+1$
$=3$
である。
解答エ:3
漸化式①より、
$a_{18}=a_{9}$
漸化式②より、
$a_{9}=a_{4}+a_{5}$
$=1+3$
$=4$
なので、
$a_{18}=4$
である。
解答オ:4
漸化式①より、
$a_{38}=a_{19}$
漸化式②より、
$a_{19}=a_{9}+a_{10}$
だけど、漸化式①より
$a_{10}=a_{5}$
なので、
$a_{38}=a_{9}+a_{5}$
$=4+3$
$=7$
である。
解答カ:7
(2)
図Eをつくるときに気づいたと思うけど、$m$を自然数として、
$a_{m}=3$
であれば
$a_{2m}=a_{4m}=a_{8m}=a_{16m}=\cdots=3$
だ。
なので、$k$を自然数として、
$a_{m\cdot 2^{k}}=a_{m}$式A
と表せる。
よって、
$a_{3\cdot 2^{k}}=a_{3}$
$=2$
である。
解答キ:2
アドバイス
ここで使っているのは漸化式①だけなんだけど、①の式を見ているだけでは 式Aはなかなか思いつかなかったりする。
漸化式のルールが分かりにくいときには、先に図や表をかいてイメージをつかんでおくことをお勧めする。
(3)
突然、群数列の問題になった。
以下、解説をシンプルにするために、
第$k$群の$m$番目の項を $[$第$k$群$]_{m}$
第$k$群の最後の項を $[$第$k$群$]_{L}$
と表すことにする。
例えば、
第$3$群の$2$番目の項は $[$第$3$群$]_{2}$
第$5$群の最後の項は $[$第$5$群$]_{L}$
と書く。
図Eを群に分けると、図Fができる。
図Fを見ながら、まず$[$第$k$群$]_{1}$が$\{a_{n}\}$の何項目にあたるかを考えよう。
こういうときは、ひとつ例をとりだして考える。
図Fより、例えば
$[$第$4$群$]_{1}=a_{17}$
だけど、なぜそうなるかを考える。
$[$第$4$群$]_{1}$の前には、
$a_{1}$と$a_{2}$
第$1$群
第$2$群
第$3$群
がある。
$a_{1}$と$a_{2}$で、項数は$2$個
第$1$群に含まれる項は、$2^{1}$個
第$2$群に含まれる項は、$2^{2}$個
第$3$群に含まれる項は、$2^{3}$個
だから、これを全部たした
$2+$$2^{1}+2^{2}+2^{3}$式B
個の項が、$[$第$4$群$]_{1}$の前に存在する。
式Bの赤い部分を計算すると
$2^{1}+2^{2}+2^{3}=\displaystyle \sum_{j=1}^{3}2^{j}$
$=\displaystyle \frac{2(1-2^{3})}{1-2}$
$=14$
なので、式Bは
$2+14=16$
となるから、$[$第$4$群$]_{1}$の前には$16$個の項が存在する。
つまり、$[$第$4$群$]_{1}$は$a_{16}$の次の項なので、$a_{17}$であるわけだ。
$[$第$k$群$]_{1}$で、同じ考え方をしてみる。
$[$第$k$群$]_{1}$の前には、
$a_{1}$と$a_{2}$
第$1$群
第$2$群
$\vdots$
第$k-1$群
がある。
$a_{1}$と$a_{2}$で、項数は$2$個
第$1$群に含まれる項は、$2^{1}$個
第$2$群に含まれる項は、$2^{2}$個
$\vdots$
第$k-1$群に含まれる項は、$2^{k-1}$個
だから、これを全部たした
$2+$$2^{1}+2^{2}+\cdots+2^{k-1}$式C
個の項が、$[$第$k$群$]_{1}$の前に存在する。
式Cの赤い部分を計算すると
$2^{1}+2^{2}+\displaystyle \cdots+2^{k-1}=\sum_{j=1}^{k-1}2^{j}$
$=\displaystyle \frac{2(1-2^{k-1})}{1-2}$
$=2^{k}-2$
となる。
解答ク:2, ケ:2, コ:2
なので、式Cは
$2+2^{k}-2=2^{k}$
となるから、$[$第$k$群$]_{1}$の前には$2^{k}$個の項が存在する。※
つまり、$[$第$k$群$]_{1}$は$a_{2^{k}}$の次の項なので、
$[$第$k$群$]_{1}=a_{2^{k}+1}$式D
である。
解答サ:1
