大学入学共通テスト 2021年(令和3年) 本試 数学ⅠA 第1問 [2] 解説
(1)
$\sin^{2}A+\cos^{2}A=1$なので、
$\sin^{2}A+\left(\frac{3}{5}\right)^{2}=1$
より、
$\displaystyle \sin^{2}A=1-\left(\frac{3}{5}\right)^{2}$
途中式
$\displaystyle \sin^{2}A$$\displaystyle =\frac{5^{2}-3^{2}}{5^{2}}$
$\displaystyle \sin^{2}A$$\displaystyle =\frac{4^{2}}{5^{2}}$
$0 \lt \sin A$だから
である。
解答セ:4, ソ:5
△ABC、つまり図Aの緑の三角形の面積は、三角形の面積の公式より
緑$=\displaystyle \frac{1}{2}bc\sin A$式B
とかける。
これに$b=6$,$c=5$と式Aを代入して、求める面積は
緑$=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot 6\cdot 5\cdot\frac{4}{5}$
$=12$
である。
解答タ:1, チ:2
次は△AID、つまり図Aの青い三角形の面積だ。
図Aのように$\angle \mathrm{DAI}=A'$とおくと、三角形の面積の公式より、青い三角形の面積は
青$=\displaystyle \frac{1}{2}\cdot \mathrm{AI}\cdot \mathrm{AD}\cdot\sin A'$式C
とかける。
図A中の黄色い四角形は両方とも正方形なので、
$\mathrm{AI}=\mathrm{AC}=b$ | |
$\mathrm{AD}=\mathrm{AB}=\mathrm{c}$ |
である。
また、点Aの周りの角を考えると、
$A+A'+2\times 90^{\circ}=360^{\circ}$
なので、
$A+A'=180^{\circ}$
より
$\sin A'=\sin A$
であることが分かる。
よって、式Cは
青$=\displaystyle \frac{1}{2}bc\sin A$式C'
と変形できる。
式Cの右辺は式Bの右辺と等しい。
なので、$b$,$c$,$A$の値にかかわらず、常に緑と青の三角形の面積は等しい。
以上より、緑の三角形の面積は、タチと同じ
$12$
である。
解答ツ:1, テ:2
(2)
$S_{1}$,$S_{2}$,$S_{3}$は それぞれ一辺が$a$,$b$,$c$の正方形の面積なので、
$S_{1}=a^{2}$ | 式D | |
$S_{2}=b^{2}$ | ||
$S_{3}=c^{2}$ |
とかける。
ここで、三角形の辺と角の大小について復習しておこう。
復習
$A \lt 90^{\circ}$ ⇕ $a^{2} \lt b^{2}+c^{2}$ | $A=90^{\circ}$ ⇕ $a^{2}=b^{2}+c^{2}$ | $A \gt 90^{\circ}$ ⇕ $a^{2} \gt b^{2}+c^{2}$ |
---|---|---|
式Dと復習より、
$a^{2} \lt b^{2}+c^{2}$
より、
$a^{2}-b^{2}-c^{2} \lt 0$
なので、
$S_{1}-S_{2}-S_{3} \lt 0$
$a^{2}=b^{2}+c^{2}$
より、
$a^{2}-b^{2}-c^{2}=0$
なので、
$S_{1}-S_{2}-S_{3}=0$
$a^{2} \gt b^{2}+c^{2}$
より、
$a^{2}-b^{2}-c^{2} \gt 0$
なので、
$S_{1}-S_{2}-S_{3} \gt 0$
である。
解答ト:2, ナ:0, ニ:1
(3)
(1)で考えたように、$b$,$c$,$A$の値にかかわらず、常に△ABCと△AIDの面積は等しかった。
つまり、$a$,$b$,$c$の値に関係なく、
$T_{1}=$△ABC
だった。
(1)と同様に考えると、$a$,$b$,$c$の値に関係なく、
$T_{2}=$△ABC
$T_{3}=$△ABC
であることが分かる。
よって、$a$,$b$,$c$の値に関係なく、
$T_{1}=T_{2}=T_{3}$
である。
解答ヌ:3
(4)
まず、$0^{\circ} \lt A \lt 90^{\circ}$のときを考える。
$\angle \mathrm{DAI}=A'$,$\mathrm{ID}=a'$とおくと、例えば図Bのような図形ができる。
