大学入学共通テスト 2025年(令和7年) 本試 数学ⅠA 第2問 [2] 解説

(1)

(i)

(a)

図A
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅠA 第2問 [2] 解説図A

図Aにおいて、
外国人宿泊者数が$100$を超えるのは、緑の線よりも右 日本人宿泊者数が$2500$を超えるのは、青い線よりも上 なので、両方の条件を満たす点は 赤い2個だけだ。

なので、(a)は正しい。

(b)

図B
大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅠA 第2問 [2] 解説図B

図Bのオレンジの直線は傾きが$10$である。
つまり、オレンジの直線上は、日本人宿泊者数が外国人宿泊者数のちょうど$10$倍になる。
ここで問われているのは 日本人宿泊者数が外国人宿泊者数の$10$倍未満の点だから、オレンジの直線よりも下にある点だ。

この条件に合う点は 赤い1個だけ。
なので、(b)も正しい。

よって、解答群のうち正しいものは

である。

解答タ:0

(ii)

ここで、四分位数について復習しておこう。

復習

値を左から小さい順に並べる。
中央値は、ちょうど真ん中にある数。値の数が偶数のときは、真ん中にある2個の値の平均値。 値の数が奇数のときは、中央値を除いて偶数にして、
左半分の中央値が、第1四分位数。 右半分の中央値が、第3四分位数。 都道府県の$47$個の値の場合、次の図のようになる。

大学入学共通テスト2025年本試 数学ⅠA 第2問 [2]  復習図

第1四分位数は、左(小さい方)から12番目の都道府県の値 第1四分位数は、左(小さい方)から36番目の都道府県の値 である。

復習より、
第1四分位数は$\mathrm{P}12$の$351$ 第3四分位数は$\mathrm{P}36$の$1251$ だ。

よって、四分位範囲は
$1251-351=900$
である。

解答チ:4

問題の最初にあった外れ値の定義から計算すると

(第1四分位数)$-1.5\times$(四分位範囲)
$\hspace{80px}=351-1.5\times 900$
となるけど、これは明らかに負の値になる。
宿泊者数が負の値になることはないから、これは無視。

(第3四分位数)$+1.5\times$(四分位範囲) $$ \begin{align} \hspace{80px}&=1251+1.5\times 900\\ &=2601 \end{align} $$ より、$2601$以上

が外れ値だ。

したがって、問題文中の表1のうち
$\mathrm{P}45$,$\mathrm{P}46$,$\mathrm{P}47$
は日本人宿泊者数が外れ値になる。

表1ではこの3つすべてに印*がついているので、外国人宿泊者数も外れ値だ。

以上より、の都道府県数は

である。

解答ツ:3

(2)

では、$z$の分散$s_{z}^{2}$を問われてる。
なので、分散と共分散の復習をしておこう。

分散の復習

大きさ$n$のデータ$\{x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\}$があり、
データの平均値を$\overline{x}$ データの各値の2乗の平均値を$\overline{x^{2}}$ とするとき、分散$s^{2}$は
$$ \begin{align} s^{2}&=\dfrac{1}{n}\left\{ \begin{aligned} (x_{1}-\overline{x})^{2}+&(x_{2}-\overline{x})^{2}+\\ &\cdots+(x_{n}-\overline{x})^{2} \end{aligned}\right\}\\ &=\overline{x^{2}}-\left(\overline{x}\right)^{2} \end{align} $$ とかける。

このふたつの式は問題によって使い分けるので、両方憶えておこう。

共分散の復習

データ$\{x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\}$と$\{y_{1},y_{2},\cdots,y_{n}\}$があり、
それぞれの平均値を$\overline{x}$,$\overline{y}$ とするとき、$\{x\}$と$\{y\}$の共分散$s_{xy}$は
$$ \begin{align} s_{xy}=\dfrac{1}{n}\left\{\begin{aligned}&(x_{1}-\overline{x})(y_{1}-\overline{y})\\&\quad+(x_{2}-\overline{x})(y_{2}-\overline{y})+\\&\qquad\cdots+(x_{n}-\overline{x})(y_{n}-\overline{y})\end{aligned}\right\} \end{align} $$ である。


