大学入試センター試験 2016年(平成28年) 追試 数学ⅠA 第4問 解説
(1)
$407$と$481$はともに結構大きな数だし、ぱっと見 $2$とか$3$とか$5$とかの見つけやすい約数もない。
なので、素因数分解するときっと大変だ。
ユークリッドの互除法を使おう。
まず、大きい方の数を小さい方の数で割る。
$481\div 407=1...74$
割った数を余りで割る。
$407\div 74=5...37$
また、割った数を余りで割る。これを、割り切れるまで繰り返す。
$74\div 37=2$
割り切れたら終了。そのときの割った数が、最大公約数である。
よって、最大公約数は
$37$
である。
解答ア:3, イ:7
最大公約数が分かれば、最小公倍数は計算するだけだ。
$407\div 37=11$なので、$a=37\cdot 11$
$481\div 37=13$なので、$b=37\cdot 13$
なので、$a$と$b$の最小公倍数は
$37\cdot 11\cdot 13=5291$
である。
解答ウ:5, エ:2, オ:9, カ:1
アドバイス
ここでは、何をしているかが分かりやすいように$407$と$481$の両方を$37$で割った。
けれど、一方だけ割って、その商ともう一方の数をかけた方が計算は早い。
つまり、
$407\div 37=11$
$481\cdot 11=5291$
とした方が、ムダな計算が省略できる。
先に求めたように、
$a=37\cdot 11$
$b=37\cdot 13$
なので、$\sqrt{abc}$は
$\sqrt{abc}=\sqrt{37^{2}\cdot 11\cdot 13\cdot c}$
とかける。
$\sqrt{abc}$が整数になるためには、$abc$を素因数分解したとき、すべての素因数が偶数乗になればよい。
$abc=37^{2}\cdot 11\cdot 13\cdot c$
なので、$37$は偶数乗だから解決済み。
あとの$11$と$13$が偶数乗になるような$c$を考える。
よって、最小の$c$は
$c=11\cdot 13$
$c$$=143$
である。
解答キ:1, ク:4, ケ:3
(2)
(1)より、
$a=37\cdot 11$
$b=37\cdot 13$
なので、不定方程式
$ax=-by$
は
$37\cdot 11x=-37\cdot 13y$
とかける。
両辺を37で割って、
$11x=-13y$
$11$と$13$は互いに素なので、この式が成り立つためには、$x$は$13$の倍数、$y$は$11$の倍数でなければならない。
なので、$k$を整数として、
$\left\{\begin{array}{l}
x=-13k\\
y=11k
\end{array}\right.$
である。
解答コ:-, サ:1, シ:3, ス:1, セ:1
(3) 解法1
このタイプの問題は、互除法を使って式をつくり、解のひと組を求めてから解くことが多い。
今回は方程式の右辺の数が大きいので計算が面倒だけど、決まった手順で計算してゆけば機械的に解ける。
だけど、今回は、(2)からの流れがあるのでちょっと違った方法で解いてみよう。
互除法を使う方法は下の「(3)解法2」を見てほしい。
$a=407$なので、不定方程式
$ax+by=40700$
は
$ax+by=100a$式A
とかける。
これを変形して、
$ax-100a=-by$
$a(x-100)=-by$
とし、
$x-100=X$式B
とおくと、
$aX=-by$
と表せる。
(2)の方程式と同じ形ができた。
(2)より、方程式$ax=-by$の解は
$\left\{\begin{array}{l}
x=-13k\\
y=11k
\end{array}\right.$
だった。
よって、方程式$aX=-by$の解は
$\left\{\begin{array}{l}
X=-13k\\
y=11k
\end{array}\right.$
と考えられる。
この$X$に式Bを代入して、
$x-100=-13k$
$x=-13k+100$
となるから、解は
$\left\{\begin{array}{l}
x=-13k+100\\
y=11k
\end{array}\right.$式C
である。
ここでは、$x$,$y$ともに$0$以上である解の数を問われている。
よって、式Cより、
$\left\{\begin{array}{l}
0\leqq-13k+100\\
0\leqq 11k
\end{array}\right.$
となる整数$k$の数を求めると、それが条件に合う解の数だ。
上の連立不等式を解いて、
$0\leqq-13k+100$
$13k\leqq 100$
$k\displaystyle \leqq\frac{100}{13}$
$k\leqq 7,69...$
$k$は整数なので、
$k\leqq 7$
$0\leqq 11k$
$0\leqq k$
より、
$0\leqq k\leqq 7$
となるので、解は8組ある。
解答ソ:8
次は、この8組の解のうち$x$が最小になるものを探す。
式Cより
$x=-13k+100$
なので、$x$が最小になるのは$k$が最大のとき。
よって、式Cに$k=7$を代入して、
$x=-13\cdot 7+100$
$x$$=9$
