大学入学共通テスト 2021年(令和3年) 本試 数学ⅡB 第1問 [1] 解説
(1)
まず、三角関数の合成について考えておこう。
アドバイス
問題Aの関数のような式のとき、右のような図を描いて、機械的に
$\displaystyle \sin\theta+\sqrt{3}\cos\theta=2\sin\left(\theta+\frac{\pi}{3}\right)$
ってすることが多い。
けれど、今回は(2)で$\cos$に合成しないといけないし、原理から解いてみる。
ただし、この方法は時間がかかるので、考え方だけ知っておけばよい。
共通テスト本番では上のように機械的に解く方がおすすめだ。
問題Aの関数と加法定理の公式を並べてみる。
$y$ | $=$ | $\textcolor{deeppink}{1} \textcolor{seagreen}{\sin\theta}$ | $+$ | $\textcolor{darkorange}{\sqrt{3}} \textcolor{seagreen}{\cos\theta}$ | 式A |
$\sin(\theta+\alpha)$ | $=$ | $\textcolor{seagreen}{\sin\theta} \textcolor{deeppink}{\cos\alpha}$ | $+$ | $\textcolor{seagreen}{\cos\theta} \textcolor{darkorange}{\sin\alpha}$ | 式B |
ふたつの式を見比べると、緑の部分は等しい。
なので、もし 赤とオレンジの部分も等しくて
$\textcolor{deeppink}{\cos\alpha}=\textcolor{deeppink}{1}$ | 式C | |
$\textcolor{darkorange}{\sin\alpha}=\textcolor{darkorange}{\sqrt{3}}$ |
なら、式A$=$式Bになって、
$y=\sin(\theta+\alpha)$
とかける。
だけど、式Cだと、$\sin^{2}\alpha+\cos^{2}\alpha$が
$\textcolor{deeppink}{1}^{2}+\textcolor{darkorange}{\sqrt{3}}^{2}=4$式D
となり、$1$にならないからありえない値だ。
あり得ない値は困るので、何とかしよう。
式Dが$=1$になればいいので、式Dの両辺を$4$で割る。
すると、
$\displaystyle \frac{1^{2}}{4}+\frac{\sqrt{3}^{2}}{4}=\frac{4}{4}$
より
$\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^{2}+\left( \frac{\sqrt{3}}{2} \right)^{2}=1$
なので、
$\displaystyle \textcolor{deeppink}{\cos\alpha}=\textcolor{deeppink}{\frac{1}{2}}$ | 式C' | |
$\displaystyle \textcolor{darkorange}{\sin\alpha}=\textcolor{darkorange}{\frac{\sqrt{3}}{2}}$ |
なら、あり得る値であることが分かる。
このとき、式Bは
$\displaystyle \sin(\theta+\alpha)=\textcolor{deeppink}{\frac{1}{2}} \textcolor{seagreen}{\sin\theta}+\textcolor{darkorange}{\frac{\sqrt{3}}{2}}\textcolor{seagreen}{\cos\theta}$式B'
とかけるけど、式Aと見比べると、赤い部分もオレンジの部分も式Aの半分で等しくない。
ふたつの式が等しくないと困るので、何とかしよう。
赤い部分もオレンジの部分も半分になったのなら、$2$をかければよい。
式B'の両辺に$2$をかけると
$\displaystyle 2\sin(\theta+\alpha)=2\left(\textcolor{deeppink}{\frac{1}{2}} \textcolor{seagreen}{\sin\theta}+\textcolor{darkorange}{\frac{\sqrt{3}}{2}}\textcolor{seagreen}{\cos\theta}\right)$
式B''
となって、これなら式Aと同じ式だ。
以上より、式C'のとき、つまり
$\displaystyle \alpha=\frac{\pi}{3}$
のとき、式A$=$式B''より、問題Aの関数は
$y=2\sin(\theta +\alpha)$
$\phantom{y}=\displaystyle 2\sin\left(\theta +\frac{\pi}{3} \right)$
と変形できる。
解答ア:3, イ:2
この関数の最大を求める。
$\displaystyle \theta+\frac{\pi}{3}=A$式E
とおくと、問題の関数は
$y=2\sin A$
とかける。
問題文にある$\theta$の定義域の各辺に$\displaystyle \frac{\pi}{3}$をたすと
$\displaystyle \frac{\pi}{3}\leqq\theta+\frac{\pi}{3}\leqq\frac{\pi}{2}+\frac{\pi}{3}$
より
$\displaystyle \frac{\pi}{3}\leqq A\leqq\frac{5\pi}{6}$
となるから、$A$の定義域は図Aの緑の部分だ。
このとき、$2\sin A$が最大になるのは、図中の赤い点で
