大学入試センター試験 2014年(平成26年) 本試 数学ⅡB 第5問 解説
(1)
データの代表値
生徒5の英語の得点$\mathrm{A}$は、9人の英語の得点をすべてたすと、平均値の9倍になるから、
$9+20+18+18+\mathrm{A}+18+14+15+18=16\cdot 9$
$\mathrm{A}=14$
である。
解答ア:1, イ:4
復習
まず、分散の復習をしよう。
分散$s^{2}$は、
データの大きさを$n$
それぞれのデータを$x_{1},\ x_{2},\ x_{3},\ \ldots\ x_{n}$
平均値を$\overline{x}$
としたとき、
$s^{2}=\displaystyle \frac{1}{n}\left\{(x_{1}-\overline{x})^{2}+(x_{2}-\overline{x})^{2}+(x_{3}-\overline{x})^{2}+\right.$
$\left.\cdots+(x_{n}-\overline{x})^{2}\right\}$式A
$s^{2}$$=\overline{x^{2}}-\left(\overline{x}\right)^{2}$式B
だった。
分散と標準偏差
今回は英語の得点も2ケタが多いし、2乗して平均値を出すのは大変なので、式Bよりも式Aを使った方が計算が楽。
よって、
$\displaystyle \mathrm{B}=\frac{1}{9}\{(9-16)^{2}+(20-16)^{2}+(18-16)^{2}$
$+(18-16)^{2}+(14-16)^{2}+(18-16)^{2}$
$+(14-16)^{2}+(15-16)^{2}+(18-16)^{2}\}$
$\mathrm{B}$$=10$
解答ウ:1, エ:0, オ:0, カ:0
$\mathrm{C}$と$\mathrm{D}$については、
$\mathrm{A}$を求めた方法と同様に、
$15+20+14+17+8+\mathrm{C}+\mathrm{D}+14+15=15\cdot 9$
$\mathrm{C}+\mathrm{D}=32$式C
解答キ:3, ク:2
次は相関係数から$\mathrm{C}$と$\mathrm{D}$の関係式を作るのだけれど、その前にちょっと復習をしておこう。
復習
相関係数とは、
まず、共分散を$s_{xy}$とすると、
$s_{xy}=\displaystyle \frac{1}{n}\{(x_{1}-\overline{x})(y_{1}-\overline{y})+(x_{2}-\overline{x})(y_{2}-\overline{y})$+
$\cdots+(x_{n}-\overline{x})(y_{n}-\overline{y})\}$式D
$s_{xy}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}x_{k}\cdot y_{k}-\overline{x}\cdot\overline{y}$
この共分散$s_{xy}$を、$x,\ y$それぞれの標準偏差の積で割った、
$r_{xy}=\displaystyle \frac{s_{xy}}{s_{x}\cdot s_{y}}$式E
が相関係数だった。
復習
標準偏差$s$は、分散を$s^{2}$とすると、
$s=\sqrt{s^{2}}$式F
だった。
式D中の$(x_{?}-\overline{x})$,$(y_{?}-\overline{y})$は値(この場合は得点)から平均値(この場合は平均点)を引いたものだけど、これを「偏差」という。
それぞれの生徒の英語と数学の偏差を求め、その積(これを偏差の交差積という)の平均値を求めると、これが共分散だ。
分かりやすいように、計算を表Aにまとめた。
共分散$S_{xy}$は、表Aの右端の列の平均値。
なので、
$S_{xy}=\displaystyle \frac{1}{9}\{20-2+4+14$
$+2(\mathrm{C}-15)-2(\mathrm{D}-15)+1\}$
$S_{xy}=\displaystyle \frac{1}{9}(2\mathrm{C}-2\mathrm{D}+37)$式G
得点 | 偏差 | ||||
英語 | 数学 | 英語 | 数学 | 交差積 | |
$x$ | $y$ | $x-\overline{x}$ | $y-\overline{y}$ | $(x-\overline{x})(y-\overline{y})$ | |
生徒1 | 9 | 15 | $-7$ | $0$ | $0$ |
生徒2 | 20 | 20 | $4$ | $5$ | $20$ |