$y=11\cdot 7$
$y$$=77$
が求める解である。
解答タ:9, チ:7, ツ:7
式Aより、
$ax+by=40700$
は
$ax+by=100a$
とかけるので、
$ax+by=40700+$アイ
は
$ax+by=100a+$アイ
とかける。
これを変形して
$ax-100a+by=$アイ
$a(x-100)+by=$アイ
とし、
$x-100=X$式B
とおくと、
$aX+by=$アイ式D
となる。
(1)より、
$a=37\cdot 11$
$b=37\cdot 13$
アイ$=37$
なので、式Dは
$37\cdot 11X+37\cdot 13y=37$
より
$11X+13y=1$式D'
となる。
これは見慣れた一次不定方程式の形だ。
なので、お約束の方法で解こう。
式D'の$X$と$y$の係数の$11$と$13$でユークリッドの互除法を行うと、
$13\div11=1\ldots2$式E1
$11\div2=5\ldots1$式E2
これを「=余り」の形に変形して、
$13-11\cdot1=2$式E1'
$11-2\cdot5=1$式E2'
式E2'に式E1'を代入して、
$11-(13-11\cdot 1)\cdot 5=1$
$11-13\cdot 5+11\cdot 5=1$
$11\cdot6+13\cdot(-5)=1$式F
ができる。
式D'から式Fを辺々引くと、
$11X$ | $+13y$ | $=$ | $1$ | |
$-)$ | $11\cdot6$ | $+13\cdot(-5)$ | $=$ | $1$ |
$11(X-6)$ | $+13(y+5)$ | $=$ | $0$ |
となるから、
$-11(X-6)=13(y+5)$式G
とかける。
ここで、$11$と$13$は互いに素なので、式Gが成り立つためには、$n$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}X-6=13n\\y+5=-11n\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}X=13n+6\\y=-11n-5\end{array}\right.$
でなければならない。
式Bより$X=x-100$なので、この式は
$\left\{\begin{array}{l}x-100=13n+6\\y=-11n-5\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}x=13n+106\\y=-11n-5\end{array}\right.$式H
と書きなおせる。
ここでは、$x$,$y$ともに$0$以上である解の数を問われている。
よって、式Hより、
$\left\{\begin{array}{l}
0\leqq 13n+106\\
0\leqq -11n-5
\end{array}\right.$
となる整数$n$の数を求めると、それが条件に合う解の数だ。
上の連立不等式を解いて、
$0\leqq 13n+106$
$-106 \leqq 13n$
$\displaystyle -\frac{106}{13} \leqq n$
$-8.15... \leqq n$
$n$は整数なので、
$-8 \leqq n$
$0\leqq -11n-5$
$11n \leqq -5$
$n \leqq \displaystyle -\frac{5}{11}$
$n$は整数なので、
$n \leqq -1$
より、
$-8 \leqq n \leqq -1$
となるので、解は8組ある。
解答テ:8
次は、この8組の解のうち$x$が最小になるものを探す。
式Hより
$x=13n+106$
なので、$x$が最小になるのは$n$が最小のとき。
よって、式Hに$n=-8$を代入して、
$x=13\cdot (-8)+106$
$x$$=2$
$y=-11\cdot (-8)-5$
$y$$=83$
が求める解である。
解答ト:2, ナ:8, ニ:3
(3) 解法2
解法1なんて思いつかない、って人は、この解法2で解いてもらってゼンゼン問題ない。
計算が多少面倒だけど、やり方さえ憶えておけば機械的に解ける。
(1)より、
$a=37\cdot 11$
$b=37\cdot 13$
なので、不定方程式
$ax+by=40700$
は
$37\cdot 11x+37\cdot 13y=40700$
とかける。
両辺を37で割って、
$11x+13y=1100$式I
これを解く。
一次不定方程式はお約束の解き方があるので憶えておこう。
$x$と$y$の係数の$11$と$13$でユークリッドの互除法を行うと、
$13\div11=1\ldots2$式J1
$11\div2=5\ldots1$式J2
これを「=余り」の形に変形して、
$13-11\cdot1=2$式J1'
$11-2\cdot5=1$式J2'
式J2'に式J1'を代入して、
$11-(13-11\cdot 1)\cdot 5=1$
$11-13\cdot 5+11\cdot 5=1$
$11\cdot6+13\cdot(-5)=1$式K
式Iの右辺に合わせて、両辺に$1100$をかけて、
$11\cdot6600+13\cdot(-5500)=1100$式K'
ができる。
