大学入試センター試験 2012年(平成24年) 本試 数学ⅠA 第3問 解説

ア~サ

図A
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図A

図Aのように、点Aから辺BCに垂線を下ろし、その足をDとすると、△ABCは二等辺三角形なので、
$\mathrm{BD}=\mathrm{CD}=1$
である。

直角三角形ABDにおいて、
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{ABD}=\frac{\mathrm{B}\mathrm{D}}{\mathrm{A}\mathrm{B}}$
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{ABD}$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
である。

解答ア:1, イ:3

アドバイス

センター試験では、直角三角形を見つけて辺の比から三角比を求めたり、三角比から辺の比を求めたりすることがよくある。
図の中に直角三角形が見えないか、気をつける習慣をつけておこう。
直角三角形の存在に気づかなければ、仕方がないので、別解のように手間のかかる余弦定理を使うことになる。

別解

三辺が分かっていて$\cos$を求めるので、余弦定理より、
$\mathrm{AC}^{2}=\mathrm{AB}^{2}+\mathrm{BC}^{2}-2\mathrm{AB}\cdot \mathrm{BC}\cdot\cos\angle \mathrm{ABC}$
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{ABC}=\frac{\mathrm{A}\mathrm{B}^{2}+\mathrm{B}\mathrm{C}^{2}-\mathrm{A}\mathrm{C}^{2}}{2\mathrm{A}\mathrm{B}\cdot \mathrm{B}\mathrm{C}}$
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{ABC}$$\displaystyle =\frac{3^{2}+2^{2}-3^{2}}{2\cdot 3\cdot 2}$
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{ABC}$$\displaystyle =\frac{2^{2}}{2\cdot 3\cdot 2}$
$\displaystyle \cos\angle \mathrm{ABC}$$\displaystyle =\frac{1}{3}$
となる。

解答ア:1, イ:3


$\cos\angle \mathrm{ABC}$から$\sin\angle \mathrm{ABC}$の変換は、$\sin^{2}\theta+\cos^{2}\theta=1$を使うと、
$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}+\cos^{2}\angle \mathrm{ABC}=1$より、
$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}+\left(\frac{1}{3}\right)^{2}=1$
$\sin^{2}\angle \mathrm{ABC}=1-\left(\frac{1}{3}\right)^{2}$
$\displaystyle \sin^{2}\angle \mathrm{ABC}$$\displaystyle =\frac{8}{3^{2}}$
$0 \lt \sin\angle \mathrm{ABC}$なので、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{ABC}=\frac{\sqrt{8}}{3}=\frac{2\sqrt{2}}{3}$
である。

解答ウ:2, エ:2, オ:3

別解

$\sin\angle \mathrm{ABC}$は図Aを使って図形的に求めることもできるけど、計算は上の解説の方法とあまり変わらない。

図Aにおいて、三平方の定理より、
$\mathrm{AD}^{2}+\mathrm{BD}^{2}=\mathrm{AB}^{2}$
$\mathrm{AD}^{2}+1^{2}=3^{2}$
$\mathrm{AD}^{2}=8$
$0 \lt \mathrm{AD}$なので、
$\mathrm{AD}=2\sqrt{2}$

直角三角形ABDにおいて、
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{ABD}=\frac{\mathrm{A}\mathrm{D}}{\mathrm{A}\mathrm{B}}$
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{ABD}$$\displaystyle =\frac{2\sqrt{2}}{3}$
である。

解答ウ:2, エ:2, オ:3


△ABCの面積を求める方法はいくつかあるので、ついでに復習しておこう。

復習

大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図

図のような三角形$\mathrm{ABC}$の面積を$S$,内接円の半径を$r$,外接円の半径を$R$とするとき、
$S=\displaystyle \frac{1}{2}\mathrm{a}h$ $S=\displaystyle \frac{1}{2}ac\sin\angle \mathrm{B}$ $S=\displaystyle \frac{1}{2}r(a+b+c)$ $S=\displaystyle \frac{abc}{4R}$ $S=\sqrt{s(s-a)(s-b)(s-c)}$
ただし、$s=\displaystyle \frac{a+b+c}{2}$
(ヘロンの公式)
である。

問題の流れを考えると出題者の意図は2番目の$S=\displaystyle \frac{1}{2}ac\sin\angle \mathrm{B}$なので、それを使おう。他の方法は別解を見てほしい。

$\displaystyle \triangle \mathrm{ABC}=\frac{1}{2}\cdot \mathrm{AB}\cdot \mathrm{BC}\cdot\sin\angle \mathrm{ABC}$より、
$\displaystyle \triangle \mathrm{ABC}=\frac{1}{2}\cdot 3\cdot 2\cdot\frac{2\sqrt{2}}{3}$
$\triangle \mathrm{ABC}$$=2\sqrt{2}$
となる。