生徒3 | 18 | 14 | $2$ | $-1$ | $-2$ |
生徒4 | 18 | 17 | $2$ | $2$ | $4$ |
生徒5 | 14 | 8 | $-2$ | $-7$ | $14$ |
生徒6 | 18 | C | $2$ | $\mathrm{C}-15$ | $2(\mathrm{C}-15)$ |
生徒7 | 14 | D | $-2$ | $\mathrm{D}-15$ | $-2(\mathrm{D}-15)$ |
生徒8 | 15 | 14 | $-1$ | $-1$ | $1$ |
生徒9 | 18 | 15 | $2$ | $0$ | $0$ |
また、各教科の標準偏差は、
式Eより、
英語は、$s_{x}=\sqrt{10}$
数学も、$s_{y}=\sqrt{10}$
なので、式Eより、相関係数$r_{xy}$は
$r_{xy}=\displaystyle \frac{\frac{1}{9}(2\mathrm{C}-2\mathrm{D}+37)}{\sqrt{10}\cdot\sqrt{10}}$
$r_{xy}\displaystyle $$\displaystyle =\frac{2\mathrm{C}-2\mathrm{D}+37}{90}$
である。
これが$0.500$になればいいので、
$\displaystyle \frac{2\mathrm{C}-2\mathrm{D}+37}{90}=0.500$
$2\mathrm{C}-2\mathrm{D}+37=0.500\times 90$
$2\mathrm{C}-2\mathrm{D}+37$$=45$
$2\mathrm{C}-2\mathrm{D}=8$
$\mathrm{C}-\mathrm{D}=4$式H
となる。
解答ケ:4
式Cと式Hから、
$\left\{\begin{array}{l}
\mathrm{C}+\mathrm{D}=32\\
\mathrm{C}-\mathrm{D}=4
\end{array}\right.$
両辺たして、
$2\mathrm{C}=36$
$\mathrm{C}=18$
解答コ:1, サ:8
これを式Cに代入して、
$18+\mathrm{D}=32$
$\mathrm{D}=14$
となる。
解答シ:1, ス:4
これで得点表が完成できた。
英語 | 数学 | |
生徒1 | 9 | 15 |
生徒2 | 20 | 20 |
生徒3 | 18 | 14 |
生徒4 | 18 | 17 |
生徒5 | 14 | 8 |
生徒6 | 18 | 18 |
生徒7 | 14 | 14 |
生徒8 | 15 | 14 |
生徒9 | 18 | 15 |
平均値 | 16.0 | 15.0 |
分散 | 10.00 | 10.00 |
相関係数 | 0.500 |
(2)
相関関係
図Cの4つの相関図を見ると、黒い点はどの図でも同じ位置にあるけれど、赤い点の場所が違う。
なので、赤い点の確認をしよう。
まず、図中、5の赤い点を確認する。
$y$座標(数学の得点)は8で共通なので、表Bと見比べると、この点は生徒5を表している。
生徒5の英語の得点は14なので、1・2は正しくない。
残りの0・3で、7の赤い点を見ると、$x$座標(英語の得点)は14で共通なので、この点は生徒7を表している。
生徒7の英語の得点は14なので、3は正しくない。
以上より0が正しいと考えられるけど、一応一つ残った赤い点も確認しておこう、
この点は英語の得点が18なので、生徒3・4・6・9のどれか。
数学の得点から、生徒3・4・9は黒い点だと分かるから、赤い点は生徒6のデータだ。
生徒6の数学の得点は18なので、0の相関図は正しい。
解答セ:0
(3)
表Bより、生徒1~9の9人の英語の平均値が16なので、この9人の得点の和は
$16\times 9$
これに生徒10の英語の得点をたして、人数の10で割ればいいので、10人の平均値は
$\displaystyle \frac{16\cdot 9+6}{10}=15$
解答ソ:1, タ:5, チ:0
表Bより、生徒1~9の9人の数学の平均値が15なので、この9人の得点の和は
$15\times 9$
問題中の表より、生徒1~10の10人の数学の平均値が14なので、この10人の得点の和は
$14\times 10$
なので、生徒10の数学の得点$\mathrm{F}$は、
$\mathrm{F}=14\times 10-15\times 9$
$\mathrm{F}$$=5$
解答ツ:5
(4)
転出後、英語も数学も平均点が変わってないので、転出した生徒の得点は英語も数学も10人の平均点ちょうどだったはず。
この条件に当てはまるのは、生徒8。