復習より、$s_{z}^{2}$は
$s_{z}^{2}=\dfrac{1}{47}\left\{\begin{aligned}(z_{1}-\overline{z})^{2}+&(z_{2}-\overline{z})^{2}+\\ &\cdots+(z_{47}-\overline{z})^{2}\end{aligned}\right\}$
式A
とかける。

問題文にある式
$z_{i}-\overline{z}=(x_{i}-\overline{x})+(y_{i}-\overline{y})$式B
と式Aを見比べると、
式Bの左辺をを2乗して、
$i$に$1$から$47$を代入して、
和を求めて$47$で割る
と、式Aの右辺になることが分かる。

ということで、式Bの両辺を2乗する。
$$ \begin{align} (z_{i}-\overline{z})^{2}&=\{(x_{i}-\overline{x})+(y_{i}-\overline{y})\}^{2}\\ &=\textcolor{royalblue}{(x_{i}-\overline{x})^{2}}+2\textcolor{red}{(x_{i}-\overline{x})(y_{i}-\overline{y})}\\ &\hspace{120px}+\textcolor{green}{(y_{i}-\overline{y})^{2}} \end{align} $$

この式の$i$に$1$から$47$を代入して、
$$ \begin{align} (z_{1}-\overline{z})^{2}=\textcolor{royalblue}{(x_{1}-\overline{x})^{2}}+&2\textcolor{red}{(x_{1}-\overline{x})(y_{1}-\overline{y})}\\ &\quad+\textcolor{green}{(y_{1}-\overline{y})^{2}} \end{align} $$ $$ \begin{align} (z_{2}-\overline{z})^{2}=\textcolor{royalblue}{(x_{2}-\overline{x})^{2}}+&2\textcolor{red}{(x_{2}-\overline{x})(y_{2}-\overline{y})}\\ &\quad+\textcolor{green}{(y_{2}-\overline{y})^{2}} \end{align} $$ $\hspace{80px}\vdots$ $$ \begin{align} (z_{47}-\overline{z})^{2}=\textcolor{royalblue}{(x_{47}-\overline{x})^{2}}+&2\textcolor{red}{(x_{47}-\overline{x})(y_{47}-\overline{y})}\\ &\quad+\textcolor{green}{(y_{47}-\overline{y})^{2}} \end{align} $$

この47個の式を辺々たして、
$$ \begin{align} &(z_{1}-\overline{z})^{2}+(z_{2}-\overline{z})^{2}+\cdots+(z_{47}-\overline{z})^{2}\\ &\hspace{10px}=\textcolor{royalblue}{(x_{1}-\overline{x})^{2}}+\textcolor{royalblue}{(x_{2}-\overline{x})^{2}}+\cdots+\textcolor{royalblue}{(x_{47}-\overline{x})^{2}}\\ &\hspace{30px}+2\textcolor{red}{(x_{1}-\overline{x})(y_{1}-\overline{y})}+2\textcolor{red}{(x_{2}-\overline{x})(y_{2}-\overline{y})}+\\ &\hspace{50px}\cdots+2\textcolor{red}{(x_{47}-\overline{x})(y_{47}-\overline{y})}\\ &\hspace{30px}+\textcolor{green}{(y_{1}-\overline{y})^{2}}+\textcolor{green}{(y_{2}-\overline{y})^{2}}+\cdots+\textcolor{green}{(y_{47}-\overline{y})^{2}} \end{align} $$

この両辺を$47$で割ると、
$$ \begin{align} &\dfrac{1}{47}\left\{\begin{aligned}(z_{1}-\overline{z})^{2}+&(z_{2}-\overline{z})^{2}+\\ &\cdots+(z_{47}-\overline{z})^{2}\end{aligned}\right\}\\ &\quad=\textcolor{royalblue}{\dfrac{1}{47}\left\{\begin{aligned}(x_{1}-\overline{x})^{2}+&(x_{2}-\overline{x})^{2}+\\ &\cdots+(x_{47}-\overline{x})^{2}\end{aligned}\right\}}\\ &\qquad +2\cdot\textcolor{red}{\dfrac{1}{47}\left\{\begin{aligned}&(x_{1}-\overline{x})(y_{1}-\overline{y})\\ &\quad+(x_{2}-\overline{x})(y_{2}-\overline{y})+\\ &\qquad\cdots+(x_{47}-\overline{x})(y_{47}-\overline{y})\end{aligned}\right\}}\\ &\qquad +\textcolor{green}{\dfrac{1}{47}\left\{\begin{aligned}(y_{1}-\overline{y})^{2}+&(y_{2}-\overline{y})^{2}+\\ &\cdots+(y_{47}-\overline{y})^{2}\end{aligned}\right\}} \end{align} $$ 式C
ができる。