式Iから式K'を辺々引くと、
$11x$ | $+13y$ | $=$ | $1100$ | |
$-)$ | $11\cdot6600$ | $+13\cdot(-5500)$ | $=$ | $1100$ |
$11(x-6600)$ | $+13(y+5500)$ | $=$ | $0$ |
となるから、
$-11(x-6600)=13(y+5500)$式L
とかける。
ここで、$11$と$13$は互いに素なので、式Lが成り立つためには、$n$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}x-6600=13n\\y+5500=-11n\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}x=13n+6600\\y=-11n-5500\end{array}\right.$式M
でなければならない。
ここでは、$x$,$y$ともに$0$以上である解の数を問われている。
よって、式Mより、
$\left\{\begin{array}{l}
0 \leqq 13n+6600\\
0 \leqq -11n-5500
\end{array}\right.$
となる整数$n$の数を求めると、それが条件に合う解の数だ。
上の連立不等式を解いて、
$0 \leqq 13n+6600$
$-6600 \leqq 13n$
$ \displaystyle -\frac{6600}{13} \leqq n$
$-507.69... \leqq n$
$n$は整数なので、
$-507 \leqq n$
$0 \leqq -11n-5500$
$11n \leqq -5500$
$n \leqq -500$
より、
$-507 \leqq n\leqq -500$
となるので、解は8組ある。
解答ソ:8
最後に、この8組の解のうち$x$が最小になるものを探す。
式Mより
$x=13n+6600$
なので、$x$が最小になるのは、$n$が最小のとき。
よって、式Mに$n=-507$を代入して、
$x=13\cdot (-507)+6600$
$x$$=9$
$y=-11\cdot (-507)-5500$
$y$$=77$
が求める解である。
解答タ:9, チ:7, ツ:7
(1)より、
$a=37\cdot 11$
$b=37\cdot 13$
アイ$=37$
なので、不定方程式
$ax+by=40700+$アイ
は
$37\cdot 11x+37\cdot 13y=40700+37$
とかける。
両辺を37で割って、
$11x+13y=1100+1$
$11x+13y=1101$式N
となる。
これを解くんだけれど、式Iを解いたときの途中式がそのまま使える。
式Kの両辺に$1101$をかけて、
$11\cdot6606+13\cdot(-5505)=1101$式K''
式Nから式K''を辺々引くと、
$11x$ | $+13y$ | $=$ | $1101$ | |
$-)$ | $11\cdot6606$ | $+13\cdot(-5505)$ | $=$ | $1101$ |
$11(x-6606)$ | $+13(y+5505)$ | $=$ | $0$ |
となるから、
$-11(x-6606)=13(y+5505)$式O
とかける。
ここで、$11$と$13$は互いに素なので、式Oが成り立つためには、$m$を整数として
$\left\{\begin{array}{l}x-6606=13m\\y+5505=-11m\end{array}\right.$
より
$\left\{\begin{array}{l}x=13m+6606\\y=-11m-5505\end{array}\right.$式P
でなければならない。
ここでは、$x$,$y$ともに$0$以上である解の数を問われている。
よって、式Pより、
$\left\{\begin{array}{l}
0 \leqq 13m+6606\\
0 \leqq -11m-5505
\end{array}\right.$
となる整数$m$の数を求めると、それが条件に合う解の数だ。
上の連立不等式を解いて、
$0 \leqq 13m+6606$
$-6606 \leqq 13m$
$ \displaystyle -\frac{6606}{13} \leqq m$
$-508.15... \leqq m$
$m$は整数なので、
$-508 \leqq m$
$0 \leqq -11m-5505$
$11m \leqq -5505$
$m \leqq \displaystyle -\frac{5505}{11}$
$m \leqq -500.45...$
$m$は整数なので、
$m \leqq -501$
より、
$-508\leqq m\leqq -501$
となるので、解は8組ある。
解答テ:8
最後に、この8組の解のうち$x$が最小になるものを探す。
式Pより
$x=13m+6606$
なので、$x$が最小になるのは、$m$が最小のとき。
よって、式Pに$m=-508$を代入して、
$x=13 \cdot (-508)+6606$
$x$$=2$
$y=-11 \cdot (-508)-5505$
$y$$=83$
が求める解である。
解答ト:2, ナ:8, ニ:3