解答カ:2, キ:2

別解1

ウエオを別解で求めた場合、すでにADの長さが分かっている。三角形の底辺も高さも分かっているので、復習の1番目の公式、$S=\displaystyle \frac{1}{2}ah$が使える。

$\displaystyle \triangle \mathrm{ABC}=\frac{1}{2}\cdot \mathrm{BC}\cdot \mathrm{AD}$より、
$\displaystyle \triangle \mathrm{ABC}=\frac{1}{2}\cdot 2\cdot 2\sqrt{2}$
$\triangle \mathrm{ABC}$$=2\sqrt{2}$
となる。

解答カ:2, キ:2

別解2

ちょっとトリッキーだけど、△ABCの三辺の和は偶数だ。なので、ヘロンの公式を使っても面倒な計算にはならない。

$s=\displaystyle \frac{\mathrm{A}\mathrm{B}+\mathrm{B}\mathrm{C}+\mathrm{C}\mathrm{A}}{2}$
$s\displaystyle $$\displaystyle =\frac{3+2+3}{2}$
$s$$=4$
とすると、ヘロンの公式より、
$\triangle \mathrm{ABC}=\sqrt{s(s-\mathrm{A}\mathrm{B})(s-\mathrm{B}\mathrm{C})(s-\mathrm{C}\mathrm{A})}$
$\triangle \mathrm{ABC}$$=\sqrt{4(4-3)(4-2)(4-3)}$
$\triangle \mathrm{ABC}$$=\sqrt{4\cdot 2}$
$\triangle \mathrm{ABC}$$=2\sqrt{2}$
となる。

解答カ:2, キ:2


次は内接円の半径だけど、内接円の半径が出てくる公式は、復習の3番目の$S=\displaystyle \frac{1}{2}r(a+b+c)$しかない。
今回はすでに三角形の面積$S$が分かっているので、迷うことなくこの公式を使おう。

求める内接円の半径を$r$とすると、
$\displaystyle \triangle \mathrm{ABC}=\frac{1}{2}r(\mathrm{AB}+\mathrm{BC}+\mathrm{CA})$より、
$2\displaystyle \sqrt{2}=\frac{1}{2}r(3+2+3)$
$4r=2\sqrt{2}$
$r=\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}$
である。

解答ク:2, ケ:2

別解

上の解法が絶対にお薦めなんだけど、センター試験本番で公式を憶えてなければ仕方がない。
中学校までの知識で解くと、以下のようになる。

図Aにおいて、点Iから辺ABに垂線を下ろし、その足をHとする。

$\mathrm{BD}=\mathrm{BH}$なので、
$\mathrm{BH}=1$
$\mathrm{AH}=2$

$\triangle \mathrm{ABD}$∽$\triangle \mathrm{AIH}$なので、
$\mathrm{AD}:\mathrm{BD}=\mathrm{AH}:\mathrm{IH}$
$2\sqrt{2}:1=2:\mathrm{IH}$
$2\sqrt{2}\mathrm{IH}=2$
$\displaystyle \mathrm{IH}=\frac{2}{2\sqrt{2}}$
$\displaystyle \mathrm{IH}$$\displaystyle =\frac{1}{\sqrt{2}}$
$\displaystyle \mathrm{IH}$$\displaystyle =\frac{\sqrt{2}}{2}$

IHは円Iの半径なので、これが答である。

解答ク:2, ケ:2


円Iの中心から点Bまでの距離は、図Aの$\mathrm{BI}$の長さ。
すでに
$\mathrm{BD}=1$
$\mathrm{ID}=$円Iの半径$=\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}$
が分かっているので、三平方の定理を使おう。

$\mathrm{BI}^{2}=\mathrm{BD}^{2}+\mathrm{ID}^{2}$
$\mathrm{BI}^{2}$$=1^{2}+\left(\frac{\sqrt{2}}{2}\right)^{2}$
$\displaystyle \mathrm{BI}^{2}$$\displaystyle =\frac{6}{2^{2}}$
$0 \lt \mathrm{BI}$なので、
$\displaystyle \mathrm{BI}=\frac{\sqrt{6}}{2}$
である。

解答コ:6, サ:2

(1)

図B
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図B

図Bの△PBQで、
$\displaystyle \mathrm{PQ}=\frac{2}{3}$
$\displaystyle \sin\angle \mathrm{PBQ}=\frac{2\sqrt{2}}{3}$
が分かっているので、正弦定理を使おう。

円Oの半径を$R$とすると、
$\displaystyle \frac{\mathrm{P}\mathrm{Q}}{\sin\angle \mathrm{P}\mathrm{B}\mathrm{Q}}=2R$より、
$2R=\displaystyle \frac{\frac{2}{3}}{\frac{2\sqrt{2}}{3}}$
$2R\displaystyle $$\displaystyle =\frac{2}{2\sqrt{2}}$
$2R\displaystyle $$\displaystyle =\frac{1}{\sqrt{2}}$
$2R\displaystyle $$\displaystyle =\frac{\sqrt{2}}{2}$
である。