式Cの左辺は式Aの右辺 復習より、式Cの右辺の
青い部分は$x$の分散$s_{x}^{2}$ 赤い部分は$x$と$y$の共分散$s_{xy}$ 緑の部分は$y$の分散$s_{y}^{2}$
だ。

よって、式Cは
$$ \begin{align} s_{z}^{2}&=\textcolor{royalblue}{s_{x}^{2}}+2\textcolor{red}{s_{xy}}+\textcolor{green}{s_{y}^{2}}\\ &=s_{x}^{2}+s_{y}^{2}+2s_{xy}\class{tex_formula}{式D} \end{align} $$ とかきかえられる。

解答テ:4


次は $s_{z}^{2}$と$s_{x}^{2}+s_{y}^{2}$の関係だ。

式Dより
$s_{z}^{2}-(s_{x}^{2}+s_{y}^{2})=2s_{xy}$式E
なので、$s_{xy}$と$0$との大小関係が分かれば、$s_{z}^{2}$と$s_{x}^{2}+s_{y}^{2}$の関係も分かる。

というわけで、$s_{xy}$を考えよう。


問題文より、$x$と$y$の間には正の相関があるから、相関係数を$r_{xy}$とすると
$r_{xy} \gt 0$式F
とかける。

ここで、相関係数の復習をすると、

相関係数の復習

データ$\{x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}\}$と$\{y_{1},y_{2},\cdots,y_{n}\}$があり、
それぞれの標準偏差を$s_{x}$,$s_{y}$ $\{x\}$と$\{y\}$の共分散を$s_{xy}$ とするとき、$\{x\}$と$\{y\}$の相関係数$r_{xy}$は
$r_{xy}=\dfrac{s_{xy}}{s_{x}\cdot s_{y}}$
である。

だった。

復習より、$x$と$y$の標準偏差をそれぞれ$s_{x}$,$s_{y}$とすると、式Fは
$\dfrac{s_{xy}}{s_{x}\cdot s_{y}} \gt 0$式G
とかきかえられる。

いま、$s_{x}^{2}$も$s_{y}^{2}$も$0$じゃないから、その正の平方根である標準偏差は
$0 \lt s_{x}$,$0 \lt s_{y}$
だ。

なので、式Gの両辺に$s_{x}\cdot s_{y}$をかけても不等号の向きは変わらず、
$s_{xy} \gt 0$
であることが分かる。

したがって、式Eの右辺は正なので
$s_{z}^{2}-(s_{x}^{2}+s_{y}^{2}) \gt 0$
となるから、
$s_{z}^{2} \gt s_{x}^{2}+s_{y}^{2}$
である。

解答ト:0

(3)

問題文中の実験結果の表を次に載せた。

表C
表の枚数
(枚)
01234567891011
割合
(%)
0.00.00.00.00.00.00.00.00.10.10.81.3
表の枚数
(枚)
121314151617181920212223
割合
(%)
2.24.56.99.512.313.012.911.29.67.24.12.4
表の枚数
(枚)
242526272829303132333435
割合
(%)
0.90.50.40.00.10.00.00.00.00.00.00.0

表Cの赤い部分の和を求めると、この実験で$23$枚以上表が出た割合は
$2.4+0.9+0.5+0.4+0.1=4.3$(%)
だったことが分かる。

解答ナ:4, ニ:3


硬貨の表が出る確率と裏が出る割合は等しい。
なので、表が出た硬貨の数を「Aの方がよい」と回答した人数と考えると、
AとB両方の回答の割合が等しいとき、$35$人中$23$人以上が「Aの方がよい」と回答する確率は$4.3$%である ことになる。

$4.3$%は$5$%未満なので、問題文中の「方針」により、仮説は誤っていると判断される。

解答ヌ:0

よって、今回のアンケート結果からは、キャンペーンAの方がよいと思っている人が多いといえる。

解答ネ:0