このとき、図中の緑と青の三角形の外接円で、どちらが半径が大きいかを調べよう。
(1)で考えたように
$A+A'=180^{\circ}$
なので、
$0^{\circ} \lt A \lt 90^{\circ}$
のとき
$90^{\circ} \lt A' \lt 180^{\circ}$
だ。
このとき、(2)の復習より、
$a^{2} \lt b^{2}+c^{2}$ | |
$a^{\prime 2} \gt b^{2}+c^{2}$ |
だから
$a^{2} \lt a^{\prime 2}$
より
$a \lt a'$式E
であることが分かる。
つまり、
$\mathrm{ID} \gt \mathrm{BC}$
となる。
解答ネ:2
ここからは、
解法1:正弦定理を使った解法
解法2:面積を使った解法
が考えられる。
どちらがお薦めというわけでもないけれど、正弦定理を使う方が一般的かも。
ここでは両方解説する。
解法1:正弦定理を使った解法
緑と青の三角形の外接円の半径をそれぞれ$R$,$R'$とおくと、正弦定理より
$\displaystyle \frac{a}{\sin A}=2R$
より
$a=2R\sin A$
$\displaystyle \frac{a'}{\sin A'}=2R'$
より
$a'=2R'\sin A'$
だけど、(1)で考えたように、
$\sin A'=\sin A$
なので、
$a'=2R'\sin A$
とかける。
このふたつの式を式Eに代入すると、
$2R\sin A \lt 2R'\sin A$
より
$R \lt R'$
となるから、青い三角形の外接円の半径より、緑の三角形の外接円の半径の方が小さいことが分かる。
以上より、
△AIDの外接円の半径 | $ \gt $ | △ABCの外接円の半径 |
である。
解答ノ:2
解法2:面積を使った解法
解説に入る前に、三角形の面積の公式を復習しておこう。
復習
図のような三角形ABCの面積を$S$,内接円の半径を$r$,外接円の半径を$R$とするとき、
$S=\displaystyle \frac{1}{2}ah$
$S=\displaystyle \frac{1}{2}ac\sin\angle B$
$S=\displaystyle \frac{1}{2}r(a+b+c)$
$S=\displaystyle \frac{abc}{4R}$式F
$S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$
ただし、$s=\displaystyle \frac{a+b+c}{2}$
である。
たくさん公式があるけど、今使うのは、外接円の半径$R$が含まれている式Fだ。
解法1と同じく、緑と青の三角形の外接円の半径をそれぞれ$R$,$R'$とおく。
式Fより、図Bの緑と青の三角形の面積を求めると、
緑$=\displaystyle \frac{abc}{4R}$
より
$ 4R\cdot$緑$=abc$
$a=\displaystyle \frac{4R\cdot \text{緑}}{bc}$
青$=\displaystyle \frac{a'bc}{4R'}$
より
$ 4R'\cdot$青$=a'bc$
$a'=\displaystyle \frac{4R'\cdot \text{青}}{bc}$
だけど、
(1)で考えたように、
青$=$緑
なので、
$a'=\displaystyle \frac{4R'\cdot \text{緑}}{bc}$
とかける。
このふたつの式を式Eに代入すると、
$\displaystyle \frac{4R\cdot \text{緑}}{bc} \lt \frac{4R'\cdot \text{緑}}{bc}$
より
$R \lt R'$
となるから、青い三角形の外接円の半径より、緑の三角形の外接円の半径の方が小さいことが分かる。
以上より、
△AIDの外接円の半径 | $ \gt $ | △ABCの外接円の半径 |
である。
解答ノ:2
ネノで分かったことをまとめると、図Cができる。
図Cのような状態の2つの三角形で 外接円の半径を比べると、鋭角側が小さい。
よって、
$0^{\circ} \lt A \lt B \lt C \lt 90^{\circ}$のときの図を描くと、図Dのようになる。
図Dより、外接円の半径が最も小さい三角形は
△ABC
である。
解答ハ:0
$0^{\circ} \lt A \lt B \lt 90^{\circ} \lt C$のときの図を描くと、図Eのようになる。
図Eより、外接円の半径が最も小さい三角形は
△CGH
である。
解答ヒ:3