大学入学共通テスト 2021年(令和3年) 本試 数学ⅠA 第3問 解説

はじめに

事象の名前がいろいろ出てくるから、最初に整理しておく。

Wは、3回くじをひいて1回当たる事象

Aは、箱Aが選ばれる事象

Bは、箱Bが選ばれる事象

Cは、箱Cが選ばれる事象

Dは、箱Dが選ばれる事象

を表す。

(1)

(i)

はじめは、普通の反復試行の確率だ。

当たり率12の箱Aで3回中1回当たる確率、
つまり箱Aで事象Wが起こる確率を①とすると、
=(12)(112)2×3!2!
または
=(12)(112)2×3C1
とかける。

これを計算して、
=(12)3×32121
   =38
である。

解答ア:3, イ:8

また、当たり率13の箱Bで3回中1回当たる確率、
つまり箱Bで事象Wが起こる確率を②とすると、
=(13)(113)2×3!2!
または
=(13)(113)2×3C1
とかける。

これを計算して、
=(13)(113)2×32121
   =13(23)23
   =49
である。

解答ウ:4, エ:9

(ii)

まず、条件付き確率の復習をしておこう。

復習

Wが起こったときにAが起こる条件付き確率PW(A)とは、
Wが起こった場合を全事象としたときの、Aが起こる確率のことである。

復習

Wが起こる確率をP(W)WAの両方が起こる確率をP(AW)とするとき、
Wが起こったときにAが起こる条件付き確率PW(A)は、
PW(A)=P(AW)P(W)
である。

ということで、PW(A)PW(B)を求めるために、
P(AW)P(BW)P(W)
を求めよう。


まず、
P(AW)
AWが両方起こる確率
=箱Aが選ばれ、3回中1回当たる確率
P(BW)
BWが両方起こる確率
=箱Bが選ばれ、3回中1回当たる確率
を考える。

箱は無作為に選ぶので、どちらの箱も同じ確率で選ばれる。
なので、事象AB
12
の確率で起こる。

よって、P(AW)は、
P(AW)=12×
P(AW)=328式A
となる。

同様に、P(BW)は、
P(BW)=12×
P(BW)=429式B
である。


次は、事象Wが起こる確率P(W)だ。

Wが起こるのは、
箱AでWが起こる(AW 箱BでWが起こる(BW の2パターンしかない。
なので、
P(W)=P(AW)+P(BW)
とかける。

これに式A,式Bを代入すると、
P(W)=328+429

途中式 P(W)=12(38+49)
P(W)=1227+3289
P(W)=59289式C
となる。


復習より、PW(A)は、
PW(A)=P(AW)P(W)
とかける。
これに式A,式Cを代入して、
PW(A)=32859289式D

途中式 PW(A)=3599=3959
PW(A)=2759
である。

解答オ:2, カ:7, キ:5, ク:9

同様に、PW(B)
PW(B)=P(BW)P(W)
とかける。
これに式B,式Cを代入して、
PW(B)=42959289式E

途中式 PW(B)=4598=4859
PW(B)=3259
となる。

解答ケ:3, コ:2, サ:5, シ:9

ケコサシの別解

復習より、 PW(A)は、Wが起こった場合を全事象としたときの、Aが起こる確率 PW(B)は、Wが起こった場合を全事象としたときの、Bが起こる確率 のこと。

上にも書いたけど、事象Wが起こるのは、
箱Aで事象Wが起こる(AW 箱Bで事象Wが起こる(BW の2パターンしかない。

なので、PW(A)+PW(B)は全事象だから、
PW(A)+PW(B)=1
である。

これにオカキクを代入して、
2759+PW(B)=1
より
PW(B)=12759
PW(B)=3259
となる。

解答ケ:3, コ:2, サ:5, シ:9

(2)

見比べやすいように、PW(A)PW(B),①,②を並べて書いてみよう。

式Dより、
PW(A)=123859289
式Eより、
PW(B)=124959289

より、
=38
より、
=49
見比べると、
PW(A)の赤い部分は① PW(B)の青い部分は② であることが分かる。

よって、PW(A)PW(B)の比は、
PW(A):PW(B)=1259289:1259289
PW(A):PW(B)=:
となる。
以上より、PW(A)PW(B)の比は①と②の比に等しい。

解答ス:3

(3)

(1)(ii)と同様に考えよう。

(1)(i)より、
箱AでWが起こる確率①は、
=38
箱BでWが起こる確率②は、
=49
だった。

また、当たり率14の箱CでWが起こる確率を③とすると、
=(14)(114)2×32121

途中式    =14(34)23
   =3343
   =3326
である。


どの箱も、選ばれる確率は
13
なので、
P(AW)=13×
P(AW)=338式F
P(BW)=13×
P(BW)=439
P(CW)=13×
P(CW)=33326
とかける。

よって、事象Wが起こる確率P(W)
P(W)=P(AW)+P(BW)+P(CW)
より
P(W)=13(38+49+3326)
P(W)=13(38+49+3382)
となるけど、8982の最小公倍数は829なので、()内を通分して、
P(W)=13×389+482+339829
P(W)=7153829式G
である。

以上より、求める条件付き確率PW(A)は、
PW(A)=P(AW)P(W)
に式F,式Gを代入して、
PW(A)=3387153829

途中式 PW(A)=371589
PW(A)=3×89715
PW(A)=216715
となる。

解答セ:2, ソ:1, タ:6, チ:7, ツ:1, テ:5

別解

ちょっとフライング気味だけど、事実(*)を使うと次のようになる。

事実(*)より、
PW(A):PW(B):PW(C)=::
と考えられる。

また、
PW(A)+PW(B)+PW(C)=1
である。

このふたつの式から、
PW(A)=++式H
と表せる。

あとは計算だ。

=38 =49
=3326
   =3382
なので、式Hは、
PW(A)=3838+49+3382
とかける。

分母分子に8982の最小公倍数829をかけて、求める確率は
PW(A)=38×829(38+49+3382)×829=3×893×89+4×82+33×9=216715 となる。

解答セ:2, ソ:1, タ:6, チ:7, ツ:1, テ:5

(4)

最後は、Wが起こったとき、選んだ可能性が高い順に箱を並べる問題だ。

Wが起こったとき、選んだ箱が
Aである確率PW(A) Bである確率PW(B) Cである確率PW(C) Dである確率PW(D) の4つの確率を大きい順に並べて、対応する箱を考えれば答えが出る。

ただし、大小関係だけ分かればいいので、それぞれの確率を正直に求める必要はない。
箱DでWが起こる確率を④とすると、事実(*)より、
PW(A) : PW(B) : PW(C) : PW(D)
= :  :  : 
となる。
この性質を使って、PW(A)PW(D)の代わりに①~④を大きい順に並べる。


これまでの計算から、
=38
=49
=3382
であるのは分かっている。

また、④は 当たり率15の箱Dで事象Wが起こる確率なので、
=(15)(115)×32121
   =15(45)23
   =42353
である。


①~④は分母がばらばらの分数なので、そのままでは比較ができない。
比較するためには、
小数にする 分母をそろえる(通分する) 分子をそろえる の3つの方法が考えられるけど、分母や分子をそろえるのは数が大きくなって結構大変だ。
大小関係だけ分かればいいので、ここでは少数にして比較する。

=38
   =3÷8
   =0.375
=49
   =4÷9
   =0.4˙

=3382
   =27÷64
   0.42
=42353
   =48÷125
   =0.384

なので、
>>>
であることが分かる。

よって、可能性が高い順に箱を並べると、
B,C,D,A
となる。

解答ト:8