$[$第$k$群$]_{1}$の前の項は$[$第$k-1$群$]_{L}$だ。
※より、$[$第$k$群$]_{1}$の前には$2^{k}$個の項が存在するので、
$[$第$k-1$群$]_{L}=a_{2^{k}}$
である。
この式の$k$に$k+1$を代入して、
$[$第$k$群$]_{L}=a_{2^{k+1}}$式E
であることが分かる。
解答シ:3
ここから、和の問題だ。
はじめは、いつものようにルール確認の前振り問題から。
$S_{1}=a_{3}+a_{4}$
なので、図Fより、
$S_{1}=2+1$
$=3$
である。
解答ス:3
$S_{2}=a_{5}+a_{6}+a_{7}+a_{8}$
なので、図Fより、
$S_{2}=3+2+3+1$
$=9$
である。
解答セ:9
$T_{2}=a_{5}+a_{7}$
なので、図Fより、
$T_{2}=3+3$
$=6$
である。
解答ソ:6
$U_{2}=a_{6}+a_{8}$
なので、図Fより、
$U_{2}=2+1$
$=3$
である。
解答タ:3
(4)
そろそろ問題も佳境に入ってきた。
今度は$S_{k+1}$,$T_{k+1}$,$U_{k+1}$の漸化式をつくれという。
つまり、$S_{k+1}$,$T_{k+1}$,$U_{k+1}$を$S_{k}$,$T_{k}$,$U_{k}$を使って表すわけだ。
頭の中だけで考えると混乱するので、図を見ながら考えよう。
図Fはちょっとごちゃごちゃしているし、各項の値はとりあえず必要ないから、省略して図Gをつくってみた。
これを見ながら考える。
まず、$U_{k+1}$から。
$k=1$のとき、$U_{k+1}$は$U_{2}$なので、図H左図の赤丸をつけた項の和だ。
これは、オレンジの丸をつけた項の和と等しいから、
$U_{2}=S_{1}$
とかける。
$k=2$のとき、$U_{k+1}$は$U_{3}$なので、図H右図の赤丸をつけた項の和だ。
これは、オレンジの丸をつけた項の和と等しいから、
$U_{3}=S_{2}$
とかける。
このことから、
$U_{k+1}=S_{k}$
ではないかと予想できる。
これは予想にすぎないので、本当かどうか確認しよう。
式D,式Eより、
$[$第$k$群$]_{1}=a_{2^{k}+1}$
$[$第$k$群$]_{L}=a_{2^{k+1}}$
なので、第$k$群には
$a_{2^{k}+1}$,$a_{2^{k}+2}$,$\cdots$,$a_{2^{k+1}}$
の項が含まれる。
よって、$S_{k}$は
$S_{k}=$$a_{2^{k}+1}$$+$$a_{2^{k}+2}$$+\cdots+$$a_{2^{k+1}}$式F
とかける。
同様に、式D,式Eより、
$[$第$k+1$群$]_{1}=a_{2^{k+1}+1}$
$[$第$k+1$群$]_{L}=a_{2^{(k+1)+1}}$
$=a_{2^{k+2}}$
なので、第$k+1$群には
$a_{2^{k+1}+1}$,$a_{2^{k+1}+2}$,$a_{2^{k+1}+3}$,$ a_{2^{k+1}+4}\cdots$,$a_{2^{k+2}}$
の項が含まれる。
このうち、偶数番目の項は
$a_{2^{k+1}+2}$,$a_{2^{k+1}+4}$,$\cdots$,$a_{2^{k+2}}$
なので、$U_{k+1}$は
$U_{k+1}=$$a_{2^{k+1}+2}$$+$$a_{2^{k+1}+4}$$+\cdots+$$a_{2^{k+2}}$式G
とかける。
ここで、
$2\times(2^{k}+1)=2^{k+1}+2$
$2\times(2^{k}+2)=2^{k+1}+4$
$\vdots$
$2\times 2^{k+1}=2^{k+2}$
なので、漸化式①より、式Fと式Gの同じ色の項は等しい。
よって、式F$=$式Gなので、
$U_{k+1}=S_{k}$式H
であるとの予想は正しいことが分かる。
解答チ:0
次に、$T_{k+1}$だ。
$U_{k+1}$のときと同じように考えると、
$k=1$のとき、$T_{k+1}$は$T_{2}$なので、図I左図の赤丸をつけた項の和だ。
これは、オレンジの丸をつけた項の和と等しいけど、
$a_{4}=a_{2}$
なので、
$T_{2}=2S_{1}$
とかける。
