数学B : 数列 漸化式と場合の数

例題:センター試験 2010年 追試 ⅡB 第3問

問題は、数学入試問題データベースサイト大学入試数学問題集成さんのこのページを見てください。

センター試験・2010年(平成22年)の追試に出題された、漸化式を使って場合の数を求める問題。
問題の前半が場合の数の部分で、後半はただの漸化式の計算になっている。
場合の数の部分のルールが単純なので、考え方をつかむにはいい問題だと思う。後半の計算は面倒だけど。
この手の問題に慣れておくために、前半部分(ア~サ)だけでも解いておこう。
なお、このページで類題を解説してある。

ア~サ

まず樹形図を描いてみよう。
目的は、作業をしながら規則性を見つけるため。なので、下に載せた図は見ずに、まずは自分で描いてみてほしい。その方が理解が早いと思う。


図A
大学入試センター試験2010年追試 数学ⅡB第3問 解説図A

図Aを見ると、例えばb4は4文字目がbである文字列の個数なので、4段目のbの数と言いかえることができる。
この考え方から、以下の解説では
ann段目のaの数 bnn段目のbの数 cnn段目のcの数 とする。


図Aより、
a3は、3段目のaの数なので、2 b3は、3段目のbの数なので、1 c3は、3段目のcの数なので、1 a4は、4段目のaの数なので、2 である。

解答ア:2, イ:1, ウ:1, エ:2


図Aを作っていると気づくのは、
aの次の段は、bとcひとつずつに分岐 bの次の段は、aとcひとつずつに分岐 cの次の段は、aとbひとつずつに分岐 することだ。当然と言えば当然だけど。

ということは、ある段の
aの数は、一つ上の段のbとcの数の和 bの数は、一つ上の段のaとcの数の和 cの数は、一つ上の段のaとbの数の和 だといえる。

なので、
an+1=bn+cn式A である。

解答オ:2


また、各段のbとcの数は等しいので、
bn=cn式B
より
bncn=0
とかける。

解答カ:0


次に求めるの式
bn=an+1式C
は、an+1bnの式だ。
これまでに出てきた式でan+1bnが含まれているのは式Aなので、これを使う。
だけど、式Aの項のうちcnは式Cにないので、式Bを使って消そう。

式Bを式Aに代入して、
an+1=bn+bn
より
an+1=2bn式A'
bn=12an+1
となる。

解答キ:1, ク:2


さらに、
dn=an+bn+cn式D
とおくと、右辺はn段目のaの数+bの数+cの数なので、dnn段目の文字の個数にあたる。

図Aより、各段の文字の個数は、
1個からはじまって 次の段は前の段の2倍 である。

よって、{dn}は、
d1=1 dn+1=2dn の等比数列なので、一般項は
dn=12n1
dn=2n1式E
である。

解答ケ:1, コ:2, サ:1

シ~チ

次はrだ。
問題文のrが含まれている式の
an+1=ran+dn式F
an+1dnの式なので、式A'と式Dを使って式Fの形をつくって rを求める。

式を見比べると、式Dのcnが邪魔なので、さっきと同じように式Bを代入して消そう。
式Bを式Dに代入して、
dn=an+bn+bn
より
2bn=an+dn
とかける。

これを式A'に代入して、
an+1=an+dn
となる。

解答シ:-, ス:1


ここで、
An=rnan式G
とおいて、式Fの{an}の漸化式を{An}の漸化式にする。
今回は問題文中に{An}の漸化式が書いてあるので、この部分は計算しなくていい。
けれど、自分で計算しないといけないこともあるから、解説しておく。

{an}の漸化式を{An}の漸化式にするということは、式Fの
an+1anを消して An+1Anをつくる ということだ。
こういうときは、代入するのが楽。
anを消してAnをつくるから、anAnが含まれている式を使う。
つまり、式Gだ。

rnをそのまま使ってもいいんだけど、n乗ってのは混乱する人もいるだろうから、ここでは式Gを
An=anrn
と変形してから計算する。

この式の両辺にrnをかけて、
an=rnAn式G'
nn+1を代入して、
an+1=rn+1An+1式G''

式G',式G''を式Fに代入して、
rn+1An+1=rrnAn+dn
より
rn+1An+1=rn+1An+dn
とかける。

rn+10なので、この式の両辺をrn+1で割ると、
An+1=An+dnrn+1式H
An+1=An+r(n+1)dn
An+1=An+rn1dn
となって、問題文中の式ができる。


この式Hを使って、{An}の一般項Anを求める。
まず、邪魔なdnを消そう。
式Eを式Hに代入して、
An+1=An+2n1rn+1式H'
となるけど、これは漸化式の基本の形の3つめだ。

せっかくだから漸化式の基本の形の復習をしよう。

復習

漸化式の基本の形は4つあって、
an+1=an+d : 公差dの等差数列 an+1=ran : 公比rの等比数列 an+1=an+f(n) : 階差数列の一般項がf(n) an+1=pan+q : 特性方程式を使って解く だった。

式H'は、復習の3番目のパターン。
なので、{An}の階差数列の一般項が
2n1rn+1
だ。

この式は分母と分子で指数が違って面倒なので、そろえよう。
2n1rn+1=2n1rn1+2
        =2n1rn1r2式I
だけど、r=1よりr2=1なので、この式は
2n1rn+1=2n1rn1
        =(2r)n1
とかける。

アドバイス

作りたいの式にrn1があるので、式Iのrn1の部分にはr=1を代入しなかった。

これが{An}の階差数列の一般項だ。

また、A1は、式Gにn=1を代入して、
A1=r1a1
となるけど、r=1a1=1なので、
A1=111
A1=11
A1=1
である。


ここで、階差数列について復習をしておくと、

復習

{an}の階差数列が{bn}のとき、{an}の一般項anは、{bn}の一般項bnを使って、
an=a1+k=1n1bk(2n)
とかける。

以上から、2nのとき、{An}の一般項Anは、
An=1+k=1n1(2r)k1
となるので、これを式G'に代入して、2nのとき、an
an=rn{1+k=1n1(2r)k1}
とかける。


あとは計算だ。
Σの公式を使って、
an=rn{1+1(2r)n112r}

ちょっと式がややこしいので、整理しよう。
さっきと同じように分母のrにだけr=1を代入して、
an=rn{1+1(2r)n1121}

途中式 an=rn{1+1(2r)n13}
an=rn{1+1313(2r)n1}
an=rn{23132n1rn1}
an=23rnr32n1
となる

けれど、これではのマスに入らない。
なので、変形して問題文の式の形にしよう。

項の順番を変え、さらにrnrrn1にする。
an=r32n123rrn1
この式のrn1以外のr1を代入すると、
an=132n123(1)rn1
an=132n1+23rn1
となって、問題文の式の形ができる。

これはn=1のときも成り立つ。

解答セ:3, ソ:2, タ:2, チ:3