$A=\displaystyle \frac{\pi}{2}$
のとき。
これを$\theta$で表すと、式Eより
$\displaystyle \theta+\frac{\pi}{3}=\frac{\pi}{2}$
$\displaystyle \theta=\frac{\pi}{6}$
のとき。
解答ウ:6
最大値は、
$2\displaystyle \sin\frac{\pi}{2}=2$
である。
解答エ:2
(2) (i)
$p=0$のとき、問題Bの関数は
$ y=\sin\theta$
となる。
定義域は
$0\displaystyle \leqq\theta\leqq\frac{\pi}{2}$
なので、図Bの緑の部分だ。
このとき、$\sin\theta$が最大になるのは、図中の赤い点で
$\displaystyle \theta=\frac{\pi}{2}$
のとき。
解答オ:2
最大値は
$\displaystyle \sin\frac{\pi}{2}=1$
である。
解答カ:1
(2) (ii)
(1)と同様に考える。
問題Bの関数の項の順序を入れ変えて、加法定理の公式と並べてみる。
$y$ | $=$ | $\textcolor{deeppink}{p} \textcolor{seagreen}{\cos\theta}$ | $+$ | $\textcolor{darkorange}{1} \textcolor{seagreen}{\sin\theta}$ | 式F |
$\cos(\theta-\alpha)$ | $=$ | $\textcolor{seagreen}{\cos\theta} \textcolor{deeppink}{\cos\alpha}$ | $+$ | $\textcolor{seagreen}{\sin\theta} \textcolor{darkorange}{\sin\alpha}$ | 式G |
ふたつの式を見比べると、緑の部分は等しい。
なので、もし 赤とオレンジの部分も等しくて
$\textcolor{deeppink}{\cos\alpha}=\textcolor{deeppink}{p}$ | 式H | |
$\textcolor{darkorange}{\sin\alpha}=\textcolor{darkorange}{1}$ |
なら、ふたつの式は完全に等しくなって、
$y=\cos(\theta-\alpha)$
とかける。
だけど、式Hだと、$\sin^{2}\alpha+\cos^{2}\alpha$が
$\textcolor{deeppink}{p}^{2}+\textcolor{darkorange}{1}^{2}=1+p^{2}$式I
となって、$1$にならないからありえない値だ。
あり得ない値は困るので、何とかしよう。
式Iが$=1$になればいいので、式Iの両辺を$1+p^{2}$で割る。
すると、
$\displaystyle \frac{p^{2}}{1+p^{2}}+\frac{1^{2}}{1+p^{2}}=\frac{1+p^{2}}{1+p^{2}}$
より
$\displaystyle \left( \frac{p}{\sqrt{1+p^{2}}} \right)^{2}+\left( \frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}} \right)^{2}=1$
なので、
$\displaystyle \textcolor{deeppink}{\cos\alpha}=\textcolor{deeppink}{\frac{p}{\sqrt{1+p^{2}}}}$ | 式H' | |
$\displaystyle \textcolor{darkorange}{\sin\alpha}=\textcolor{darkorange}{\frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}}}$ |
なら、あり得る値であることが分かる。
このとき、式Gは
$\displaystyle \cos(\theta-\alpha)=\textcolor{deeppink}{\frac{p}{\sqrt{1+p^{2}}}} \textcolor{seagreen}{\sin\theta}+\textcolor{darkorange}{\frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}}}\textcolor{seagreen}{\cos\theta}$
式G'
となるけど、式Fと見比べると、赤い部分もオレンジの部分も式Fの$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}}$で等しくない。
ふたつの式が等しくないと困るので、何とかしよう。
赤い部分もオレンジの部分も$\displaystyle \frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}}$になったのなら、$\sqrt{1+p^{2}}$をかければよい。
式G'の両辺に$\sqrt{1+p^{2}}$をかけると
$\sqrt{1+p^{2}}\cos(\theta-\alpha)$
$\displaystyle =\sqrt{1+p^{2}}\left(\textcolor{deeppink}{\frac{p}{\sqrt{1+p^{2}}}} \textcolor{seagreen}{\sin\theta}+\textcolor{darkorange}{\frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}}}\textcolor{seagreen}{\cos\theta}\right)$