$k=12$とき、$T_{k+1}$は$T_{3}$なので、図I右図の赤丸をつけた項の和だ。
これは、オレンジの丸をつけた項の和と等しいけど、
$a_{8}=a_{4}$
なので、
$T_{3}=2S_{2}$
とかける。
このことから、
$T_{k+1}=2S_{k}$式I
ではないかと予想できる。
これは予想なので確認ないといけないけれど、$U_{k+1}$のときの確認と似ているので省略する。
解答ツ:4
さらに$S_{k+1}$は
$S_{k+1}=T_{k+1}+U_{k+1}$
に式H,式Iを代入して
$S_{k+1}=S_{k}+2S_{k}$
$S_{k+1}$$=3S_{k}$
である。
解答テ:8
別解
全くお薦めでもないし、ゼンゼン数学じゃないけど、答えを出すだけなら次のような方法もある。
ス~タおよび図Fより、
$S_{1}=3$
$S_{2}=9$
$T_{1}=2$
$T_{2}=6$
$U_{1}=1$
$U_{2}=3$
なので、$k=1$のときと$k=2$のときの選択肢の値を求めると、表Jのようになる。
⓪ | ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$k=1$ | $3$ | $6$ | $2$ | $1$ | $6$ | $4$ | $5$ | $6$ | $9$ | $9$ |
$k=2$ | $9$ | $15$ | $6$ | $3$ | $18$ | $12$ | $15$ | $18$ | $27$ | $27$ |
これを使って、選択肢のうちでどれが当てはまるかを探す。
まず、$U_{k+1}$から。
$k=1$のとき、
$U_{k+1}=U_{2}$
$=3$
なので、値が等しいのは選択肢の⓪である。
解答チ:0
次に、$T_{k+1}$だ。
$k=1$のとき、
$T_{k+1}=T_{2}$
$=6$
なので、値が等しいのは選択肢の①,④,⑦。
$k=2$のとき、
$T_{k+1}=T_{3}$
$=a_{9}+a_{11}+a_{13}+a_{15}$
$=18$
なので、値が等しいのは選択肢の④,⑦。
だから、正しいのは選択肢の④と⑦のどちらか。
それから、$S_{k+1}$だ。
$k=1$のとき、
$S_{k+1}=S_{2}$
$=9$
なので、値が等しいのは選択肢の⑧,⑨
$k=2$のときも選択肢の⑧と⑨の値は同じなので、正しいのは⑧と⑨のどちらかとしか言えない。
$T_{k+1}=$④ が正しい場合、
$S_{k+1}=T_{k+1}+U_{k+1}$
に④と$U_{k+1}=S_{k}$を代入して、
$S_{k+1}=2S_{k}+S_{k}$
$=3S_{k}$
とかける。
なので、この場合、
$S_{k+1}=$⑧
となる。
$T_{k+1}=$⑦ が正しい場合、
$S_{k+1}=T_{k+1}+U_{k+1}$
に⑦と$U_{k+1}=S_{k}$を代入して、
$S_{k+1}=2T_{k}+k(k+1)+S_{k}$
となるけど、この右辺は選択肢にないので、$S_{k+1}$の解がなくなってしまう。
よって、正解は
$T_{k+1}=$④
$S_{k+1}=$⑧
であることが分かる。
解答ツ:4, テ:8
以上より、
$S_{1}=3$式J | |
$S_{k+1}=3S_{k}$式K | |
$T_{k+1}=2S_{k}$式L | |
$U_{k+1}=S_{k}$式M |
であることが分かった。
あとは、この漸化式を解く。
式J,式Kより、$\{S_{k}\}$は
初項が$3$
公比が$3$
の等比数列だ。
よって、一般項$S_{k}$は
$S_{k}=3\cdot 3^{k-1}$
$=3^{k}$式N
である。
解答ト:9
式L,式M,式Nの$k$に$k-1$を代入すると、
$T_{k}=2S_{k-1}$式L'
$U_{k}=S_{k-1}$式M'
$S_{k-1}=3^{k-1}$式N'
とかける。
式N'を式L',式M'に代入すると、$2\leqq k$のとき、
$T_{k}=2\cdot 3^{k-1}$式L''
$U_{k}=3^{k-1}$式M''
であることが分かる。
$k=1$のとき、式L'',式M''は
$T_{1}=2\cdot 3^{1-1}$
$=2$
$U_{1}=3^{1-1}$
$=1$
となる。
よって、式L'',式M''は$k=1$のときも成り立つ。
解答ナ:5, ニ:1