単元に分類できないトピック : 複数単元を含むもの グラフの移動(2)
例題
座標平面上に点$R$があり、点$R$を$x$軸方向に$1$移動した点を点$P$、点$R$の$x$座標だけを$2$倍した点を点$Q$とする。
点$R$が直線$y=2x+3$上を動くとき、点$P$,点$Q$の軌跡を求めなさい。
アドバイス
グラフの移動の授業で、生徒からよくある質問に「$x$軸方向に$+1$平行移動するとき、なぜ$x$に$x+1$じゃなくて$x-1$を代入するのか」ってのがある。
気持ちは分かる。$+1$動くのなら$x+1$を代入しそうな気がする。なぜ$\pm$が逆になるのか。
考えてみれば、グラフを$y$軸を中心として$x$軸方向に$2$倍に拡大するときも、$x$に$2x$じゃなくて$\displaystyle \frac{x}{2}$を代入する。なぜかけ算と割り算が入れ替わるのか。
このページでは、そこのところを説明する。
でも、これを知らなくても共通テストは解けます。
点Pの軌跡(平行移動)
アドバイス
$y=2x+3$上に点$R$がある
点$P$は点$R$を$x$軸方向に$1$移動したもの
なので、点$P$の軌跡のグラフは
$y=2x+3$を$x$軸方向に$1$平行移動したもの
である。
なので、$y=2x+3$の$x$に$x-1$を代入すれば求められる。けれど、今回はそれを軌跡で解くことで、なぜ$x-1$を代入するのかを理解しよう。
図Aで、緑の直線が$y=2x+3$のグラフ、赤い直線が求める軌跡だ。
復習
軌跡の問題を解くときの鉄則は、
軌跡を求める点を$(x,y)$とおく
こと。
復習の方針通り、点$P$の座標を
$(x,y)$
とおく。
点$R$の座標を
$(a,b)$
とおくと、
点$R$は$y=2x+3$上の点なので、
$b=2a+3$式A
点$R$を$x$方向に$1$移動した点が$P$なので、
$\left\{\begin{array}{l}a+1=x\\b=y\end{array}\right.$式B
である。
式Bを
$a+1=x$式C
$a=x-1$式D
$b=y$
と変形して、式Aに代入すると、
$y=2(x-1)+3$式E
より
$y=2x-2+3$
$y$$=2x+1$
ができる。
これが求める軌跡で、$y=2x+3$を$x$軸方向に$1$平行移動したものだ。
解答$y=2x+1$
アドバイス
式Eで、確かに$x$に$x-1$を代入した式ができている。
こうなった理由を考える。
式Cを変形して式Dにした部分に注目してほしい。
$+1$が移項されて$-1$になっている。
このように、移項してから代入するので、$\pm$が逆になることが分かる。
$y$軸方向の平行移動のときもこれと同じことが言える。
点Qの軌跡(拡大)
アドバイス
$y=2x+3$上に点$R$がある
点$Q$は点$R$の$x$座標だけを$2$倍したもの
なので、点$Q$の軌跡のグラフは
$y=2x+3$を、$y$軸を中心として$x$軸方向に$2$倍に拡大したもの
である。
なので、$y=2x+3$の$x$に$\displaystyle \frac{x}{2}$を代入すれば求められる。けれど、今回はそれを軌跡で解くことで、なぜ$\displaystyle \frac{x}{2}$を代入するのかを理解しよう。
図Bで、緑の直線が$y=2x+3$のグラフ、赤い直線が求める軌跡だ。
点$P$のときと同じように、点$Q$の座標を
$(x,y)$
とおく。
点$R$の座標を
$(a,b)$
とおくと、
点$R$は$y=2x+3$上の点なので、
$b=2a+3$式F
点$R$の$x$座標だけを$2$倍した点が$Q$なので、
$\left\{\begin{array}{l}2a=x\\b=y\end{array}\right.$式G
である。
式Gを
$2a=x$式H
$a=\displaystyle \frac{x}{2}$式I
$b=y$
と変形して、式Fに代入すると、
$y=2\displaystyle \cdot\frac{x}{2}+3$式J
より
$y=x+3$
ができる。
これが求める軌跡で、$y=2x+3$を、$y$軸を中心として$x$軸方向に$2$倍したものだ。
解答$y=x+3$
アドバイス
式Jで、確かに$x$に$\displaystyle \frac{x}{2}$を代入した式ができている。
こうなった理由は、平行移動のときと同じように、式Hから式Iへ変形したから。
式を変形してから代入するので、かけ算と割り算が入れ替わることが分かる。
この問題はグラフの拡大だったけど、縮小のときもかけ算と割り算が入れ替わる。
なので、グラフを$\displaystyle \frac{1}{2}$に縮小する場合は、$x$に$2x$を代入する。
$x$方向ばかりでなく、$y$軸方向の拡大縮小もこれと同じことが言える。