式G''
となって、これなら式Fと同じ式だ。
式F$=$式G''より、問題Bの関数は
$y=\sqrt{1+p^{2}}\cos(\theta-\alpha)$式J
と変形できる。
解答キ:9
このとき、式H'より、
$\displaystyle \sin\alpha=\frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}}$ | |
$\displaystyle \cos\alpha=\frac{p}{\sqrt{1+p^{2}}}$ |
である。
解答ク:1, ケ:3
この$\alpha$は、$0\lt\sin\alpha$,$0\lt\cos\alpha$なので、
$0 \lt \displaystyle \alpha \lt \frac{\pi}{2}$
の範囲に入る角だ。
さらに、式Jの最大を求める。
$\theta-\alpha=A$式K
とおくと、式Jは
$y=\sqrt{1+p^{2}}\cos A$式J'
とかける。
$p$は定数なので、式J'が最大になるのは$\cos A$が最大のとき。
$A$の定義域は、$\theta$の定義域の各辺から$\alpha$を引いて、
$-\displaystyle \alpha\leqq\theta-\alpha\leqq\frac{\pi}{2}-\alpha$
より
$-\displaystyle \alpha\leqq A\leqq-\alpha+\frac{\pi}{2}$式L
となる。
さっき考えたように、$\alpha$は
$0 \lt \displaystyle \alpha \lt \frac{\pi}{2}$
なので、$A$の定義域は図Cのような感じだ。
つまり、$0$を含んだ$90^{\circ}$の範囲になる。
詳しく
さっき考えたように、$\alpha$は
$0 \lt \displaystyle \alpha \lt \frac{\pi}{2}$
なので、
$0 \gt \displaystyle -\alpha \gt -\frac{\pi}{2}$
である。
なので、式Lの左辺の$-\alpha$は、
$-90^{\circ}$~$0^{\circ}$
の範囲にあるから、第四象限の角だ。
また、式Lの右辺の$\displaystyle -\alpha+\frac{\pi}{2}$は、$-\alpha$に$90^{\circ}$をたした角。
よって、$A$の範囲は、第四象限に始まって、そこから$90^{\circ}$の範囲なので、図Cの緑の範囲のようになる。
このとき、$\cos A$が最大になるのは 図中の赤い点で、
$A=0$
のとき。
これを$\theta$で表すと、式Kより
$\theta-\alpha=0$
$\theta=\alpha$
のとき。
解答コ:1
最大値は、式J'に$A=0$を代入した
$\sqrt{1+p^{2}}\cos 0=\sqrt{1+p^{2}}$
である。
解答サ:9
(2) (iii)
(ii)と違うのは$A$の定義域だけで、
問題Bの関数を
$y=\sqrt{1+p^{2}}\cos(\theta-\alpha)$式J
と変形し、さらに
$ A=\theta-\alpha$式K
とおいて
$y=\sqrt{1+p^{2}}\cos A$式J'
$-\displaystyle \alpha\leqq A\leqq-\alpha+\frac{\pi}{2}$式L
とするところまでは全く同じだ。
$p \lt 0$のときの$\alpha$がどんな角度か考えると、
式H'(キクケ)より
$\displaystyle \sin\alpha=\frac{1}{\sqrt{1+p^{2}}} \gt 0$ | |
$\displaystyle \cos\alpha=\frac{p}{\sqrt{1+p^{2}}} \lt 0$ |
なので、
$\displaystyle \frac{\pi}{2} \lt \alpha \lt \pi$
であることが分かる。
よって、式Lの$A$の定義域は、図Dのような感じだ。
詳しく
$\displaystyle \frac{\pi}{2} \lt \alpha \lt \pi$
なので、
$\displaystyle -\frac{\pi}{2} \gt -\alpha \gt -\pi$
である。
なので、式Lの左辺の$-\alpha$は、
$-180^{\circ}$~$-90^{\circ}$
の範囲にあるから、第三象限の角だ。
また、式Lの右辺の$\displaystyle -\alpha+\frac{\pi}{2}$は、$-\alpha$に$90^{\circ}$をたした角。
よって、$A$の範囲は、第三象限に始まって、そこから$90^{\circ}$の範囲なので、図Dの緑の範囲のようになる。
このとき、$\cos A$が最大になるのは 図中の赤い点で、
$A=-\displaystyle \alpha+\frac{\pi}{2}$
のとき。
$\theta$で表すと、式Kより
$\displaystyle \theta-\alpha=-\alpha+\frac{\pi}{2}$
$\displaystyle \theta=\frac{\pi}{2}$
のとき。
よって、問題Bの関数が最大になるのは
$\displaystyle \theta=\frac{\pi}{2}$
のときで、最大値は、問題Bの関数に$\displaystyle \theta=\frac{\pi}{2}$を代入した
$\displaystyle \sin\frac{\pi}{2}+p\cos\frac{\pi}{2}=1+p\cdot 0$
$=1$
である。
解答シ:2, ス:1