解答シ:2, ス:2


次は円Iと円Oの位置関係だ。図Aを見れば異なる2点で交わるのは明らかだけど、それは分かってないってことで話を進める。
ここで、2円の位置関係の復習をしておこう。

復習

2円の中心間の距離を$d$,緑の円の半径を$r$,オレンジの円の半径を$R$とすると、

図C
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図C
$d \lt r-R$
のとき
図D
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図D
$r-R=d$
のとき
図E
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図E
$r-R \lt d \lt r+R$
のとき
図F
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図F
$r+R=d$
のとき
図G
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図G
$r+R \lt d$
のとき

だった、

円Iの半径$r$は$\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}$ 円Oの半径$R$は$\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{4}$ なので、
$r-R=\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}-\frac{\sqrt{2}}{4}$式A $r+R=\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}+\frac{\sqrt{2}}{4}$式B ってのは分かっているけど、2円の中心間の距離が分からない。
なので、それを求めよう。。

△BPQは二等辺三角形なので、点Oは$\angle \mathrm{PBQ}$の二等分線上にある。
点Iは△$\mathrm{ABC}$の内接円なので、点Iは$\angle \mathrm{ABC}$の二等分線上にある。
つまり、三点BOIは一直線上にある。

コサより、$\displaystyle \mathrm{BI}=\frac{\sqrt{6}}{2}$
$\mathrm{BO}$は円Oの半径なので、$\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{4}$
よって、2つの円の中心間の距離IOを$d$とすると、
$d=\mathrm{BI}-\mathrm{BO}$
$d\displaystyle $$\displaystyle =\frac{\sqrt{6}}{2}-\frac{\sqrt{2}}{4}$式C
である。

式Aと式Cを見比べると、$-\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{4}$の部分は共通なので、$\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}$と$\displaystyle \frac{\sqrt{6}}{2}$の大小を考えれば$r-R$と$d$の大小が分かる。
$\sqrt{2} \lt \sqrt{6}$なので、
$r-R \lt d$

式Bと式Cの大小関係はすぐに分からないので、引き算をした結果が正か負かで判断しよう。
式B-式C、つまり$(r+R)-d$より、
$(r+R)-d=\displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}+\frac{\sqrt{2}}{4}-\left(\frac{\sqrt{6}}{2}-\frac{\sqrt{2}}{4}\right)$
$(r+R)-d\displaystyle $$\displaystyle =\frac{\sqrt{2}}{2}+\frac{\sqrt{2}}{4}-\frac{\sqrt{6}}{2}+\frac{\sqrt{2}}{4}$
$(r+R)-d\displaystyle $$\displaystyle =\frac{2\sqrt{2}}{2}-\frac{\sqrt{6}}{2}$
$(r+R)-d\displaystyle $$\displaystyle =\frac{\sqrt{8}-\sqrt{6}}{2}$
なので、
$0 \lt (r+R)-d$
だから、
$d \lt r+R$

以上より、
$r-R \lt d \lt r+R$
なので、復習の図Eにあたる。
よって、2円は異なる2点で交わる。

解答セ:3

(2)

図H
大学入試センター試験2012年本試 数学ⅠA第3問 解説図H

円Iの円周上に点E,Fをとる。
E,Fは、図Hのように2種類考えられるけど、どちらでも答は変わらない。ここでは、オレンジ色の場所にとると図が見にくいので、黒の場所にしておく。

ソタは、円と交わった直線の、円との交点からの長さの問題。
真っ先に疑うのは、方べきの定理だ。

方べきの定理より、
$\mathrm{CF}\cdot \mathrm{CE}=\mathrm{CD}^{2}$なので、
$\sqrt{2}\mathrm{CE}=1^{2}$
$\displaystyle \mathrm{CE}=\frac{1}{\sqrt{2}}$
$\displaystyle \mathrm{CE}$$\displaystyle =\frac{\sqrt{2}}{2}$
である。

解答ソ:2, タ:2

よって、点Eは線分CFの中点なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{E}\mathrm{F}}{\mathrm{C}\mathrm{E}}=1$
となる。

解答チ:1

以上より、
点Dは線分BCの中点 点Eは線分CFの中点 なので、点Gは△BCFの重心である。
よって、重心の性質より、
$\mathrm{CG}:\mathrm{GM}=2:1$
なので、
$\displaystyle \frac{\mathrm{G}\mathrm{M}}{\mathrm{C}\mathrm{G}}=\frac{1}{2}$
となる。

解答ツ:1, テ:2