解答テ:8
ここで、次の問題に入る前に、表Dを見てほしい。表中、すべての生徒の偏差とか偏差2とか偏差の積とか入力してるけど、問題を解くのには必要ない。
英語の偏差2の合計(い)だけど、生徒8の偏差は0なので、10人全部の合計も、生徒8が転出した後の9人の合計も、値は変わらない。
同様に、(う)も(え)も、10人のときも9人のときも値は変わらない。
このことを頭に入れて、問題を解いてみよう。
英語 | 数学 | 2教科 の偏差 の積 |
|||||
生徒 | 得 点 |
偏 差 |
偏差2 | 得 点 |
偏 差 |
偏差2 | |
1 | 9 | -6 | 36 | 15 | 1 | 1 | -6 |
2 | 20 | 5 | 25 | 20 | 6 | 36 | 30 |
3 | 18 | 3 | 9 | 14 | 0 | 0 | 0 |
4 | 18 | 3 | 9 | 17 | 3 | 9 | 9 |
5 | 14 | -1 | 1 | 8 | -6 | 36 | 6 |
6 | 18 | 3 | 9 | 18 | 4 | 16 | 12 |
7 | 14 | -1 | 1 | 14 | 0 | 0 | 0 |
8 | 15 | 0 | 0 | 14 | 0 | 0 | 0 |
9 | 18 | 3 | 9 | 15 | 1 | 1 | 3 |
10 | 6 | -9 | 81 | 5 | -9 | 81 | 81 |
合計 | (い) | (う) | (え) | ||||
平均 | 15.0 | 14.0 |
10人の英語の得点の分散$v$は、
$v=\displaystyle \frac{(\text{い})}{10}$式I
9人の得点の分散$v'$は、
$v'=\displaystyle \frac{(\text{い})}{9}$式J
よって、
$\displaystyle \frac{v'}{v}=\frac{\frac{(\text{い})}{9}}{\frac{(\text{い})}{10}}$
分母分子を$10\times 9$倍して
$\displaystyle \frac{v'}{v}$$\displaystyle =\frac{10(\text{い})}{9(\text{い})}$
$\displaystyle \frac{v'}{v}$$\displaystyle =\frac{10}{9}$
である。
解答ト:4
相関係数を考えるために、まず共分散から考えよう。
共分散は2教科の偏差の積の平均なので、表Dの(え)を人数で割ったもの。
なので、
10人の共分散$S_{xy}$は、
$S_{xy}=\displaystyle \frac{(\text{え})}{10}$
残った9人の共分散$S_{xy}'$は、
$S_{xy}'=\displaystyle \frac{(\text{え})}{9}$
英語について、10人の標準偏差を$s_{x}$、9人の標準偏差を$s_{x}'$とすると、式I・Jより、
$s_{x}=\displaystyle \sqrt{\frac{(\text{い})}{10}}=\frac{\sqrt{(\text{い})}}{\sqrt{10}}$
$s_{x}'=\displaystyle \sqrt{\frac{(\text{い})}{9}}=\frac{\sqrt{(\text{い})}}{3}$
数学の10人の標準偏差を$s_{y}$、9人の標準偏差を$s_{y}'$とすると、英語と同様の計算をして、
$s_{y}=\displaystyle \frac{\sqrt{(\text{う})}}{\sqrt{10}}$
$s_{y}'=\displaystyle \frac{\sqrt{(\text{う})}}{3}$
以上より、10人の相関係数$r$、9人の相関係数$r'$は、
$r=\displaystyle \frac{\frac{(\text{え})}{10}}{\frac{\sqrt{(\text{い})}}{\sqrt{10}}\cdot\frac{\sqrt{(\text{う})}}{\sqrt{10}}}=\frac{(\text{え})}{\sqrt{(\text{い})\cdot(\text{う})}}$
$r'=\displaystyle \frac{\frac{(\text{え})}{9}}{\frac{\sqrt{(\text{い})}}{3}\cdot\frac{\sqrt{(\text{う})}}{3}}=\frac{(\text{え})}{\sqrt{(\text{い})\cdot(\text{う})}}$
となるので、
$\displaystyle \frac{r'}{r}=1$
である。
解答ナ:1